ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts-   作:新世界のおっさん

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三者三様のβテスター。
多くのプレイヤーを救うため立ち上がるディアベル。
攻略の為にソロを貫き強くなろうとするキリト。
仲間を、友達を守る為に世界を駆け回るイノセンス。
行き着く先に未来はあるのか…。


騎士と剣士と冒険者

遅刻したら不味いため全員がダッシュで駆けつけた時には、丁度始まりそうなところであり声を張り上げる。

 

「ちょお待ってん「「すみません!遅れました!!」」…おう?」

 

あ、誰かは知らんが話の腰を折ってしまったようだ…すみませんねマジで。そして遅刻したのは俺らだけでは無かったようだ。

赤髪に髭の生えた野武士の様な顔…なるほど彼がキリトの言っていたクラインか。後ろにはギルドメンバーらしき姿もある。

 

「何か事情があったのかい?まあ始まって間もないから気にしなくても良いよ、座って座って」

 

今回の取り纏めをしている彼ーディアベルーは爽やかな笑顔でこちらを導いた、βテストの時に彼とは知り合っているので互いに和やかなムードで…といきたいがその隣に立っている男はかなり不機嫌な様子だったからそそくさとクライン組やキリトの座っている場所に向かった。

 

「よっ、珍しいな遅刻とは…βでは無遅刻無欠席だったのに」

「まあ、やんごとなき事情がな」

「本当はただの寝坊なんだよ、キリト」

「ちょっサチ、せっかく濁したのに酷いなぁ」

 

クスクスイタズラっぽく笑う彼女は天使だと思う。

次にクラインに話題をふる。

 

「初めましてイノセンスです、あんたがクラインさんか?」

「ああ、よろしくなぁ…なげぇしイノでいいか?」

「構わないぜ」

 

凄いいい人だった、ネットゲーマーとして貴重な<大人>な人だと思う。それぞれ挨拶していくが、ふと気づく明らかにどこかで見た人物がいることに。

 

「君…もしかして…」

「……!」

 

…どうやら向こうも気づいた様子で落ち着かない感じだ。

お互い大変だな、<東条冬>さん。まあ、クラインさんに拾われたのは運が良かったな。

瞳には昔にはない光が宿っていてむしろ鋭い目付きは凛々しさを増させ黒髪をポニーテールにまとめあげている。金属鎧に両手斧とまさに戦士の出で立ち…以前の引っ込み思案な様子は皆無だった。彼女もまた変わったんだな。サチの様に。

 

「…よろしく、イノセンスだ」

 

手を差し出す、以前差し出した時は握られる事はなかった。

だが。

 

「……よ、よろしく…トトだよ…」

 

今度はぎこちなくだが握ってくれた、思わず笑顔を浮かべると顔を背けられた。…もしかしてあの時ぶつかったのも彼女かな?

 

そして最後に一番気になる事がある、キリトが見知らぬ女性プレイヤーと組んでいたことだ。フードで顔を隠している彼女にも声をかけようとしたがディアベルが話始めてしまったので自粛した。

 

「はい、話が途中で止まってしまったから再開するよ。どうぞ前に出て」

「おう」

 

するとさっきの不機嫌なおっさんが前にでてきた。

 

「ワイはキバオウってもんや、ボスを攻略に向かう前に一つ言うとかなあかん事がある…他でもないβテスターの事や」

 

ん~、何だか雲行きが怪しくなってきたなぁ。

 

「β上がり共がワイ等見捨てんかったら、千人もでた死人はもっと減らせたやろ!ワイ等が【はじまりの街】を右往左往しとる間、ジブン等はβ時代の知識っちゅう甘い蜜吸うて楽して生きて……! そんな屑がおるかもしれんのに、パーティー組んで命なんて預けられるわけないやろ!」

 

なるほど、そう言う意見もあるか。だがなキバオウさん、それはほんの一部の話なんだよ。事実皆を集め纏めようとしているあんたの後ろの男もそのβテスターなんだぜ?

キリトは思うところがあるのかうつむき、クラインさんが気にかけてくれてる、ありがたい。サチも俺の手を心配そうに握る、嬉しいけど俺は大丈夫よ?

 

「なあ、ディアベルはんもそう思うとるんやろ!?」

 

同意を求めるキバオウ、俺はディアベルに視線を向けるとディアベルと目が合う。しばらくの沈黙のあと彼は微笑み前に出る。

 

「やはり、ここで黙っているのはフェアじゃないな」

「? なんやて?」

 

ディアベルは意を決した様に声高らかに叫ぶ。

 

「諸君!実は僕もβテスターだ!!」

 

この場の全員が驚愕の表情にかわる、俺を除き。

βの時からフェア精神だの、正義だの、騎士道だのを信条にしている彼がこんな時何も言わないのはおかしいからな。

そのまま彼は続ける。

「確かに一部にそう言う事もあったのかもしれない、だが僕はそれらを内包したうえでも少しでも早く攻略を目指さないといけないと思う。

それは、僕たちの権利であると同時に義務でもあると思うから!闘う力を持つ僕らの!」

 

皆彼の言葉に聞き入っている、βテスターでかつ全員を纏めようした彼が言うと説得力があるからか。俺はただ黙って頷く。彼は続ける。

 

「僕は少しでも多くの人を救いたい、そのためには全員が一致団結しなくてはいけない!綺麗事かもしれないがそれが僕の考えだ!皆も同じ気持ちならば僕に力を貸してくれないか!?」

 

暫しの沈黙、俺は拍手を送る、するとあちこちから拍手が沸き起こる。

 

「…ありがとう!皆!」

 

彼は笑顔だった、自分の想いが伝わったのが嬉しかったのだろう。逆にキバオウは罰が悪そうな顔でふんっと鼻息を鳴らし座った。キリトの表情は複雑そのものだった。

 

 

 

「やあ、イノセンス」

「よう、ディアベル」

 

あのあと夜になり、皆で前祝いで飲み会をしていたが俺は視線を感じ皆にことわって外に出るとディアベルがいた。

 

「先程は促してくれてありがとう、前に行きやすくなったよ」

「いやいや、あんたなら俺がいなくても何とかしてたろ」

 

そうかな?と憂いた表情のディアベル、普段は見れない顔だ。

 

「僕にも自信がなかったんだよ、皆を纏められるのか」

「意外だな、あんたがそう言うとは」

 

もっと自信たっぷりかと思ったがと暗に言うとディアベルは首を横に振る。

「キバオウさんに聞かれた時に僕は一瞬躊躇したんだ、何故か分かるかい?」

「…キリトが見えたからか」

 

ディアベルは頷く。

キリトはβテスト時誰よりも多くのラストアタックボーナスを取っていた、そんな彼に嫉妬したり、恨んだりはよくあることだった。恐らくディアベルもその一人なんだろう。

 

「僕は彼のやり方は認められない、特に多くの人の命がかかったこのゲームで自分だけ強くなろうとする彼は」

「…だが」

「分かってる!…自分で言ったことだ、曲げはしないよ」

 

それなら良いんだ、女々しく自分の信条を曲げようものならぶん殴っていたところだー圏内なのでダメージはないがー。

ただ。

 

「何故、そんな話を俺に?」

「洗いざらいぶちまけたかったのさ…これからもいつもの僕であるために…信頼できる君なら受け止めてくれるだろうから」

 

気安く話せる内容ではないから、俺を捌け口にしたと…。

まあ、これも必要なことだとは思う、明日支障が出ても困るし。

 

「…すまなかった、明日は全力でボスを倒そう」

「ああ、補助は任せとけ」

 

ディアベルはいつもの爽やかな笑顔に戻り去っていった。

さてと、お次は…

 

「いるんだろ?出てこいよ」

「…」

 

すると、キリトが店の影から出てきた。

 

「盗み聞きとは趣味わるいぞ?ディアベルが索敵スキル持ってたらばれてるかも知れんかったんだぞ?」

 

キリトは黙っている、俺は続ける。

 

「俺だから黙ってたんだからな?少しは感謝を」

「なぁ」

「…ん?」

 

突然声を出したキリトに疑問符を投げ掛ける。

キリトは話し出した。

 

「お前も…俺を恨んでいるんじゃないのか?」

 

キリトの表情は真剣でかつそこには悲壮感とか諦めとかが混じっていた、彼は続ける。

 

「俺は、ディアベルの言う通り…βの時も、そして今も自分が生きるためにソロで強くなろうとしてる」

「ああ、分かるよ」

「なら」

「だから分かるんだって、お前の気持ちも」

「…は?」

 

キリトはポカンとした表情だ。

俺は続ける。

 

「ディアベルの出来るだけ多くの人を救いたい気持ちも、キリトの何としても生き延びたいって気持ちもさ…分かるんだよ。

ただ俺は身の丈にあった事しか基本的にしないし、完全にソロになるのは勘弁願うが」

「えっ、だけど…え?」

「それにゲーマーがLABをとろうとするのは別に普通の事だろ、文句言う奴は文句言う前に自分が取れよって話だしな」

「……」

 

うつむきキリトの表情に陰がかかり見えなくなる、構わず続ける。

 

「だからさ、お前が責任感じるなよ…自分で自分を追い込むな。もし周りが許さないってんなら俺が許す」

 

笑って言う。

 

「なんなら周りが文句言えなくなるくらい強くなっちまえばいいじゃないか、お前なら出来るって俺は思うぜ?」

 

刹那、キリトが視界から消える。

否、俺の腕の中にいた。彼は泣いていた、顔をくしゃくしゃにして…。

ずっと悩んでたんだな、悔やんでたんだな…そして苦しんでたんだな。彼の抱き締める力が強くなる。

俺は泣き止むまで優しく頭を撫で続けた。

 

 

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私は今とんでもない状況下に出くわしてしまった。

マジ泣きですがるクラインさんのフレンドのキリトさんと、そんな彼を抱きしめ優しく撫でているまさか再会すると思わなかったイノセンスこと<稲生直貴>くん…そんな場面に遭遇したら嫌でも勘違いするよね、こう思うよね。

二人はカップリングなのかと…。

 

「これは…」

「アリかもしれない…」

「…!!?」

 

突然左右から声が聞こえて飛び上がる。

良くみるとどちらも今朝見た人物だ。名前は知らないけど。

 

「何故ここに?」

 

小声で話しかける。

 

「私は突然外の風に当たるって、外に出たイノ君が気になって」

 

イノ君、あだ名ってことはそれなりに仲良いのかな…良く一緒にいたし…ああ、何でかなぁ今さら彼に未練が…。

 

「私は彼が神妙な面持ちで出ていったから…それに…クリームノオレイ…」

 

最後が良く聞こえなかったけど、だいたい同じらしい。

 

「そうですか、ただ分かることがあります…それは」

「「「キリト(さん)(彼)が受けだと言うことっ!」」」

 

今私たちの心は一つだった、世界が繋がった気がした。

 

「私はトトです」

「サチと言います」

「アスナです」

 

肩を組み合い固い友情を誓い合う。

こうしてまた新たな絆が芽生え、世界は平和になるのだ。

 

「…何やってんだあんたら」

 

呆れた表情のクラインさんが何か言っていたが今回ばかりはスルーし私たちは三人で夜の町に繰り出して行くのだった。




妙な友情が生まれてしまった、これが友情パワーか!(チガッ
そして、作者はホモじゃない(確信)
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