ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts- 作:新世界のおっさん
やっと直貴について掘り下げ始めるおっさんのスピードのなさよ(笑)
打って変わり、直葉と幸穂の二人は、直貴や詩乃に先んじて二人が向かっているカラオケ店についたのだが……。
「げっ、混んでる?」
「人沢山いるね……参ったな……」
平日の割にベンチに待ち客が結構いた。
仕方ないので、その隣に座ると、その待ち客が突然二人に反応をしめした。
「あれ?直葉さんに幸穂さんじゃないですか!」
「二人もストレス発散?」
「うわ!これ本当に全員揃うんじゃない!?」
「佳子ちゃん、冬ちゃん、里香ちゃん!」
「ま、マジ!?」
何とベンチ待ちの客の正体は、SAOヒロインズ(結除く)であった……。
佳子は頭を抑え、苦笑しながら事情を話し出した。
「いやぁ実はストレスぶっ飛ばせって思って、試しに声かけたらかなりあつまっちゃいまして……木綿季ちゃん、藍子さんに、サクヤさんやアリシャさんとかも呼んじゃってますよ!今予約取りに行ってます!」
「随分集めたね……いや、絶対盛り上がるけど完全に女子会のノリだよこれ……」
さらにALOヒロインズまでも集まっている……女子しかいないため幸穂の言った通り、女子会で間違ってはいない。
さらに里香はどこか申し訳なさげに、付け加える。
「本当は二人も誘おうかと思ったんだけどさぁ、スグちゃん飛び出すわ、サチさん泣き出すわだったからさ……てっきり二人は日を改めた方が良いかと思っちゃってさぁ……ね?」
「あ、あはは……それは仕方ないかな~なんてっ……それで他のメンバーは?」
「多分そろそろ予約を終わらせて……」
気まずさを誤魔化すためにスグが聞いた質問を、冬が答えようとした所でテクテクと足音が聞こえてきた。
「やっほ~♪大部屋空いたからお通ししますって……おー!」
「何だ、リーファにサチも来たのか……なら本当に羽目がはずせそうだな」
「良かった!二人も来てくれて!」
「ふふっ、結局一緒なわけね」
真っ先にアリシャとサクヤが、杖をつきながら木綿季が、その補助にまわれるように藍子が後ろからやって来た。
全員、二人の参加に嬉しそうな様子だ……幸穂と直葉は顔を見合わせた後、笑って言った。
「よ~し!こうなったら皆でガッツリ歌って、どうにもならないアイツへの不満吹き飛ばしてやろ!」
「たまには羽目外したって許されるよね!」
『イェア!!行こうぜ!!』
直貴がGGOに入れ込み、その間彼に全然会えていない女性陣は、やっぱり何処か心配や不安、スキンシップ不足でストレスがたまっていたらしい、明らかに妙なテンションで大部屋へ向かっていった。
「よし、着いたな……」
「カラオケ、楽しみ」
「まあ、久方ぶりだから普通に楽しもうかな」
「デュエットとかやりたいねっ、和人くん♪」
タイミングが良いのか、悪いのか……彼女らが去ったすぐ後に直貴達がやって来たりしていた……。
大部屋組は面子が多いため、出来るだけデュエットで歌ったり皆でワイワイ歌える様な選曲で回していた。
『これっきり、これっきり、もう……これっきりィ~ですかぁ~~!!』
「良いぞ、やれるじゃないか!里香ァ!」
『これっきりッ!これっきりッ!もう……これっきりィ~ですかぁ~マスタァーーゥ!!』
「佳子ちゃん!不満が駄々漏れだよぉ!」
『MORE DEBAN!!』
「それ持ちネタじゃん!」
先陣を切ったのは佳子&里香……普段はおとなしめな里香も、今日は無礼講とばかりに気合いを入れて歌っている……佳子は通常運転である。
「いやぁ~、何かスカッとするわね!」
「はい!普段言えない事は、カラオケのノリで消費するべきですね!」
「いやぁ~突っ込み所多すぎて笑っちゃったわよ」
二人が待機に戻り、サクヤとアリシャが前に出ていく。
基本二名が歌い、残りは待機で声援するなり、雑談するなりで適当に盛り上がっている。
「それにしても、直貴はこれだけのメンツと縁があったのに良く結ばれなかったわよね」
「いやだってアイツ自分からアクション起こす奴じゃないじゃないですか……」
「うん、相手の言動を受けて、それに返すだけだから……」
「確かにそうですね……そうだ!この場で直貴さんにアクションかけられた覚えある人!」
シン……と静まり返るその場。
それに納得し、頷く佳子。
「なるほど、やっぱりここは共通の事項で……」
「あっ、でも」
「えっ?」
と、ここで手を上げた木綿季は告げた。
「自分からのキスなら……してもらったな、ボク」
「なっ!」
『うそぉん……』
あまりの事に場が騒然とする、それを見て焦って付け足す木綿季。
「ほ、ほっぺにだから!それにこれもボクがアクションかけた結果だから!」
『……ふむ……それは気になるな、情報開示をしてほしい』
『うんうん、是非聞きたいなぁ……後学のためにぃ♪』
歌いに出た二人も、歌を忘れてその話題に乗っかってきた。
全員が見守る中、自分のやった事を思い返して赤面しつつ、木綿季は語りだした。
「えっと……お兄ちゃんがALOに来てお姉ちゃんを救うために頑張っていた時に……」
「……うん、続けて」
藍子はあの時を思い返し、苦笑するが木綿季に続きを促す。
「ユージーン将軍との戦いのあと、ボク一人で特訓していて祭りには参加してなかったんだよね……でボロボロで帰ったらいちゃついてるリーファが見えて……」
『やっぱりラスボスじゃないか!』
「その時はアイツの事好きだったわけじゃないし!!」
全員の言葉にスパッと切り返す直葉、木綿季は続ける。
「それで誤解って言うか、思っちゃったんだ……もしかしたらお兄ちゃんにとってはリーファみたいな人がタイプで、ボクなんか意識してくれないんじゃないかって……」
「木綿季ちゃん……わかりますよ……その気持ち」
弟子と言う妹分の立場だっただけあって、たまに意識されてないのでは?と言う不安に立たされる事があった佳子にとっても、それは他人事ではなかった。
「アバターを綺麗にする為に、自宅でシャワーを浴びていたボクは衝動のままにタオル一枚で、お兄ちゃんのいるリビングへ……」
『…………』
全員場面を想像したり、自分を当てはめてみたりして赤面する……かなり刺激の強い話だ……無論木綿季も真っ赤だった。
「い、今思えばお兄ちゃんかなり動揺してたと思うけど……ボク、必死で気づかないまま……後ろから抱きついたり、その後は正面から自分を見せて、胸をお兄ちゃんの顔に押し当てたりしちゃった……恥ずかしい事も沢山言ったし……」
「……そ、そして……?」
周りから生唾を飲み込む音まで聞こえるほど、場は興奮していた……木綿季は誰ともなく急かされ口にする。
「だ、抱き締められちゃって……男は女の子を意識するものだって諭されて……ボクの想いは理解してもらえて、そのあと頬にキスしてもらった……」
『グハァァァァッ!!』
オールノックアウト……会心の一撃であった。
ある意味純粋な木綿季だからこその、大胆な荒業に全員倒された。
「恐るべし……我が妹……」
「無理……出来る気がしないわ……稲生君にそんな……」
普段クールなタイプの藍子と冬だからこそ、そんな甘い経験談に一番ダメージをくらった。
「……逆にそこまでしないと、頬にキスもらえないとか……アイツどんだけガード堅いのよ……」
「確かに……あっ、そうだ!丁度良い機会だし、キス繋がりで直葉ちゃんにファーストキス(VR)の感想を聞きたいなぁなんて!」
「ゲェッ!幸穂さんそれは!」
『キースッ!キースッ!キースッ!』
さらに幸穂からのキラーパスが入り、何故か流れで全員で直葉を弄る流れに……。
「分かったわよ!言う!言うから一回黙れおのれらぁ!!」
直葉の叫びは、防音壁へと虚しく吸い込まれただけだった。
『女々しくて!女々しくて!女々しくてぇ!つぅらぁいよぉ~おおお~!!』
「いぇ~い!和人くん女々しいよぉ!」
『その声援は嬉しくない!!』
「「仲良いなぁ……あの二人は……」」
一方ダブルデート組は4人でテンポ良く楽しんでいる、その分実力が浮き彫りになるが、今の所全員歌は上手かった。
「詩乃と言い、明日奈と言い、意外とガチな曲多いよな……所謂イケボだし」
「まあ、歌は嫌いじゃないし……三人といると、不思議と気分が盛り上がるのよ」
「私は基本何でも本気だもん」
詩乃は微笑み、明日奈は明らかにドヤ顔だった。
「あの生意気な顔を崩してやりたい、男みせろ!直貴!」
「普通そこはお前が頑張るとこだろ……いや、歌うけどもね?」
仕方ないなと、直貴はマイクを取り立ち上がる。
「直貴ってどんな歌声なんだろ……?」
「普段の声は……こう、少し低めな感じだけど……和人君知らないの?」
「いや、俺も初めて聞くんだよな……実は」
三人とも期待に胸を膨らませているところ、直貴が答える。
「そりゃ、カラオケ行くぐらいならALOにログインしてるか、エギルの喫茶店に行くからな」
「「あ、そりゃそうか……」」
「それで納得するあたり、全員重症ね」
その言葉に妙に納得する二人と、呆れる詩乃。
すると、曲名が表示される、それは……。
「「「<still more ripple>?」」」
「まあ、ロボット物の曲だから知らないかも知れないが聞いてくれ……好きなんだ」
『そっと触れた瞬間に……胸に芽生えた……キミへつづくmotion……波紋広がるこの瞳が据えた景色は……』
『どこか遠い国では……いのち祈り儚さ問う……孤独の中戦ってる……その強さはどこへ向かうのか……』
「……はぁ~……」
「……な、直貴……スゴい」
「マジかよ……」
元来一般の十代に比べて低めな声質な直貴だったが、本気で歌うと本当に大人の男性が歌っているかの様な、独特な<色気>のような物が発せられている……そして、ALOから楽器を始めたお陰で音感もある……つまり、彼は上手かったのである。
『時を止めた大地……凪いだ水面を……切り裂いてくcaution……波紋はもっと孤独を誘う翼に……』
『僕だけは見ていると……いつか君に伝えたくて……孤独に目を合わせずに……前へ進む背中を思って……』
「「「…………」」」
三人は黙って聞き入った……力強い逞しさの中にある、彼の優しげな雰囲気と哀愁漂う曲調と歌詞のギャップに圧倒された。
『今を生きていく……凛と光る眼差しには……孤独の影は消えない……誰もきっと追い付けないさ』
『いつも憧れてた……何も恐れない姿勢に……孤高のままあってなお……僕をいつも揺らしていてくれ……』
「えっ?」
その瞬間……幻覚だったのか……しかし確かに詩乃は見た、幼い子供の姿の彼を……その瞳は何かを見つめていたが、何を見ていたのかは分からない……しかし深い悲しみが見てとれた。
「……ふぅ……久方ぶりにガチで歌っちまった……」
「お、驚いた!スッゴイ上手だね!」
「すまん、まさかマジで男見せてくれるとは思ってなかった……」
「…………」
気がつけばその姿は消えていた……しかし、その姿は詩乃の心に刻まれた……歌の上手さよりも彼女にとってはそっちの方が本質的に大事に思えた。
「詩乃?どうした?」
ぼんやりとこちらを眺めている詩乃に、なんとなく心配になり直貴が近づく……っと不意に詩乃が彼の腕を掴み、引き倒し頭を胸に抱く……。
「ひぇっ!?シノのん!何て大胆な!」
「オオウッ!?」
それを見て飛び上がる二人、突然の詩乃の行動に驚愕している……そしてそれは直貴も同じであった……。
「……し、詩乃?何を……」
「大丈夫」
困惑する直貴を見ながら彼女は微笑み、その頭を優しく撫でる……。
「私が……貴方を守るから……だから、貴方は一人じゃない……今は頑張らなくても良いの……悲しまなくても良いの……」
「ーーーーッ!?」
直貴は詩乃の言葉の意味が分からなかった、しかし身体が拒絶して反射的に立ち上がってしまう……直貴の顔には明らかな動揺が……詩乃の顔には優しげな慈愛が……表情に出ていた。
「直貴?」
「あっ……えーっと私達外に出てようか、和人君!」
「はっ?何言ってウオッ!」
人の心の機敏が上手く察することが出来ない和人を引っ張って、察した明日奈は個室を出ていってしまった……残されたのは二人だけだった。
「……今……俺に何を……何を知って……」
「<知らない>……でも、感じた……」
「……そう、か……」
頭を抑え、力なく座る直貴……そこに普段の余裕ある姿は消えていた。
詩乃は黙って静かに寄りそう……彼が突然壊れない様にそっと。
「(俺は……何か忘れている……大事な何かを……それを詩乃が感じ取ったんだ……そして……こうしてくれていて……俺は……何を……)」
しかし、考えてもはっきりした事は浮かばない……ただ身体が彼女の言葉を拒絶したのは確かだった……。
瞳が青く輝きだす。
「(一人じゃない……頑張らなくても良い……悲しまなくても……!?)」
すると頭の中をよぎる映像……ベッド……暴れる何か……眺める自分……見たことのないものな筈だった……しかし似たような状況下で思い当たる事柄はあった……。
「兄、貴……?」
「?」
彼の言葉に詩乃は反応をするが、分からなかった……だが直貴には少し分かった……自分の兄に対する現在の記憶と、今の映像にははっきりした矛盾があると言う事だ……。
「……ありがとう……詩乃」
「え?」
「俺は……やっと……前に一歩すすんだ……そんな気がする……」
直貴はそう言って微笑む、それは弱々しいものだが……心の底からの物であった……詩乃は再び彼を抱き締める。
「良かった……本当に……」
「……ん……」
直貴もまたギュッと詩乃を抱き返したあと、離れ、立ち上がる。
「もう良いの?」
「いつまでも甘えてられないって、ただでさえあの二人……いや、明日奈に気を使わせちまったしな」
そう言って笑う直貴、既にそれはいつもの直貴その物であった……。
「そっか、私にとっては……少し、残念……」
「……ああ、うん……いや、別に嫌だったわけじゃないからな?」
「分かってるわよ、大丈夫」
クスクスと笑う詩乃を横目に、直貴は扉に手をかける。
「……ま、いいか……喉渇いちまったから、飲み物でも取りに行くわ」
「あっ、じゃあ私も」
二人が外に出た時、そこにいたのは。
「「えっ!?」」
「「あ」」
「おろ?」
「あ」
和人と明日奈がディフェンスのポーズで扉前にいて、その向こうには直葉と木綿季の二人がいた。
「……何やってんだよ、恥ずかしい」
「だ、だってお前らのいる部屋に二人が入ろうとしたから!」
「……ふ~ん……なるほどね、お兄ちゃん、明日奈さん……そう言う事なのね」
今なおディフェンスを続ける二人と、直貴と詩乃が一緒にいるのを見て、少し不機嫌になる直葉。
「ち、違うのよ!これにはわけがあるの!」
「……てかもう良いだろ二人とも、寧ろ邪魔だって」
「頑張って塞いでいた俺らの努力を返せ……」
直貴はあっさり二人を剥がすと、前に出てくる。
それに対して直葉は彼をジッと見つめ、木綿季はおろおろと二人を交互に見ており、詩乃は黙ってその場を見つめていた。
「……あんた、その娘とデートしてたんでしょ?」
「えっ!?」
突然の直葉の発言に木綿季が驚く。
直貴は頷く。
「ああ、俺は詩乃とデートしていた……それは事実だな」
「……はっきり言うわね」
「ど、どういうこと?突然、え?」
混乱する木綿季が直貴を見るが、彼は発言を翻す事はない……黙って直葉を見ている。
「全く……あたしら傷心中に嫌なニュースね……んでさ……その……その詩乃って娘に決めたの?もう付き合ったりしちゃってるわけ?」
直葉も実は動揺と不安、恐怖で一杯一杯だった……言葉尻がかなり震えていたりしているのが何よりの証拠であろう。
「いや、詩乃とはまだ付き合ってないが?」
「ッ!そっか!安心したわ……もう……!」
「あ……あぁ……良かったよぉ……!」
一気に安心する二人……そこへ直貴から不意打ちの一撃がはいった。
「そうだ、これから他のやつにも伝えようと思うんだが……俺決めたことがあるんだ……」
「「えっ?」」
「ん?」
「……卒業式……その日に答えを出して、俺が一人に告白する」
「「「!?」」」
この言葉には黙っていた詩乃も反応を示す……具体的に決戦日が決まってしまったのだから……。
「それまでは待っていて欲しい……すまないな」
「い、いや……別にアンタが決めたことだから……」
「うん……お兄ちゃんが答えを出してくれるってだけで、ボク嬉しいからさ!うん!」
「……ふむ」
三人は頷くが、心中では今後どう動くべきかで頭がいっぱいだった。
「さて、二人がここにいるってことは他のメンバーもいるって事か?」
「ん?え、ああ……いるわよ、ただ今はいかない方が良い気がする……うん」
「うん……<完全に出来上がっちゃってたから>……」
直貴の言葉に同室メンバーの二人が返事をするが、かなり苦笑していた。
「誰だ、酒を投下した下郎は」
「アリシャさん」
「分かった、止めるから場所教えてくれ」
「案内するよ、お兄ちゃんこっち!」
木綿季が先行し、部屋前につく……直貴は既に嫌な予感しか感じていなかった……明らかに扉から酒の臭いが漂っていたからだ。
しかし、男には引けない時がある……意を決して扉を開く直貴。
『あっ、次の生け贄だ……』
口を揃えて、野獣の眼光を瞳に宿す(冬に至っては本能の牙を発動している)美少女達がいた……客観的には天国だが、実情は地獄の宴だった。
辺りには倒れてうなされている店員達がいたからだ……。
『さぁ、仲間になぁれ~!』
「イ"エ"ア"ァァァァァァァァァァ!」
この後必死に全員寝かしつけて、店員に謝る直貴の姿を、木綿季は尊敬の眼差しで見つめていた。
「……アンタが直貴にとってどんな存在かは知らないわ……」
「…………」
「でも、絶対に負けない……」
一方、残った二人は対峙していた……現状双璧となっている二名。
だが……。
「残念だけどそれは叶わないかな……今の私は、阿修羅すら凌駕する存在だからね……」
分はどちらにあるか明白に思えた。
さらに一方……住宅地から離れた廃墟に恭二はやって来た。
真夜に本当に適当に放置されていた彼は、憤りを覚えながら、ここまでやって来た……ある人物に会うために。
「兄さん!いるんだろ!?早くGGOにログインして<デスガン>になろう!」
彼は叫ぶが、返事がない……ただ声が無駄に辺りに響いただけだ……。
「おかしいな……大体この時間は……ッ!?」
瞬間恭二は身体の動きが止まる……まるで自らの身体が何かに貫かれ、縛り上げられているかのような錯覚に陥る。
人は本能的に<死>を恐れるものだ……放課後に自らを脅した少女の殺気はただならぬものだった。
だが……今それよりも遥かに強い……<純然たる殺意が後ろに立っているのだ>。
「オレは……言ったよなァ……お前の声はァ……聞くに……堪えんと……ナ……?」
「に、兄さんッやめッ!」
恭二の兄、<新川昌一>……彼は弟の頭をわし掴むと、床に叩きつける……かなり鈍い音を立てて倒れ伏す恭二……間違いなく今日は彼にとって厄日だろう。
「ああァ……イライラ……する……」
転がっている恭二の横にしゃがみ、忌々しそうに眺めながら独特の切り方で呟く昌一。
「おい……退屈だ……何か……無いのか?……恭二……」
「……何かって……なんだい……?」
痛みと恐怖で震える恭二を、黙って眺める彼の瞳は光が宿っておらず……まるで死んでいるかのようだ。
「お前は……俺に……<デスガン>をやれ……と言うが……あれには飽いた……」
「えっ……でも元は兄さんが……」
そう、実際<デスガン>を考案したのは昌一……恭二をその道に誘ったのも昌一……しかし彼はもう大分やる気が削がれていた。
「思ったより……つまらない……やはり……弱い奴を……一方的に……殺しても……つまら……ないな……」
「共感は出来ないなぁ……僕は……」
自分より下のものを組伏せ、我が物にしたい……それが恭二。
対等かそれ以上の相手を殺し、満足したい……それが昌一。
嗜好の違い……愉悦の度合い、ランクが二人では根本的に違った……だから絶望的なまでに噛み合わない……さりとて二人は兄弟なのだ……。
「お前は……嗜好が……親父と……同じだ……身の毛が……よだつ」
「相変わらず嫌いなんだね……僕も嫌いだけどさ」
ゆっくりと立ち上がり、唇を切ったのか垂れる血を拭う恭二……彼は笑顔を浮かべ語る。
「確かに僕らは似てないさ……でも殺したい相手は共通らしいよ……」
「ほう……どういう……意味……ダ?」
弟の言葉に興味を示す兄……日常の一コマとは思えない会話だ。
恭二は告げる。
「僕が殺したいのは稲生直貴さ!兄さん!あの<イノセンス>のプレイヤーだよ!」
「……ッ……あいつはALOで腑抜けた……もう興味など……」
一瞬ガバッと立ち上がった物の……彼はプイッと目をそらす。
しかし立て続けに来た情報は彼には朗報も朗報だった。
「違うんだよ!兄さん!稲生直貴は今GGOにいる!!しかもALOそっちのけでねェ!!」
「……ッ!!?」
目を見開く昌一……驚愕に染まる彼の表情はゆっくりゆっくり形を変えて……満面の笑みに変わった……。
「クッ……クックックックッ……ハッハッハッハッハッハッハッ!!!クアァッハッハッハッハッハァー!!!」
みるみるうちに瞳に光が戻っていく……否、輝きを放ちだす……<狂暴な朱い光>を……狂気は加速する。
「おい……恭二ィ!……殺すぞォ!……あの男をなッ!!……」
「ふふッ……やっと面白くなってきたかな……」
狂気の<死銃>は獲物を定めた……<生>か<死>か……今、火蓋は切られた……ッ!!!
直貴の声は誰に近いか分からず曲に悩み……声優のボイスサンプル聴いて決めました。
彼ならSAOから最後までの直貴に合うお声が出して頂けそう……いやぁ、マジかっけぇす……おまけに歌詞が意外とマッチしている……はず!
ヒロイン戦争に<死銃>、さらに自らの過去と本能の牙と……胃に穴があきそうな直貴の人生に幸あれ!(ボンバヘッ