ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts- 作:新世界のおっさん
勝つのはどちらか…。
昨日はあのあとキリトの話を聞きつつ(半ばカウンセリング)、予約していた二人部屋でボスについて軽い会議をしてから就寝。
何でもキリトはリアルでは妹のような従妹がおり、よそよそしくあまり仲が良くなれなかった事を後悔しているそうだ。
ならば何としても生き残らなきゃなと言うと、
「ああ、もちろんだ」
と吹っ切れたように清々しい顔でしっかりと答えた。
キリトも少しは成長できたかな?と少し安心した。
ただ、さっきあったサチ、トト、アスナ(先程本人に教えてもらった)の女性三人組が何か様子がおかしかった上にとても仲が良さそうだった。昨日何かあったのか?
とにもかくにもいよいよフロアボス<イルファング・ザ・コボルド・ロード>との戦いだ、気を引き締めよう。
βでは取り巻きのモンスター<ルインコボルド・センチネル>は数は四体でロードのHPがゲージが4つあるうちの1つ分減ると再度投下される。それらを遅刻組2つとキリト組が相手して残りはロードに集中するそうだ。
そしてロードは最初は片手斧と盾を装備しているが、残りゲージが1になると曲刀に変えて攻撃特化になるらしい。
果たしてβと同じかどうか…。
「しかし、パーティーにβテスターのいる安心感はやっぱりすげえな」
ケイタが珍しく軽い口調で言う。他の皆も結構軽い調子だ…やはり事前情報が彼らを油断させている。
「もう少し気を引き締めとけよ、今までの敵で最強なんだからな?」
「了~解」
不安だ…。
ボス部屋の前に着いた、するとディアベルが激励する
「皆、必ず生き残って勝つぞ!」
もちろんそのつもりだ。
扉が開かれ、ボス<イルファング・ザ・コボルド・ロード>のお出ましだ。取り巻きも現れ、双方指揮と共に突撃する。
「俺は取り巻きだ!」
「ボスだ!ボスにかかれ!」
怒号に紛れながら、俺は取り巻きの攻撃を避けてソードスキル<アーマーピアス>で的確にダメージを与える。
サチは<足払い>で倒れた奴に止めを刺す。
互いにAGIを優先してるので、キレのある一撃で敵をしずめる
確実にボスのHPが減っていき、取り巻きがまた現れ、それを俺らが倒すを繰り返す。余裕なので他のチームをみるとトトが両手斧で敵を叩き切っていた。凄いSTRだ。
キリトはもちろんだが、アスナもかなりの手練れだ。剣先が見えない速さだ。
そして、いよいよ1ゲージ…俺の杞憂だったかと思った瞬間。
「全隊さがれ、僕がやる!」
「なっ、ディアベル!」
何血迷ってるんだ!まだ相手は息があるんだぞ、一人で突っ込む奴があるかよ!
俺はディアベルをダッシュで追うがディアベルは止まらない、アイツ状況がのめてないのか!?
そしてディアベルの背中に迫った時に映ったのは
<曲刀>ではなく<野太刀>を腰だめしている犬顔の王だった。
不味い、ディアベルも気づいたかもしれないが勢いが止まらない…このままでは二人共死ぬ?
遠くからキリトの叫びが聞こえた気がしたが、今はそれを気にする余裕はなかった…。
嫌だ…死にたくない…。
(…生きてください、生きて生きて生き抜いてください…そしていつか面と向かって会いましょう)
俺は…まだ…。
(またね…)
…まだァッ!
(パパ…)
死ねるかッ!!!
ドクンッ…!
刹那…俺の身体から熱が引き一気に思考がクリアになり、そして加速する。今生きるための最善を導き出すため。
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「やめろぉっ!!戻ってくれ!イノォ!!」
キリトさんが叫ぶ、突然走り出したディアベルさんを止めるために後を追った<直貴君>にだ。
私には一瞬分からなかったがすぐ気づいた、ボスの武器が情報とちがうのだ!曲刀とはリーチも攻撃力も桁が違うその得物、今のダッシュの体勢の二人では普通無理な状況だった。
死ぬ?彼が?執拗な苛めから私を救ってくれた彼、強くなりたいと願うようになったきっかけをくれた彼が目の前で死ぬ?
声を出さなきゃと思ったけれど出なかった…今の状況自分は何も出来ない…無力なんだ…結局…私は…何のために…。
誰もが彼らの死を覚悟をした……が、
そんなことはなかった。
彼はディアベルさんのベルトを掴み後方に投げ飛ばし、そのままの勢いで体術スキル<旋風脚>を発動、体勢を身体全体を捻らせ軌道修正、紙一重で刀スキル<浮舟>をかわしたのだ。
さらに、いつの間に示し合わせたかのようにキリトさんが<バーチカル>でボスを追撃、地に落としたのだ。
皆異常な事態に固まっていた。
が、異常は続く
「お前ら!ぼさっとするな!体勢を立て直せ!風林火山は時間稼ぎを頼む、囲むなよ!他部隊は予定通りポーションで回復後出来れば参戦しろ!」
全員が彼の指示に圧倒され言葉通りに動く。
私はタンクの役割を果たすため前にでる、誰もが異常性に気づきながらも動いたのかはまだはっきり理解できていなかった。
その後すぐ彼が駆け付け入れ代わる時に見た顔は異様に冷たい感じがした。
無言で素早く攻撃を加え紙一重でかわす、彼はそれをさも普通なようにこなしていた、キリトさん組が参戦後はスイッチで一気に削る。心なしかボスが恐怖しているように見えた。
その一瞬の怯みに、キリトさんと彼が同時に止めを決めた。
凄い爆裂音と共に牙の王は光となって消えた。
これが彼の力、生きるため、生き抜くための…。