ソードアート・オンライン 本能の牙-instincts- 作:新世界のおっさん
完全イノセンス回、それが今後増えるかもしれません。
実はトトはイノセンスで表現しきれないところを補完する役割を持つ第二主人公なので、基本メインはイノセンスです。
まあ、色々設定を盛り込んでしっかりキャラは立たせているつもりですが。
第一層攻略から三週間がたった。
すでに第三層まで攻略が済み多くのプレイヤーは安全な町に転移して、景観を楽しんだり、出店をしたり、情報収集したりと賑やかになってくる。
「わ~、ここが第四層……綺麗だなぁ……」
美しい町並みに潮の香り……そう、第四層は海のあるフィールドなのだ。
やって来たばかりの新天地に心踊らせる少女<シリカ>は、歩きながらキョロキョロと町並みを見渡している。可愛らしいツインテールが揺れ、ピコピコと音が聞こえきそうだ。
辺りには釣りをする人や、SAOの通貨<コル>を支払えば乗せて貰える小舟が通っている。さながらヴェネチアを彷彿とさせる。
シリカが景色を楽しんでいると声をかけられる。
「やあ、そこの君は一人かい?」
どうやらプレイヤーのようだ、にこやかな笑顔を浮かべている。
「実はクエストを受けたいんだが、人数指定のクエストでね。
是非力を貸してもらいたいんだ」
シリカは第四層には始めて来たが、三層にも人数指定クエストは存在していた。故に特に疑問をもたなかった
「はい、良いですよ。外も気になってましたし」
「本当かい?助かるよ」
男は嬉しそうに手を叩いた。
男はジルと名乗り、シリカをクエスト指定場所である<星降りの丘>まで案内していた。
話によると既に他のプレイヤーは現地にいるらしい。ジルは報酬の魅力や、クエストの安全性等を話し それを聞いていたシリカはすっかりその気になっていた。
「星のペンダント……ロマンチックなアイテムですね」
「だろう?君みたいな可愛らしい女性なら気に入ると思ってね」
「そんな、可愛らしいなんて……」
端から見れば、付き合っている二人が夜道をロマンチックな場所でデートしに行くような風に見える今の状況にシリカは頬を染める。
しばらくし目的地が見えてきた、小高い丘に一本の木が生えていた。
「あそこだよ」
「うわぁ……♪」
シリカは丘を登り辺りを見渡す、月に照らされた周りの草の露に映った光は、まるで星が降ってきたかのようだった。
「素晴らしいです!私!この世界に閉じ込められて……嫌な事ばかりありました……けど、今凄く感動してます!」
「そうか、それは連れてきた甲斐があった」
感動し、興奮しているシリカ。
ジルは変わらず笑顔のまま。
ふと、そういえばとシリカが気付く。
「……あの~、他のプレイヤーの皆さんは?」
「……ああ、他のプレイヤー……他のプレイヤーね」
突然様子が変わったジルに、シリカが困惑しているとジルが口を開く。
「いないよ、そんなもん」
「えっ」
「初めからそんなもの無かったんだよ」
シリカが呆気にとられていると、いきなり何かが頬を掠める。
途端に力が抜け身体が倒れる。
ステータスを見てシリカは驚愕する、そこにははっきり<麻痺毒>の状態異常があったのだ。
「な……んで……?」
「いやぁ、良かったよぉ。あっさり騙されてくれてさぁ」
ジルの顔は笑顔だった、ただし狂喜に満ちたと付け加えられるであろうが。
彼のカーソルはプレイヤーを表す緑ではなくオレンジに変わっていた。これは他のプレイヤーに危害を加えダメージを与えた証、俗に言うプレイヤーキラー<PK>の証だ。
「君が悪いんだ……そんな天使みたいな笑顔で僕の前に現れるから……」
「……えっ?」
「君みたいな娘を見ると、ついヤりたくなっちゃうんだよねぇ!!」
「!?」
身体に片手直剣が突き立てられる。
痛みはないが、突き刺さり抉られる感触だけ伝わる。
シリカは言葉にならない悲鳴が出るばかり……。
「良いね、その顔ぉ!ゾクゾクする!」
「い……やぁ……」
「ふぅ……ところでさ……倫理解除コード設定てのがあるんだけどさぁ……」
「へ……」
訳がわからないという顔をするシリカ。
ジルは恍惚とした表情で続ける。
「知り合いから聞いたんだよ、それすれば<そう言うこと>も出来るんだってさぁ……へへへ」
「!! そんな、嫌、嫌だぁっ!」
「無駄だよ?<麻痺毒>だと動けない、それは確実なんだから」
もがこうにも身体が全く動かず、ジルが近づいてくる。
「確かこうだったっけなぁ、うん、そうそうこれこれ」
「……けて……」
身体が勝手に動かされ、解除される倫理コード。
シリカは絶望の中、ただ本能に従い声を張り上げる。
「それじゃ、いただきまぁ~すぅ!」
「助けてえええええええぇぇ!!!」
と、その時ジルの動きが止まる。
シリカは疑問に思い、ジルの見ている正面に顔を上げると
そこには赤黒いローブを纏い、顔が見えない謎の<怪人>が立っていた。
「誰だ……お前……?」
「ジル……いや、正式アバター名はジルドレか……」
「だから誰だって聞いてるだろ!?」
ジル改めてジルドレが、動揺している。目の前の<真紅の怪人>に。
そしてシリカは気がついた。顔が動かせると言う事は、解けている、麻痺毒が。
刹那、シリカは駆ける。目の前の真紅の怪人の元へ。
「あっ!!」
ジルドレは追いかけようとしたが動けない、怪人が彼女を抱き止め、後ろに隠したから。
怪人からシリカに声がかかる、低いしかしとても暖かく心に響く声で。
「もう大丈夫だ」
「ふぁ……」
怪人はシリカの頭を優しく撫でる。
シリカは先程に比べるとずっと落ち着いていた。
怪人がジルドレに向き直る。
「裁くものがいないのを良いことに複数人プレイヤーを殺害、強姦したんだそうだな?聞き及んでいる」
「そ、それがどうした?僕はお前なんて怖くないぞ!」
「……何を焦っている、顔が青いぞ……ジルドレ」
「黙れ!その娘はシリカちゃんは僕のものだ!邪魔をするなぁ!」
我無捨羅(がむしゃら)に突っ込んでくるジルドレ、その剣に精細さはない。
怪人はそれを事も無げに受け止める。
シリカが怪人の得物の刃先を確認する、あれは刀?
「……この程度か、殺人鬼が聞いて呆れる」
「このぉ!」
ジルドレはソードスキル<ファストエッジ>で二連撃を狙うが、どちらも紙一重で避けられる。
「ば、化け物がぁ!」
「……ふっ!」
今度は怪人からの攻撃。通常斬撃でジルドレの剣は<武器破壊>された。
シリカも当然ジルドレも驚愕する。
「「なっ!?」」
「……終わりだな」
狼狽え腰を抜かすジルドレを真紅の怪人は見据える。
「わっ、分かった!僕の負けだ!だから頼む!見逃してくれ!」
「……何?」
今さら何を言うのか、シリカは怒りに震える。
あんな事をして、しかも沢山の人を殺しておいて見逃すなんてあり得ない。
「何なら、僕がPKして得たコルやアイテムあげていいよ!どうだい?悪くないだろう!?」
「……」
黙りこむ怪人に不安になるシリカ、しかしそれは杞憂だとわかる。
それは向こうから歩いてくる集団が<軍>だと分かったからだ。
第二層にて結成されたギルド<アインクラッド解放軍>、彼らは
ディアベルが纏めあげた、現在最大規模のギルドだ。
彼らは正義の信念のもと、始まりの町にある監獄エリアにて犯罪者を収容し、管理している。
しかし、攻略のために力を割いているために、取り締まりは低レベルのプレイヤーに留まる。これだと、凶悪な犯罪に対抗出来ない。そのため他の攻略組に頼ることがほとんどな現状である。
中でも、ディアベルからの信頼が厚く、自由に動ける人物。
彼、<真紅の怪人>は最も犯罪者を多く取り締まっているのである。
「無理だな……」
「……クソォッ!!」
「……毎度ながら協力感謝する」
ジルドレが引き立てられる中、隊長らしき人物が挨拶をする。
怪人は気にするなという体で手を振る。再び隊長が礼を言うと彼は去っていった。
「……」
「……どうした?」
「貴方は……一体?」
シリカは気になった、彼の素顔が。冷徹に犯罪者を取り締まっていたが、自分にあの時かけてくれた感じとても暖かく優しかったから。
「……俺は」
怪人がフードをとると、顔がはっきり分かる様になる。
シリカが想像していたのは歴戦の猛者のような中年男性かと思っていたが、出てきたのは自分より少し歳上くらいの青年だったのだ。
「イノセンス……ビーターだ」
これが後に師弟となる二人の初コンタクトであった。
シリカちゃん参戦、そしていきなりの薄い本みたいな始まり方ですいません。
でもシリカちゃんってそう言うの似合うのは何故だろう……思いません?(オイッ
しばらくはシリカちゃんがヒロイン、しかしこのアインクラッドにおいてメインヒロインはサチです。