【カオ転三次】現地民とのぐだぐだ小話   作:ややや

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戦闘シーン難しい…
書き直すかもしれません


格闘家サーガ

「巫山戯るな!!」

寂れた総合格闘技ジムで、小鳥遊は叫んだ。深夜の人気の無い空間での咆哮はトレーナーでもあるジム会長の琴吹の肌をビリビリと揺らした。

「引退!?挑戦権を取れたんだぞ!?怪我もしてねぇ、体重も、体調も!!」

小鳥遊は不満を吐き出す代わりに全力で机を殴った。金属製のぐにゃりとひしゃげる。誇示するように掲げた拳には傷一つなかった。絶好調だ、と小鳥遊は小さく呟く。その光景に琴吹は静かに涙を流した。

「爺さんの夢じゃなかったのかよ…!チャンピオンに金でも積まれたのか…?八百長なら言ってくれ!…ぜったいに…一発でKOしてやるから…」

「だからこそ、なのだ…」

琴吹は小鳥遊を見つめた。寂れた3流ジムに現れた才能ある若者。設立当初に妻に掲げたベルトへの誓い。老体となり、妻がいる墓前で謝れると思った矢先に来た訪問者と通知。夢が叶わないと理解した老人は若者に謝罪するしかなかった。

「…前にクビに狐を巻いた婦人がおっただろう?」

「あのコンコンうるさかった狐か?美人だったが変な奴だったけど…」

()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「…。……は?」

「…覚醒と言うらしい。所謂漫画の【気】のような、超人になる素質がお前に備わったらしい。そして、目覚めたら勝負にならないとも言われた。」

小鳥遊は呆然と手を見つめた。手には傷一つない。机を持ち上げ、真ん中に手をかけてゆっくりと手を広げる。金属が捻じ曲がり、机が真っ二つとなった。残骸は彼が全力で人を殴ればどうなるか、余りにも雄弁に語っていた。崩れ落ちる小鳥遊の肩を、琴吹は優しく摩った。

「老いぼれの夢を叶えてくれてありがとう。もう良いんだ。」

「どづでねぇ…」

「儂のトレーニングで超人になったんだぞ?ベルトより余程輝かしいもんさ。超人の世界は厳しいらしい。老い先短い身だが、お前を支えてやるさ。」

小鳥遊と琴吹は笑い、そして泣いた。

 

「覚醒者向けのスポーツ?ありますぜ。」

数日後。

小鳥遊と琴吹は覚醒者の講習を受けた後、ガイア連合からの送迎車にて運転手と雑談にしていた。

「覚醒しても所詮人間ですし。悪魔退治で運動は不健康でしょ?大体は覚醒者同士が集まってって感じっす。スポンサー付きの大会とかもやってますぜ。」

「覚醒した奴は魔法使えるんだろ?魔球とか投げたり?」

「人気ならサッカーと格闘技っすね。サッカーは火の玉シュートや分身やテレポートとか派手な技の応酬で正にファンタジー!なシロモンっす。格闘技は地下闘技場ってとこで魔法禁止して殴り合いな感じっす。賭け事も出来やすが完全無差別なんで素人には敷居が高いっすね。」

「無差別?」

琴吹は訝しんだ。琴吹の脳内には天下一武道会が思い浮かんだ。オカルトを学んではいるものの、彼の知る単語はオカルト業界では異なることも少なくなかった。

「無差別っす。…あー、体重じゃ無いっすね。」

運転手は彼らがTVで記者会見したのを思い出した。久しく見ないK1と闘技場の試合を脳内再生し、こっちもファンタジーだなと思った。だいぶダークな設定だが。

「文字通りの()()()っす。性別、人種、種族、年齢。全部ごた混ぜで戦りあう形式ですぜ。運営が強さをマッチングして勝負!って感じで。スカウトとかもありますぜ。」

「無差別…」

小鳥遊は自身の手を見る。覚醒したての己が鉄板を引きちぎる精強を発揮できた。覚醒者はどの様に殴るのか。受けるのか。避けるのか。何一つ分からないことに小鳥遊はむず痒さを感じる。運転手はニヤリと笑い、一つ提案した。

「今なら闘技場やってますぜ。どうせなら観戦します?」

 

「思ったより興行なんだな。」

運転手おすすめのラム肉のケバブを食べながら小鳥遊は感想を述べた。都合3試合を観戦したが、こちら…オカルト業界的には表の格闘技と技術的には大差は無い。致命的に異なるのは部位破壊が戦術として組み立てられていることだろうか。手足の骨折程度では戦闘不能となる選手がいないため、流血後のダーティな手段が豊富だ。先程の女性選手などはサイボーグの身体を活用して背中合わせで関節を極める妙技を披露していた。礼をする勝者に向かって闘技場へ投げられるおひねりは絵になる光景であった。

「そりゃあスポーツですし。派手な技は出してもルールは厳守っすよ。さっきの試合もマジモンの死合なら毒ガス・拳銃・魔法の遠距離戦がメインになるっす。ここはあくまでも技量を高める場所っす。」

「まあ化物退治と拳闘は扱いが違うわな。」

「今日は終わったみたいっすけど、ここのプロレスは凄え面白いっすよ。作者に許可とって漫画のギミック超人をマジでやってますぜ。たまに加減間違えて塩試合になりますけど…お、今日のメインイベントでっせ。」

周りが暗くなり、闘技場の解説室(壁の一部)が照らされる。魔道具で作られた立体映像(ソリッドビジョン)が司会の全身像を映し出す。司会は大仰にポーズを取り、スモークに隠れた状態で新たに照らされた2つの光源を指し示してマイクを握った。

『本日のラストバトルの始まりだ!待ちきれない野次に応えて早速登場して貰いましょう!』

闘技場の半分が照らされる。先程までの光源は赤色に変わり、1人の男がスモークを吹き飛ばす。鍛えられた身体に、ひと回り大きく肥大した脚を持つ色黒の男だ。その姿に小鳥遊は見覚えがあった。怪我で数年前に引退を表明した無敗の王者だ。

『この度絶好調の3連勝!脚に宿りし人面瘡を奥義開発で使い潰した偏執狂!人智を超えた脚技に付けられし名は瘡蓋剥がし!!果たして奥義雷鳴脚は敵の勝利を剥ぎ取れるのか!!』

『赤コーナー、マッキリ・ホワチャイ〜!!』

立ち振る舞いには記者会見で酒を飲みながら無くなった片足を振り回す姿で世間の憐憫を受けていた面影は全く無い。今の彼は両脚を見せつけて登場していた。小鳥遊は彼が現役当時よりはるかに強くなっていることに気づいた。

『対する此方は化物だ!魔法はダメでもその剛力、再生で十分だ!太陽を克服せし吸血鬼に雷など効くものか!!華奢な身体はパワーMAX!!』

『青コーナー、柊・シオン〜!!』

「娘っ子じゃないか。儂の孫より若いんじゃないか?」

「吸血鬼なんだろ?婆さんじゃないか?」

「マジモンの未成年っす。近接訓練の一環として通ってるみたいっす。ガイア連合の幹部がスポンサーなんで将来的な幹部候補じゃないっすかね。」

ゴングが鳴り、試合が始まる。試合はパターンを繰り返していた。はじめにシオンがフェイントを織り交ぜマッキリへ距離を詰める。マッキリはフェイントを見破り雷鳴脚でシオンを吹き飛ばす。シオンが別パターンで距離を詰める。今のところマッキリが一方的に打撃を与えているが、シオンのスピードが落ちる気配は無い。タフネスに任せた接近はマッキリが冷や汗を流すのに十分だった。

「儂の目では迎撃してるマッキリしか見えんが…必要以上に接触を警戒しておらんか?」

「シオン選手は投げが強いっす。マッキリ選手が捕まったらそのまま()()()()()()になりやす。接近は不利っす。」

「シオンの方も頭部をガチガチに固めてるな。急所だけ守って押し切るつもりだ。」

そのまま数十分打撃音が流れ続ける。マッキリの息が切れ始めるころに、シオンの右腕が蹴りに耐えきれずに折れ曲がった。シオンは顔色ひとつ変えずに正面から突撃し、折れ曲がる右腕をマッキリの頭上に振りかざす。マッキリは右腕を切断せんとハイキックで迎撃したが、右腕は霧となって空を切った。シオンが持つ吸血鬼の特性を利用した部分的な霧化。マッキリは雷鳴脚をシオンの胴体へ叩きつけるが、シオンの勢いは止まらない。全力のアッパーがマッキリの顎へと叩き込まれる。マッキリは数十メートルはある照明に押し込まれた。

『〜ッマッタァ!アッパーカットォ!!鬼の剛力が瘡蓋を天へ剥がしたァ!勝負あったか!?』

『いや!腕を噛んで威力を軽減した!まだマッキリは諦めてないぞ!!』

二の腕から派手に肉片と血が舞い上がる。砕けた歯を撒き散らすかの様にマッキリは雄叫びを挙げ、己に馴染んだ型を取る。マッキリにとって奥義とはどこでも出せる武器であるべきものだ。空中?型は出来る。上がらない腕?蹴れば上がるだろ?相手?其処にあるじゃないか。真っ赤な液体が。

マッキリの奥義が闘技場に響き渡る。音すら超えた神速の蹴りを受けた血液(犠牲者)は辛うじて防いだシオンの両手をぐしゃぐしゃにする。一拍して、雷鳴の代わりに大歓声が沸いた。

『雷鳴脚が赤い雷を落とした!受けたシオン選手、再生が鈍い!!』

『血にMAGをぶち込んで阻害している!だが吸収すれば回復は桁違いに上がる!この拳撃でケリをつける気だ!!』

マッキリは防御など考えずに奥義の形で落下する。シオンは両手を地面に叩きつけて宙を駆ける。回復を捨て、全力を叩き込む為にシオンは叫ぶ。マッキリは木石の如く無言で落ち続ける。マッキリは雷になった。シオンは火へと転じた。歓声が激突の音を塗り潰した。マッキリは片膝立ちながらも立ち上がり、シオンはうつ伏せで倒れたままだった。マッキリは爽やかな笑顔で片手を掲げ、そのまま倒れ込んだ。

『決着、決着!決着ゥ〜!!!勝者マッキリ!!マッキリ4連勝!札束(おひねり)とシオン選手の掛札(紙束)で紙吹雪!!両者に拍手を!』

『マッキリの膝が見事に顎に決まりましたね。シオン選手は残念ながら若さが出た結果です。非常に良い勝負でした。ありがとう!」

 

「元気が出て良かったわい。」

帰宅後。

彼の好意により琴吹の家に泊まることになった小鳥遊は琴吹からビール缶を渡された。軽く感謝を伝え、2本分のプルタブを開ける。

「…裏の仕事って聞いて身構えたんだ。実情は人材不足に陥ってる猟師みたいだったけど。」

「儂にも仕事があるくらいだしな。この歳になって教職に就くとは思わんかった。」

「…人、殺すことになるのかな。」

「…多分な。儂の感想として、ガイア連合は傭兵軍じゃ。治安維持の為に悪魔退治をしてるのであって、護国のために治安維持してるわけじゃ無い。戦後にもおったわ。人を傷付けるに理由を探していた破綻者がのう。それが内心嫌々顔役やっておるのだ。戦争は少なからず起きるだろうよ。」

「戦争!?というか嫌々やってんの!?なんで!?」

「さてな。あくまでも儂の勘じゃ。従軍中に会った外様の義勇軍があんな空気感じゃった。」

「そうか…そうかぁ。」

小鳥遊は暗い顔でぐびぐびとビールを飲む。言い過ぎたかと琴吹は冷や汗をかいたが、いつもと様子が違う。ビールを飲み切ったのち、小鳥遊は立ち上がり宣誓した。

「決めた!俺も闘技場で成り上がる!そんで爺さんのジムをでっかくする!!なんなら覚醒者ジムとか立ち上げでやる!爺さん、期待してろよ!」

ああ、いつもの小鳥遊だ。琴吹はニヤリと笑いビールを投げ渡した。

「いつでも期待してるわ、馬鹿者。」

 

 




小鳥遊
22歳。ロバがトレーニングで覚醒した一般人。前向きが取り柄。
琴吹
60越えの老人。トレーニングでロバを覚醒させるという割と凄まじいことを成し遂げた。ガイア小学校に勤務予定。
運転手
琴吹の護衛役。付け焼き刃で覚えたため口調がぐちゃぐちゃになっている。マッキリ配当でホクホク。
マッキリ・ホワチャイ
レベル8。部族で代々研鑽した武術を高めることが趣味。実は人面瘡は死んでないのだが、彼にとって自分=両脚の為修行で毎日潰されてレベリングとなっている。
柊シオン
レベル18。晴れて俺たちの弟子入りし対人技術を学びに参戦した。雷鳴脚カッケーと思っている。


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