そして本編によりプラチナカード持ちが政治案件であることが発覚。
そのため十勝地方は慈凪というヘルメットを被ったヒャッハーな三男坊が正当後継者になります。
『メシア教は死を救済として扱っていると考えた。』
メシア教徒であるセリューはいわゆる過激派と呼ばれる派閥の一員である。実際、少し前までは外国で聖戦に務めたバリバリの前線要員であった。
『死は自我の喪失を示す。秩序を重んじ、すべては法の下に管理されることを明言するメシア教にとって、管理された存在は自我に存在価値を持たない。決められたことを必要なだけ熟す機械の運用が彼らの理想となるのだ。そこに存在するのは責任を捨てた肉人形であり、生きる理由のみを抱えた彼らは只々ストレスを受けない人
信仰を第一とする彼女にとって殉教は恐れることではない。当然のように彼女は数ヶ月前までは中国で信仰に殉じていた。それはもうブイブイ言わせていた。しかし、中国が雇い入れた英雄により話は変わった。宙を飛び回りありとあらゆるものを爆破する女『
『彼らの教義はつまるところ究極の責任転嫁が本質であり、それ故に他害嗜好の強い人間が篤く信仰する。自らの浅ましさ、悍ましさを擦りつけて自己を肯定する。それを踏まえて救世主を考える。彼らにとって救世主とは何か。導くもの、責任感そのものだ。つまり、救世主とはメシア教徒という家畜全ての飼い主であり、それだけが生存を認められているのだ。』
とはいえ、一応は穏健派もいる十勝に対して過激派ができることはそうそうない。身の軽さ、国外への伝手、そしてレベルの高さ。セリュー達が人材調達業を始めたのも当然だった。1回、2回とこなし続けて3回目、輸送船が来るまでの間にそれなりな人材を揃えることに成功した。
『当然、この法則は天使にも適用される。天使が人間を主食とするのは悪魔としての生態故であり、そこに悪意は存在しない。そもそも棲み分けはされていたのだ。天使が地上に来るのはあくまで布教のためで…』
だらだらと蘊蓄を垂れ流しているのはセリュー達が捕らえたペンギンである。マッグロウと名乗ったこの鳥は精神的にまいっているのか、あるいは気にしていないのか、檻の中でひたすらに無差別に念話を垂れ流している。セリューにとっては戯言に過ぎない音楽だが、これまでに3人の交代を挟む程に負の感情を与えていた。
「喧しいよ鳥公。囀るなら聖歌でも流しな。信仰亡き口でもまだ聞くに耐える音になる。」
セリューは苛立ち紛れに檻を蹴ったが、氷の椅子に座るペンギンは意に介さない。それどころか嘴でゲギョゲギョと笑い、丁寧に回していたカキ氷機(セリューが腹が立つことにこれも神秘で形作られていた)を壊し、拵えたノンシロップのカキ氷を隣に座っている子供の手に乗せた。
『別に貴様達には謳っていない、
「鉛玉で良いかな♡」
「ひゃっ…!マ、マー君。おれは大丈夫!ほ、ほら!グルーミングするから!ちょっと静かにしよう!」
『…むぅ。』
ヒクヒクと頬が歪んだセリューを見て、マッグロウの隣にいる男子、石弓アキラはだいぶロックなペンギンを抱き抱えた。セリューは深呼吸と溜息を繰り返し、そして檻を拳銃で叩いた。
「オイ、そこの皮付き小僧。…いや、いけないいけない。君だ。えー、畜ペンを抱えた君です。」
「は、はい。なんでしょう。」
「私達は今から会議に入りますが、
『うわぁ…』
「ふぁい!」
セリューの投げキッスを内心を押し殺したアキラは女友達に一目置かれる少年だった。
靴音が遠ざかって数分後、雑音以外の音が無くなった部屋にて、アキラは息を吐いてマッグロウに頬づりをした。
「いなくなったしさっきの話を続けて。声…声?は小さくね。」
『肝が太いな。』
「暇だし。なんでおれなんかを攫ったのか知りたい。」
『ふむ。ならばそこから語ろうか。』
マッグロウはアキラの目の前に怪獣映画のような模型都市を作り上げた。雑多なビル群と人形の上に君臨するのはこの監禁場所で最も偉そうな羽根の生えた天使だった。残酷なことに、アキラは其れ等異物が見える半覚醒者であった。天使像は口から紐を垂れ流し、繋がっている人形はゾンビのように項垂れて本を読んでいた。
『ややこしいお為ごかしを抜けば、メシア教が目指すのは全人類の奴隷化だ。家畜化とも言って良い。天使という人間を主食とする化け物に体を差し出す代わりに言いなりになるのが理想だ。さて、これを実現するのに何が邪魔になると思う?』
「え。…天使じゃない悪魔?」
『文明だ。』
マッグロウは翼で氷のビルを粉々に砕いた。
『命令を理解しない言語が邪魔だ。騒乱の種になる差別が邪魔だ。発展を助長する他所の文化が邪魔だ。だから終末を、世界の破滅を促進する。恥知らずの大馬鹿として自分の首を閉め続ける。強盗が金持ちの破産を望むようなものなのにだ。』
「 」
『そしてそんな外道な強盗犯が盗み出したものが君だ。我がケモ友グルミットはメシアン肉を多数喰らったでぇベテランでな。君のような拉致者の末路は4パターンあると語っていた。』
「…ど、どんなの?」
『現物がいるだろう?』
マッグロウは嘴を檻の隅にある4つの氷像ベッドに向けた。
『死か。』
1つは丁寧に氷柱として筋モノらしき中年男性が凍っている。身体がバラバラでなければ今にも起き上がれそうな鮮度だ。
『肉塊か。』
1つはベビーベッドの中に
『素材か。』
1つは四肢の無い不良。剥ぎ取られた皮膚にかわり植え付けられた羽根は腐食しているにも関わらず不愉快に跳ね回っているが、彼は死んだように無反応だった。
『奴隷か。』
その全てに首輪を付けたヤンキーが虚ろな眼で世話をする。その両足は膝から下が羽毛で覆われ、彼は這いずって業務をこなしていた。
『実証が存在するのはすごいな。檻友はどれが良いと思う?』
「ヤダー!!!」
アキラの叫び声が檻の鉄棒を震えさせた。
「なんなんですかあの畜ペンは!!」
「どうどうどう。」
「…フン。」
定例の会議も終わり、教会近くの喫茶店でセリューは同期の2人に愚痴をぶちまけていた。正確には全員が大小あれど愚痴を漏らしていた。畜ペンが共通認識になる程度には、彼らはあの念話にうんざりしていた。
「天使様のお告げ通りに捕獲に行ったらスーパーで首輪して犬みたいに爆睡してて!起きたら飼い主が恋しいのかぐちぐちぐちぐち念話を垂れ流す!あのクソ不良供が反逆したのもあの鳥が主導したに違いない…です!!」
「まーねぇ。あたしもあんの害鳥には辟易してるよ。」
周りから『ママ』とだけ呼ばれるパンチパーマの中年女性はタバコを吹かしながら携帯を弄っている。その中身は寄進に紐づく報酬、彼女らしく端的に言えば金目のレート一覧が並んでいた。
「だがね、あの鳥が下手な異教徒より余程高級品なことを忘れちゃいけないよ、セリュー。あんた信仰心が高いなら低いゴミに煩っちゃダメよ、ダメ。阿古屋を見習いなさいな。黙々と筋トレしてる努力家よお。」
「…口にしても我が正義は果たせんからな。」
憎いとばかりに鋼鉄の鉄柱…ある女の手脚を想定したそれを握りしめながら愛想のない堅物な男が歯軋りをしながらステーキを頬張った。
「あの爆弾女に勝つには兎に角地力が足らぬ。少なくともあの爆風を堪えないのは落第点だ。正義を示せぬ。恥ずべきばかりだ。」
悪の根絶を是とする彼は戦場を彩ったバイザーをつけた小娘を思い出す。宙を舞い、指揮官を的確に潰し、そしてついでと言わんばかりにありとあらゆるマッカを奪い尽くした業突く張り。運良く気絶した阿古屋が目覚めた時に眼前に見えたのは、信仰ごと奪われたかのような空っぽの教会跡だった。
「もう醜態は晒せん…!齧り付いてでも正義を実行してみせる…!!」
「それでここに参加?横紙破りでママの番を抜かすのは感心しないよ?」
「別にかまわないよ。今更熱持って活動する気になれなくてね。アタシにも利がない訳じゃないし。」
「彼女の調べで近辺の木端ヤクザが管理している
「そんで管理はアタシが。まあBBAには筆仕事がイチバンさ。アンタも乗るかい?」
「あー。そうだなー。ストレス解消に良いかもね。考えとく。」
彼らにとって、日常であり食い扶持である異界整備の話を隠語を踏まえつつ話し合う。それが開拓ではなく掠奪である事実を正義としながら、外国人がメインの喫茶店が何故経営難にならないかを理解しないまま、情報を垂れ流す。どの組織も拡大に関わる事業は気合いが入るというもので、彼ら2人も悪徳とは感じながらも朗らかに笑いあった。
「…ゥォン。」
そして、その光景を店のゴミ箱近くに佇む白い老犬が半開きの眼で見据えていた。
「ヤダヤダやーだー!!あんなの特撮にもないよ!!」
アキラはみっともなく泣き喚いた。アキラの浅い知識でも今の環境が大ピンチであることは理解している。介護をしていた男も胡座をかいて頷く。不良なのに静かだなとアキラは首を傾げた。ジッと見られた不良は片手を口に入れグイッと開く。そこには歯も舌もなかった。アキラは小さくひゃっくりをした。
『忠誠を誓えば怪人にはさせてくれると思うが。』
「それもやだー!」
バタバタと手足を振り回すアキラに不良はオロオロと戸惑い、仲間の触手を頭に持ち上げ一発芸らしき行為をしたが、どちらも無言なため発狂者にしか見えない。何やってんだこいつと熱にうなされる不良は口にスプーンを咥えて触手の目玉に吹き当てた。
マッグロウは虚勢を張る男達の代わりにアキラを説得する役目を請け負った。
『ほれ、あれを見ろ。別に負担には感じていない*1のだ。大人しく従っていれば良い。』
「ううーう!!」
『何なら逃げれば良い。
「(こくこくと頷く)」
「でも!…でも!!」
否定だけが口に浮かぶが、アキラはマトモに考えていない。誘拐時に家族は皆殺しにされた彼には、この環境全てが悪夢にしか思えなかった。
アキラは堪えきれずにぼたぼたと涙を流した。
「おれが逃げたらみんな殺されちゃうよ…!」
甘い少年だな、とマッグロウは悲しんだ。あの中にいた連中の何人がサクラだったろうか。命惜しさに此処に残された4人が足を引っ張られた事実は忘れたのだろうか。否、だからこそ手放せないのか。幼くとも培った人間関係の繋がりを全て無くした彼は新たな縁を手放せない。
だからこそ、それを悪辣に利用するメシアの連中にマッグロウはキレていた。
『…チッ。』
マッグロウはペットである。ペッ友のグルミットは主人を喜ばせることがペットの仕事だと語っていた。ならば、この場合はどうするべきか。
『…手はある。』
マッグロウは己が本能に従うことを決意した。
『今のお前たちが囚われている理由はこの鉄檻を壊せないからだ。ならば、檻を壊せれば良い。』
「…あの羽根生えた怪人みたいな?」
マッグロウは首肯する。怪人は悪魔であり、大抵はヒトを超えた存在である。それの力を
『丁度良い志望者もいることだしな。』
「(フンス)」
不良達3人が各々の表現で肯定の仕草を示す。たが、アキラは彼らを見て首を振り、マッグロウに向き合った。
「…おれが最初にやる。」
『…』
「あの怪人が言ってたよ?おれに癒しの力があるって。マッグロウの
マッグロウは無言で背中を振り向いた。檻の中に幾何学的な氷柱を建て、地面を穴だらけにし、大きな円陣の中央部はぽっかりとした穴が現れた。アキラの体格にピタリとあうそれに、アキラは躊躇わずに中へ飛び込んだ。
覚悟しろ、とマッグロウは最後の忠告をした。
『お前の男としての概念を宝石化して抽出し、空白となった概念に悪魔の身体情報を載せる。化け物を埋め込む以上、お前の人生は狂う。』
「…うん。それでみんなが助かるなら。」
『よく言った。それでは、お前の男に別れを告げろ。』
「うん。…うん???」
「我が友グルミットは言った。メス堕ちとは最も男らしい行為だと。』
「えっちょっと…え???」
『男を武器とし、悪魔を身体とし、残る誇りは女しかない。安心しろ。我が誇りに賭けて全てが正常になるよう調整してみせるとも。』
「え!?まって!??」
『術式【ソウルジェム】発動!!』
光が満ち溢れ、彼の身体が分離し、切り替わる。変貌する。生まれ変わる。
覚悟を示した少年に、不良達は涙を流して忠誠を誓った。
長くなったので分割します。
メシア教
絶賛犯罪中。なお国営喫茶店経由でマーダーライセンス発行中。今回は交通事故アタックが効かないので時間がかかっている。
石弓アキラ
小2。庇われた両親は雑に殺された。真の親友がいる。
不良3人組
中卒。異界もどきを管理する役目を学んでいたので見た目ほど精神は傷付いてはいない。別に犯罪はしていないが師匠をリスペクトしているため柄が悪い。
死んだ人
アラフィフ。運悪く殺された異界もどきの管理人。生きてたら翌日には通報→解決くらい出来たが素晴らしく運がなかった。不良達は実の子のように大切にしていた。
マッグロウ
スーパーで爆睡してたらなんか捕まった。
グルミット
あいつ何で捕まってんの?もうこっち寿命間近ぞ??ペットの自覚あるんか???