エレベーターを降りると、そこは冷たい空気の流れる研究所の廊下だった。実際に冷気があるというよりは、広い病院のような雰囲気に不釣合いな閑散さがそう感じさせてくるのだと思う。
例によって最速クリアに必要ない扉は全てスルーして人気のなさすぎる廊下を歩いていると、最初の曲がり角からちょっと衝撃的なゾンビが飛び出してきた。
「えっ、裸……?」
智絵里が自らの目に映ったものを見間違いではないかと疑う。けれど彼女が口にしたそのゾンビに対する認識は、寸分違わずそれで合っていた。
そのゾンビは全裸であり、なおかつ全身が茶色に変色している。色の方についてはおそらく、返り血を浴び続けた末に長い時間が経過した結果なのだろうけど……そんなことはどうでもいいくらいにとにかく全裸である。
この研究所内のゾンビは色々と末期であり、衣服すら身につけていない状態で共食いを繰り返している……というのが原作設定なのだが、いざ理性増し増しのゾンビと会話ができる世界に来てしまえばその格好の意味合いだって当然変わってくる。全裸はシンプルに不審者だ。
智絵里どころか俺まで困惑する。変色した全裸の男性から花のいい香りが漂ってくるという事実が、なおのことこの名状しがたい感情を引っかき回していた。
「え、完全に全裸じゃないですか……?」
研究所ゾンビの下半身を見ながら言う智絵里。不審者に遭遇してしまった女性の振る舞いとしてそれは非常に冷静な物だったけど、その落ち着きぶりはさすがに今まで会ってきた虫や蛇に対して失礼だと思う。
「ええ、このあたりのゾンビは原作のデザイン上そういう風になっています」
「え、いや、いいんですか? 見えてますけど。ある種トップクラスの恐怖ですけど」
「そのご意見はごもっともなのですが、世界観との兼ね合いを考えるとどうしてもどうしても、何かを穿かせることは出来なかったのです……。製作者たちもこの点については最後まで議論を収束させることが叶わなくてですね……」
「あ、はい。あとはこっちで納得するので大丈夫です」
幸いなことに、研究所ゾンビも括りとしては「ゾンビ(人型)」として洋館内のゾンビと同じ扱いになっているらしく、ここで改めて彼らに触れる必要はないとのことだった。なので遠慮なくスルーして先へ進む。すると道中の扉の中から、くぐもった騒ぎ声が漏れ聞こえてきた。
「おいその技おかしいって! 判定どうなってんだよ!」
「こんだけブンブンされて対策しない方が悪い」
「いいからコントローラーよこせよ〜。負け交代、負け交代」
……三人でその扉の方を見ながら、特にそれについての感想を言い合うでもなく無言で先へ進んでいく。自我を持ち合わせ共食いをしなくなった研究所のゾンビたちのなれの果てがあれなのだろう……。俺も智絵里もそれを察していた。きっと扉の中も全員全裸なのだ。
と、そのようなどうでもいい経緯を挟みつつ、まったく同じデザインの扉と白色電灯ばかりの並ぶ廊下を抜けて、俺たちは次の部屋へ向かう。廊下の奥には一枚だけ、他とは違って仰々しい見た目をしている重そうな扉があった。
Tさんが扉を開くと、その先にある部屋は色からして今いる廊下とは様子が違っていた。寒々しい白光の灯る廊下とは対照的に、扉の先では照明のことごとくに暖色がチョイスされており、部屋全体がぼやけたオレンジ色に染まっている。そしてそんな部屋のそこら中に「絡まったような配管」や「金網に囲われた大きな機械」が敷き詰められていて、とっ散らかったそれらがちょっとした迷路を生み出していた。
天井付近に、何か大きくて黒い影が揺れている。夕暮れのような色に染まったこの部屋の中で、そのシルエットはどこか異質な雰囲気を纏っていた。……そしてその影が、天井の配管にぶら下がって猿のようにこちらへ迫ってくる。
俺たちの頭上近くまで来たそいつが音もなくその場に着地する。密着した状態で対面したそれは新たなるゾンビ「キメラ」だった。
智絵里はキメラのことをよく観察する。照明の色が邪魔をしてかつてないほど見づらいが、それでも大体のことは分かるだろう。細く長い手足、その先に付いているカギ爪。ブラシのような妙な形をした口に、全体的にザラついて黒い肌。そしてなぜか胸に空いている小さな穴。……総じてゲーム終盤にふさわしい異形と呼んで差し支えないゾンビとして映ったはずだ。
「もしかしてこのゾンビは……」
「智絵里、そいつはキ」
「チンパンジー! いやオランウータン? とにかくなんかそういう、猿のゾンビでしょ!」
……その場の空気が、智絵里一人を取り残して凍った。彼女以外の三人が視線を交わし合い、各々の心の内を探り合う。それによって三人の間にだけ特別な緊張感が流れる。三人とも、どうにかアイコンタクトだけで一秒先の方針を定め合おうとしていた。
そしてTさんが間違った方向に先走った。
「智絵里様、彼はキメラ。猿ではなくハ……むぐっ!?」
俺はあわててTさんの口をふさぐ。左手で彼の体を抱え、右手で彼の口に蓋をする。全力でふさぐ。智絵里が運良く「猿だ」と思ってくれた以上、キメラが実際に何のゾンビであるのかなんて事実は闇に葬らなければならないのだ。
両手に……特に右手の方にはより激しく、腐肉を抱きしめたことによる生理的嫌悪を催す感触があった。けれど俺はそれを我慢できる。密着したことでついでに花のいい香りもした。右手にだけは彼の口から漂うマグロ臭さが染みていってるのだろうけど……!
「Tさん、余計なことは言わないで」
「し、失敬……。癖が抜け切っていませんでした……」
「……なにしてるの二人とも?」
「ん? べつに?」
言えるものか。キメラが、ハエと人間の
いや、いくら虫嫌いの智絵里といっても、蚊やハエのような小さな虫にまで日常的にびびり倒しているわけではない。蜂にだってそこまでびびっていなかったくらいだ。……が、キメラの場合はその製造方法が悪質すぎる。バイオハザードのゾンビというのは普通、既存の生物にTウィルスを投与することで習性を凶暴化させると同時に、強力な力や不死身性、巨大な肉体を身につけさせるものだ。しかしいくらなんでもハエにただウィルスを投与しただけでは、それが人間と同じサイズにまで巨大化するということはない。だから十分な体格を確保するために、キメラは人間と混ぜ合わせて作られたのだろう。
しかしそこで気になるのは、「混ぜる」とは具体的にどのような工程を指すのか? ということ。その答えは公式設定曰くこうだ。「Tウィルスを混ぜたハエの遺伝子を女性の子宮に着床させてそのまま出産させる」。それがキメラの作り方らしい。……初代バイオ史上、生理的嫌悪感がぶっちぎりでワースト1位のゾンビ。それがキメラなのだ。
だから智絵里が目の前のそいつを猿だと思っているなら、もうそのまま一生猿だと思ってくれていた方がいい。世の中には知らない方がいいことがある。キメラの正体は間違いなくその一つだ。
「キメラさん、わたしと握手してくれますか?」
智絵里が手を差し出す。俺の喉からは危うく「うっ」と動揺の声が漏れてしまうところだった。照明のせいもあり彼女は気づいていないのだろう、キメラの肌の色とザラつきに、絶妙な不潔感があることに。しかしそれもまた、気づかなければ気づかない方がいいことだ。
ちなみに原作でのキメラに銃撃をぶちこむと、その時の衝撃で周囲にウジ虫を撒き散らしたりする。この世界でのキメラは違うのかもしれないが俺は触りたくない。Tさんに触れるのとはわけが違う。原作のゾンビは、そういう描写の差で言えばまだ清潔な方なのだ。
「……イイケド」
「ありがとう!」
友好条約が結ばれる時のような固い握手が二人の間で交わされる。「キメラ」クリアの報せが鳴った。よし早く次へ行こう、一刻も早く彼と別れるのだ。
……と、俺はそう思ったのだけれど、智絵里の方にはまったく先を急ぐ気持ちがないようだった。今回ばかりは、彼女の振る舞いは俺の望みの逆を行く。智絵里はどうやら、久しぶりに現れた人型かつ新種のゾンビに興味を抱いてしまったようだ。
「キメラさんは、具体的には何のゾンビなんですか? 猿的な何かだとは思うんだけど……」
「……オレは」
スレンダーな足に裏付けられた高身長を誇るキメラが、この場の誰よりも高い視線でどこか宙を見ている。どうやら慎重に答えを選んでいるらしかった。
それを見て俺は確信する。彼は、空気の読めるゾンビだ。彼は俺とTさんの心の声を悟り、智絵里にできるだけショックを与えないように答えを選んでくれているのだ。
「……オレは、オランウータンのゾンビ、バナナ大好き」
「えっ、バナナ食べるんですか。ここのゾンビは魚しか食べないんじゃ」
「オレは食べる。例外、たまにいる。ワスプも花の蜜吸う。ソレと同じ」
「へぇ〜なるほど〜」
彼の言っていることがどこまで本当なのかはもはや分からない。けれど今の俺は「触れたくない」というさっきまでの心情から一転して、キメラに深く頭を下げたいような気持ちになっていた。
元々がハエでも、おぞましい生まれ方をしていても、それはべつに彼自身が望んだことではないはず。あなたは何者かと聞かれて、全然別な生物を騙らなければならない気持ちは幾許のものか……。空気を読んでもらえて非常に助かりはしたけれど、今度は心が痛んできた。キメラ……彼には何の罪もないのに……。
智絵里は動物のことは好きだ。ケルベロスを躊躇なく撫で回せたのはそういう一面もあってのことだろう。そしてそれゆえに、動物モチーフのゾンビだと思って今はキメラに興味を示している。だがそのキメラ本人の内心は、撫でられた犬のようには喜べまい。
「智絵里、そろそろ行こう。もうすぐラスボスなんだ」
「え、そうなの?」
「あぁ、だからなんか気が急いてきてさ」
適当を言って智絵里の手を引く。彼女はこれといって名残惜しそうにすることもなく素直についてきてくれた。
Tさんが道案内を再開する。いつも通り彼の背中を追う智絵里を横目に、俺はキメラを振り返る。彼はまだそこに立っていて、黒い影のような顔でこちらを見ていた。
俺は彼に、智絵里にはバレない程度に頭を下げる。すると向こうも同じように返してくれた。お互い、なんだか思考が通じあって、顔には出さない苦笑いをしているみたいだった。
天井の配管に爪のひっかかる音がして、足音代わりのその音はカツンカツンと遠ざかっていく。オレンジ色に染まるその部屋を俺たちはあとにした。
「次に訪れる部屋が、ヘリポートを除けば最後の部屋です」
Tさんの言う通り、その後しばらくは単なる移動経路が続いた。
相変わらず似たような造りの廊下を抜けて、上へ向かうエレベーターに乗る。そこから降りた後、細い通路を進むと両開きの自動ドアに行き着く。その扉の先には、原作を知る者にとって非常に見覚えのある部屋が広がっていた。この秘密の研究所の中でひときわ大きな研究室だ。
研究室は奥に広い長方形の部屋で、壁に沿って未知の機械類が並べられている。また部屋の中央にも実験器具らしき物たちが規則的に置かれており、それと壁際の機械とに挟まれた四角形のサーキットとでも言うべき空間がこの部屋の動線になっている。原作ではそのサーキットをぐるぐる回りながらタイラントという究極のゾンビと戦うのだが……。
研究室の奥には数本のガラスの筒が立っている。筒は人が入れる程度に太く高く、蓋と底は機械的な金属で閉じられていて、そこに何やら大量の配線が繋がれている。さらにその筒の中には何らかの怪しい液体が満たされていて、総じていかにも「生物兵器を培養しています」という雰囲気が漂っていた。
その筒のうちの一本の中に、やはり原作と同じようにタイラントが眠っている。彼の目覚めはきっとほんの数秒後だろう。
部屋の隅には、ヘリポートへ続いているだろうエレベーターも備え付けられていた。
「これが、御二方に触れてもらう必要のある最後のゾンビ、タイラントです」
「へぇ〜……」
ガラスの筒の中で立ったまま(あるいは液体に浮いたまま)眠るタイラントを見上げる智絵里。究極の生物兵器であるタイラントの身長はゆうに2メートルを超えており、全身の筋肉ははち切れんばかりに発達している。また彼の皮膚は人ならざるシルバーに染まっており、体外に露出した赤く巨大な心臓らしき器官は何故か右胸についている。その上、剣のような長さと鋭さを誇る左腕の黒い爪が殺人的な存在感を放っていた。
……目を開けたタイラントと智絵里の目が合う。彼女の口から思わず「うっ」と緊張のうめき声が漏れる。
タイラントがおもむろに右手で掌底を放った。それはガラスの筒に大きなヒビを入れる。
「あっ……」
智絵里が悲鳴に近い声を上げる。それに構うことなく掌底はもう一度放たれた。ヒビ割れたガラスではもうそれを受け止めきれない。
ガラスは粉々に砕け散り、溜まっていた液体が滝のように音を立ててこぼれ出す。険しく鋭い目つきのタイラントが、外の世界へ向けて一歩を踏み出した。
歩み出た彼の存在感に、智絵里も俺も思わず後ずさりする。まさかここまで来てゾンビが俺たちに危害を加えてくるようなことはないとは思うけれど、しかしタイラントの纏うピリピリした雰囲気には何かこう……ヤクザのような、ただすれ違うだけでも身構えてしまうような威圧感があった。
「さぁタイラント、今回のプレイヤーはこの御二方です。挨拶を……って、そっちじゃない!」
タイラントはTさんの言葉には目もくれず、踵からキュッと音がしそうなほど素早い旋回で九十度右を向いたかと思うと、どこかへ一目散に歩いていった。
彼の向かう先には、冷蔵庫があった。……いや本当にしれっと、普通の家庭にあるようなただの冷蔵庫がそこに置かれていた。パッと見よく分からない機械類だらけの部屋なので、そこに紛れてそんな生活感溢れる物が置かれているとは思わず、俺はその冷蔵庫を今まで完全に見逃していた。
爪が発達しすぎて使いづらそうな左手はだらんとぶら下げたまま、右手で冷蔵庫を開き、そして漁り始めるタイラント。中から取り出されたのはコンビニで売ってそうなケーキだった。……それに引き続き彼はまだ何かを取り出す。それはシュークリームだった。それはプリンだった。それはドーナツだった。
……え? どういうこと? もぐもぐとスイーツを食べ始めるタイラントの姿を見つめながら、呆然となる俺と智絵里。そこへTさんが、どこか申し訳なさそうに解説を添えてくれた。
「えー、説明しますとですね……。本来、あのタイラントという究極の生物兵器を作るためには、とあるおぞましい手法が必要となるのですが、あれはその手法を克服した姿なのです」
「いや意味が分かりませんけど」
「拓海様は、タイラントの作り方についてはご存知ですか」
「え? あぁ、まぁ」
「ではそれについては……まずは智絵里様への噛み砕いた解説を拓海様にお任せします」
「……あぁ、了解です」
なるほどね、キメラの件で反省した結果がそうなのか、と理解する。
原作におけるタイラントの作り方。それは人間が恐怖や苦痛を感じた時に脳内で分泌される成分を大量に必要とするものだ。そしてその成分を最も効率的に獲得する方法を追求すると、生きた人間の脳みそを、麻酔もかけずに切開することになる。
俺は智絵里に「タイラントは人間を拷問して作るんだ」と耳打ちする。今までと違って俺に解説を丸投げしたTさんに違和感を覚えてか、彼女はそれがかなり端折った解説であることを直感で理解してくれたようだった。
「えーそれでですね、今作におけるタイラントはそのおぞましい手法の代替案として、甘い物を食べさせることを採用しているのです。甘い物を食べると幸せな気持ちになるでしょう? それは脳内に快楽物質が分泌されるために起こることなのですが、その快楽物質を原料として、この世界のタイラントはあのような屈強な肉体を手に入れることに成功しているのです」
「いやそんなことあります……?」
そんなことがあり得るのか? という問いへの答えは、素手でケーキを貪る目の前の最強ゾンビの体格やオーラがすでに物語っている。元々この世界ではゾンビが人語を介するくらいなのだ、スイーツで強くなるゾンビだっているのだろう。……納得できるできない以前に、すでに目の前にいるのだから仕方がない。
俺はなんとなく、モンスターズインクみたいだなぁと思った。エグ味が強すぎるけど、恐怖より喜びの方が大きなエネルギーを呼ぶというオチは同じだ。そう思うと見た目は原作通りの彼だってコミカルに見えてくるような……そうでもないような……。
「……で、俺があの人に触ってくればいいんですよね?」
「そうなりますね」
「よし……」
食事を邪魔されるとキレるとかそういうタイプじゃなければいいけど……とびびりながら、冷蔵庫の前に座り込んで今はドーナツを貪っているタイラントに歩み寄る。こちらの接近を察知して彼は首をめぐらせた。
「食うか?」
「あ、いや、はい。いただきます」
中に生クリームが入っている、穴がないタイプのドーナツを分けてもらった。それでなんとなく分かる。たぶんこの人、いい人だ……!
「あのすいません、ちょっと握手とかってしてもらっても……?」
「ん」
「うおっ」
右手は食べるのに忙しいからか、人を串刺しにできる凶悪な爪のついた左手が差し出される。死ぬかと思ったけど、爪は爪だ。手のひらにだけ触れれば怪我をすることはない。
クリア条件「タイラント」クリア。全ゾンビとの接触完了。……例のごとくどこからともなく鳴る音がそう報せてくれた。
「おめでとうございます! 残すクリア条件はあと一つ、ヘリポートへ向かいヘリに乗ることのみとなりました。ヘリポートまではあちらのエレベーターが直通となっております」
「よし智絵里、行こう」
「あ、うんっ」
タイラントに会釈をして、ドーナツをかじりながら、俺と智絵里とTさんの三人はエレベーターに乗り込む。……その滑らかに上昇する箱の中で、得体のしれない緊張を感じていたのは俺だけだろうか?
ゲームをクリアしたらヘリに乗る……ではなく、なぜクリア条件にわざわざ「ヘリに乗ること」とあるのか? それは原作から考えるに、ヘリポートにこそラスボスが現れるからだろう。ラスボスを撃破しなければヘリに乗ることは出来ないというわけだ。……しかし原作におけるそのラスボスとは、研究室で激闘の末に撃破したはずのタイラントが復活した姿「スーパータイラント」なのである。そこが解せない。
俺たちは、タイラントを撃破なんてしていない。ならばこの先には何がいる……? さっきそれなりに友好的だったタイラントと、なぜかいきなり戦うことになるのか……? というかそれ以前に、まったく出番のなかったショットランペットガンとは結局なんだったんだ……?
智絵里が「あ」と思い出したかのように、俺の顔を見て意味深なことを言う。
「あれ? そういえばまだ会ってないゾンビがいない?」
「え? いや、そんなはずは」
最上階という名の地上にたどり着き、エレベーターの扉が開く。ヘリポートの中央にはすでに上空から縄梯子がぶら下がっていた。
そして、その梯子の隣に「彼女」はいた。