第一話 ゆったり歩く冬の道
「佐斗葉、佐斗葉!」
僕は横から聞こえてきた声に慌てて反応する。
「あぁ、ごめん。何?どしたの?」
「いやこっちのセリフなんだが...急にぼーっとしたから焦ったぞ」
「うーん何か誰かに呼ばれたような気がして......」
「今この場で俺が呼んだんですけどね」
「いやなんか...女の子の声だったような......」
見渡す限り畑広がる田舎の一本道。
近くにいる農家が野焼きをしている。そんな事を思ってから少しの間時間が経ったような気がする。
どうにか思い返すけど一向に出てきそうもない。
「まぁ何も無いっぽいならそれで良いか。あんまりぼーっとして隙作ってるとまたアイツから不意打ち喰らうぞ佐斗葉」
「分かってるってばぁ...」
祐葉はちょっといたずらっぽい笑みを浮かべてからかってきた。
絶対僕の反応を楽しんでる...。
僕、立伏 佐斗葉(たちぶせ さとば)は
どこにでいる普通の少年。ちょっと気が弱いところがあるのは自覚してる......。
それと対照的なのが今僕との会話相手である双子の兄、立伏 祐葉(たちぶせ ゆうば)
嫌なことは嫌とはっきり伝え、面倒見のいいお兄ちゃんでもある。時々気を遣いすぎというかちょっと過保護な気もするけどね.....。
例の不意打ちが来るかもしれないと考えるとつい肩が落ちながらセリフも出てしまうものである。
「あ〜あ、いっそミラクル起きて祐葉の方に不意打ちが行かないかなぁ」
「ねぇよ。百歩譲っても有り得ねぇ」
「それはむしろ何に対して百歩譲ったの......?」
「俺らを視認出来る距離に」
「後ずさりが過ぎる!!」
「それぐらいならクマが相手でも問題ねぇ」
「そこまで下がれてたら確実に逃げ切れてるってば......」
今日も祐葉は僕と二人だけだと相変わらずボケまくってる......。
僕の反応を楽しんでるのもあるだろうけど......。
でもこんな祐葉も他のメンバーと一緒になると空気になっちゃうんだもんなぁ......。まぁそれは他の皆が強烈なだけだけどね。祐葉ツッコミ苦手だし。
僕は苦笑いを浮かべながらそんな事を考える。
すると祐葉は一連のやり取りにある程度満足したのか話を戻した。
「第一、今の俺たちを見て見分けつかねぇ奴は居ねぇだろうよ。例え初見だろうとな」
「まぁ確かにね」
僕は祐葉の言葉に対して笑いながら答える。
僕と祐葉は双子だが、外見に大きな違いが1つある。
それは髪色。祐葉は黒髪なのに対して僕は真っ白。
更に細かく言えば祐葉は前髪を上げてるのに対して、僕は前髪を下ろしているので、そこも微妙に違いがある。
そんな僕たちだから誰も僕たちを間違えたりなんてしない。僕らに双子特有のそっくりあるあるエピソードなんて何も無いのだ。
「僕たちを間違えちゃう人とかいたら見てみたいよね」
なんて冗談を祐葉に投げてみた。
「......そうだな」
ん......?何だろう、今の間は.....。
祐葉のリアクション対して追求しようと思ったその瞬間ーーーー
バンッーーーー
僕は先ほどまで話題に上がっていた不意打ちを背中に喰らった。