リメカスと一緒に清衣ちゃんをそこそこ曇らせる話   作:投稿するヒゲ

1 / 2
これは外伝ピーアナを原作とすればいいのか、4期を原作とすればいいのか……そもそもWIXOSSの二次が少ないからわからないね。


清衣は本を開く

ガチャンと机が倒れる音が教室に響いていた。教科書はビリビリに破れ、ノートはシュレッダーにかけられたかのように散り散りになってしまい復元は不可能な惨状。

 

それを諦観した瞳で見つめる少女が居た。

 

「おい! なにしてんだよ!」

 

教室に勢いよく入ってきた少女は明らかな加害者集団に向けて強く吠える。

 

それでもクスクスと笑うのを止めない小学生とは思えない陰湿な手口に少女は激情のまま叫んだ。

 

「これ以上、清衣に手を出してみろ! お前らぜってぇ許さねえ!!」

 

 

 

 

 

そして中学校に無事に入学した少女は静かに小説を片手に窓を眺めていた。

 

「ねぇ、放課後どうする?」

「もち、ショップ行って新弾のカードをチェックっしょ」

 

WIXOSS──世界中で遊ばれている大人気TCGの一つだ。

その影響はもちろん現代の流行の最先端、女子中学生の間でも広がり、日夜少女達は机の上にカードを並べてゲームに勤しんでいた。

 

『14年も生きていたら現実がどんなものかはわかる』

『願いは叶わないし奇跡は起きない』

『いや、願いは叶うかもしれない……でもそれは──』

 

そんな流行とは何ぞやとも言いたげな瞳で窓を眺める少女は一人の少女によって現実に引き戻された。

 

「ねぇ、なに読んでるの?」

「……何か用ですか?」

 

遠くの空をボーッと見上げていた少女──水嶋清衣は、目の前の髪をサイドテールに纏めた少女──坂口歩美に向かって生返事を返す。

 

「おい、清衣に何の用だよ」

 

ドスドスと音を立てて教室に入ってきた一目でガサツに見える女性とは思えない立ち振る舞いのツーサイドアップの少女。

 

「……梓さん」

「た、た、橘さん!?」

 

橘梓。

この学校では知らぬ者などいないほどの有名人。いや、問題児と言った方が正しいのかもしれない。幾多の素行不良に加え、相手を威圧する物言いに、授業は日常的にサボる。

誰もが彼女の近くには居たくないと思い、露骨に避けている学校一の危険人物が彼女である。

 

「アンタは……もしかして坂口歩美か?」

「えっ、私のこと知ってるんですか!?」

「おうともさ! アンタなら清衣の良い友だちになれると思ってたんだぜ!」

 

そう言って坂口の肩を組んで愉快そうに笑い声を上げる。その行動により教室の中は冷め切った空気が流れていることに残念ながら気付ける梓ではなかった。

 

その行動に驚いたのは清衣も同じであった。

梓は、もう何もかもに疲れきって枯れている清衣のマイナスに振り切った対人スキルを案じ、清衣に近づく人物を警戒している節がある。そのため、基本的には清衣のことを悪意のある目線で見ただけでも、睨み返して威圧するほどである。

しかし、今日の梓は違った。

不用意にも清衣に近づいて行った坂口のことをいとも簡単に受け入れてしまったのだ。

 

「よーし、歩美! 今日からオレ達はウィクロス仲間だ! 休み時間は清衣の机に集合してバトル! そして帰りはカードショップのバトルスペースでバトルだぜ!!」

 

その言葉に坂口の頭上に雷が落ちる。

何を隠そう坂口歩美。清衣や梓とは違い、クラスの全員とも友だちになれる程のコミュ強であり、対人スキルはもれなくカンスト。横を向けば笑顔、声をかければ明るくポジティブな雰囲気の溢れるサンライトガールである。

そんな彼女があろうことが対極の存在である、かの極悪非道の看板を背負った、目が合えば悲鳴が上がり、道を通れば即座に真ん中が開く。そんなバッドガールな橘梓のことを密かに憧れていたのだ。そして憧れの梓に仲間だと認めてもらえたことにより、坂口の脳内ゲージは限界点まで弾け飛び、振り切れた。

 

「ありがとうございます! これからよろしくお願いします!!」

「おう! それに敬語じゃなくていいぜ、なんたってオレ達はもうマブだからな!」

 

ニッと白い歯を覗かせて笑う梓の笑顔に一発ノックアウトをくらい坂口は目をハートマークにさせて倒れ込んだ。

 

 

 

 

帰り道、さも当然のように清衣の後ろについて行っている梓と坂口。もちろん清衣本人に一切の了承を得ていない。

 

そして坂口と別れた後、梓の袖を小さくだが確かに引っ張る清衣がいた。

 

「どうした清衣?」

「……どうしてですか?」

 

文脈のない台詞に疑問符を浮かべる梓。催促した訳ではないけれど、少しの間の後清衣が話し始めた。

 

「なんだよ清衣。一緒に帰るのはやめないからな」

「違います。どうして坂口さんと仲良くするんですか?」

「そりゃお前、坂口は良い奴だからだよ」

 

答えになってないと清衣は内心不満を抱いた。

 

小学生の頃から何かと清衣に構う梓。いじめから一度助けたと言えば聞こえは良いがそれだけだった。今まで清衣が受けてきた責め苦を無かったことにはできない。

積み重なった他者に対する不信感や憎悪。いつ裏切られるかもわからない人間関係の構築など清衣には出来なかった。

 

「どうしてそう言い切れるんですか……いつ裏切られるかわからないじゃないですか」

「大丈夫だ」

 

その声には確かな自信が感じられる。断定するように返す梓の瞳は清衣の目を真っ直ぐに射抜いていた。

 

「坂口は絶対裏切らねぇ。他の連中は知らねぇが坂口だけは絶対だ。それにオレもお前を絶対裏切らない。約束する」

 

清衣の瞳は大きく揺れた。疑問が頭の中いっぱいに広がり続ける中、梓の言葉が胸の中でやけに響いていた。

 

清衣は堪らず下を向く。

 

「帰ります」

「おい、清衣ッ」

 

走り去る清衣の横顔を見て追いかけることのできない梓。

梓の言葉は確かな清衣への思いやりで溢れていた。優しさ、愛、そして友情。そういった皆が当然に日常の中で発芽させる気持ちを清衣は知らない。

 

『私は……何も願わない』

 

今までの環境で生きてきた清衣には、梓の言葉はある意味で一番の──毒であった。

 

 

 

 

オレが小学生になった頃、教室で彼女を見つけた。

 

肩下まで伸びる黒い色のウェーブかかった髪。眠たそうに空を眺める彼女の姿を見て、オレの頭の中でなにかが弾けた。

 

──あれって……ピルルクたんやん。

 

そうオレはこの時、間違いなく前世というものを認識した。そして、その記憶の中で彼女、いや水嶋清衣の姿を憶えていた。

 

(あっ、そっかぁ、ここWIXOSSの世界なんだぁ)

 

アニメselector及びLostorageシリーズ。少女達の願いと苦悩を描く、カードゲーム販促アニメとは思えない内容の物語だ。selectorシリーズでは願い事が叶うと言われたバトルで勝ち抜いてしまえば願いは反転し、少女達は繭というウィクロスを悪用しているラスボスに次のルリグとかいうバトルで使うカードへと変えられてしまうのだ。

 

そして敵キャラのルリグとして登場する、クールで不気味な心を読む能力を使い、相手の願いを踏み躙る陰湿な敵──コードピルルクとなって立ちはだかるのが水嶋清衣と言う人物だった。彼女の相棒と共に主人公の友人を屠る姿は作業のように見え、主人公に敗北する時も何を考えているのかわからない印象だった。

 

しかしLostorageシリーズで再登場。主人公の友人にウィクロスの危険性を伝えるサブキャラとして現れる。そしてシリーズ最終章では見事主人公を務めたシンデレラキャラクターだ。

 

そんな彼女の内情は過去に犯した罪に苦しみ続ける哀れな少女だった。

 

小学生の時に酷いいじめにあった彼女は一人絶望しながら生きていた。中学生に上がり、坂口歩美という友だちをつくり、憧れでもあったウィクロスも始めようとした時であった。クラスメイトの陰口を聞き、自分は坂口に釣り合う存在ではないと感じてしまい避けてしまう。そんな清衣を追いかけた彼女は交通事故に遭い、意識不明の重体。病院で泣き喚く彼女の手には言葉を話すカードが握られていた。

 

勝てば願いが叶うセレクターバトルに勝ち抜いた彼女は坂口の回復を願うが、反転してしまい信じていたルリグに殺されてしまう。自暴自棄になった清衣はルリグとなって、沢山の少女を絶望させる呪いのルリグとなってしまう。途中、坂口歩美に性格も容姿も似た存在──橋本アミカと出会い、間違いに気がつきLostorageシリーズへと続く戦いに身を投じる。

 

大雑把に思い出した内容は思いの外重要で、オレの頭は大量の情報によりショート寸前になる。

 

痛みに耐えながら教室の中へと入れば、机が倒されてしまい清衣が放心している場面だった。

 

オレは痛みで顔を歪ませながら叫んだ。

 

「おい! なにしてんだよ!」

 

いじめっ子集団に向かって指をピシッと向ける。この中に後にリメンバとなる占い糞女がいると思えば今のうちに釘を刺しておかなければあるまい。

 

 

「これ以上、清衣に手を出してみろ! お前らぜってぇ許さねえ!!」

 

 

そして……後にわかったことなのだが──

 

どうやらオレは原作では清衣をいじめていた主犯格のモブ女に転生してしまったらしい。

 

(どうしてこうなった!!)

 

オレは家に帰って頭を抱えたのだった。

 

 

 

 

それからのオレの行動は早かった。

重要キャラであり、主人公になるピルルクたんに媚を売るべく学校に行くたびに話しかけた。もちろんいじめっ子達も登場する度に追い返したり成敗したりもした。

しかし時すでに遅く、清衣は人を信じることをやめてしまい、オレを警戒するのをやめてはくれなかった。

 

「あなた、悪い相が出ています」

「うるせぇカス、もう突っかかってくんな」

「いえいえ、あなたには是非私とお友だちになってもらいたいのです」

「失せろカス」

 

リメカスと思われる女の子とも少しは関わることもあったが追っ払ったから問題なし。

 

そして小学校での生活は終わりを告げ、なんとか名前を呼んでくれるまでになったのは中学生に上がってのことだった。

 

いつものように教室に向かうと坂口と話す清衣を見かけた。

二人のなり染めを見るべくオレは急いで清衣の元へと向かった。

 

オレに物語を変えるつもりはない。

 

主人公側を助けてもしなければ、敵側を邪魔もしない。沢山の悲しい出来事は起こってしまうが物語は最後にはハッピーエンドを迎える。

だからこそ何も介入しない。いや、介入してはいけないんだ。

 

故に坂口の事も見捨てる事になるのかもしれない。けれど、それまでは清衣や坂口の近くにいよう。少しでも物語に影響がない程度には力になりたいから。

 

そして月日は流れ、坂口と清衣は順当に仲良くなっていた。坂口と話す清衣は、笑うことが増えて少しだけ前向きになった気がする。敬語をやめて、帰りにはいろんな場所に出かけた。クラスメイトや他のクラスの連中は、オレ達を遠巻きに見ては邪魔者扱いをしていたが苦ではなかった。

 

そして──

 

「ウィクロスもあなた達みたいな人も、嫌いです。もう付き纏わないでください」

 

坂口とオレを拒絶する絶対の終わり。

 

──横断歩道を走り出す清衣。

──追いかける坂口。

──猛スピードで走ってくるトラック。

 

これでいい。

これでやっと物語は進む。

 

思い出したのは坂口と清衣と過ごした少しの日常。この生活もここで終わる。もう戻れないんだ。オレが邪魔をするわけにはいかないんだ。

思い出なんていらない。楽しい気持ちも、嬉しい気持ちも、何もいらない。

 

だからッ──

 

歯を強く噛み締める。目の前の現実を受け入れろと心が叫ぶ。手を見れば爪が深く食い込み血が流れ始めていた。

 

オレは……俺は……

 

オレは堪らず走り出した。




橘梓
一応オリ主。転生なのか憑依なのか迷う存在。原作では名前しか出てこない清衣をいじめてたリーダーだがモブ。漫画だと清衣を「気持ち悪い」と言って人間不信にさせた女の子をモデルにしている。

水嶋清衣
一期では敵。外伝、4期では主人公となかなかわからないキャラ。この作品ではオリ主の影響はマイナス面で大きく被ることになる。

坂口歩美
WIXOSSのアニメに滅多に登場しない陽キャ。見た目や印象で人を避けない聖人。

用語解説
・WIXOSS
世界中で大人気TCG(大嘘)。

・セレクターバトル
闇のゲーム。ラスボスが運営するクソゲー。勝ち続ければ願いが叶う(大嘘)。負ければ次のゲームでルリグとして使われる。

・セレクター
プレイヤー。

・ルリグ
ウィクロスで使うカードの一つ。

・selectorシリーズ
小湊るう子を主人公とした一期と二期。

・Lostorageシリーズ
穂村すず子を主人公とする三期。清衣を主人公とする四期。

・コードピルルク
清衣がルリグとなった姿の呼び名。

・リメンバ
リメカス。吐き気を催す邪悪。清衣をいじめていたメンバーの一人。清衣のルリグとなって戦うが最後には裏切り、坂口を殺害する。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。