リメカスと一緒に清衣ちゃんをそこそこ曇らせる話   作:投稿するヒゲ

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月日が教えてくれた現実は

息をしている坂口を見る。

違う。息しか出来ない、病院のベッドで横たわっている坂口を見下ろす。

後ろで坂口の母親が話してくれる。曰く、坂口は家では猫を飼っていたみたいで。曰く、坂口はよく清衣の話をしていたみたいで。

 

曰く、坂口は心の底から清衣のことを大切な友達だと思っていたのだ、と。

 

清衣のために坂口が用意してくれた構築済みデッキを受け取り、清衣は隣の部屋へと足を運んだ。

 

「よう、清衣。元気……なわきゃないよな」

 

ベッドから上半身だけを起こしてカードを弄っている梓の姿があった。全身包帯まみれでギブスの上からどうにかカードを弄っている姿。

 

「あ、梓……わ、わ、私」

「あぁ……もういいから、いっぺんこっち来い」

 

頭をガシガシとかきながら清衣を手招きする梓。清衣は自信を恨んでいるのだから、当然の暴力を受けるのだと呆然としながらも従いベッドの側まで足を進めた。

 

「悪かった清衣。坂口も清衣も助けられなくて……本当に悪い」

 

そう言って梓は清衣を抱きしめた。

清衣には何を言われているのか理解できなかった。だってそうだろう。清衣は自分勝手にこれまでの関係を壊し、あまつさえ事故とは言え相手を殺してしまう直前まで追い込んでしまったのだ。いや、坂口に至っては死ぬよりも苦しいかもしれない容態だ。恨まれて復讐こそされど、こうして抱きしめられて謝罪されるなど露程にも考えてはいなかった。

 

「オレがもっと早くお前ら二人を助けられていればこんなことにはならなかったのかもしれない」

「ち、違う! これは全部私が悪くて!」

 

清衣の声が震える。

 

「私が坂口を……そして梓を……」

 

小刻みに震える清衣の身体を壊れないように優しく抱きしめる。癇癪を起こし、小さく暴れる清衣に梓は顔を歪めた。

 

「わたし……私は」

「ごめんな。ごめん、清衣。もういいから泣け。今泣いとかなきゃ、いけねぇんだ」

 

梓の胸であらかた泣き終えた清衣は改めて梓と向き合う。

 

「清衣、よく聞いてくれ。これから清衣にはたくさんの苦難が待ち受けている」

「梓……?」

「でもな、清衣なら絶対に大丈夫だ。もし本当につらくなったらオレに教えてくれ。必ず力になる、必ずだ」

 

真剣に見つめる梓の顔には嘘はなかった。目を泣き腫らした清衣には梓が伝えたい言葉の意味を捉えることはできなかった。

 

「坂口からはデッキを貰ったんだろ? だったらオレからはこのカードをやるよ」

 

『スペル【CRYSTAL SEAL】』

 

「清衣のこれからの戦いに役立ててくれ」

 

梓の顔は相変わらず曇っており、清衣は事情を聞こうと口を開こうとしたが梓が遮るように声を上げた。

 

「勝てよ清衣! 試合に負けて、勝負に勝て。お前の願いはお前だけのものだ!」

 

これ以上の話はないと言うように、梓はそのまま布団に包まり寝てしまった。

 

病院から帰った清衣は坂口から貰ったデッキを開く。このデッキは、坂口が清衣と遊ぶ為に買ってくれたものだと思い出せば再び涙が溢れた。

 

(やっぱりあなた達のこと嫌い……大嫌い。だって私はあなた達の心が初めから読めていたらよかったとか考えてる気持ち悪い奴なのに……なのにあなた達は)

 

清衣が静かに泣いている中、無遠慮に無慈悲に一枚のカードが光を発し、そこから声がかかる。

 

「初めましてセレクターさん。あなたは選ばれました。私の名前はリメンバ──あなたのお願いを叶える存在です」

 

こうして清衣の物語は幕を上げる。

 

 

 

 

数ヶ月経った。

オレは病室から車椅子で抜け出し、近くのカードショップへと向かった。

 

清衣はどうなったのだろうか。セレクターではないオレにはわからない。あれから清衣が一度も病院に来ることはなかったのだ。

だから、オレに出来ることと言えばショップに行ってピルルクに使えるカードを選ぶ事だけだ。えっ、リメンバに使えるカードは考えないのかって? どうでもいいだろあんな奴。どうせ清衣は勝ち上がって夢限少女になりピルルクになる。なってしまうのだから。

 

「やっぱり黒を併用すると強そうな気がする」

 

オレは事故によって動かなくなった足が引っかからないように車椅子を動かし、店内を後にした。

 

「SALE中のパックには福があるってな」

 

そう言ってオレはパックを開けた。

ふむふむ、やっぱり安売りしているパックは一つ前のやつみたいだ。見たカードばっかりだな。

 

「初めましてセレクターさん、あなたはえr」

 

オレはカードを破ろうと全力で力を込めた。

 

「ああ! ちょっと待って! 待って下さいよ〜! 私はあなたのお願いを叶える為のカードですよ!」

「うるせぇカス。リメカス。黙って本の栞にでもなってろ」

「ヒドイですよ〜。仲良くしましょうよ、私達きっと良いコンビになれますよ。私の占いでは相性バッチリです」

 

よくもいけしゃあしゃあとそんな考えてもいない虚言を言えるもんだ。

オレは盛大にため息を吐き出しながら目の前のルリグカード──リメンバのことを見つめる。

 

「久しぶりっていやぁいいのか? その様子だと、もう事を終わらせた後みたいだがよぉ」

「あらら、私の正体はもうバレちゃってるんですね」

「オレが気づかないと思われてる事もムカつくが、お前には許せねぇこと山ほどある」

 

一つ、清衣を泣かせた事。

一つ、坂口を殺した事。

一つ、沢山のセレクターを利用した事。

 

数え出したらきりがない。

 

「お前の願いの為にどれだけのセレクターが犠牲になったと思っているんだ」

「そんなの今は関係ないじゃないですか? 私と梓ちゃんのこれからの話をしましょうよ」

 

こいつ……マジで元の体に戻れたらいっぺんシめる。

 

「あなたはなぜかセレクターバトルのルールも知ってるみたですからね。予め私の目的を教えておきましょうか」

「別に知りたきゃねぇが、お前の願いは『別の自分になりたい』。その為に今は元の身体を探している最中……だろ?」

「スゴい! 凄いですね! 私と同じように『未来予知』の能力を持っているんですね!」

「ちげぇよカス」

 

マジで腹立つな、こいつ。

なんていうか、いまいち会話が成立しないというか。自分ひとりの為に話をされている気がする。本当に自分勝手な奴だ。

 

いや、待てよ、

まだリメンバが本の虫(物理)になっていないってことは本編主人公がまだラスボスを倒していないってことだ。それも、まだ清衣自身もアミカと出会いリメンバと対峙していないってことになる。

 

「どうしたんですか? 急に顔色が悪くなりましたね。良いですねその顔。さっきまでの鋭い目線浮かべる梓ちゃんも良かったですけど、青ざめている表情を浮かべる梓ちゃんはもっと可愛いです」

 

リメンバの戯言など頭に入ってこなかった。

オレはこの事態に戸惑いを隠せない。

 

負ければオレの身体はリメンバに利用される。そして勝てば、オレはルリグとなり別の誰かの元へと送られてしまう。

別に夢限少女にならならければ問題ない。確かルリグにはそれぞれレベル5への進化条件があったはずだ。それさえ満たさなければ"勝つ"事はあり得ない。だが、もしオレが勝てば負けたセレクターを不幸にしてしまうし、なによりリメンバがオレの身体で何をするかわからない。最悪、清衣の邪魔をする可能性もある。

 

「なにを悩んでいるのか検討はつきますがダメですよ。セレクターバトルはもう始まっているんです。あなたは戦わなければならない。逃げることなんてできないんです」

 

オレは泣きそうになりながらリメンバを見た。

 

「わかりましたか? わかりますよね? つまり、梓ちゃんはあんなに仲が良かった最愛の清衣ちゃんとも戦わないといけないんですよ!」

 

反論できなかった。

物語を変えるわけにはいかない。

結果を変えれば、物語が破壌する可能性が出てくる。変えてはいけない。

リメンバと清衣が戦い、清衣がアミカを救うという結果を変えてはいけない。

 

だから──

 

「一緒に遊びましょうね、清衣ちゃんで」

 

──オレは清衣の敵にならなければならない。

 

三日月の様な弧を描く不気味な笑みを浮かべたリメンバを片手に、オレは俯くことしかできなかった。




橘梓
清衣と坂口を突き飛ばしたが結局、坂口は救えず自分は下半身が動かなくなった。

水嶋清衣
原作よりも巻き込んだ人数が多いので曇り度合いがダンチ。現在、沢山の少女達を不幸にしてアミカにたどり着いたぐらい。

橋本アミカ
坂口と瓜二つの少女。

リメンバ
原作通りのクズ。

カード紹介
【CRYSTAL SEAL】
スペル。自分のいらないシグニを処理できて相手のカードを破棄させられる有能。
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