君の笑顔が見たいんだ!   作:んがんがん

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プロローグ エクシーズからスタンダードへ
プロローグ


 歯車の音が聞こえる。ガチガチと金属と金属が噛み合う音が。

 燃え盛る大地を巨人達が闊歩する。地の果てまで、ゆっくりと、ゆっくりと。彼らの体は鋼鉄で、心臓には幾つもの歯車が蠢いていた。

 気付けば自分も巨人の列に加わっていた。足元の小さな何かを踏み潰しながら、ゆっくりとゆっくりと進んで行く。

 一体何処まで続くのだろうか、この行進は。

 

「……おい」

 

 ガチガチと歯車の音が聞こえる。どうやら自分の胸からのものらしく、先ほどよりハッキリとした耳障りな金属音が全身に染み渡っていく……。

 

「おい!」

 

 

「おい、私の話を聞いていたのか?」

 

 怒号に驚いて顔を上げると、セレナがギュッと顔をしかめてこちらを見下ろしている。話と言われても、そんなもの聞いた覚えがない。そう返そうとしたが、それを言えば顔を真っ赤にして怒りそうだ。

 

「まさかとは思うが、寝ていたのか?」

「ああ、うんごめん、ちょっと寝てた。ここ最近、訓練が厳しくてさ」

「ふん、デュエル戦士とあろうものが弛んでいるぞ。何より、人の話を聞きながら寝るな」

「それは本当に、おっしゃる通りで……申し訳ない」

 

 腕を組んで不満げに眉をひそめるセレナへと手を合わせて謝罪する。一度ヘソを曲げると露骨に機嫌が悪いまましばらく接してくるのが彼女なので、しっかりと謝らなければあとが怖い。

 

「いやごめんよ、セレナ。ホントごめんって。でも本当に眠くて、昨日なんて『融合召喚には裏側セットされたカードでも可能か否か』っていう授業で間違えたら無茶苦茶怒られたりしてさ……」

「言い訳しても無駄だぞ!気が弛んでいる奴め」

「ひぃぃ、何でもするから許してってば!」

「何でも?何でもと言ったな?」

 

 セレナの目が細くなる。何か考えついたらしく、おもむろに懐からデュエルディスクを取り出した。げげっ、と思わず悲鳴をあげてしまった俺を見て更に顔をムッとさせながらセレナはディスクを起動させた。

 

「なら、私とデュエルだ。平謝りするくらいならばデュエリストとして私に誠意を見せろ!」

「えー!?デュエルはずっとやってるからもっとこう他の事で許してくれよぉ……」

「問答無用!良いから、デュエルだッ!」

 

 こう言われては仕方がない。セレナに促されるままにデュエルディスクを左腕に取り付けた。

 

「よし!デュエル!」

「デュ、デュエル!」

 

 

「覚悟はいいな!月光蒼猫(ムーンライト・ブルーキャット)でダイレクトアタックだ!」

 

 セレナが高らかに叫び、獣人が爪を尖らせて迫る。攻撃力は1600、ちょうど俺の残りライフと同じ数値だ。彼を守ってくれるモンスターはおらず、伏せカードもない。そういうわけで、敗北は確実である。

 

「おわあああっ!」

 

 月光蒼猫のダイレクトアタックが直撃。ライフは0になり、デュエルが終了する。またしてもセレナの勝利だ。初めて会った時から必ずと言って良いほどデュエルをしているが、いつも彼女の勝ちである。

 吹っ飛ばされた姿勢のままで手足をジタバタと動かして、負けましたというポーズをするとセレナは不服そうな顔をしている。

 

「いやあ、やっぱり強いねセレナは!」

「お前が手を抜いているだけだろう。何故必要のないタイミングで罠カードを何度も発動させた?あれが無ければ、私は負けていたぞ」

 

 墓地に送られていた何枚かのカードを取り出す。遊園地のアトラクションが描かれたそれらを見てニヤけるこちらを、セレナは何か汚いものを見る様な目でじっと睨んできた。

 

「全く……始める前はやりたくないと言っておきながら、それか」

「ごめんごめん、やっぱりいざデュエルするとなるとやる気出ちゃってさ。それに、セレナは遊園地に行った事がないんでしょ?デュエルをしながら、それっぽい体験をさせてあげたくてさ」

「だからと言って手加減をするなっ!噂は聞いているぞ?近く『オベリスク・フォース』に入隊する予定らしいな。そこまでの腕がありながら、デュエル中に遊ぶなど言語道断だ」

「違う違う、そういうんじゃないよ。頑張れば頑張るほど、息苦しいデュエルばかりするだろ?セレナとなら、少しだけ肩の力を抜いてデュエル出来る。こいつらも使えるしさ」

 

 とは言ってもセレナからしたら不本意なのは確かである。ごめんこめん、と手を合わせて謝る。初めて会った時は下手なデュエルをしようものなら一触即発だったのだが、交流を続けていくうちにわずかではあるが彼女の態度は軟化しつつあった。

 

「それなら私からも言わせてもらう。ここにずっと閉じ込められ、アカデミアから外に出る事も許されない私からすればまともにデュエルしてくれるのはお前くらいだ。そのお前が手を抜くな!」

「正論が飛んできた!ごめん、ほんとごめんよ!次はちゃんとやるから!というか、先生達はやってくれないの?デュエル」

「自分よりずっと幼い小娘にしてやられるのが気に入らんらしい。全く、それなら私を早く前線に連れて行けというんだ」

「うわぁ、大人げないなそれー!って、俺がこんな事言ったら怒られちゃうか」

「いいや、言え。お前も大声で言うんだ。声は大きい方が良い」

「勘弁して……」

 

 腹立たしげに唸るセレナ。物心ついた時からデュエリストを養成する機関「アカデミア」にいる彼女はいつだって外の世界……というより外の世界での戦いに憧れている。実力も備わっているのだから戦士として認められても良いはずなのだが、統率者であるプロフェッサーは断固拒否しているらしい。

 アカデミアのリーダーお抱えの謎多き彼女と一生徒に過ぎない自分がこうしてデュエルをする仲なのは、セレナによって暇つぶし相手として選ばれたせいである。監禁されている為に話し相手謙デュエル相手を大人達に希望し、彼女は以前から顔見知りだった俺を選んだのだ。

 

「エクシーズ次元への侵攻が近いと聞いた。もちろんお前も行くんだろう」

「ン、行くよ。未だに戦争をしにいくなんて実感湧かないけどさ。ちょっと前までの俺なら選抜されなかったんだろうけど……滅茶苦茶頑張ったよ、セレナに会う為に」

 

 それは本心からの言葉だった。初めて会った時から、俺はずっとセレナの為にデュエリストとして戦っていると言っても過言ではないのだから……。

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