君の笑顔が見たいんだ!   作:んがんがん

12 / 22
第十話 君も戦うの?

「黒咲に随分としてやられたようだな」

 

 壮絶なデュエルを経て、セレナに肩を貸してもらいながら部屋へ戻るとそこには零児の姿があった。窓の外に視線を向け、背中だけを見せたままで彼はまるで俺と黒咲とデュエルを行う事がわかっていたと知っている様子だ。白々しい言動に俺は苦笑いで返し、

 

「こうなると知っていた上で俺の存在を黒咲に告げたんだな?俺がどちらの人間か直にわかると言っていた理由がよくわかったよ」

「……待て、どういう事だ?赤馬零児、貴様あのデュエルを見ていたのか!?」

 

 セレナの問いかけに零児はようやくこちらを振り返る。やはりその表情は冷徹で、感情の機微というものをまるで見せようとしない。

 

「屋上から彼らのデュエルは見ていた。ランサーズのメンバーとなる以上、下手なデュエルをするようではいけない。ユージンがどれほどのデュエリストであるかを判断する為でもあった」

「結果はどうだ?」

「及第点、といったところだ。黒咲を相手にあれだけ粘ってみせた点は評価に値するが、デュエルに対してあまりにも後ろ向きな姿勢が感じられる」

「……まるで、アカデミアの教師達みたいな事を言うな、アンタは」

 

 手伝われながらベッドに腰掛け、嘆息に皮肉を交える。零児はそれを気にもかけず続ける。

 

「罠カードをメインとして相手の動きを観察しながら対抗策を練っていく。その戦法自体はなんら間違っていないが……逆に言えば選択を誤った場合のリターンに手間取るという事だ。君はプレイングミスからの復帰を誤り、黒咲に隙を見せた。原因が君の過去であるのは推察できるが、戦士としては不純物極まりない」

「言ってくれるな。そういうアンタはさぞかしデュエルが強いんだろうな」

「強い、という表現は誤りだ。私は勝てる戦いしか、勝てる商談しか望まない。間違いなく勝てる様に準備を進めそして実行に移す。勝利とは戦いまでのどれだけ備えられるかだ。君はどうだ?」

 

 一点の曇りも無い眼差しを受け、胸中にざわつきが生じる。勝利の為に備える、簡単に言うがそんな事出来るはずがない。デュエルの世界に確実など存在せず、何が起きるかなど判断出来ないからだ。

 ただそう反論しようと思っても俺には黒咲とのデュエルで度々起きた判断ミスばかりが思い出されてしまう。

 

「黒咲とのデュエルで君は自分自身を守るばかりだった。閉じこもるようなデュエルばかりではアカデミアには勝てないと、君自身がわかっているはずだ」

「―――――おい、そこまでにしたらどうだ」

 

 零児の容赦ない追求に俺が言葉もなくうなだれているところにセレナが割って入る。つい先程に庇われたばかりだというのにまたしても俺はセレナの世話になってばかりである。

 左腕に装着されたままのデュエルディスクを見せつけるようにして彼女は零児と向かい合う。

 

「セレナ、やはり君は彼に影響されているようだ。自分の事だけを考えていた君が誰かを気遣い、庇うとは」

「お前も変わったな。私を助けようとしてくれた時とは大違いだ」

 

 互いに僅かな牽制を交わされ、僅かに火花を散らせる。先に折れたのは零児の方で眼鏡のツルをクイと押し上げて、

 

「ユージン、君をランサーズに正式加入する。黒咲に関しては私の方からもある程度接触できない様に図るつもりだ。これからの方針を説明する、三〇分後に社長室へ集合して欲しい」

「結構俺ボロボロなんだけど、弱音吐いてる場合ではないか……わかったよ」

「……一応、救急箱の類は置いてある。好きに使うと良い」

 

 押し負けた、というよりはそこまで時間を割くまでもないと判断されたのだろう。零児は伝えるだけ伝えて部屋を去って行った。父親の事を考えるとよく似ているというか、中々どうして強かな人間である。

 ズキリと体が痛む。黒咲の苛烈な攻撃は相当なダメージを刻みつけ、重傷とまではいかないがかなり辛い。

 

「いってぇ~……セレナ、救急箱あるみたいだから探してもらえないかな。これくらいなら湿布貼るくらいでなんとかなるけど」

「少し待ってろ。ええと、ああ、これか。何処が痛い?教えてみろ」

「え?うーんと、とりあえず背中で」

「ここか」

 

 突然服をめくり上げられ、何事かと振り返るよりも早く思いっきり湿布が背中に叩き付けられる。衝撃と共に今度は湿布の冷たさが襲いかかり、俺はおごっと珍妙な悲鳴をあげてしまった。

 

「おふっ、あの、もう少し優しくお願いできますか……」

「まったく軟弱者め。さっきといい、もう少し胸を張れんのか。赤馬零児にあれだけ言われて黙りこくるなど」

 

 背中を撫でながらヒィヒィ呻く俺とは裏腹にセレナはかぶりを振り、苦言を呈してくる。むすっと唇をすぼめるものだから完全に叱られている気分である。

 気まずそうにこめかみを掻きながら、何と言ったら良いものかともじもじする。

 

「いやさ、零児の言葉は正しいと思ってさ。俺は相手に勝つ事ではなくて、自分を守ってばかりだった。黒咲とのデュエルだってそうだ。もっと攻めに転じる事は可能だった。それをしなかったのは……俺がどうすればいいのかわからなかったからだよ」

「エクシーズ次元での出来事を思い出していたのか?」

「まぁ、うん。黒咲に色々言われて、頭の中ぐるぐるでさ。でも大丈夫、セレナに喝!とされたもんだからもうクヨクヨしないつもり。……黒咲の事はこれからどうすればいいのかはまだわからないけど」

 

 セレナとの約束を守る為に俺はまだまだ頑張らなくてはいけない。それに俺はスタンダード次元をアカデミアから守らなければならない。

 罪悪感に駆られ自罰に走る暇があるのなら、身を挺して戦うのが現時点において最も優先すべき事なわけだ。

 

「……よし、決めた。私もアカデミアと戦う。ランサーズとやらに入る」

「ええ!?いや、でも」

「今のお前は放っておくと何をしだすかわからん。今度は私がお前の面倒を見る番というわけだな!それに……アカデミアを許せない気持ちは同じだからな。私だって戦いたい」

 

 俺は一度セレナに嘘を突いた事を咎められた。何も知らなくて良い、と必死に覆いをかけて閉じ込めようとしたからだ。彼女が真実を知り無茶をしないかと不安に思っての行動だったわけだが、今こうして向き合っている本人の瞳を眺めていると余計なお世話だったのではないかと思えてくる。

 セレナは強い。信じていたアカデミアの真実を知ってもなお、俺を心配してくれているほどだ。

 

「信じろ。私はお前が思っているよりずっと強いんだ。アカデミアが私を探してここに来ると言うのなら、この手で追い返してやるッ!」

「……ははは、流石セレナだ。じゃあ俺も信じるよ。って、いててそういえば体痛めていたんだった」

「よし!なら見せてみろ、また湿布を貼ってやるからな!」

「ああいや、出来れば優しくお願い!待ってそんな振り上げて貼るもんじゃないとおも、ぎゃあああああッ!?」

 

 

「全員集まった様だな。では、これよりブリーフィングと行こう」

 

 セレナとの激しい攻防を終え、社長室に向かってみれば零児と黒咲だけでなく見慣れないデュエリスト達の姿があった。俺より一つ二つ上といったところだろうか、全員が神妙な面持ちで入ってきた俺とセレナをねめつけてくる。

 彼らは何者なのかと尋ねるよりも先に零児が指を鳴らすと、部屋の電気が落とされ宙に立体映像が映し出される。ソリッドビジョンを利用したものの様で、舞網市全体を形作っている。

 

「現在開催されている舞網チャンピオンシップの試合形式を先程『バトルロイヤル』へと変更した。舞網市全体にアクションフィールドを展開し、出場者十六名をそこで戦わせる。そして乱入すると考えられる襲撃者、アカデミアの兵士をこの場にいるLDSユースクラスのデュエリストと……ゲストである残り二人で対応する」

「待て。私も手伝おう、ゲストは全部で三人だ」

 

 零児の説明にセレナが手をあげて介入すると、彼は珍しく眉をひそめて俺へと視線をよこしてくる。話が違うようだが?という疑いの目に俺は頷き返した。

 

「訂正しよう、ゲストは三人だ。彼らについて紹介しておこう。ユージンとセレナは今回の作戦においてアドバイザーとして参加してもらう」

「黒咲は違うのか?」

「彼はバトルロイヤルにおいてランサーズのメンバーを選考する役割を持っている。既に君も受けただろう?」

「……ああ、これでもかというほどにね」

 

 黒咲からの鋭い視線が向けられてくる。その左腕にはやはりデュエルディスクがあり、今この場で戦ってやっても良いという凄まじい敵意に溢れ、僅かに室内の空気をピリピリとさせる。

 零児は無言の圧力で抑えつつソリッドビジョンを回転させる。みるみる内に舞網市は形を変え、密林や古代遺跡へと変化していった。

 

「ユージンとセレナの二人にはアクションフィールドについて説明しておこう。スタンダード次元ではフィールドを自由に駆け回りデュエルを行う。自らのモンスターに乗り大地を駆け、空を舞うなどしてだ。そしてフィールド内にはアクションカードという追加ルールが課せられる」

「アクションカード……」

「デュエル開始と同時にフィールド内に散らばり、デュエリストはいつどのタイミングでも入手する事でアクションカードの効果を発動できる。それぞれがどの様な効果であるのかは……お楽しみというわけだ」

 

 アクションフィールド、そしてアクションカード。スタンダード次元におけるルールとは随分と娯楽性の高いものであるようだ。

 俺のアメイズメントは罠カードをメインとして扱うがその分手札の消費は非常に激しい。アカデミアとのデュエルでアドバンテージを得るにはアクションカードによってサポートしていく戦法を取っていくべきだろう。

 

「間も無くバトルロイヤルが開始する。その時が来るまでにユースクラスの者達はユージンとセレナから襲撃者の使用カードや戦法などを詳しく聞いておけ。恐らく君達が今まで経験してきたどのデュエルよりも激しく厳しいものとなる。ブリーフィングは以上だ」

 

 

「なぁ、君達は今回の敵とどういう関係なんだ?」

「どんなカードを相手は使ってくるんだ?」

 

 ブリーフィングが終わるなり、LDSの生徒達は俺とセレナへと詰め寄ってきた。零児から別次元についてそれとなく説明された様だが、それでも何が起きるのか彼らも不安を感じているようだった。

 俺としてもアカデミアと戦う仲間である以上協力を惜しむつもりはない。知っている限りの全てをユースクラスのデュエリスト達に教えて回った。

 基本的にアカデミアは魔法罠カードの使用を制限する『古代の機械』を使用してくるであろう事。

 圧倒的質量差で相手を押しつぶしていくチーム戦をメインとする事。

 中には年下である俺の忠告など聞かない、と反抗的な態度を取る者もいたがそれでも教えるだけ教えた。

 黒咲の姿はいつの間にか消えており、その事を他の人間に聞いてみても彼が誰ともコミュニケーションを取ろうとしていないという程度しか聞き出せなかった。

 

「セレナ、俺達も作戦までにデッキ調整をしておこう」

 

 作戦開始までは時間が無い。やるだけの事をやっておこうと考え、俺がデッキを覗き込んだ時の事である。

 

「……?」

 

 デッキに見慣れないカードが入っている。抜き取って見てみれば、それはアメイズメントカードの様であるがまったく俺の知らないものだった。

 

「……『恐楽園の死配人』?」

 




遂に登場する『死配人』なんですがもうどうせ二次創作だしアメイズメントカード足りなくてしんどいしで張り切って効果盛っていこうと思います
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。