あとルビの問題解決しました、字数が多すぎるとルビが表示されないようです。
更にお気に入り数ぐんぐん伸びていて喜ばしく思います。今後とも応援よろしくお願いいたします。
「くそ!どこに行った!?姿を見せろ!」
物音に誘われたセレナが密林の奥深くまで足を踏み入れてそれなりの時間が経過しようとしていた。しかし出口どころか次第次第に道は狭まっていく。ユージンを置いてきてしまった事に気付き、カッとなって動いてしまった短慮さに彼女は口中で毒づく。
肩に力が入りすぎている。精神的に著しい衰弱を見せているユージンの事を少しでも守ってやりたい、そんな風に考えた結果これまでとは違う感情が生まれ、更にその制御がうまくいかない事への腹立たしさのせいだ。
「なんだというんだまったく……これでは私がバカみたいだ」
モヤモヤとしながら、元いた場所へと戻るべく踵を返す。だがセレナはすぐに苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべ、身構えてしまう。何の気配もなく背後には見覚えのある男がデュエルディスクを構えて佇んでいたのだ。
過去の負傷からつけている眼帯、そして屈強な肉体。アカデミアでも一際目を引き、その実戦経験の多さから優秀なデュエリストとしても一目置かれているその名は……
「バレット……!」
「セレナ様、探しましたよ」
監禁されているセレナを監視する役割であった巨漢のデュエリストはゆっくりと歩み寄ってくる。全身から放つ威圧感に押し負けそうになりながら、逆に彼女はデュエルディスクを剣の様に構えて一歩を踏み出した。
アカデミアは予想通りスタンダード次元へと襲来した。恐らく他にも何人かやってきているのだろうが、ユージンは無事だろうか?
自分がバレットによって孤立する様におびき出された事を理解し、舌打ちをしながらセレナは全力の敵意を込めて敵を睨み付ける。
「来たなアカデミア!」
「共に融合次元へ帰りましょう。プロフェッサーは貴女を心配しています」
「断る。あんなところへ戻るくらいなら、ここで舌を噛んでやる!」
敵意を剥き出しにして吠えるセレナに呆れた様子でかぶりを振るバレットの仕草は、彼女の怒りを刺激させる。赤子か何かだと見下されているようなのだ。
故に全力で反抗する。牙を剥き、怒りを示してみせるのだ。
「困ったものだ。では、力尽くで連れて帰らせていただきます」
「来いッ!」
『デュエル!』
─1ターン目
・セレナ ライフ4000手札5枚
・バレット ライフ4000手札5枚
「先攻は私から行かせてもらいましょうセレナ様。私のターン!まずは永続魔法『
「チッ……」
監視役を任されるだけあってバレットの戦法は堅実そのものである。パンサー・ウォリアーは自身の攻撃力、その半分の数値を相手プレイヤーに与える。ここに獣闘機罠カードを加える事で相手のライフポイントを確実に削り取っていくのだ。
その戦法をあまりセレナは好みでは無かった。安定感を求めて相手の動きを制限しようとするバレットのやり方を姑息だとさえ感じ、出来る事なら叩きのめしてやりたいと願うほどなのだ。
「パンサー・プレデターの効果により相手に攻撃力1600の半分、800のダメージを与える!」
パンサー・プレデターから放たれた衝撃がセレナへと突き刺さる。まだ大きなダメージではないがここから更に畳みかけてくるのが獣闘機の強みであると把握している以上、警戒は緩めない。
「セレナ様、出来れば荒事は避けたかった。プロフェッサーは貴女を何よりも大切にしているのです」
「ふん!子供を部屋に閉じ込めて管理しておきながら大切などど、誰が信じるか!」
「……私はカードを2枚セットして、ターンエンドです」
─2ターン目
・セレナ ライフ4000→3200手札5枚
・バレット ライフ4000手札5→0枚
「私のターン、ドロー!」
(バレットの事だ、間違いなくあの二枚の伏せカードは獣闘機をサポートするモノ。では可能な限り数を減らして一気に畳みかける!)
セレナはバレットの戦い方を知っているのに加えてユージンとのデュエルで罠カードに対してある程度の対策を試みるようになっていった。毎回ユージンにドヤ顔を向けられるのに腹が立ったもので徹底的にやっつけやりたいと思ったからである。
「私は手札から『
「ほう……猪の如く戦う貴女らしくない戦法だ。さてはユージンの入れ知恵か」
「ああ!奴のおかげで伏せカードに対してこれでもかというほど警戒する様になった!」
「ふむ、では月光白兎の効果で私は1枚手札に戻しましょう」
まだ伏せカードは残っている。だが二枚同時オープンによるカウンターを削ぐ事が出来たと考えれば効果はあった。
セレナは続いて残る4枚の手札から攻撃を行っていく。
「私は魔法カード『融合』を発動!手札の『月光蒼猫』と『月光紫蝶』を素材に融合召喚を行う!」
密林を二色の光が照らす。うっそうと茂る樹木が作り出す闇を晴らすべくセレナは腹に力を込め、叫んだ。
「青き闇を徘徊する猫よ、紫の毒持つ蝶よ!月に引力に渦巻きて新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚、現れ出でよッ!『月光舞猫姫』ッ!!」
強力な連続攻撃を持つエースモンスターが召喚に成功し、セレナは高揚する意識に身を任せてバレットへと咆哮をあげた。
「私はアカデミアの所業をユージンから聞いた!貴様達がエクシーズ次元で罪も無い人々を虐げた事を私は許さない、この手で打ち砕いてやるッ!」
「セレナ様。それが次元を統一する為であると、そうお教えしたはずです。彼にどの様な言葉を吹き込まれたのか定かではありませんが……」
「いや、間違っているのはお前達だ!ユージンは、アイツは泣いていた。エクシーズ次元の人間をカードに変え、心に傷を負いながら私を悲しませまいと振る舞っていたのにたまらず泣き出したんだ!」
ユージンは多くの事をセレナに隠していた。本人が良かれと思ったのだとしても、それは信頼を置いていなかったと言っている様なもので隠されていた側からすれば不満でしか無い。彼が戦果をあげたと知り自分もそれに続きたいとやきもきしていたというのに、実はそうでなかったなど空回り極まりない。弄ばれたとさえ一度は感じたほどだ。
けれど落ち着いて考えていけば、全ては他次元への侵略などをするアカデミアに責がある。ユージンから笑顔を奪い去ってしまった絶対的な悪を、セレナは許すわけにはいかない。
「アイツはずっと笑っていた、私を守る為に。それだけは間違いない、それだけは信じられるんだ!」
「……そうですか。あの時ユージンをカードにするべきでした」
「何!?」
「エクシーズ次元で彼は恐怖に駆られ、あろう事か逃げ出して現地のデュエリスト達に与しようと考えていたのです。上官であった私はユージンが見込みのあるデュエリストであった為にあの時は潜入任務であったという事で体裁を保ったものの……セレナ様を拐かしてこのような蛮行に及ぶとは思いもよりませんでした」
ユージンが犯した過ちによってカードとなってしまった少女の恐怖に満ちた表情をふと思い出し、すぐに目の前にいる男と結びついていく。
『その子は俺のせいでカードにされた。俺が余計な事をしたから……その子を助けたかったのに、逆に追い詰める事になった』
彼は声を震わせて、乾いた笑みを浮かべながらそう話していた。自分の行いを告白してどんな反応が返ってくるのか、迫り来る恐怖と罪悪感に押しつぶされそうでいた姿にセレナは胸がズキリと痛んだのだ。
原因がここにいる。倒さねばならない敵は、ずっと近くにいたのだ。
「貴様か、貴様がアイツを……ッ!」
「酷な言い方かもしれませんが、彼は戦士には相応しくなかった。セレナ様を連れ出してしまった事からもそれは明白です」
「その口を閉じろ!ユージンを、私の友達をこれ以上愚弄するんじゃない!月光舞猫姫の効果により、月光白兎をリリースしてこのターン二回攻撃可能にして、パンサー・プレデターへと攻撃ッ!」
激昂のままにセレナが攻撃宣言を行う。月光舞猫姫の連続攻撃を行えばバレットのライフを大きく削り取り、圧倒できる。諭す様にユージンを嘲る口を無理矢理にもでも押さえ込める。
だが冷静に彼は襲い来るモンスターへ対して残る一枚の伏せカードを放った。
「罠カードオープン、『
「何!ぐ、あああ!?」
パンサー・プレデターを守る様に出現した鎖が月光舞猫姫へと絡みつき、自由を奪う。更にもう一本の鎖がセレナの腕へと巻き付いてしまい、ガッチリと食い込んでしまう。苦痛に顔が歪み、呻き声が漏れた。
「相手のデッキを把握しているのは貴女だけではありません」
「お、の、れ……!ぐぅぅぅ!!」
もがこうとすればするほど鎖はセレナの腕を締め付ける。悲鳴をあげながらも、しかしそれに屈してなるものかと歯を食いしばった。
攻撃を中断されてしまっただけでなく通常召喚さえ行えない。手札に残っているのもモンスターカード『
「ターン、エンド!」
「貴女はわかりやすい、だからこそ御しやすいのです。まだ子供なのですから」
「馬鹿にするな……!」
─3ターン目
・セレナ ライフ3200 手札5→1枚
・バレット ライフ4000 手札0枚
「私のターン、ドロー!パンサー・プレデターの効果により800ポイントのダメージを与える」
「これで、残りは2400……!」
「更に青鎖の獣闘機勲章は更なる効果を発動します。相手にダメージを与えた場合、その数値分だけ私のフィールドに存在する獣闘機モンスターの攻撃力をアップするのです。これによりパンサー・プレデターの攻撃力は1800から2600へと上昇!」
パンサー・プレデターの効果は攻撃力の半分を相手に与える……つまり数値が上昇すればその分与えるダメージも増加していくのだ。2600ともなれば次のターンには1300ものダメージとなってしまうだろう。
「バトル、私はパンサー・プレデターで月光舞猫姫に攻撃!青鎖の獣闘機勲章を装備しているモンスターは戦闘では破壊されない!」
「それ、では」
「パンサー・プレデターの攻撃力は2600、月光舞猫姫は2400。よって攻撃力の差は200、その数値分再び私のモンスターは強くなるのです!」
パンサー・プレデターが素早い動きで鎖でがんじがらめとなった月光舞猫姫へと剣を手に迫っていく。セレナはハッとして周囲を観察し、茂みの中にカードが一枚隠されているのを発見した。事前に説明を受けていたアクションカードだ。
現状を好転しうる可能性を秘めたカードを引き当てるべくセレナは駆けた。だがその動きを逃走ではないと即座に判断し、バレットは鎖を掴むと一気に手元へと引き戻してしまう。もう少しで届こうかというところでガクンと体のバランスを崩し、セレナは地面へと倒れ伏した。
「何を考えてかは問題ではありません。貴女が動き出そうとした、それだけでも私は許しません。聞き分けの無い獣には調教が必要なのですから」
「がはっ、くう……!」
反撃する事も出来ずにパンサー・プレデターの攻撃が月光舞猫姫を襲う。200ポイントのダメージがセレナへと与えられ、即座に青鎖の獣闘機勲章によってパンサー・プレデターは攻撃力を2800へと上昇させてしまった。
効果ダメージと戦闘ダメージ合わせて800が削られ残るライフは2200。バレットは次のターンに再びパンサー・プレデターと青鎖の獣闘機勲章でコンボを放っていく。まず最初に800ダメージ、これでモンスターの攻撃力は3400となり、バトルで1000ダメージを与えるので4400となる。つまりあと二ターン、それで命運は尽きるというわけだ。
「私はこれでターンエンドです。セレナ様、サレンダーしてください。そうすればこれ以上は苦しまない」
「断るッ!絶対に諦めない、貴様になど屈しない!」
「これは私からの提案ですが、貴女は自分の意思で逃げたのではなくユージンに無理矢理連れて来られたというのはどうでしょう?そうすればプロフェッサーは貴女をこれ以上アカデミアの奥へ幽閉しないでしょう」
「ふ、ふふふ……まるで私を倒してアカデミアへと連れ帰る事が決まっているかの様な、口ぶりだな」
「当然です。貴女と私では実戦経験は天と地ほどの差がある」
土埃にまみれながらセレナは立ち上がり、呼吸を整えてバレットを見据える。
勝利は確実、それは疑う余地が無い。パンサー・プレデターの攻撃力は2800、生半可なモンスターでは押し返せない。半端なデュエリストでは心が折れてしまい、サレンダーを選ぶだろう。
だがセレナは、自分でも驚くべき事に逆境の中でニヤリと微笑んでいた。
「何がおかしいのです?敗北が確実だというのに、どこにそんな余裕が?」
「それは、どうかな。勝負というものは最後までわからないだろう?」
初めて会った時、初めてデュエルした時、ユージンはそう言って大ピンチから大逆転してみせた。
「アイツを裏切るなど、死んでもごめんだ」
アカデミアでの長い時間を共に過ごしてくれた。彼なりに精一杯、励まそうとしてくれた。
そんなユージンを、唯一無二の友を見捨てるなどあるはずがない。約束まで交わしたのだ!
「私はアイツを守る!今度は私が助ける番だッ!」
─4ターン目
・セレナ ライフ3200→2200手札1枚
・バレット ライフ4000手札1枚
「デュエリストならば、戦士ならば最後まで諦めない!こんな鎖など恐るるに足らず、私のターン!!」
しっかりと腰を落とし、デッキへと手を伸ばす。鎖の締め付けが引き起こす痛みなど構いもせずに気合いを込める。
「うぉぉぉぉぉぉッ!ドローッ!!」
引いたカードを確認し、それがまさに運命のドローであったとセレナは確信した。諦めずに食いついていけばきっと願いは叶う、ユージンがそうしてきた様に。
「私は魔法カード『
「む……!?」
「そして融合を発動!フィールドの月光舞猫姫と手札の月光蒼猫を素材として、融合召喚する!」
雄叫びをあげ、月光舞猫姫は自身を縛り付ける鎖を引きちぎる。続いてその身を光へと変え、同じく姿を変えた紫蝶と共に再び密林がその輝きに照らされていく。
森がざわめく。それまでセレナを取り囲み、閉じ込めようとしていた木々は今や彼女を祝福している様だった。
「月明かりに舞い踊る美しき野獣よ、青き闇を徘徊する猫よ!月の引力により渦巻きて、新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!!」
二体のモンスターが溶け合い、膨大なエネルギーの爆発が木々を薙ぎ倒す。やがて爆風を伴い新たなるモンスターがフィールドへと軽やかに降り立った。
「もう私は誰にも縛られない!現れ出でよ、月光の原野に舞い踊るしなやかなる野獣ッ!
「融合モンスターを素材として、更に融合召喚を……ッ!」
「月光舞猫姫がいなくなった事により、装備対象を失った青鎖の獣闘機勲章は墓地へと送られた。これで通常召喚が行える!私は手札から月光紫猫を通常召喚し、効果を発動。自身をリリースし、フィールドの融合モンスター1体の攻撃力を1000アップする。月光舞豹姫の攻撃力を3800へとアップ!」
「パンサー・プレデターを、上回ったか……!」
「まだまだこんなものではない。お前の予想を上回る私のデュエルを見せてやる!行くぞバトルだ!」
体を縛る鎖はもうない。セレナは月光舞豹姫の出現によって薙ぎ払われた木の根元に置かれているアクションカード目指し、全力で駆けだす。
月光舞豹姫は相手モンスター全てに二回ずつ攻撃が出来るが、それでもバレットのライフを削りきれない。だがあと一押しを可能とするのがアクションカードなのだ。
素早い身のこなしでカードを回収し、効果を確認したセレナは勝利を確信し強く頷いた。
「アクションマジック発動、『エクストリームソード』!バトルフェイズ終了時まで自身のフィールドに存在するモンスターの攻撃力を1000アップ!」
「馬鹿な!?それは一体……!」
「バトルだッ!攻撃力4800となった月光舞豹姫で、パンサー・プレデターへと攻撃!」
月光舞猫姫を上回る敏捷性でパンサー・プレデターへと肉薄した月光舞豹姫は目にも止まらぬスピードでチャクラムを振るい、獣戦士を容易く切り裂いてみせる。だが攻撃を受け破壊されるはずのパンサー・プレデターは袈裟に斬られた傷跡を抑え、呻き声をあげて跪いた。
バレットは瞬時に気付く。月光舞豹姫の攻撃はまだ続くのだと。
「月光舞豹姫は相手モンスター全てに攻撃できる。だが一度目の戦闘では相手モンスターは破壊されない!そして相手モンスターと戦闘を行ったこのモンスターはバトルフェイズ終了時まで攻撃力を200アップする。これで月光舞豹姫の攻撃力は、5000だッ!!」
「こ、これほどとは……!」
「私をまだ子供だと言ったな?甘く見るなよ!月光舞豹姫で、再びパンサー・プレデターへと攻撃ッ!」
一度目の攻撃でバレットには2000のダメージが与えられた。残るライフはきっかり2000、そして5000まで攻撃力が跳ね上がった月光舞豹姫で攻め込めばそのダメージは2200となる。つまり、バレットは敗北するのだ!
衰弱したパンサー・プレデターに月光舞豹姫がトドメの一撃を放つ。完全に体を真っ二つにされ咆哮と共にモンスターは消滅、攻撃による余波はバレットにまで及びその巨体は吹き飛ばされ宙を舞うのだった。
「ぐあああああッッ!?」
バレットは地面へと墜落し、立ち上がろうにも全身を強く打った為に力なく崩れ落ちる。その姿を見てセレナは思わずガッツポーズを取り、どうだと胸を張って見せた。
「見たか!これが私の実力だ!」
「……ふっ、まさか貴女がこんなにも強いとは。最前線から離れたおかげで私の目も鈍っていたようだ」
バレットが装備するデュエルディスクから眩い光が放たれる。装着者が敗北した場合に備え融合次元へと強制送還させる機能だ。
「今回は私の負けです。しかしスタンダードへやってきているのは私だけではない。必ずや、貴女を……アカデミアへ……」
「おっと!捨て台詞はいらん。それよりプロフェッサーにこう伝えろ、セレナは凄く強い!とても強い!本っっっ当に強いとなッ!」
「良いでしょう。私としても、やぶさかではない……」
勝ち誇るセレナに呆れ果てているような、しかしどこか微笑ましい表情でバレットは完全に姿を消した。
あれほどざわめいていた森が途端におとなしくなっていく。自身の覚悟をハッキリと口にしたおかげでセレナは胸のつかえが取れていて、心地よい感覚に全身が支配されていた。
「……よし!早くユージンのところへ戻ろう。私がバレットをやっつけたと自慢してやる!」
デュエルの余波で木々を吹き飛ばしたおかげで視界はかなり開かれた。これですぐにユージンを見つけられるだろう、そんな風に思っていたセレナはどこからともなく彼の声を聞いた。どうやら近くでデュエルをしている様なのだ。
「バレットは自分だけではないと言っていた。となれば他にもアカデミアがいるのか!待っていろ!」
漲る体力にモノを言わせてセレナは森を進んでいく。友を助ける為に、何より自分も戦えるのだと宣言する為に。
段々とデュエルの現場へと近付いていく。もうすぐだ、とセレナが力強く進んでいった、その先には───
「笑えよ、ほら。笑ってみろよッ!」
『あ、あははははは、あははははは!』
「よぉし、良い笑顔だ。そんじゃあ写真を撮りましょうねぇ、はい、チーズッ!」
禍々しい光と共に、オベリスクフォースらしき制服の男達がカードとなって地面に落ちる。彼は、ユージンは満足げな様子でそれを拾い上げていた。
「……ユージン?」
思わず口を突いて出たのは眼前の光景に対する困惑の声だった。
ユージンはアカデミアと戦っていた。だが、倒した敵に対する彼の様子は明らかにおかしい。声を荒げて、不気味に微笑んで、挙句の果てにカードにしてしまった。涙を流し苦しんでいた姿とはとてもではないが同一人物とは思えない。
セレナの声に反応し、ユージンが振り返る。その口には裂けているのではないかと思うほどの笑みが浮かんでいた。
「良かったセレナ。無事だったんだね」
「ッ……!」
まるで蛇に睨まれたカエルだった。ユージンはセレナの姿に気付くや否や両手を広げ、満面の笑みと共に小走りで近付いてくる。咄嗟に彼女はデュエルディスクを構えていた。身を守らなければならないと本能的に判断したのだ。
ユージンは首を傾げ、
「セレナ、敵はいないよ。皆やっつけた、ほら!カードにしてやったんだ!」
そう言って三枚のカードを見せつけてくる。怯え、絶望に満ちた表情が刻まれたそれを目にしてセレナは吐き気を覚えた。気味の悪い笑みと、恐怖の顔。同時に多くの情報がなだれ込んでくるのだ。
「お、まえ」
「どぉしたんだよセレナ。なんだってそんな顔をするんだい?」
「……一体、お前の身に何が起きたッ!」
セレナの知るユージンではない。彼はいつも明るい笑顔で、隙あらばくだらない冗談を言う。そんな性格で、だからこそ全てが明らかになった時これまでにないほど落ち込み、そして苦しむ姿が惨いとさえ感じるほどだった。
だが今目の前にいる人間は嗤っている。人をカードにしておきながら愉悦に浸っている。
「……なんだい、そのしかめっ面は。何か辛い事でもあったのかなセレナ」
歩み寄ってくるユージンではない何かから逃げようと後じさる。すると目に見えて彼の瞼はヒクヒクと忙しなく動き始めた。
「そうかわかったぞセレナ。笑顔だ、笑顔が足りないんだ。折角だ、デュエルをしよう。そうすればきっとわかってくれる」
デュエルディスクを起動させ、ゆっくりと近付いてくる。立ち向かってはいけない、逃げるべきであると頭ではわかっているのにセレナは釘付けにされた様に動き出せない。
もし本当にユージンであるのならば、彼に何かが起きたのならば助けなくてはいけない。それが友達としての役目のはずだ。
「くっ……!」
「ふふふふ、ははははははははは!!!デュエ―――――」
デュエルの宣言が成される、その直前の事だった。突然セレナとユージンの間に何者かが割って入る。赤と青の忍者装束を羽織った二人組が颯爽と現れたのだ。
「御免」
「っ!?」
「なんだ、お前達は?デュエルの邪魔だ!」
「邪魔をしに参ったのだ。このデュエル、無効とさせていただく。『忍法 煙玉の術』!」
青い忍者がデュエルディスクにカードをセットすると同時に足下から煙幕が立ち上っていき、ユージンの視界を覆う。その隙を突いて赤い忍者はセレナを勢いよく抱え上げた。
「!?おい、何だ!何をする!」
「事情はのちほど。安全を確保しろと依頼されたまで」
「離せ、このっ……うわぁ!?」
忍者装束は伊達では無い様で、赤い忍者はセレナを抱えたまま猛スピードで駆けだした。すぐに青い忍者もあとを追ってくる。先程の息の合った動きとい、どうやらコンビの様だ。
安全を確保しろ、そう依頼されたと赤い忍者は言ったが一体誰によるものだというのか。そんな疑問は、すぐに煙幕の向こうから聞こえてくるユージンの悲痛な声によってかき消されていった。
「セレナ!セレナ待ってくれ!どこへ行くんだセレナ、セレナァァァァァァァァッ!」
微妙に前回の終わり方と展開が変わりましたが大丈夫です。前回はユージンの主観なのでちょっと変わるくらい良いのです。大丈夫です。ちゃんとセレナとユージンでデュエルはします、大丈夫です。
あとセレナが使用した融合回収ですが最初は「ええいオリカにしちゃおうっかな!」なんて思っていたところ普通にアークファイブ作中で融合回収そのものが登場していたので突っ込みました。『青鎖の獣闘機勲章』は作中にも登場している『紅鎖の獣闘機勲章』を出そうかと思っていたのですが、信じられないくらい悪辣なロックだったので仕方なくオリカにしました。
うっかりしていたので前回登場したオリカのテキストです
『驚楽園の住人<Kitchener>』
炎属性 レベル4
攻撃力1800 守備力1200
炎族 効果
このカードの①の効果は1ターンに1度しか発動できない。
①このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。手札からアトラクション罠カード1枚をこのカードに装備する。
②このカードにアトラクション罠カードが装備されている場合、このカードのコントローラーが受ける効果ダメージを半分にする。
『A・∀ KK』
①自分フィールドの「アメイズメント」モンスターまたは相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。
②装備モンスターのコントローラーによって以下の効果を発動できる。
●自分:1ターンに1度、装備されているモンスターのレベル1つにつき100ポイントのダメージを相手に与える。
●相手:装備されているモンスターの攻撃力・守備力はレベル1つにつき100ポイントダウンする。
デュエルの形式は今のところどれが一番わかりやすいでしょうか?
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十五話までの形式
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十六話からの形式