柊柚子は言った。友達に会う手伝いをしたい、困っている人を放ってはおけない、と。その為に出会ったばかりの、しかも事態を悪化させている融合次元からの人間であるセレナを助ける、と。
顔も同じで体格も似通っている。であればきっと互いに服を入れ替えてもきっと問題が無いはずだという提案を本来ならば突っぱねるべきであるのに、セレナは馬鹿正直にユージンと会えるチャンスに飛びついてしまった。別れる時には謎の忍者月影に「柚子を守れ」、そう伝えたが律儀に守ってくれているかどうかは定かでは無い。
早急にユージンと再会して、それからすぐに柚子とも合流しよう。デュエルディスクの通信機能は赤馬零児によって制限されている様だが、セレナから彼女へは問題無いはずだ。
(それにしても、よく似ていた)
遺跡地帯へとひた走りながら、セレナは柚子の顔を思い浮かべる。目も、口も、鼻も、全てそっくりだった。姉妹であるかと思い込んでしまったほどだ。
どうしてなのかを考えようにもその理由を初めて外に出たセレナでは思いつきもしない。それでも、自身の出自と何らかの関わりがあるのではないかと気付きはした。
(私に両親はいなかった。親代わりの人はいたが、すぐにプロフェッサーの元に連れて行かれて、それきりか。プロフェッサーは私が特別な存在だと言っていたが、関係があるのだろうか)
兎にも角にも、今はその事に思考を裂くべきでは無い。ぴしゃりと疑問を頭の隅に仕舞い込んだセレナの視界に古びた遺跡が入ってくる。遺跡地帯はすぐそこの様だ。
一番目立つ大型の遺跡から爆炎が上がる。デュエルが行われているのだと理解したセレナは足を速め、遺跡地帯へ入るとすぐにデュエルの現場となっている遺跡へと向かった。
石段を登ろうと足をかけたところで、頭上から悲鳴と共に男が転がり落ちてくる。見覚えのあるコートから、セレナはそれが黒咲であるとすぐに気付いた。
「黒咲!」
「お前は……」
しゃがみ込んだセレナは黒咲が苦しげに脇腹を押さえたのを目にし、怪我をしているのだと判断してその箇所に手を当てる。黒咲はびくんと体を震わせて、苦しげに肩で息をし始めた。
「酷い怪我だ。誰にやられた?」
「お前と同じ、融合次元の……」
コツコツと頭上から靴の音が聞こえセレナは頭上を見上げる。そこにはまた見覚えのある少年がキャンディーを口に咥えて佇んでいる。どうやら先程の爆発と彼と黒咲のデュエルによるもので、そして黒咲は負けたらしい。少年の勝ち誇っている表情は勝利した者が浮かべるソレだ。
「お前は、紫雲院素良だったか?」
「あれ、柚子じゃないか」
スタンダードへと送り込まれた融合次元の尖兵、舞網チャンピオンシップ内にて黒咲に敗北しアカデミアへと送り返された彼の報告がセレナが脱走するきっかけとなった。その点では彼がいなければ今の状況は起こりえなかったわけである。
だが今は感謝する必要は無い。再びスタンダード次元にやってきたと言うのなら、それはつまるところ侵攻を目的としている。であればセレナの敵以外の何物でも無い。
「私の名はセレナだ。勘違いするな」
セレナが構えたデュエルディスクに気付き素良は眉をひそめた。彼は柚子を知っている様だが、ディスクがアカデミアのモノだとわかったようだ。
「そのデュエルディスクは……じゃあ、キミがセレナ?」
「だとしたら、なんだ」
「ボクの任務はそこに転がっているエクシーズの残党を始末して、キミをアカデミアへ連れ帰る事。つまり一石二鳥ってワケなんだけどさ」
「ならば相手をしよう、と言いたいところだが!魔法カード『月食』を発動!」
セレナ一人であれば、素良とのデュエルを躊躇無く受けていただろう。一人残らずスタンダード次元から叩き出してやろうという心持ちであるほどだ。だが傍らには怪我人が苦痛に呻いている。それを放ってデュエルを受けるのはこの場においては、正しい判断とは言い難い。
発動した魔法カードはリアルソリッドビジョンによって目くらましとなって素良とセレナの間に闇を産み出す。灯りのない夜の如きそれに隠れて、セレナは黒咲の腕を肩に回し、力を込めて立ち上がった。
「歩けるか、一緒に逃げるぞ!」
「う、ぐ……」
黒咲は呻き声を返したが、セレナはそれを同意と受け取って走り出した。最初は歩調が合わずにつんのめりそうになったが、すぐに黒咲は荒い息遣いながらも足を速めてセレナへと合わせて始めた。
「何故、俺を助ける。俺はお前の仲間を叩き潰した男だぞ」
「柚子から妹の話を聞いた。アカデミアに攫われたとな」
「……」
「私達は争っている時ではない、そうだろう?今はアカデミアを倒す事だけ考えていろ」
「ぐっ……顔は瑠璃にそっくりだが、まるで似ていないな。お前は」
「お前じゃない、セレナだ!」
遺跡地帯を抜ける。素良が追いかけてくる様子はない。このまま別のエリアへと逃げていけば完全に撒けるだろう。
黒咲の顔色は優れない。何よりユージンとデュエルしていた時の強い意志を秘めた眼差しは緩みきっていて、それがセレナにはどういうわけか衝撃的だった。
「お前もそんな顔をするんだな」
「好きで、今の俺でいるわけではない。故郷を、仲間を奪われればもうかつての俺ではいられないんだ」
ギリリと歯を噛みしめ、また黒咲の目が鋭くなる。最初に抱いた憤怒の塊とでも言うべき印象は何処かへと消え失せて、彼からはむしろ悲しみだけが感じ取れた。悲劇とでも言うべき境遇に立たされながらも、それでも立ち向かおうとする一羽のハヤブサだ。
「俺は、アカデミアの人間に何を言っているんだ。怪我のせいで頭でもおかしくなったらしい。言っておくが、たとえなんであろうとお前達は俺の敵だ。赤馬零児が何を言おうとだ」
「それで構わない。私は逃げも隠れもしない」
「……奴は、ユージンはどこだ?」
「私にもわからない。何処かではぐれてしまった、探しているところだ」
痛みに顔をしかめる黒咲を横目に、セレナはユージンを探すどころか引き返していると遅く理解した。これでは再会はおろか怪我人を連れて更に状況が悪化してしまっている。
どうか彼が無事である事を祈るほかになく、セレナは歯噛みしながら黒咲と共に先を急ぐのだった。
※
ユーリという少年は俺が知る限りアカデミアで最強のデュエリストだ。たとえプロフェッサーでも勝てない、そう確信している。
幼い頃から俺は彼を知っている。同年代でユーリに勝てる者は誰もおらず、そして全員が弄ばれる様だったほどである。忘れもしない、誰とデュエルする時も、そして勝利するときも常に笑みを浮かべていた不気味な姿を。
そしてユーリはいつの間にかプロフェッサーが信用を置く存在となっていた。エクシーズ次元への侵攻の際にも重大な役目を課せられていたという話を耳にし、ならばきっと今回にも参加していると踏んでいた俺の予測は正しかった。
「ええと、それじゃあ僕と君達、1vs2のデュエルね?勿論不利な僕に先攻を譲ってくれるよね」
「ああ!?上等だ!真っ向からぶっ潰してやる!」
俺が返答するよりも早くバイクの少年、ユーゴが吠える。直情的極まりないその様子に一抹の不安を覚えながらも背後の柚子へと振り返り、精一杯微笑みかけた。
「柚子、下がっていてくれ。アイツは俺とユーゴでなんとかするから」
「でも私だってデュエリストよ。手を貸すわ!」
「ユーリは危険すぎる。いざとなったら逃げられる様にしてくれ!」
柚子の気持ちはありがたい。けれど相手がユーリとなれば話は別、むしろ俺は敗北を覚悟でこの場に立ってさえいるのだ。
ユーゴのデュエリストしての実力はどの程度のものなのか、それはこれから判断する。彼に期待を置くのでは無く俺自身でユーリを抑え込む気持ちでいなければ。
「よーし、それじゃあ僕から先攻で、次にバイクの彼とセレナ係クンね。一周するまでドローと攻撃は禁止だからね?じゃ、僕のターン!」
─1ターン目
・ユーリ ライフ4000 手札5枚
・ユーゴ ライフ4000 手札5枚
・ユージン ライフ4000 手札5枚
犬歯を剥き出しにして威嚇するユーゴ、そして黙り込む俺。二人の敵と五枚の手札を交互に見つつ、ユーリはニンマリと笑う。俺が大嫌いな、不気味な笑顔を。
「君達さぁ、肩に力入りすぎじゃない?リラックスしなよ、どうせ僕に負けるんだからさ」
「この野郎舐め腐りやがって!さっさとしやがれ!!」
「はいはい、じゃあ僕は……うーんどうしようかなぁ、アレで行こうかそれともアッチでやろうか。うん、じゃあこれにしようかな」
どんな手を出してくるのか、警戒心を剥き出しにする俺にクスクスと笑いながらユーリは手札からカードをディスクへとセットした。
「僕は『
凍える大地から幾つもの蔦が生え、やがてそれは一つに固まっていく。おどろおどろしい食虫植物が花開いた。これがユーリの使用するカード『捕食植物』、その名の通り植物族を中心として相手を文字通り貪り喰らう恐ろしいモンスター達だ。
「えーっと、これで僕はターンエンド。それじゃあ次は君の番だね、ユウゴウだっけ?」
「ユーゴだ!わざと間違えてやがるな……!二度とそんな口を叩けないくらいに叩き潰してやる!」
ユーゴの咆哮に呼応するかの様にバイクが唸り、途端に動き出す。驚くべき事に彼はバイクにまたがったままでデュエルを行うようだ。まさに異次元からやってきたかの様なその在りように、俺は遅れてユーゴが文字通り他の次元からの来訪者なのではないかという疑いを持った。
バイクに乗ってデュエルなど聞いた事が無い。では、その方式を当たり前に行う次元があるとすればどうだろうか。世界はスタンダード、エクシーズ、そして融合と別れている。ではその中にはきっと、ある召喚法を基点としている次元が……!
─2ターン目
・ユーリ ライフ4000 手札5→2枚
・ユーゴ 変動なし
・ユージン 変動なし
「俺のターン!俺は手札からチューナーモンスター『
ユーリの周囲をグルグルと駆け回りながらユーゴが召喚したのはどことなくデフォルメされたピラミッド型のサイコロだ。そして、チューナーモンスターという名前に俺は確信に至った。
アカデミアでは他の召喚法について教えられた。だがどれも実物を見る機会は無く、精々存在するのだと認識に留める程度でしかなかったが、その内の一つには『チューナー』と呼ばれる特殊なモンスターを別のモンスターにチューニングさせるというものがあった。
「そして手札の『SRタケトンボーグ』はフィールドに風属性のモンスターが存在する時、特殊召喚出来る!」
続いて現れたモンスターにはチューナーではない。これによりフィールドにはチューナーと、そうでないモンスターの二体が存在する事になる。
「俺はレベル3のタケトンボーグに、レベル3の三つ目のダイスをチューニングッ!」
三つ目のダイスは光輪へと姿を変えてタケトンボーグを包み込み、その身を文字通りチューニングしていく。チューナーと非チューナーこの二体のレベルを合わせる事よって強力なモンスターを産み出す召喚法、その名は……!
「シンクロ召喚!レベル6!『
チューニングされたタケトンボーグは跡形も無く消し飛び、新たに巨大な刃を携えた巨大なモンスターへと進化を遂げた。その出で立ちはやはりおもちゃのそれだが、しかし全身から漲るパワーは凄まじいものだ。
(やっぱりそうだ!ユーゴは、残された最後の次元から……シンクロ次元から来たんだ!)
「わー、シンクロ召喚だ凄いなー。いつか僕もやってみたいんだよねぇ」
「ハッ!テメェなんぞに出来るもんかよ!俺は魔剣ダーマの効果を発動、墓地のタケトンボーグを除外して500ポイントのダメージを相手に与える!」
魔剣ダーマの穂先から放たれたエネルギー弾がユーリへと直撃するものの、それは大したダメージにはならない。むしろその笑みはより一層深まり、楽しげだ。
「1ターン目からライフを削ってくるなんてせっかちすぎない?でもまぁバイク乗ってるしそのまんまか」
「その減らず口、いつまで保つか見物だぜ!俺はターンエンド、次はお前だぜ!セレナガカリ!」
「俺の名前はユージンだ!間違えないでくれ!?」
どうやらユーゴはユーリが俺をそう呼んだばかりに名前を勘違いしているらしい。彼もユーリから放たれる異様な威圧感を受けているはずなのだが、まるで物怖じしない。どうやら俺が思っていたよりもずっと強い様だ。
ではユーゴに負けていられない。俺も全身全霊でユーリへと立ち向かおう。
─3ターン目
・ユーリ ライフ4000→3500 手札2枚
・ユーゴ ライフ4000 手札3枚
・ユージン 変動なし
「俺のターン!俺は手札の『驚楽園の助手<Delia>』の効果を発動し、手札のアトラクション罠カードを相手に見せる事で自身を特殊召喚。更に手札のアトラクション罠カードを墓地へと送り、それとは別のアトラクションをフィールドにセットする。俺は『A・∀ WW』を墓地へと送り、デッキから『A・∀ HH』をセット」
『HH』には相手モンスターの効果を無効にする強力な効果を持つが、それ故に最後まで温存しておきたい切り札である。今回早くも準備しているのはユーリが繰り出してくる融合モンスターを封じ込めるためだ。
更に俺は間髪入れずに手札から新たなモンスターをフィールドへと召喚する。
「そして俺は『
『驚楽園の住人<Magica>』
闇属性レベル4 機械族
攻撃力1000 守備力1300
新たなる住人、それは機械仕掛けの魔術師だ。何枚ものトランプカードを全身に纏わせた姿はさながらトランプの王様とでも言うべきだろうか。
そしてその能力は魔術師を意味するだけあり、敵を翻弄する強力な効果を持つ。
「俺はMagicaの効果を発動する。俺の手札は残り二枚、一枚は『驚楽園の支配人<∀rlechino>』、もう一枚は『A・∀ MM』。これらを裏返してから……ユーリ!お前にはどちらか選んでもらおうか!」
Magicaの体から二枚のカードが出現し、ユーリの目の前にスライドしていく。彼は突然の二択にほんの少しだけ驚いた後、口元に手をやって考え込み始めた。
「ふーん、これってさ、当たり外れとかあるわけ?」
「ある。お前が選んだカードが罠であれば、アタリ。そのカードを俺は発動する事が出来る。罠でなければ……ハズレでそのカードは墓地へと送られるというわけだ」
「それじゃあ僕は……右のカードで」
ユーリが指差した右のカードがゆっくりと裏返る。それは『A・∀ RR』だった。当たりだ。
「ドンピシャで当ててくれた君にMagicaがアトラクションへと招待する。『MM』をDeliaへと装備!攻撃力は500ポイント上昇する!」
フィールドに突如メリーゴーラウンドが出現し、殺風景な氷山地帯を明るく照らす。ユーリは眼前に現れた巨大な建造物に感心して声をあげ、その周囲を駆け回るユーゴはそれを目にして「ウオー!」とささんだ。
「綺麗……」
背後の柚子も声を漏らす。セレナとそっくりの顔で微笑むその姿に俺はこそばゆさを感じながら、立て続けに残っているもう一枚、つまりはハズレのカードを指差す。
「まだ終わらない!罠カードが発動した事によって残る手札の『驚楽園の支配人<∀rlechino>』は罠カードが発動した場合、手札から特殊召喚出来る!」
「おおっ、まだ出るんだ。凄いなー!」
高速で回転するMMをバックに楽園の支配人は颯爽と現れた。俺は手札を全て使い切ったものの、これで完全な盤面を敷く事に成功した。HHの効果で融合モンスターの効果を無効にし、更に召喚された場合には∀rlechinoの効果でアトラクションを装備させる。
どうやってもユーリは俺どころかユーゴにも手を出せないはずだ。オベリスクフォースには遅れを取ったが、相手が一人であればここまで俺のアメイズメントは動けるのだ。
「最後に俺は∀rlechinoの効果で、墓地の『WW』を除外して永続魔法『プレデター・プランター』を破壊。これでターンエンドだ。さぁユーリ!お前の番だぞ!」
「うふふふふ、ははははは。君達凄いねぇ、片方がおもちゃで片方が遊園地ぃ?なんていうかさ、僕を楽しませる様に丁寧なもてなしをしてくれて凄い嬉しく思うよ」
展開を補助する永続魔法が破壊されたと言うのに、ユーリは更に笑みを深める。一体何がそこまでの余裕を生むのか、俺は万全を期したはずなのに背筋を冷たい何かが這う感覚に襲われた。
「おい!次はテメェだろ、早くしろ!」
「慌てない慌てない。ここからはカードをドローできるから……何が起きるか楽しみだね。僕のターン、ドロー!」
─4ターン目
・ユーリ 変動なし
・ユーゴ 変動なし
・ユージン ライフ4000 手札5→0枚
ユーリは俺をじっと見つめながら、デッキからカードを引き抜く。何を引いたか確かめたその瞬間、彼は可哀想なものを見る様な目を向けてきた。
「君ってさ、セレナと毎日デュエルしてたんだよね?いいなぁ羨ましいなぁ。そんな風にいつもデュエルしてくれる人が欲しかったよ。今この瞬間までは」
「……?」
「残念で仕方ないよ。君はここで、カードになるのが決まったんだからさ!僕は魔法カード『融合』を発動!」
ギラリと双眸を輝かせたユーリが発動したのは融合。つまり来るのだ、彼のエースモンスターが。
「ユーゴ!時間が無いから手早く説明する。奴が出してくるモンスターに気をつけるんだ!」
「んなモン言われなくてもわかってるッ!かかってきやがれ!」
「うーん君達仲良いね。嫌いじゃないよそういうの。ともかく僕はフィールドのスキッド・ドロセーラとセラセニアントを素材に融合!」
二体のモンスターが混ざり合い、新たなる力へと生まれ変わっていく。俺はセットされているHHを発動する準備をしてそれを待ち構えた。
「融合召喚!現れろレベル7、『捕食植物キメラフレシア』!」
「―――――あのモンスターでは、ない!?」
「うんうん、そういう反応を楽しみにしてたよ。見た感じ、君は僕への対策しっかりしてるみたいだからね」
俺の予想に反し、召喚されたのは鼻をつまみたくなるほどに濃厚な臭いを吐き出す巨大な牙持つ花だ。だがこのモンスターを呼んだところで、俺の罠カードによってその動きは妨害されてしまうはずだ。
∀rlechinoの効果を使ってカードを装備させれば、キメラフレシアを更に雁字搦めに出来る。しかし俺は何か猛烈に嫌な予感を覚え、効果の発動を宣言できない。
「……俺は!セットされていた『A・∀ HH』を∀rlechinoに装備!」
「じゃあ僕はバトル、キメラフレシアは相手モンスターの攻撃力を1000ダウンし自身の攻撃力を1000アップさせる」
「ッ……!」
∀rlechinoが破壊される事は避けなくてはならない。ユーリの思惑を読み切れず、俺は渋々効果を発動した。
「HHの効果!相手フィールドのモンスター1体の効果を無効にする!キメラフレシアの効果は、無効に……!」
「ありがとうその効果を使ってくれて、完璧なタイミングだよ」
「は……!?」
ユーリの残る手札は二枚。彼はその内の一枚を手に取って、そして……
「僕は速攻魔法『超融合』を発動!このカード効果に対して君達は効果を発動できない。僕は手札を一枚捨てて……自分相手を問わずフィールドのモンスターを素材にして融合召喚を行う!」
「まさか」
「君のフィールドに存在する闇属性モンスターは二体。それらを素材にして……融合ッ!」
超融合、俺はそんなカードをユーリが使っているところなど見た事が無い。もしや隠していたのか?
自分が彼の掌の上で踊らされていた事に気付き、心臓を鷲づかみにされたような衝撃が襲ってくる。完全にしくじってしまったようだ。
∀rlechinoが、Magicaが光となってユーリの元へと吸い込まれていく。何が召喚されるのか、俺はすぐに理解すると共に己の死を覚悟した。
「融合召喚!現れろ!飢えた牙持つ毒龍。レベル8、『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!」
獲物に飢え、全身に牙を持つその龍は妖しく光る双眸で俺を睨み付ける。ユーリのエースモンスター、恐るべき捕食者の頂点……!
HHは装備されていた∀rlechinoが融合素材となった事により自壊した。フィールドにはRRを装備したDeliaのみとなってしまっている。
「スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンはフィールドのモンスターを素材に融合召喚した場合、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全ての攻撃力を吸収できる。まずそこのお人形さんが1800に500加えて2300で、あとはけん玉が2200、合計分4500ポイントを加えて……うわぁ凄いな、攻撃力は7300!」
「そん、な」
「じゃあバトル。まずはキメラフレシアでDeliaを攻撃!」
キメラフレシアから放たれた蔦から牙が生え、Deliaを一口で噛み砕く。Deliaとの数値差は200、その分ライフが引かれると共に俺のフィールドはガラ空きになってしまった。
残るは俺のみ、そして毒龍は獲物を食わんと俺を見下ろす。
「トドメだね!スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンでDeliaに攻撃!」
俺は咄嗟に背後の柚子へと叫ぼうとする。俺の敗北は決まり、カード化は免れない。せめて彼女に逃げるんだと伝えるだけでも、そうでもしなければ己の無力さからどうにかなってしまいそうだ。
スターヴ・ヴェノムが咆哮をあげ、長い尾を叩き付けるべく鞭の様に振るう。直撃すればそれで最後だ。ここまでか、俺はこんなにも無力なままで終わってしまう。絶望に俺は唇を噛みしめ、瞼を閉じた。
「待ちやがれ!まだ終わってねえぞ!俺は墓地の三つ目のダイスを除外して効果を発動!相手モンスターの攻撃を一度だけ無効にする!」
ユーゴの声と共に俺の前面に三つ目のダイスがバリアを展開し、スターヴ・ヴェノムの攻撃を弾き返す。思いも寄らぬ助けに俺は思わず疾走するバイクを目で追った。
「ユーゴ……!」
「何諦めてんだ!まだ終わってねえからな!」
「……はぁ、盛り下がるなぁ。僕はターンエンドで、スターヴ・ヴェノムの攻撃力は元に戻る」
間一髪、ユーゴによって俺はギリギリ命を繋ぐ事が出来た。しかし以前窮地である。
希望があるとすれば、それはユーゴのターンだ……!
「俺のターンだ!この融合野郎、徹底的にぶっ飛ばしてやる!ドロー!」
─5ターン目
・ユーリ 手札3→0枚
・ユーゴ 変動なし
・ユージン 変動なし
ユーゴの勢いは止まらない。更にバイクは加速していき、同時に乗っているユーゴの咆哮も力強さを増していった。
空気が張り詰める。気のせいか氷山地帯全体に凄まじいエネルギーが集まっているのだと気付き、思わず俺は身構えてしまう。ユーゴは一体何をしようとしているんだ?
「俺はチューナーモンスター『SR赤目のダイス』を召喚!そしてレベル6の魔剣ダーマにレベル1の赤目のダイスをチューニングだ!」
「まだシンクロ召喚するの?今度はどんなのを出すわけ?」
「調子に乗っていられるのも、今の内だぜェッ!」
バイクの速度が上昇していく。速く、速く。光輪を纏い魔剣ダーマは巨体から美しい翼を生やし、その輝きはMMのものよりも強く大地を照らした。
「その美しきも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!レベル7、『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』ッ!!」
雄叫びと共にユーゴが召喚したのは、その口上に相応しい白銀の光を全身に迸らせる一体の龍だ。翼が周囲の光を反射し、ますますその身を輝かせるその姿に俺は目を奪われていた。
毒龍スターヴ・ヴェノム、そしてクリアウィング。二体のモンスターは相対し、互いに威嚇する。しかしその姿に俺はどこか胸騒ぎを覚えていた。
何かが、何かが蠢いている……!
超融合をこのタイミングで出したわけですが、割とアメイズメントをストーリーの展開上ガチで回してしまったためにひっくり返すべく使用しました。
ぶっちゃけ切り札と言いながら本編だと超越融合の前座みたいだったので本当に切り札感出していきたいと思います。
あとOCGカード使っていきますけども「なんで●●使わないんですか」みたいなのは勘弁してくださいお願いします。
デュエルの形式は今のところどれが一番わかりやすいでしょうか?
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十五話までの形式
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十六話からの形式