飢えた牙持つ毒龍、スターヴ・ヴェノム。
美しくも雄々しき翼持つ龍、クリアウィング。
ユーリとユーゴが呼び出した切り札である二体のドラゴンは互いに咆哮をあげ、膨大なエネルギーがその間で収縮と拡大を繰り返している。
異常なまでの出力に氷山が軋み、亀裂を走らせる。天変地異を引き起こそうかというほどの力が、どういうわけかドラゴンから放たれているのだ。
「君もドラゴン持っているんだ?奇遇だなあ。僕達結構似たもの同士かもよ」
「テメェと一緒にすんじゃねえッ!いちいち気色の悪りぃ野郎だッ!」
わずかにユーゴの口調に変化が生じる。怒気を孕み、敵意の塊と化しているかのようなその様子に胸中で何かがざわつき唸り声をあげる。
二人の少年の間で渦巻く力は、何かとてつもなく悪い物であると直感でわかる。肌にヒリヒリとくる威圧感、そして共鳴しているかのように雄叫びを上げるドラゴン……このままでは想像もし得ない結果が待ち受けているのではないか?
「え、何これ……ユージン!」
下がっていろと言ったはずの柚子から悲鳴が飛んでくる。何事かと振り返れば、彼女の手首あたりから眩い光が迸っている。どうやら手首に巻き付けてあるブレスレットからの光の様だった。
見覚えのあるブレスレットだ。確か、セレナが似た様なものをつけていた。また柚子とセレナの間に共通点が出現した事に関しては一旦頭の隅に押しやり、俺は柚子へと駆け寄る。
ブレスレットから放たれる光は点滅を繰り返していて警告をしているかの様に見える。
「一体どうしたんだ、これは」
「わからない。これまでにもこんな風に光る事はあったけど、でもここまでのは初めて……二人がドラゴンを召喚してからよ」
「やはりあのドラゴンか……」
スターヴ・ヴェノムとクリアウィングが巻き起こす力により、砕けた氷塊が大地に落ち破片をまき散らす。怪我をするどころか命を失いかねないその場において、ユーリは全く気にする素振りもなく、ユーゴも降り注ぐ破片を軽々と回避しデュエルを続行している。
「バトルだッ!俺はクリアウィング・シンクロ・ドラゴンで捕食植物キメラフレシアに攻撃!」
「あれ?僕のドラゴンじゃないんだ、まぁいいや。僕はキメラフレシアの効果を発動して、君のドラゴンから攻撃力をもらうよ」
「その気持ち悪ぃ花には退場してもらうんだよ!クリアウィングの効果、フィールドのレベル5以上のモンスターが効果を発動、もしくは効果の対象となった時そのモンスターを破壊する!そしてその攻撃力をクリアウィングに加える!」
キメラフレシアが異臭漂う溶解液を放つのに合わせて、クリアウィングの翼がキラリと輝いた。レベル5以上のモンスターが何かしら動きを見せた途端に発動する、融合モンスターに対して強力なカウンターとなり得る。
「ダイクロイックミラァァァァッ!!」
クリアウィングが光を迸らせ、キメラフレシアを一瞬にして消し飛ばす。そしてその攻撃力が合算され、スターヴ・ヴェノムの2800を遙かに上回る5000へと上昇した。これでスターヴ・ヴェノムを容易に撃破できる。
だが俺は、スターヴ・ヴェノムの隠された効果を知っている。何度か目にし、そしてどうやって勝つ事が出来るのかと何度も頭の中で考え抜いたほどにだ。
「これでテメェのドラゴンをぶっ倒せるぜ。攻撃対象だったキメラフレシアがいなくなった事で、クリアウィングはスターヴ・ヴェノムへと攻撃できる!」
「うわぁ、参ったな。僕負けちゃうな~!」
「よせ、ユーゴ!そのドラゴンを破壊してはいけない!!」
俺は咄嗟に叫んだ。それが果たしてユーゴに届いたのか、彼はこちらへと顔を向けた。何故止める、と苛立ちを隠さないその様子はやはり先程とは異なっている。
「ああ!?何言ってんだ!?」
「ちょっとちょっと、ネタバレしないでよ。折角僕がびっくりさせようと思っていたところなのにさ、君って楽しい事するの苦手なタイプなの?まぁいいや、仕方ないからバラしちゃおう」
スターヴ・ヴェノムとクリアウィングの共鳴は止まない。吹きすさぶ風から柚子を守らんとするものの、それより先に足場が砕け散ってしまいそうだ。
「スターヴ・ヴェノムは相手に破壊された時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全てを破壊して攻撃力の合計分のダメージを与えるんだ。僕の言いたい事わかる?」
つまりそれは、クリアウィングの持ちうる全てを投じてもスターヴ・ヴェノムを打倒したところでその効果によってユーゴと俺は負けてしまうという事だ。
だが逆に言えば破壊されなければスターヴ・ヴェノムの隙を突く事が出来る。俺のデッキに眠る『A・∀ VV』の様な手札に戻す効果ならば、破壊せずにあの毒龍をフィールドから引きはがせる。とはいえ俺の手札は0枚、次のターン何か動き出せるカードを引けなければスターヴ・ヴェノムはこちらへ矛先を向けるだろう。
「……俺は、カードを2枚伏せてターンエンドだ」
「あれ?さっきまでの元気はどうしたの。僕をぶっ倒すんじゃなかった?まぁいいや、じゃあ次は君のターンね、セレナ係クン」
攻撃をしようにも出来ず、やむなくユーゴのターンが終了する。手札0枚の状態で回ってきた俺のターン、スターヴ・ヴェノムを打倒するカードを引き当てねばならない。
「柚子、ここは危険だ。離れた方が良い。あの二人は何か、尋常じゃない」
「……あのユーリって人の顔、私の友達に、遊矢にそっくりなの。それがどうしてなのか、私がセレナと似ている事と何か関係しているのか、確かめたい。お願い、足は引っ張らないからここにいさせて!」
柚子はキュッと口を結び、きっぱりとそう言ってのけた。力強いその表情は、セレナがそこにいるかのようだ。
顔だけではなく性格まで同じならば、俺は少女を言いくるめる事など出来はしないだろう。かぶりを振り、
「これだけは約束してくれ。俺達が負けそうになったら、すぐに逃げる事。振り返っちゃダメだ」
「へぇ、負ける事が決まってるんだ。弱気すぎないかなあ?よくセレナは君みたいな奴について行ったね。今頃、別行動しているオベリスクフォースに捕まっているかもしれないと考えると、気の毒でならないよ」
ユーリがせせら笑う。生憎、勝てるかどうかの自信など盤面を返された時点で既に不安でしかないところだ。
とは言えこのまま負けるつもりなどない。何より、セレナを侮辱されるのは許し難い。
「セレナは強い、オベリスクフォースなんかには負けないさ。俺のターン、ドロー!」
─6ターン目
・ユーリ 変動なし
・ユーゴ 手札5→1枚
・ユージン 変動なし
引き当てたカードは今この瞬間に最も欲していたカードだ。喜びを顔に出さないようにと努めながら、
「俺は速攻魔法『アメイジングタイムチケット』を発動!デッキからアメイズメントカードを手札に加える」
これによってComicaを持ってくれば、そのままVVへと繋げられる。VVの持つ攻撃無効と手札へ戻す効果をComicaの特殊効果でターン毎に入れ替えていけば、ユーリを翻弄できるはずだ。
ディスクにサーチ可能なカードの一覧が並ぶ。その中からComicaを選ぼうとし、俺は見覚えのないカードを発見した。
『恐楽園の死配人<∀rlechlno>』、密林地帯で捨ててきたはずのカードが何故か俺のデッキに入り込んでいる。一体何故?拾った覚えはなく、思い返してみればそもそもデッキに入れられていた経緯から不明瞭だ。
ともかく今必要なのはこのカードではない、すぐにCoimicaを指定してデッキから引き抜く。
「……俺は『驚楽園の案内人<Comica>』を召喚し、効果を発動。デッキから『A ∀ VV』をフィールドにセットする。ユーリ、お前は何故柚子を狙う?彼女がセレナと似ている事と関係しているのか」
「んー?プロフェッサーがそうしろって言うからそうしてるだけで、僕はよく知らないんだよね。デュエルさせてくれるからいいかなって。それに、皆可愛いじゃない?怖がって震える顔とか良いよね?前に捕まえた瑠璃って子なんか強気に立ち向かってきちゃってさ」
「瑠璃……?貴方は瑠璃を知っているの!?」
その名前に覚えがあるらしく柚子が食いつくと、ユーリはわざとらしく肩をすくめた。人を食ったような態度にギリ、と歯を噛み締めてしまう。
「うん、僕が攫ったからね。で、リンって子も連れて行こうとしたらそこの彼に邪魔されちゃった」
「テメェ……人を誘拐しようとしておきながら悪びれもしねえのか!」
あまりにも軽々しい口ぶりにユーゴが吠えるものの、ユーリはどこ吹く風。むしろそうやって相手にしないという姿勢を取る事で、逆上する反応を楽しんでいるかのようだ。
「ユージン、セレナと友達なら黒咲の事知ってるのよね?黒咲には瑠璃って私にそっくり妹がいて、それでアカデミアに攫われたの!」
「妹……!?」
黒咲隼、エクシーズ次元の生き残りにして凄まじいデュエルタクティクスを持つ彼に柚子と似た妹がいた。
ユーゴは柚子の事を「リン」と呼んだ。もしも二人の顔が似通っていた為なのだとすれば、柚子、セレナ、瑠璃、リン、四つの次元に存在する四人の少女は皆同じ顔を持っているという事になる。
セレナがアカデミアに幽閉されていた理由がほんの少しだけ理解できた。
「ユーリ!何故少女を攫う?プロフェッサーは一体何を考えているんだ」
「もうアカデミアの人間じゃない裏切り者の君に、僕が教えてあげる理由はないよ。もうターンは終わり?」
「……アカデミアはつくづくろくでもない場所なのだと再認識した。計画変更だ、なんとしてもお前を倒す!ターンエンドだ!」
暴風吹き荒ぶデュエルの中で、俺は自分が真にやるべき事を改めて認識する。他次元への侵略どころか、誘拐まで行うアカデミアは許せない。かつて所属していた人間として、絶対に倒さなければならない。
─7ターン目
・ユーリ 変動なし
・ユーゴ 変動なし
・ユージン 変動なし
「じゃあ一周してきて僕のターン。ドローして……なるほどねえ。じゃあ僕は手札から永続魔法『種砲連射』を発動。1ターンに1度、デッキから『捕食植物』カードをデッキから墓地に送る事で相手プレイヤーに
300ダメージを与えて、相手フィールドのモンスターは攻撃力を600ダウンする。僕は『捕食植物スタパリア・ワーム』を墓地へ!」
ユーリが発動したカードから放たれたソリッドビジョンが俺とユーゴ目掛けて飛来する。実際に破壊をもたらすリアルソリッドビジョンならば危険極まりない。
ユーゴはなんとか回避し、実際のダメージを回避したものの、俺の方は間に合いそうにない。何より傍らの柚子まで攻撃範囲の中に入ってしまっている。
即座は俺は彼女を庇う。背中にいくつもの激しい痛みが走り、想像を絶する苦痛に呻いた。
「うおっ……!」
「ユージン!」
プレイヤーだけでなく、カードの効果によってクリアウィングは2500から1900、Comicaに至っては1200まで攻撃力がダウンしてしまう。
こちらからの攻撃は地雷となり、逆にあちらが攻撃しやすいように守りが崩される。彼らしいじっくりと相手をいたぶる戦法というわけだ。
「んー、ここはあっちのドラゴンをなんとかしたいところだけどなんだかセレナ係クンを放っておくと嫌な感じがするから、先にそっちからかな。バトル!」
「と、罠カード、『A・∀ VV』を発動しCoimicに装備!そしてその効果によって、相手モンスターの攻撃を無効にする!」
俺のライフはまずアメイジングタイムチケットによって800、次に種砲連射によって300、合計して1100ポイントも削られている。このまま攻撃力がダウンしたComicaを2800のスターヴ・ヴェノムによって破壊されれば1600ものダメージだ。さらに残るライフが次のターンでまた300削られてしまえば、風前の灯である。
VVの効果でとにかくスターヴ・ヴェノムの攻撃を無効にし、思惑の外れたユーリは不愉快そうな表情を浮かべた。毎ターンライフを削る事は出来るとしても、直接的な攻撃手段を封じられては満足に戦えない。彼の手札も少ない以上、まだ動きを封じ込められるはずだ。
「なるほど、じゃあ僕はターンエンドかな。はいお次」
「俺のターン、ドロー!……俺は、ターンエンドだ!」
ユーゴのターンが回ってきたものの、すぐにターンエンドする。クリアウィングの攻撃力が下げられていては、なんとかしてスターヴ・ヴェノムに打ち勝たなくてはならない。
しかし下手に攻撃力を上げて撃破しても、自身のモンスターを全て破壊されるだけでなく効果ダメージまで与えられる。完全に膠着状態だ。
「ちくしょう……覚えてやがれ!」
「はいはい、好きなだけ吠えていてよ。なんだか間延びしてきたなあ、セレナ係クン、何か面白いことしてみてよ」
出来ればユーリを驚かせる何かをしてやりたいところだが、罠カードを中心としているだけあってアメイズメントには爆発力が足りない。すぐに動けるようになるまで準備しなければならないからだ。
エースである∀rlechinoも融合素材として墓地へ送られてしまった。スターヴ・ヴェノムを抑えられはしても、こちらから能動的に倒す手段がないのだ。
だが柚子を連れて行かせるつもりはない、アカデミアに負けるつもりない。意を決して俺はデッキに指を置いた。
「……俺のターン、ドロー!」
─8ターン目
・ユーリ 変動なし
・ユーゴ ライフ4000→3700
・ユージン ライフ4000→2900
果たして引き当てたカードを覗き、ドクンと脈動が聞こえた。
『恐楽園の死配人』、覚えがなくデッキに存在して捨てたはずなのに再び舞い戻ってきた謎のカード。俺をおかしくする、不吉な存在。
ドクン、ドクン、とカードから何かの脈動を感じる。何かの声が聞こえてくる。
『奴を倒せ』『奴を止めろ』『奴を許すな』
『奴 を 一 つ に す る な』
思考が蝕まれていく。カードから滲み出るなんらかの力に、視界が白く染まっていく……!
※
その瞬間、ユーゴとユーリは同時に何かを感じ取った。本能的な嫌悪感、彼ら本人ではなくもっと奥の別のモノがそれを感知する。
柚子もまたブレスレットからの強烈な光によって異常事態であると悟り、思わずユージンから一歩下がった。
「───覇王、覇王!貴様の好きになどさせん、ここで一つになどさせはせん!」
豹変、とはこの事だ。裂けるような笑みを浮かべたユージンの姿は先程まで柚子の身を案じていたものとは全くの別物であり、その変貌にユーリはますます警戒心を強め双眸を尖らせる。ユーゴは戸惑いを覚え、僅かに眉をひそめた。
この瞬間より少し前に遡り、柚子の友人である榊遊矢が現在のユージンと酷似した状態へと変じていた事を知る者はこの場にはいない。榊遊矢から放たれた波動がユージンの内に眠る『何か』を呼び起こした事もである。
「ユージン、ねえどうしたの?」
「フィールドにアメイズメントモンスターが存在する場合、手札の『恐楽園の死配人<∀rlechino>』を特殊召喚出来る!」
氷山地帯を飲み込まんとするほどの強烈な光がディスクにセットされた∀rlechinoから放出されていく。やがてそれはスターヴ・ヴェノムとクリアウィングが巻き起こす膨大なエネルギーをその中に取り込んでしまった。
「……これは」
「どう、なってんだ?」
二体のドラゴンが生みだしていたエネルギーが消滅してしまった原因か、ユーリとユーゴはデュエル中に恐ろしいほどまで高めていた闘争本能を失ったものの、未だ光の原因であるユージンへと敵意を差し向ける。
「∀rlechinoが召喚・特殊召喚に成功した事で俺はデッキから『アメイズメント・ファミリーフェイス』を手札に加える。本来ならば毒龍を頂いているところだが、致し方ない。カードを一枚セットし、俺はこれでターンエンドとしよう」
「なんだろう、さっきまでテンション高くなっていたのに水をかけられたみたいだ。でも……なんで君そんなご機嫌なんだろう。そこが気になるなぁ!」
ユーリは先程まで完全に格下と見なしていたユージンに対して、これまでよりも強い感情と共に向かい合っていた。彼本人でさえも、それが何故なのかハッキリとわからないままで。
─9ターン目
・ユーリ 変動なし
・ユーゴ 変動なし
・ユージン 変動なし
「僕のターン、ドロー。カードを一枚セットし、『種砲連射』の効果を発動。デッキから『捕食植物フライヘル』を墓地へと送り、君達に300ポイントのダメージと600ポイント攻撃力ダウン。……その様子がおかしいモンスターを倒してあげたいところだけど、君は最後に取っておくよ。僕は攻撃力が1300となったクリアウィング・シンクロ・ドラゴンに攻撃!」
「ちっ、こっちに来やがった。罠カード『バーニング・ソニック』を発動、クリアウィングに装備して相手の攻撃を無効にして、ついでに攻撃力が500アップだ!」
ユーリの表情に陰りが見える。守りを崩すつもりでいたというのに、思いのほか守りを固められた事が気に入らないのだ。何よりユージンが浮かべる笑みに苛立っていた。
「ちっ……じゃあ、ターンエンド」
ユーリのターンが終了し、続くユーゴのターン。理性を取り戻したかの様にバイクは減速していく。
「っしゃあ!なんだかわからねぇが頭はスッキリしてやがる!おいユージン、お前何かやったのか!?」
「ユーゴ、俺に考えがある。お前に花を持たせてやるから、好きに動け!」
「は!?何言ってんだ、でもあの野郎のドラゴンが……」
「問題無い!いけ!」
楽しげに笑うユージンを訝しみながらも、しかし勝てると言うのならば従って損は無い。そこまで難しく考える事が好きでないユーゴからすればチャンスを逃す理由は存在しないわけである。たとえ相手が、言いようもしれぬ不安を抱かせる相手であっても。
─10ターン目
・ユーリ 変動なし
・ユーゴ ライフ3700→3400
・ユージン ライフ2900→2600
「……じゃあ行くぜ!俺のターン、ドロー!よくわからねぇがそんだけ自信持ってんだ、信じてみるぜ。魔法カード『スピードリバース』を発動、墓地から『HSR 魔剣ダーマ』を蘇らせる!」
「僕は罠カード『捕食植物蘇生』を発動し、墓地から『捕食植物スタペリア・ワーム』を呼び戻す!」
ユージンとユーゴが何かしら示し合わせたと見るや否や、ユーリは墓地から自身のモンスターを蘇生させる。種砲連射の効果によってデッキから墓地へと送られたモンスターである。
このタイミングで蘇生させたという事は何かしらの理由があってのものだろう、そうユージンはほくそ笑んだ。
「スタペリア・ワームはモンスターの攻撃力を変動させる効果が発動した時、その効果を無効にする!クリアウィングの効果を使うのならやってみなよ!」
「あっ、テメェ!」
「当然、問題無い。俺はComicaの効果により自身に装備されているVVをスタペリア・ワームへ装備させ、更にセットされているアメイズメント・ファミリーフェイスを発動!アトラクション罠カードを装備されているモンスターへとこのカードを追加装備させて、そのコントロールを奪うッ!」
「ッ!?僕の、モンスターを?」
Comicaがおぞましい植物へとシールを貼り付けると共に、うねうねと触手を蠢かせながらスタペリア・ワームはおもむろにユーリのフィールドからユージンの元へと移動してしまう。敵のモンスターを素材として融合召喚を行った彼のモンスターが、逆に敵に奪われたわけである。
「スタペリア・ワームはアメイズメントモンスターとして俺のモノとなり、更に∀rlechinoの効果を発動する。フィールドのモンスター1体を対象とし、その攻撃力を0にする!そしてデッキ・墓地から『驚楽園の支配人<∀rlechino>』を特殊召喚する!」
「……おお!そういう事か!じゃあ俺は魔剣ダーマの効果を発動して、そこにクリアウィング・シンクロ・ドラゴンの効果だ!」
死配人∀rlechinoの全身から放たれた光がスターヴ・ヴェノムへと浴びせかけられ、その攻撃力は瞬く間に0へとなる。あれほどまでの強大さを持っていた毒龍は目も当てられぬほどに衰弱し、萎びていた。
「僕の、ドラゴンが……!」
「魔剣ダーマを効果で破壊したクリアウィングの攻撃力は、うおマジか!?ぴったり4000!!」
600ポイント×2、合わせて1200の減少で攻撃力が1300まで低下していたクリアウィングはバーニング・ソニックの効果で1800へと持ち直し、更に魔剣ダーマを破壊して2200が追加された事でユーリの残りライフと一致していた。
「さぁやれユーゴ!トドメを刺してやれッ!」
「よっしゃアアアア!行くぜ、クリアウィング・シンクロ・ドラゴンで攻撃力が0になったスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンへと攻撃だァッ!」
「馬鹿な、僕が負ける……?そんなまさか!?」
完全に戦略が崩れ去り、ユーリの表情がたちまち歪んでいく。恐らくアカデミアの誰も見た事が無い、敗北を前にした恐怖と驚愕に満ちたその様にユージンの口角が釣り上がった。
だがそれはユージンであって、ユージンではない。もっと別の存在が浮かべるものだ。
「クリアウィング・シンクロ・ドラゴンの攻撃!旋風のヘルダイブ・スラッシャァァァァッ!!」
「ぐぅぅっぅぅぅぅ―――――!」
その身に疾風を纏い、クリアウィングが全速力でスターヴ・ヴェノムへと挑む。力を失った毒龍には最早拮抗する事も出来ない。攻撃が直撃してしまえば、ユージンとユーゴの勝利だ……!
瞬間、閃光走る。
まず最初にスターヴ・ヴェノムが姿を消し、次にスターヴ・ヴェノムが、そしてそれを操っていたユーリが消失した。
攻撃対象を失ったクリアウィングの攻撃が空を切り、ユーゴとユージンは顔を見合わせた。
「お、おい、アイツ何処行きやがった!?」
対戦相手が忽然と姿を消した事に動揺を隠せないユーゴがユージンの元へと駆けつけメットを脱ぐ。その素顔は、ユーリと瓜二つだ。
やはりコイツもそうか、ユージンは声に出さずとも心中で納得しつつ、背後の柚子へと振り返った。恐ろしいユーリがいなくなったと言うのに、彼女は警戒を崩そうとしない。むしろユージンに対して強い視線を向けている。
「アカデミアのデュエルディスクにはアカデミアへの強制転移装置が備え付けられている。だが、奴がそれを起動する素振りは無かった。ではお前か」
「……貴方は誰?ユージンはどうしたの」
「は?何言ってんだよリン、別にこいつはどうもしてなくねぇか?いやまぁさっきからヘンな感じはするけど」
「柚子、何故ユーリを飛ばした?奴を倒せば覇王の力を得られたと言うのに……それを防ぐ為か?」
ユージンが歩み寄れば、柚子は退く。何やら不穏な空気を感じ取りユーゴはすかさず間に割っては入り込みんだ。
「おい、どうしたんだよ急に」
「どけ覇王の分身。今はお前に用は無い」
「分身?ハオー?意味わかんねぇ事言ってんじゃねぇ!」
「気をつけて!彼はユージンじゃない!」
埒があかないと早々に見切りをつけてユージンはディスクを起動させる。明確な敵意を持ったその行動にユーゴは目を細めた。
「なるほどな、さっきから感じてたヘンなのの原因はテメェか!」
「どけと言ったんだ、ユーゴッ!!」
「駄目!」
再びデュエルが始まろうかと両者が身構えた、その時。柚子のブレスレットが光った。
しまった、とユージンが吐き捨てる様に呟き、顔を覆うが既に遅い。ユーゴと柚子は光によって先程のユーリと同様に掻き消えていた。しっかりと停められていたバイク毎、である。
「ちっ、逃したか。絶好のチャンスだったというのに。だがまぁ良い、覇王の気配はまだある。そうすればかつての力を取り戻す事も……」
∀rlechinoが発した強大な『光』、それによって変貌したユージンは破壊の跡に背を向けて何処かへと歩き出していた。
「感じるぞ、覇王の力を……!」
デュエルの形式は今のところどれが一番わかりやすいでしょうか?
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十五話までの形式
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十六話からの形式