君の笑顔が見たいんだ!   作:んがんがん

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これ面白いか!?と問われたら楽しいと思うんですが自信ありません!


第十六話 もう一度デュエルを

 紫雲院素良からの追跡を流れるべく走り続け、いつの間にかセレナと黒咲の二人は遺跡地帯を抜け、溶岩地帯へと辿り着いていた。セレナは逃げ出した場所にもう一度戻ってきてしまったわけで、逃げる場所が少しずつ無くなってきている危機感にタラリと汗が垂れた。

 黒咲の体は重い。負傷している体ではうまく歩けず、セレナに体重を預けてしまっているのだから仕方のない事だろう。時折苦痛に呻くもののそれを気にして歩くスピードを落とせば、彼はすぐに踏ん張って大した事はないと振る舞おうとした。

 

「アカデミアの連中はまだ来ていないようだな」

「……追いつかれても、俺が全員倒してやる」

「青ざめた顔で言うには少し威勢が良すぎるな。無理をするな」

 

 昔の自分だったら、こんな事は絶対に言わないなとセレナはひとりごちた。最初は敵であり、自分の勲章となる存在だとしか見做していなかった黒咲に肩を貸しているのだから尚更だ。

 

「アカデミアの人間に助けられる、とはな」

「私達はもうアカデミアからは抜けている。ユージンもだ。アイツは今、必死に自分が犯した事を償おうとしている」

「だから許せと言うのか?俺はそんなものは認めない、奴を……俺は絶対に許さない」

 

 故郷を滅ぼされ、妹を誘拐された。文字通り体一つで次元を渡った黒咲にとって、今更贖罪を聞く耳など持たないようだ。

 

「……お前の顔は、瑠璃によく似ている。そのせいかどうにも口が滑る。瑠璃はもっと笑うがな」

 

 一言余計な奴だ、とセレナは口を尖らせた。女子には優しくするものだ、などとユージンがぶつぶつ言っていたのをよく覚えている。

 とは言え負い目がある以上黒咲には強く出られない。文句を飲み込んだ。

 

「お前はユージンとはどういう関係なんだ」

「友人だ。アイツは幽閉されていた私に、遊園地の話をずっとしてくれた。とても楽しいところだとな」

「遊園地……」

「でも今のアイツは私の知る時とは違う。私に、あんなに微笑みかけてくれたアイツは──ッ!」

 

 セレナが口をつぐんだのは、左手首のブレスレットがチラリと光ったからである。物心つく前から着けていて、一体なんであるのかについてしっかりと考えた事はない。

 そんなブレスレットが僅かに光を放つという不可思議な現象に対して、どういうわけかセレナは疑いもせずに何らかのサインと信じて疑わなかった。

 

「……この、感じは」

「どうした、追っ手が来たのか」

「いや、それよりもこれは」

 

 何かが理性ではなく本能に語りかけてくる。恐ろしいものがやってきていて、その狙いはセレナにあると。

 不意に頭上から影が差し込む。それが攻撃の合図だと反応するのに、黒咲は怪我の痛みで僅かに遅れてしまい、来ると見越していたセレナの方が数秒早く動いていた。

 

「逃げろ!」

 

 空から降ってきたのは巨大な建物だった。建ち並ぶ高層ビルかと思いきやそうではない、突然空中に出現したのだ。

 黒咲を突き飛ばしたものの、セレナには回避の時間は残っていなかった。このままでは押し潰される、彼女は目を閉じて顔を背けた。

 

「再三の無礼、御免!」

 

 声と共にふわりとセレナの体は宙に浮いた。否、体を抱え上げられていた。覆面の忍者、月影だ。素早く動いて彼はセレナを間一髪のところで救い出したのである。

 

「月影!貴様、柚子について行くように言ったはずだ!」

「既に拙者は赤馬零児殿からの頼みを承っている。残念ながら、セレナ殿の言葉は聞けぬ!」

「なっ……!!」

「それよりもセレナ殿、我らが置かれた状況を!」

 

 言われるがままに周囲を見回せば、そこは先程までの溶岩地帯とはまるで違う場所だった。

 光が散りばめられた、宝石箱とでも言うべきだろうか、そんな光景がセレナの眼前に広がっている。

 

「遊園地……」

 

 ポツリとセレナは呟いていた。すぐそばではジェットコースターがビュンビュンと音を立てて駆け回り、離れたところには観覧車がそそり立つ。

 いつかきっとこの目で見よう、そう思っていた風景が突如として彼女の目の前に現れていたのだ。

 

「ソリッドビジョン、セレナ殿!これは何者かによる干渉!」

「だろうな。私は、どのアトラクションも見た事がある。ここは……アメイズメントプレシャスパークだ」

「む……?」

 

 セレナは何度もカードに目を通した。どんな場所で、どんなものがあるのかを頭に叩き込んだ。実際の遊園地でユージンに知識量で負けたくないと言う対抗心からだったが、一人でいる時にはちょうど良い暇つぶしだったのだ。

 そしてカードの中にはフィールド魔法が存在していた。恐らくセレナと月影を閉じ込めているのはそれだ。

 

「……出てこい、ユージン!」

 

 セレナは吠えた。こんな事が出来る人間は一人しか知らない、何故彼がそうしようと思ったのかはさておき敵意を持って行った事に対しての強い憤りがあった。

 

「そんなに怒らないでくれよ、折角セレナの為に用意したんだから」

 

 怒号に応えて、ユージンは姿を現した。賑やかなアトラクションとアトラクションの隙間を縫う様にして歩み寄ってくる彼の口元には、やはりあの不気味な笑みがあった。

 

「セレナ殿、お下がりを!」

「今度は邪魔させないよ」

 

 セレナを守るべく立ち塞がる月影の前に、更に巨大な着ぐるみが立ち塞がる。アメイズメントプレシャスパークの宣伝大使Bufoだ、とセレナが場違いな感想を抱く一方で、Bufoは巨躯を駆使して月影へと襲いかかった。

 

「む!?面妖な!」

「待てユージン!お前の目的は私だろう、ソイツは関係ない!」

 

 セレナが咄嗟に言い放つとBufoはピタリと動きを止め、主人であるユージンへと指示を仰いだ。彼はしばらく考え込んだのち、

 

「君がそういうのなら、仕方ない。でもそれなら忍者には指一本動かない様に伝えてくれないか?」

「月影、奴は私がなんとかする。お前は動くな」

「しかし……」

「何かあれば、その時は先に動いていい。だがそれまでに、奴と一対一で話したい」

「……承知」

 

 Bufoは月影が矛を収めると自身も剥き出しにしていた爪を戻し、いそいそとその場から立ち去っていく。どうやらこのプレシャスパークの敷地内にはああして凶暴な着ぐるみが潜んでいる様だ。

 月影も引き下がり、セレナはユージンと向かい合う。既に相手はデュエルディスクを起動させており、彼女もそれに続いた。

 

「セレナ、デュエルをしよう。昔みたいに楽しくさ」

「一体何のつもりだ。アカデミアと戦う、私達は互いにそう決めたはずだ!こんな事をしている場合ではない、そうだろう!?」

「……今はそんなの関係ないよ。大事なのは俺と君でデュエルをするって事さ!」

「ふざけるな!ちゃんと説明しろ、どういうつもりなんだ!!」

「だーかーら、デュエルだって!好きだろうデュエル!俺達、毎日デュエルしていたじゃないか。最近出来ていなかったわけだしさ、その機会を用意したわけさ」

 

 ユージンは人が変わった様にくつくつと笑い、セレナの言葉などまるで響いていないようだった。最後に話した時とはまるで違うその様に、彼女は先程から感じ続けている不吉な何かの元が仲間であるはずの少年から放たれているのだと理解した。

 一体全体、ユージンに何が起きたのか。何をどうしたら、ここまで変貌するというのか。

 

「偽物、なのか?」

「そうじゃない事は君が一番わかっているはずだ。俺は俺だよ、ね?さぁ今度は邪魔も入らない、お互いに全力でデュエルしようじゃないか。俺はもうフィールド魔法『アメイズメント・プレシャスパーク』を発動しちゃったから、手札四枚でスタートするって事で。セレナから先攻で良いよ」

「……デュエリストならばデュエルで語るべき、か。良いだろう。何がどうなっているのかわからないが、私の全力でお前の目を覚まさせてやる!」

「よぉし!それでこそだよ、セレナ!」

 

『デュエル!』

 

─1ターン目

 

「いくぞ!私のターン!私は魔法カード『融合』を発動し、手札の三枚の『月光』モンスターを素材に融合!」

「ん?三体で融合だって!もしかして俺が見た事の無いモンスターかな」

「黙って見ていろ!美しき獣達よ、月の引力により渦巻きて、新たな力と生まれ変わらん!」

 

 これまでで最も多いモンスター三体での融合召喚、それはセレナが罠カードをメインとしたデッキと戦い、その果てに導き出した対抗策である。

 

「現れ出でよ!月明かり放つ眩き野獣!『月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)』!」

 

『月光舞剣虎姫』

攻撃力3000守備力2600

 

 三つの光が混ざり合い、新たな融合モンスターを召喚する。金色の衣装に身を包み、その身から月明かりの如き輝きを放つその姿にユージンは顔を背け、舌打ちした。

 

「月光舞剣虎姫は効果の対象にならず、更に墓地の獣戦士族モンスター1体につき、攻撃力は200ポイントアップする!墓地には融合素材となった『月光蒼猫』『月光紅狐(ムーンライト・クリムゾン・フォックス)』『月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)』、これにより600ポイントアップして3600だ!」

「うお……凄い攻撃力だ」

「更に、墓地へ送られた『月光彩雛』の効果により墓地の『融合』を手札に戻す。そしてカードを一枚伏せてターンエンドだ!」

 

─1ターン目終了

 セレナ 手札5→1枚(融合)

 フィールド 月光舞剣虎姫 攻撃力3600

 

─2ターン目

 

 盤面は整えた。対象に取られない耐性を持ち、更に最上級モンスターを上回る攻撃力を持つ舞剣虎姫ならばユージンがどのような攻撃を仕掛けてこようとも苦も無く回避できるはずだ。

 

「なるほどね、俺とのデュエルを踏まえてそういうモンスターを出してきたのか。良いね、流石セレナ!じゃあ……こっちも頑張っちゃおうかな!俺のターン、ドロー!」

 

 楽しげな笑みを崩す事無く、ユージンがデッキからドローする。フィールド魔法『アメイズメント・プレシャスパーク』の効果はセレナもよく知っている。どんな戦法を繰り出すのかも、舞剣虎姫の耐性によってある程度までは凌げるのだ、彼は相当戦いづらいはずである。

 

「よし、それじゃあ俺は『驚楽園の案内人<Comica>』を召喚し、効果でデッキから『A・∀ WW』をセットする。そしてフィールド魔法『アメイズメント・プレシャスパーク』の効果!俺は1ターンに1度、アトラクション罠カードをセットしたターンに発動できる。これにより俺はWWを発動し、Comicaに装備させる。更に!罠カードが発動した事で、手札から『驚楽園の支配人<∀rlechino>』を特殊召喚!」

 

 立て続けにモンスターが出現する。Comicaは巨大な観覧車に乗り込んだ状態で、そして見慣れた帽子の支配人がセレナを迎え入れるように大袈裟なポーズを決めて。

 ここまではよく知るユージンの戦い方だが、まだ何かを仕掛けてくるとセレナの中で何かが警告する。残る二枚の手札から一体何が繰り出されるのか。

 

「その顔も良いね!セレナらしい力強さとそれでいて賢さに溢れている。だからここらで一回、とびっきりのサプライズだ。フィールドにアメイズメントモンスターが存在する場合、手札から『恐楽園の死配人<∀rlechino>』を特殊召喚できる!!」

「死配人……!?」

 

 もう一人の∀rlechinoが突如としてフィールドに現れる。明るく楽しげな本来のそれとは異なり、残忍な笑みを浮かべるその姿はセレナのよく知るアメイズメントをたちまち異界へと歪めていた。

 これまで何度もデュエルし、ユージンが使うカードはある程度把握していた。だがこのモンスターだけは違う、一度も見た事がないどころか強烈な違和感を覚えさせる。

 

(アレだ、あのモンスターがユージンをおかしくしている!)

 

 もう一人の∀rlechinoが現れてからというものセレナのブレスレットは更に強く光り、何かを訴えかけてくる。最初は単なる直感的なものだったが、だんだんとそれは声となってセレナへと語りかけてきた。

 あのモンスターを倒さなくてはならない。

 

「待っていろ、私がやっつけてやる!」

「ク、ククク良い表情だ。柚子とは大違い!」

 

 その名を聞き、セレナの頭に様々な感情が湧いた。

 ユージンを一緒に探すと言い出し、自分に徳などないのに助けてくれた柚子。月影がついていかなかったという事は、彼女は単身逃げていた事になる。

 

「ッ、彼女に会ったのか!?」

「会ったさ!でももうこの次元にはいないよ。心配しないで、アカデミアに捕まっていないのは確かだから。俺はカードを一枚伏せてターンエンド!」

 

 柚子に何が起きたのか、そしてそれにユージンは関わっているのか。本人から答えはなく、セレナに焦りが生まれる。

 ユージンの様子がおかしくなっているのはもう一人の∀rlechinoの影響だろう。だがあのモンスターを破壊してそれだけで終わるとは考え難い、このデュエルに勝利しなければ。

 

─2ターン目終了

 セレナ 手札1枚 

 フィールド 月光舞剣虎姫 攻撃力3600

 魔法罠ゾーン 伏せカード1枚

 ユージン 手札1枚

 フィールド 支配人∀rlechino 攻撃力2600

       死配人∀rlechino 攻撃力2600

Comica 攻撃力1400

 魔法罠ゾーン WW

 フィールドゾーン アメイズメント・プレシャスパーク

 

─3ターン目

 

「私のターン!ドロー!」

 

 ユージンを謎のモンスターから解放すべく、セレナは力強くカードを引き抜く。3600の攻撃力を持つ舞剣虎姫をもってすれば、死配人も容易く撃破できるはずだ。

 ところがユージンはニヤリと笑い、

 

「この瞬間!罠カード『A・∀ FF』を発動!」

「!?融合カードか!」

「ここまでいくとは想像していなかったみたいだねえッ!俺は二体の∀rlechinoを素材として、融合する!」

 

 レベル7のモンスター二体で融合召喚、背筋が粟立つ感覚にセレナは自分で喝を入れ、身構えた。

 

「楽園の支配人よ!真なる姿と一つになり、新たな力を生み出せ!!

 融合召喚ッ!レベル8、『恐楽園の破壊者(アメイズメント・デストロイヤー)<∀rlechino>』ッ!!』

 

恐楽園の破壊者<∀rlechino>

攻撃力?守備力?

 

 空気が凍りつき、プレシャスパークのあらゆるアトラクションがピタリと動きを止めた。

 音楽が止み、ただ楽園を照らす光のみが残ったその場に、これまでよりもずっと禍々しいモンスターが顕現する。それこそがユージンが召喚した新たなる∀rlechinoである。

 

「……ッ、これは!」

「∀rlechinoが融合召喚に成功した事により、効果を発動。デッキから可能な限りアトラクション罠カードをこのモンスターに装備させる!」

「フィールドにはすでにWWが……」

「つまり!四枚!俺はデッキから『MM』『KK』『VV』『HH』を∀rlechinoへ装備ッ!!」

 

 それまで完全に静止していたアトラクションが一斉に動き出す。メリーゴーラウンド、フードコート、海賊船、お化け屋敷……まるで命が宿ったかの様に蠢くその様はよく知る楽しげな様子とは異なり不気味だ。

 禍々しい∀rlechinoから放たれるエネルギーにより、アトラクションは歪な音を響かせながらセレナを取り囲んでいく。

 

「破壊者∀rlechinoの攻撃力と守備力はこのカードに装備されているアトラクション罠カード一枚につき700ポイントアップする。つまり攻撃力は2800、そしてMMの効果によって更に500上昇して3300となった。だがここでComicaの効果により、WWを∀rlechinoへ装備。これで攻撃力は3800!」

「舞剣虎姫を上回ったか……!」

 

 こうなれば下手に動く事など出来ない。セレナは唇を噛み、この場で何が出来るのかを考えた。

 手札に加えたカードは罠カード『月光小夜曲舞踏』、この場においてはあまり効果を成さない。

 

「……私は舞剣虎姫を守備表示に変え、ターンエンドだ」

 

─3ターン目終了

・セレナ

 手札2枚

 フィールド 変動なし

 魔法罠ゾーン 変動なし

・ユージン

 手札1枚

 フィールド 破壊者∀rlechino

 魔法罠ゾーン WW MM KK VV HH

 フィールドゾーン アメイズメント・プレシャスパーク

 

─4ターン目

 

「俺のターン、ドロー!破壊者∀rlechinoとKKの効果を発動。このモンスターに装備されているアトラクション罠カード一枚につき200ポイントのダメージを相手に与え、更にレベル一つにつき100ポイント、合計1800の効果ダメージをセレナに与える!」

 

 セレナを取り囲むアトラクションが勢いよく突っ込んでくる。メリーゴーラウンドの白馬は突然ロケット噴射かと思うほどの速度で襲いかかり、海賊船からは砲弾が飛来する。その悉くを舞剣虎姫が一対の得物で防ぎはするものの、しっかりとセレナのライフからは1800が引かれ残るライフは2200となった。

 

「それじゃあバトル!破壊者∀rlechinoで、舞剣虎姫へと攻撃!」

「くっ……!」

 

 セレナは咄嗟に園内を見渡す。フィールド魔法が敷かれているとは言え、まだ舞網市のアクションフィールドが発動している。ではアクションカードもプレシャスパークのどこかに落ちているはずだ。

 地面を蹴り駆けだしたものの、背後からは∀rlechinoが迫ってくる。アトラクションの隙間を縫い、巨大な石像の足下をくぐり抜けたところでセレナはポップコーンの屋台に一枚発見した。

 しかしそれを拾おうとするには一歩遅く、∀rlechinoが繰り出す攻撃によって舞剣虎姫が破壊されてしまう。その衝撃でセレナの体は宙を浮き屋台へと叩き付けられてしまった。

 

「ぐおっ……」

「効果の対象に出来なくても、真っ向から撃破すれば簡単なわけだよ。残念だったね!」

「罠カード、『月光輪廻舞踊』発動!自分フィールドの融合モンスターが破壊された場合、デッキから『月光』モンスターを二枚まで手札に加える。私は『月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)』と、二枚目の『月光蒼猫』を手札へ」

「ふふふ、悪あがきをしても無駄だよ。俺は残るComicaでセレナにダイレクトアタック!」

 

 楽しげに笑いながらComicaは全身から凶器を取りだし、セレナへと襲いかかる。直撃すれば残るライフはわずか800ポイントとなってしまう。 

 屋台へ吹き飛ばされた事は不幸中の幸いである。奇跡的にもアクションカードを拾い、セレナはすかさずそれをデュエルディスクへと叩き込む。

 

「アクションマジック、『回避』を発動。攻撃を無効にする……!」

 

 Comicaの動きを間一髪で躱し、セレナは屋台の残骸に背中を預けて安堵のため息をつく。首の皮一枚ではあるが、なんとかこのターンを切り抜けられたのだ。

 対するユージンは攻撃を回避された事がよほど気に入らないのか、余裕ぶっていた態度が僅かに揺らいでいる。眉をひそめ不快感をあらわにするその表情は、やはりセレナの知るものではない。

 

「ちっ、あったねそんなの。命拾いした、と言いたいところだけど残念なお知らせだ。破壊者∀rlechinoは自分が破壊される時、装備されているアトラクション罠カードを身代わりに出来る。更にアメイズメント・プレシャスパークの効果によって墓地にあるものとは別の罠をセットし、発動すれば……俺のモンスターは完全無欠ってわけだ!」

 

 全身に走っている痛みを押し殺そうと息を吐き、セレナは立ち上がる。罠カードの効果で新たにモンスターは補充でき、何よりライフもまだ残っている。つまりデュエリストとして戦う力は有り余っているわけだ。

 歯を食いしばり、腰を落とす。相手をしっかりと見据える。セレナがいつもデュエルの際に意識する構えだ。

 

「……確信した、お前はユージンではない」

「は?」

「ユージンは絶対にアトラクションをあんな風には使わない。アイツにとって遊園地は夢だ、憧れの場所だ。それをこんなにも歪めてまで戦おうとするはずがないんだ」

「何が言いたいのさ」

「そして私と何度もデュエルしたアイツならば知っているはずだ。こんな中途半端なデュエルでは私を倒す事は出来ないとッ!」

 

 セレナの胸中にあったのは禍々しい遊園地を支配するユージン、その背後にいる何者かに対しての憤りだった。

 初めてデュエルした時の事を覚えている。頼んでもいない説明をしながら、精一杯楽しませようと努力する姿を忘れはしない。底抜けに明るくひたむきなユージンだからセレナは信じられたのだ。

 

「その∀rlechinoを倒し、そして貴様を一発殴らせろ!ユージンを返してもらう!」

 

 腹の底に力を込め、めいっぱい叫ぶ。今セレナが引き出せる全力の咆哮だった。

 絶体絶命のデュエル。しかしその面持ちは自信に満ちあふれている。セレナには負けるビジョンなど欠片もなく、むしろ勝つ為にあらゆる思考が駆け巡っているのだ。

 

「私のターン、ドロー!!」

 

 運命の5ターン目が、始まる。




パラサイト・フュージョナーしてぇな

デュエルの形式は今のところどれが一番わかりやすいでしょうか?

  • 十五話までの形式
  • 十六話からの形式
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