君の笑顔が見たいんだ!   作:んがんがん

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前回セレナのターンなのに融合召還後効果発動とバトルという双六じいちゃんもびっくりな不正が行われていたので修正しました、自分でもびっくりです


第十七話 目を覚ませ!

「くそっ!中は一体どうなっている!?」

 

 拳を打ちつけるものの、それで壁が崩れるわけでもない。黒咲隼は舌打ちし、これでは埒があかないと判断してデュエルディスクを起動させた。リアルソリッドビジョンならば実体化させたモンスターで壁を破壊出来る。そして中のセレナを助け出すという寸法である。

 一度は撃破した紫雲院素良にしてやられた脇腹の傷がズキリと痛み、背骨にまで衝撃が走る。間違いなくデュエルなどしようものなら、悪化してしまう事だろう。

 だが突然現れたソリッドビジョンの向こうにはセレナがいる。敵対する姿勢を崩そうとしなかった隼を庇った彼女の姿が、脳裏に焼き付いていた。

 

(……瑠璃も、強い心を持っていた。いつもはお淑やかで声を荒げるなど滅多になかったが、いざという時には俺よりも力強かったほどに。セレナと瑠璃は、やはり似ている)

 

 隼はセレナを救いたい気持ちに駆られていた。別人だとわかっていても、最愛の妹である瑠璃の面影を重ねずにはいられないからだ。ピンチから救い出してもらった借りもあり、見捨てる事など出来なかった。

 

 だが手が震える。カードを取ろうにも、痛みのあまり視界が左右に歪んでしまう。隼の怪我は本人が思う以上に重傷、普通の人間ならば気を失っているだろう。

 

「ダメだ。瑠璃でなくとも、彼女は……」

 

 鋼の意志で隼は歯を食いしばり、デッキへと手を置く。だが肉体は応えられずにがくりと膝が折れてしまう。そのまま倒れ込んでしまおうかというところで、隼はぴたりと動きを止めた。否、止められた。

 

「大丈夫か!黒咲隼!!」

 

 鼓膜が吹き飛びそうな腹の底からの声に隼が背後を振り返れば、大人にも負けない凄まじい体格の少年が太い腕で彼の体を倒れないように支えてくれていた。

 

「お前は」

「うむ!!!俺は権現坂昇!!!事情はわからんが、このリアルソリッドビジョンについて何か知っている様だなッッッッ!!!」

「……中に人が閉じ込められている」

「その怪我で動くつもりか?やめておけッ!それはこの男、権現坂に任せてもらおうッ!!」

 

 動作一つ一つが力強く、ただ話しているだけであるのにその声量に隼はうめき声をあげかけた。

 権現坂昇、舞網チャンピオンシップ決勝戦まで登り詰めてきたデュエリストである。会話するのは今回が初めてだが、遠目から見ていた時と力強さはなんら変わらない。

 昇と友人であるはずの榊遊矢の姿は無い。隼の戦友であるユートのエースカードを何故持っていたのかを問い詰めようと考えていたのに別れて、それきりだ。何処に居るのか問いかけようにも今の昇は聞く耳など持たないだろう。

 

「よぉしッ!では俺は手札から―――」

「おっと!そのカードを向ける先は我々だ。デュエル!!」

「ぬおっ!?」

 

 突然投げかけられた声に隼と権現坂が振り返れば、出来ればこの状況で出会いたくはなかった凶悪な三人組がデュエルディスクを構えている。剣の様な形状から、アカデミアの刺客である事はすぐに判断出来た。

 

「馬鹿でかいソリッドビジョンが現れたものだから様子を見に来れば、お前がエクシーズ次元からの残党だな?」

「ぬぅッ、尋常ならざる雰囲気。こいつらが遊矢の言っていた他次元からの刺客か。黒咲、お前も知っているのだろう!」

「……そうだ。奴らは俺の故郷を破壊した融合次元、アカデミアだ」

「ならばッ!このデュエル受け手立つ!どの道、黒咲はここからテコでも動かんだろう!」

 

 昇は咆哮に近い声量でハッキリとそう言うと、黒咲を庇うようにしてアカデミアのデュエリスト達と向かい合った。

 誰かに庇われる事など随分と久しぶりである。スタンダードへやってきてからはユートとも別行動を取り、孤独に戦い続けてきた隼にとって昇の無骨ながらも確かな思いやりを持った姿勢は僅かに口元を緩めた。

 とはいえ昇だけにデュエルを任せるわけにはいかない。痛む傷を抑えながら隼は彼の横に並んだ。

 

「俺もデュエリストだ。傷を負っていたとしても、アカデミアを倒す!」

「無理はするなよッ!」

 

『デュエルッ!』

 

 

「一発殴るだって?威勢が良いのは結構だがセレナ、ここから君に逆転する事など出来るのかい?」

 

 異界と化したアメイズメント・プレシャスパークの中心に立ち、破壊者∀rlechinoを従えるユージンはもったいぶったしゃべり方でセレナをからかう。だが彼の言い分は確かに間違ってはいない。

 フィールドには五枚ものアトラクション罠カードを装備した攻撃力4000の∀rlechinoがおり、更にそれぞれのアトラクションカードからは様々な妨害が放たれる。つい先程までは対象に取られない耐性を持つ『月光舞剣虎姫』によってある程度ではあるが自由を確保出来ていたものの、それ以外の『月光』モンスターではどこまで太刀打ちできるか。

 

「……出来る。何故なら今こうして私が負けていない事で、お前の敗北が決まったからだ」

 

 だがセレナはやり返すかの様に不敵な笑みを返した。ユージンの眉がぴくりと釣り上がるのを確認し、更に彼女は笑みを深める。

 

「お前がユージンであれば、先程のターンで更に私のライフは削れていた。だが仕損じた!私に攻撃のチャンスを与えたのは失敗だぞ!」

「失敗だと?」

「ああ!覚悟しろ、思いっきり殴ってやる!」

 

─5ターン目

・セレナ

 手札2枚

 フィールド 0

 魔法罠ゾーン 0

・ユージン

 手札1今井

 フィールド 破壊者∀rlechino 攻撃力4000 

 魔法罠ゾーン WW MM KK VV HH

 フィールドゾーン アメイズメント・プレシャスパーク

 

「私は手札の『月光黄鼬』の効果を発動し、墓地の『月光彩雛』を手札に戻す事で自身を特殊召喚させる。そして月光彩雛を召喚し、この効果を発動!」

 

 この状況において、唯一ユージンの盤面を完全に崩壊させる手がある。そしてセレナの中では完全にその手へと繋げる方法が築かれていた。

 

「デッキ、もしくはEXデッキから『月光』モンスター1体を墓地へと送り、このターン彩雛は融合召喚を行う際そのモンスターと同じになる!私は『月光舞豹姫』を墓地へと送る!」

「……何をする気かわからないが、俺は∀rlechinoへと装備されているHHにより彩雛の効果を無効にする!」

「ふっ、お前は私の予想通りに動くな?大層な調子で話す割に単純な奴め!墓地の『月光紅狐』は自身を除外する事で月光モンスターを対象とする相手効果を無効にし、互いのライフを1000回復させる」

 

 不愉快だと言わんばかりにユージンの眉が釣り上がる。掌で踊らないと気が済まないと言いたげだ。

 

「ユージン、お前は大きなミスを犯した。私の『月光』がどんなモンスターであるか、覚えているか?」

「……む、まさか!」

「私の得意技はワンターンキルだ!魔法カード『融合』を発動し、フィールドの効果で『月光舞豹姫』となった『月光彩雛』、『月光黄鼬』、手札の『月光蒼猫』で融合する!」

 

 舞剣虎姫と同じくモンスター三体による融合召喚。だが今回は融合モンスターを含めて三体、つまりは最大級の素材で行われるまさに究極の切り札である。

 

「お前に散々やられたからな、私はこういうモンスターを用意したんだ!」

 

 力強く拳を握りしめ、集結していくエネルギーを抑え込むかの様にセレナは手を合わせた。さながら祈るかの様に。

 

「月光の原野で舞い踊るしなやかなる野獣よ、美しき鳥よ、青き闇を徘徊する猫よ!月の引力により渦巻きて、新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚、現れ出でよ、月光の原野の頂点に立って舞う百獣の王!『月光舞獅子姫(ムーンライト・ライオ・ダンサー)』ッ!」

 

 月光舞獅子姫

 攻撃力3500 守備力3000

 

 舞猫姫よりも、舞豹姫よりも、舞剣虎姫よりも力強く眩い存在がフィールドへと降り立つ。一対の刃を構えるその妖艶なる姿、異界の中にありながらもそのまばゆさは一時も揺らぐ事は無い。

 だがその攻撃力は五枚全てを装備し更にMMの効果で強化された破壊者∀rlechinoには届かない。何が出てくるのかと身構えていたユージンは、攻撃力が足りないと気付くや否や安堵の笑みを浮かべた。

 

「ふっ、なんだ。その程度では俺のモンスターには勝てないぞセレナ!」

「馬鹿だなお前は!私は墓地の『月光舞剣虎姫』を除外し効果を発動!フィールドの融合モンスターの攻撃力をターン終了時まで3000アップさせる!!」

 

 月光舞剣虎姫の力を託された事で舞獅子姫の攻撃力は6500まで上昇する。しかしそれでもセレナが謳うワンショットキルには届かない。

 加えて∀rlechinoに装備されているVVが存在する事により攻撃は防がれる。渾身の一撃でもユージンのライフを削りきる事は……!

 

「魔法カード『月光香』を発動し、墓地の『月光蒼猫』を蘇生し効果発動!」 

「……はっ!?」

「遅いぞ!月光蒼猫はターン終了時まで月光モンスターの攻撃力を倍にする!」

「舞獅子姫の攻撃力は6500……それの、さらに倍!?」

「6500の倍、つまりは……13000だァッ!」

 

 舞獅子姫の攻撃力が凄まじいスピードで膨れあがっていく。∀rlechinoとの数値差はおよそ9000、まともに喰らおうものならユージンの敗北は免れない。

 ユージンの表情に焦りが浮かんだ。自分が負ける、その事実にようやく気付いたのだ。

 

「くっ……!」

 

 慌ててユージンはセレナに背を向けて走り出した。アクションカードを取るべく走り出したのだ。無論逃がすはずもない。舞獅子姫を引き連れてセレナもそれを追いかけた。

 

「ユージン!聞こえているか。ワケのわからない力に操られている様だが、お前はまだそんな風にグズグズしているつもりなのか!」

 

 ユージンはジェットコースターへと乗り込む。だがセレナは最後尾の座席へと仁王立ちし、強風の中でも負けじと叫ぶ。

 

「バレットから全て聞いた。アレはお前の罪ではない、そうハッキリと言っておく!悪いのはアカデミアだ!」

「そんなもの、奴には聞こえん!この肉体の主導権は私が握っているのだ!」

 

 ユージン、否、その後ろにいる何者かが振り返り声を荒げる。その表情は怪物の様に険しく、何本もの皺が刻まれていた。

 

「お前は一体、何なのだ!?何故ユージンを操る!」

「貴様達を消すためだ、覇王の巫女!」

 

 覇王、その言葉にセレナの中で何かがざわついた。意味はハッキリとわからないというのにそれが邪悪だという事だけは感じ取れる。一体目の前にいる存在は何者なのか、言いようもしれぬ嫌悪感に苛まれながらも歯を食いしばり力一杯睨み返した。

 

「融合の覇王、そしてシンクロの覇王……そして貴様から力を奪ってやるつもりだったが、まだ力が足りない。我が力は未だ完全とは言い難い!」

「ふっ、何を言い出すかと思えば負け惜しみか!」

「ふざけるな!私は負けん、貴様の様な女に負けてたまるか!」

「ユージン、いい加減目を覚ませ!事情は知らんが、こんな奴に良いようにされるつもりなのか!」

 

 ジェットコースターが速度を増していく。左右に揺さぶり、上下に昇っては落ちる。その中でセレナは微動だにせず最前列の座席にしがみつく敵へと吠える。あくまで操られているユージンを助けようと考えて、言葉で説得しようとしているのだ。

 しかしその額にぶちりと青筋が浮かぶ。デュエリストとしての彼女の心が、言葉ではなくデュエルで決めるべきだと決断したのだ。

 

「ええい埒が明かん!バトルだ、舞獅子姫で∀rlechinoへ攻撃!!」

「おのれ……むっ!?」

 

 長い急カーブを過ぎ、トンネルを通過したところでユージンが手を伸ばしてアクションカードを拾い上げる。効果を確認し、勝ち誇りながら彼はディスクへとセットした。

 

「アクションマジック、奇跡!破壊者∀rlechinoはこの戦闘では破壊されず戦闘ダメージは半分になる。ダメージは9000の半分で4500、貴様が私のライフを1000増やして5000としたおかげで500残るのだ、ふ、ははははははッ!」

 

 宣言通り、舞獅子姫が振るった刃が破壊者∀rlechinoへと突き立てられるものの、破壊にまでは至らない。ユージンの残るライフも500残ってしまった。

 

「……阿呆め、勝ち誇るにはまだ速い!」

「ぬ!?」

「月光舞獅子姫は二度まで攻撃できる!」

「なん……!で、ではVVの効果によって相手モンスターの攻撃を無効に!」

「月光舞獅子姫は、相手の効果の対象にならず効果も受けない!」

「ッ……!!」

 

 最早逃れられる術を持たず、ユージンは絶句し口をぱくぱくと動かす。セレナは勝利を確信しながらも最後まで気を緩めず、むしろ右手を思いっきり強く握りしめた。

 一閃。舞獅子姫はジェットコースターの車両を縦に切り裂き、そのまま歪んだ支配人∀rlechinoを真っ二つに切り裂いてみせる。

 残るライフも完全に尽き、フィールド魔法『アメイズメント・プレシャスパーク』の効果が消えていく。光となって溶けるジェットコースターからユージンが逃げる様に飛び上がるが、セレナも追従した。

 

「馬鹿な!くそっ、まだだ、もう少し時間を……そうすれば」

「逃がすかァッ!!!」

 

 デュエルはセレナの勝利に終わった。となれば最後にやるべき事はたった一つ。何かに取り憑かれている友を解放してやらなければならない。

 地面に着地しプレシャスパークの崩壊に紛れ込み逃げ出そうとするユージン。だが不意に頭上に影が差した事で反射的に振り返ってしまい、ギョッと目を見開いた。動きが止まったその瞬間を目がけて、空中から落下しつつその加速でセレナの渾身の一撃が放たれた。

 

「目を、覚ませッ!」




ここまで読んでいただきありがたい限りです。
少し、というかかなり構成をミスっていますが今後も応援お願いします。

デュエルの形式は今のところどれが一番わかりやすいでしょうか?

  • 十五話までの形式
  • 十六話からの形式
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