君の笑顔が見たいんだ!   作:んがんがん

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2ヶ月も経ってしまい申し訳ないです。
またデュエル構成を工夫してみました。


第十八話 俺の敵は

「おい、ユージン!ユージン!」

 

 セレナの声が聞こえる。大丈夫だよと応えたいところなのだが体が重く、喉にまで力が入らない。目を開けてこちらに語りかけてくる彼女の顔を見るのが精一杯だ。

 どうやらまた俺はおかしくなっていたらしい。ハッキリと思い出せるのはユーリ、ユーゴの二人とデュエルをしている最中にまた恐楽園の支配人をドローしたところまで、そこからは朧げだがセレナと激しいデュエルを行なったはずだ。

 一体俺はどうしてしまったのだろうか。何がきっかけで、いつからあんな恐ろしい事をするようになったのか。思い当たる節がまるでなく、悶々としてか細くうめいた。

 するとセレナは俺の様子がまだおかしいと判断したのか右手をギュッと握りしめて、

 

「もう一発いくか」

「ちょ!ちょ、ちょっとちょっと待って!大丈夫です!大丈夫!」

 

 慌てて飛び起きてみれば思いのほか声を張り上げる事が出来、セレナも今度はちゃんと俺が言葉を発したので安堵して拳を緩めた。もう少し反応が遅かったら顔面に第二撃が叩き込まれていたところだ。

 気だるいながらも上体を起こす。俺ではない俺が発生させていたフィールド魔法は少しずつ消え、元のアクションフィールドへと戻り始めている。

 不意に視界の端に何者かが音もなく着地する。体を乗っ取られている時に俺からセレナを守ろうとした覆面の忍者だ。

 

「セレナ殿、その者は」

「もうなんでもない、元のユージンだ。このとぼけたツラを見ればわかるだろう」

「判別の手段もう少し温かみのあるものにしてもらえないかなセレナ。ええと、君の名前は」

「拙者は月影。このバトルロイヤルにて零児殿よりセレナ殿を見張るよう頼まれている身。ユージン殿、先程までの異様な風体に関しては全て拙者から零児殿へ知らせておいた」

 

 そいつはまずいな、と俺は頭を掻いた。零児にアカデミアからのスパイなどではない、そう証明するのもこのバトルロイヤルに身を置いた理由であると言うのに、逆にセレナは襲いかかると言うトラブルを起こしてしまった。

 誰が見ても今の俺は危険人物に相違ない。黒咲あたりにダメ押しされれば俺はランサーズから外されてしまう。けれどそれは勘違いなどではない、確かに俺が起こした問題である以上どうやって言い訳したものか思いつきもしない。

 しばらく考えたもののこちらをじっと見つめる月影にはあらゆる言い訳が通用しそうになく、俺はガックリと肩を落としたが、セレナが代わりに口を開いた。

 

「ユージンはアカデミアのデュエリストと戦いそして勝利した。違うか?」

「しかしセレナ殿へと牙を剥いた」

「私とこいつの仲だ、そういう事もある。デュエリストとはそういうものだ。違うから?赤馬零児の計画に何か支障をきたしたわけでもない」

 

 セレナは俺を庇ってくれている。どう考えてもその行為に利点などない、ただ彼女は守ろうとしているだ。

 何か俺も言わなければならない、セレナにばかり助けてもらってどうするというのか。こうなっている原因は俺だというのに。

 月影の瞳はじっと俺達へと向けられている。とてもではないが耳を貸してくれるとは思えないし、事実かぶりを振った。

 

「懇願するのは拙者ではなく、零児殿ではないかと」

「どうせ貴様のデュエルディスクからでも私を見ているのだろう?何故私に監視の目をつけた。その理由は私に利用価値があると踏んでいるからだ、デュエリストとしても……赤馬零王への交渉材料としても。ある意味人質の様なものだ、それならば人質らしく私はわがままを言わせてもらうぞ!要求を飲まんというのなら私は貴様の味方になどならん!」

 

 月影が眉をひそめる。恐らく彼は今、なんらかの方法で零児とコンタクトを取っているのだ。そして零児は答えあぐねているのだ。

 そこで俺は、ユーリとのデュエルの最中に彼がセレナだけでなく、柚子まで連れ去ろうとしていた事を思い出した。姉妹のように顔が似ている二人を目的とする理由まではわからないものの、それがアカデミアにとって必要なのだ。

 どこかのタイミングで零児へと伝えなければならない。そうすれば話を聞く耳を持ってくれるはずだ。

 

「もしも怪しいと思うのなら、ユージンは私が監視する。そして月影に私を監視させろ。それなら文句はあるまい」

「……」

 

 月影が口を閉ざす。しばらくして、彼のデュエルディスクから映像が空中に投射される。映っているのはもちろん零児だ。

 今しかない、俺は遮られる前にと口を開き、

 

「零児、聞いてくれ。俺はユーリというアカデミアのデュエリストと戦った。奴はセレナだけでなく、彼女と顔が似ている柚子という少女までアカデミアへと連れて行こうとしていた」

「柚子?ユージン、彼女に会ったのか?」

「会った。些細は後で話すが、要点だけを。アカデミアの、赤馬零児の目的は次元侵略だけではない。ユーリの言葉通りならば、エクシーズ次元とシンクロ次元にもセレナに似た顔の少女達がいる。それがどうしてなのかはわからないが……何かあるんだ!」

 

 零児の表情に、僅かであるが陰りが見える。俺はその隙を逃さずに、さらに続けた。

 

「俺を信じられないというのはわかる。だがこれだけは信じて欲しい。俺はアカデミアの敵だ、次元を侵略しようとする赤馬零王の敵だッ!」

 

 自分でも、何故セレナへと襲いかかってしまったのか。それだけは俺にもよくわかっていない。だとしても一つわかっている事は、俺の中に芽生えた燃え盛るような怒りだけである。

 俺が脱走した為に両親はカードにされてしまった。この次元にアカデミアを呼び込んでしまった。

 怒りが渦巻いていく。自分への怒り、そしてアカデミアへの怒りに。

 零児は目を細め、それから納得したように頷いた。

 

『君は、自分が敵ではない事は行動で示すと言った。では今回もその様にすればいい』

「……よろしいのでござるか?零児殿」

『構わん。君達からそう離れていないところで黒咲がデュエルをしている。ユージン、君がアカデミアの者ではないと主張するのなら彼を助けに行け。セレナの手助けはなく、君自身の力でだ』

 

 俺はその言葉に思わずセレナへと向き直っていた。彼女も同じ事を考えていたようで、確信したように頷く。

 零児はアカデミアを撃退すれば俺が起こした一連の行動を不問に処す、そう言いたいのだ。であるならばやるしかない。

 

「ありがとう、零児」

『礼を言う暇があるのなら、すぐに行け。位置データを送る』

 

 即座にデュエルディスクへとデータが送られてくる。その今俺達がいる溶岩地帯の少し離れた位置で、黒咲ともう一人見慣れない大男がオベリスクフォース三人組とデュエルをしている。ここからそう離れてはいない。

 俺は自分でも驚くほどのスピードで足を向け、地面を蹴り走り出していた。

 

「ユージン!」

「すぐに戻る!話は後だッ!」

 

 セレナの声を背に受けながら、俺は走る。ものの数分もしない内に零児から提供された映像と同じ場所が見えてきて、更にデュエルの音が聞こえてきた。

 黒咲隼。俺に憎しみを向け続ける彼を、今から助けに行く。

 間違いなく貴様の手を借りん!だとか言われるだろう。それでも俺は構わないと思う。たとえ黒咲に攻撃されようとも、今はアカデミアをとにかく倒したいのだ。

 

「……見えた」

 

 歩道橋の中心、デュエルフィールドが広がっているところ目掛けて俺は飛び上がった。

 デュエルディスクを起動させ、カードを五枚引き抜いて、黒咲達とオベリスクフォースの間に割って入るかのように着地する。

 

「むっ!?」

「貴様は……!」

 

 オベリスクフォースは眉をひそめ、黒咲は吠えた。両側から敵のような視線を受けるというのもおかしな話だ。

 

「黒咲、助けに来たぞ」

「ユージン、何故ここへ……貴様の手など借りん!」

「予想通りの言葉だ。そう言われる事は承知の上でここに来た」

 

 黒咲の表情は苦い。ただそれはアカデミアの人間だった俺が助けに来た事よりも、片手で押さえている脇腹のせいだろう。

 どこかで怪我をしてしまった様だ。そんな状態でなおデュエルを行う、まさに鋼の意志だ。

 傍らには大柄な男が困惑した様子でいる。恐らく舞網チャンピオンシップに参加しているデュエリストだろう。俺は彼にも自分は味方である、と示すべくディスクを見せつけた。

 

「黒咲、俺はアカデミアと戦う為にここへ来た。だからたとえ君になんと言われようとも、最後までやり切るつもりだ」

「……」

「さあアカデミア、俺も相手になるぞ!デュエルだ!!」

 

 ここで俺はこの舞網チャンピオンシップのアクションフィールドに施されているあるルールを思い出す。バトルロイヤルというだけあって、一度に何人ものデュエリストが戦う可能性を考慮して、専用のルールが存在しているのだ。

 

『乱入ペナルティ2000ポイント』

 

 電子音声と共に全身へビリリと電撃が走る。既に行われているデュエルへと乱入した場合はこの様にライフが半分にされてしまうわけだ。単なる競技ならまだしもオベリスクフォースとの実戦においては、あまりにも厳しい。

 だが今はそんな電撃も俺のモチベーションを加速させる。こんなハンデがあっても敵を倒してみせると燃え上がるのだ。

 

「俺のターン!ドロー!」」

 

─ターン1

オベリスクフォース

A ライフ4000 機械の参頭猟犬 伏せカード一枚

B ライフ4000 機械の参頭猟犬 伏せカード一枚

C ライフ4000 機械の参頭猟犬 伏せカード一枚

 

 オベリスクフォースのフィールドには融合召喚されたモンスターが3体、更に魔法罠ゾーンにもそれぞれ伏せカードがサッとされている。となれば考えられるのは俺とのデュエルでも繰り出してきた罠カードでの融合による相手プレイヤーへのダメージだろう。

 手札には魔法罠の除去を行える『A∀ CC』、そして∀rechinoが存在している。隙を見て一気に除去できれば盤面に空白を作れるはずだ。

 

「まず『驚楽園の案内人<Comica>』を通常召喚し、自身の効果でアトラクション罠カードをセットする。俺が選ぶのは『A・∀・スリルトレイン(TT)』。そして魔法カード『融合』を発動する。素材とするのはComicaと手札の『驚楽園の助手<Delia>』だ!」

 

 本来、罠カードを使用して融合を行うのがアメイズメントのとりあえずの主戦法であるが融合カードそのものもデッキに入れられている。罠を用いるテーマであっても即座に動ける手は必要なのだ。

 

「融合召喚!開園せよ、レベル6!『驚楽園の案内人<Comica&Delia>』!そして融合召喚に成功した事によりデッキからアトラクション罠カードを二枚まで装備!『HH』と『VV』を選択する」

 

 新たなアトラクション、それは爆走する機関車だ。融合デッキを徹底的に封殺すべく用意したカードだが、それにHHやCCも合わさればオベリスクフォースの動きを更に再現できるはずである。

 

「カードを一枚は伏せて、俺はこれでターンエンド。さあ次は──」

「待て!待て待て待て!駆けつけてみればデュエルはまだ始まったばかりって感じじゃねえか!?それならこのオレ様の出番ってわけだ!」

 

 ターンを終えて、次は黒咲と共にデュエルしていた大柄の男へ……そう考えていたところで急にその声は投げかけられた。何者かとオベリスクフォースを含めたデュエリスト全員が声の主を探してしまう。

 彼はいつの間にか、俺がそうしたように歩道橋の中心に佇んでいた。デュエルディスクを頭上に掲げて、不敵な笑みを浮かべながら。

 

「ふっふっふ!このオレ、赤馬零児に認められまさかの敗者復活もとい不死鳥の如く蘇った沢渡シンゴ様が来たからにはアカデミアなんてちょちょいのちょいだぜー!!」

 

 

 

デュエルの形式は今のところどれが一番わかりやすいでしょうか?

  • 十五話までの形式
  • 十六話からの形式
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