君の笑顔が見たいんだ!   作:んがんがん

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前回とデュエル盤面を変更しました。オベリスクフォース側は全員伏せカード1枚です、申し訳ありません。


第十九話 共闘しなくちゃ

 彼は突然現れた。名前は沢渡シンゴ。オベリスクフォースとの苛烈なデュエルが引き起ころうかというところで、颯爽と。零児の名前を出すあたり恐らく彼が用意した人員なのだろうが、しかし───

 

「ふっふっふ、オレが来たからにはこんな奴らさっさと片付けてやるぜっ!デュエルだ!」

「いや待て、これはバトルロイヤルで……!」

 

 ルールを理解しているのか、そう問いかけるよりも先に沢渡はデュエルディスクをセットする。が、ノりにノッている彼とは対照的に電子音声は冷静にこう告げた。

 

『乱入ペナルティ2000ポイント』

 

「へ?」

 

 電撃が走る。やはり把握していなかった様で、雷が落ちたかの様な衝撃が沢渡へと叩き付けられる。

 

「あぎゃー!?!?なんじゃこらー!!!」

「乱入ペナルティだ!それより一度乱入してしまえばデュエルするしかない。相手はそんじょそこらのデュエリストとは違うんだぞ!」

「な、ならこのオレにぴったりじゃねえか!ささっとやっつけてやらあ!オレのターン、ドロー!」

 

─2ターン目

 

・オベリスクフォース 変化なし

・ユージン 手札1枚 

モンスターゾーン

Comica &Deilia

魔法罠ゾーン CC HH VV TT

・???

カードなし

・黒咲

カードなし

 

「おいお前!このオレ沢渡シンゴ様の事を知らないってんなら教えてやる。オレ様はLDS最強のデュエリスト、赤馬零児からもその実力を評価されて今こうしてアカデミアとの戦いに送り出されるほどなんだぜ!だからよーく見ておけよ!」

 

 なんてよく喋るデュエリストなのだろう。聞いてもいない事をマシンガンの様にペラペラと喋り、そして自信満々でいる。俺にはとてもではないが真似できない。

 だがこれだけ威勢が良い、というのならばそれ相応の実力なのだろう。俺は肯定も否定もせず、沢渡に頷いた。

 

「俺は手札からスケール1の『魔界劇団─デビル・ヒール』とスケール8の『魔界劇団─ファンキー・コメディアン』でペンデュラムスケールをセッティング!」

「ペンデュラムスケール……!?」

「ああ!?お前ペンデュラム召喚も知らないのかよ?だったらよーく見ておきな!」

 

 アカデミアでは多種多様な召喚法について学んだ。

 融合、シンクロ、エクシーズ、そして儀式。まさか更に新しい召喚法が存在しているとは思いもよらず、息を呑んでしまう。

  

「スケールは1と8、これによりオレはレベル2から7のモンスターを同時に召喚可能だ!」

 

 沢渡の頭上に二体のモンスターが光柱が突き立ち、二柱の間からはこれまでに感じたことの無いエネルギーが渦巻いている。

 同時に召喚可能、まさかそれは手札からの大量展開という事なのか?

 

「ペンデュラム召喚!現れろ、オレ様のモンスター!レベル7、『魔界劇団─ビッグ・スター』!」

「レ、レベル7のモンスターを1ターン目から!?」

 

 俺のアメイズメントも条件を満たせば手札からレベル7の∀rlechinoを召喚できるが、沢渡が行ったペンデュラム召喚はただスケールを合わせればそれで良いと来ている。

 全く新しい、これまでとは一線を画す召喚法だ。まさかスタンダード次元でこんなものが生まれているとは。

 呼び出されたモンスターは大仰な仕草で会釈するとフィールドに降り立つ。魔界劇団、その名の通り役者をモチーフとしている様だ。

 

「そしてビッグスターの効果!デッキから『魔界台本』カードを手札に加えるぜ。オレは『魔界台本「ファンタジー・マジック」』を選択し、そして発動!」

 

 続いて発動されたカードの効果で、ビッグスターへと台本が手渡される。光と共にビッグスターは魔法使いのローブを身に纏い、雰囲気を一変させる。

 魔界劇団の役者とその台本、カード効果を組み合わせていく事による多彩な動きを見せるのが沢渡のデッキに違いない。

 

「……なるほどな、沢渡!君と俺はウマが合いそうだ!罠カード発動!『A・∀ CC』をComica &Deliia』へと装備させる!そして効果を発動!このカードと相手フィールドの魔法罠カードを墓地へと送る!」

 

 沢渡の動きに合わせて俺が発動したカード効果に対し、オベリスクフォース達は嫌な予感を覚えてかムッとし、沢渡本人はニヤリと笑った。

 相手フィールドに伏せられているカードがなんであれ、攻撃もしくは効果破壊に対して反応するものであろう事は容易に想像できる。であれば動く前にこちらから封じてしまえば良いのだ。

 

「よっしゃあ!ならバトル、オレはビッグ・ススターで一体目の古代の機械参頭猟犬に攻撃!」

 

 疾走するコースターへと飛び乗ったビッグスターが溶岩地帯を駆け巡る。その手にから電撃が放たれ、機械仕掛けの猟犬を破壊する、と思いきやフィールドの外へと吹っ飛ばしていった。

 

「ファンタジー・マジックの効果により、ビッグスターと戦闘を行った相手モンスターは墓地ではなく手札へ戻る。融合モンスターなら、エクストラデッキだな!」

「そして今俺が墓地へ送った罠カードは『古代の機械再生融合』!残念だが封じさせてもらった!」

「くっ……」

 

 一度辛酸を舐めさせられた戦法である。前回よりしっかりと戦法を固めた甲斐があったというものだ。

 喜びのあまりガッツポーズを取っていた俺の肩を沢渡が掴む。彼はドヤ顔にサムズアップを加えて、

 

「このオレに合わせてくるとは、なかなかわかってんじゃねえか!お前の名前は」

「ユージンだ」

「よぉしユージン、お前はオレの助手だ。これからも頼むぜ、ターンエンド!」

「ならこの瞬間、オレは『A・∀ TT』の効果を発動だ。装備されているComica &Deliaを守備表示にして、墓地のアトラクション罠カードを相手に選ばせ、選んだカードを自分フィールドにセットする」

 

 さて、俺が融合モンスターを『A・∀ FF』で召喚しなかった意味がここで発揮される。TTの効果は相手によってカードを選ばせるものだが……

 

「貴様の墓地には、罠カードは一枚だけ……!」

「さあ選んでもらおう。どの罠カードをセットする?」

「ちっ……CCを選ぶ」

 

 オベリスクフォースもそろそろ気付いた頃だろう。俺はバトルロイヤルという特殊ルールを利用し、ちょっとした策を構えている。

 通常のデュエルは1vs1であるが、バトルロイヤルは多人数で行う。つまり一巡するまでにいくつもターンを跨ぐのだ。TTの効果はその度に発動する事ができる。これにより、CCとTTを毎ターン使用し相手の魔法罠ゾーンを一掃してしまえるわけだ。

 

「よし、それでは次に……ええと」

 

 沢渡のターンが終わり、俺は大柄な男へと顔を向ける。とにかくデカい。俺の二倍くらいの体格で、何より強面だ。ゴツゴツとした顔から放たれる威圧感たるや、わずかに発言を躊躇ってしまう。

 

「ユージン、だったな」

「え、あ、うん」

「俺の名は権現坂昇、不動のデュエルを志している。それを見せてやりたいところだか……今回は別だ!俺の、ターンッ!」

 

─3ターン目

 

 権現坂がデッキから一枚ドローすれば、鍛え抜かれた太い腕が生み出す風圧によってわずかに大気が歪んだ。一体どんな鍛錬をこなせばこれほどの力を生み出せるというのだろう。俺は目を丸くしてしまう。

 

「俺は手札を一枚捨てて『超重武者モンガマ-A』の効果を発動し、のモンスターを相手フィールドへと特殊召喚する!」

 

 超重武者モンガマ-A

 攻撃力 1000 守備力2000

 

 一人目のオベリスクフォースのフィールドに召喚されたのは権現坂の外見を連想される屈強なモンスターだ。

 

「モンガマ-Aはこの効果で特殊召喚された場合、攻撃力を1000アップさせる!」

「おいおい!敵に塩送ってどうすんだよ!」

 

 権現坂がどんなデュエルをするのか、俺はあまり知らない。だが少なくとも相手フィールドにモンスターを召喚するのならばそれ相応の作戦を練っているに違いない。

 事実彼は自分の隣に立つ、黒咲をちらりと窺っていた。

 

「更にもう一枚手札を墓地へと送り、モンガマ-Aを再び相手フィールドに特殊召喚!これでターンエンドだ」

「ならその瞬間に俺はCC、そしてTTを発動。相手の魔法罠を墓地へと送る」

「うむ……黒咲、あとはお前がやれ!」

 

 やはりそうだった。権現坂は自らのターンを捨ててまで、黒咲をサポートしたのだ。

 黒咲の操る『RR』は記憶が正しければ特殊召喚されたモンスターに対して強力な効果を持っている。彼の為に権現坂はフィールドにモンスターを増やしたのだろう。

 

「──わざわざ、俺の為に用意したというのか?」

「そうだ。あとはお前が決めろ」

「礼は、言わんぞ」

 

 黒咲は負傷による痛みを歯を食いしばりながらこらえ、デッキに指を添える。その際に、ほんの少しだけ俺へと視線を寄越したもののすぐにオベリスクフォースへと向き直った。

 

「俺の、ターンッ!」

 

─4ターン目

 

「三度、CCを発動!最後の伏せカードを墓地へと送る!」

 

 これにより相手フィールドの魔法罠カードは全て失われた。あとは黒咲が攻撃を仕掛ければこちらのものである。

 

「俺は『RR-バニシング・レイニアス』を召喚し、その効果によって手札から二体のバニシング・レイニアスを特殊召喚する。そして三体のモンスターで、オーバレイ!!」

 

 俺とデュエルした際に黒咲が召喚したエクシーズモンスターはそれぞれランク5とランク6、しかし今回はレベル4のモンスターが三体揃っている。

 紫雲院素良とのデュエルで召喚していた、あのモンスターが来るのだ。

 

「雌伏のハヤブサよ。逆境の中で研ぎ澄まされし爪を挙げ、反逆の翼翻せ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!『RR-ライズ・ファルコン』!」

 

RR-ライズ・ファルコン

攻撃力100 守備力2000

 

 三体のモンスターを束ねて現れた機械の鳥は、けたたましい声をあげてフィールドをぐるぐると飛び回る。

 攻撃力はたったの100だが、その真価はオーバーレイユニットを取り除いた時初めて発揮される。

 

「ライズ・ファルコンの効果!オーバーレイユニットを一つ取り除き、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全ての攻撃力をライズ・ファルコンに加える!」

『なにぃ!?!?』

 

 オベリスクフォースの悲鳴も当然である。同時に彼らはようやく権現坂の行動の意味を理解する事だろう。

 フィールドには機械参頭猟犬が二体、そしてモンガマ-Aが二体。その攻撃力を合算すれば……ライズファルコンの攻撃力は7600アップするのだ!

 

「更にライズファルコンは特殊召喚されたモンスター全てに攻撃できる!」

「ば、バカな!?」

「そんな……!」

「信じられん!!!」

「行けッ!ライズ・ファルコン!!ブレイブクロー・レヴォリューションッッッ!!!」

 

 絶大な攻撃力を手にしたライズ・ファルコンはその身に炎を纏わせ相手フィールドへと飛び込んでいく。オベリスクフォースに反撃の手段はない、黒咲が全力を発揮できる様にと俺が事前に魔法罠を除去しておいたのだから。

 激突、続く大爆発。一瞬にしてライフを削り取られ、オベリスクフォースは宙を舞っていった。悲鳴と共に地面を転がり、しばらくすればデュエルディスクに内蔵された帰還装置によって彼らは次元を飛んでいく。

 残ったのは勝者である俺達のみである。生き残れたという安堵にため息をついていた俺は、後ろから沢渡に組みつかれた。

 

「ユージィン!ユージィン!お前が誰だか知らないがオレ様はお前が気に入ったぜ〜〜!今度オレ行きつけの店に連れてってやるよ〜〜!」

「あ、あいたたた!ちょっと首、首が絞まってるから!勘弁してくれ沢渡!」

「沢渡!まだ知り合って間もない人間に対してなんだその態度は!離れんかコラ!」

 

 沢渡はしがみついて首をギュウギュウと締めてくる。うめき声をあげながら拘束を解こうとする様を見かねてか権現坂はヒョイと沢渡を持ち上げてしまい、彼はジタバタと手足を振り回し始めた。

 

「わー!ぎゃー!なにすんだよー!」

「落ち着きのない奴め……ところでユージン、デュエルの最中だったもので後回しにしていたがお前は何者だ?チャンピオンシップの参加者ではないようだが」

「そいつはアカデミアの、融合次元の人間だ」

 

 勝利に喜んでいた空気は、しかし黒咲の一言によって僅かに固まる。沢渡も権現坂も、怒りに燃える彼の様子を見て口をつぐんだ。

 もちろん俺だって一度助けたくらいで黒咲の態度が変わるなどとは思っていない。そんな簡単に消える怒りであるはずがないのだから。

 

「何故俺を助けた。恩を売る為か」

「アカデミアと戦う、それが俺の目的だ。目的を果たしたに過ぎない。君と戦うつもりは、ない」

「俺にはある。貴様がここにいる以上、倒す事が俺の目的だ」

「……っ!」

 

 黒咲は既にデュエルディスクを構えている。彼にとって次の敵は俺だという事だ。

 応えるべきか、そうでないか。それを決めあぐねていたところに権現坂が割って入った。

 

「待て黒咲。事情はハッキリとはわからんが、そんな怪我でこれ以上デュエルなど出来るわけがないだろう。ユージン、お前も顔色が悪い」

「くっ……」

 

 黒咲自身、デュエルをするという姿勢こそ取っていたも片腕は脇腹を抑えたままだ。権現坂が指摘するようにとてもではないがもう一度デュエルする事は難しいだろう。

 そして顔色が悪い、と言われて俺は思わず自分の顔に手を伸ばしていた。唐突に手足が重くなり、立っていられないほどの疲労がのしかかってくる。

 

「おい!?」

「ユージン!」

 

 立て続けにデュエルしたせいだろうか、緊張によってなんとか保っていた意識はあっという間に暗く染まっていく。

 零児から示された名誉挽回の機会はなんとか成功に終えたものの、今後どうなるのかなど全くわからない。

 ただ戦いを終えたら約束通りセレナを遊園地に連れて行けるかもしれない、そう考えるとほんの少しだけ安心できた。

 

デュエルの形式は今のところどれが一番わかりやすいでしょうか?

  • 十五話までの形式
  • 十六話からの形式
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