君の笑顔が見たいんだ!   作:んがんがん

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デュエル構成に無茶苦茶時間がかかりました


第二話 こんな風にデュエルしたよね?

「なんだそのモンスターは?」

 

 先攻1ターン目、俺が召喚した『驚楽園の案内人comica』を目にして、セレナは素っ頓狂な声をあげる。というのも、comicaは現れるや否や相手プレイヤーに敵意ではなく歓迎するかのように手を差し伸べる姿勢を取ったからである。

 

「俺のモンスター達は戦う為にいるんじゃない。相手を迎え入れるんだ。アメイズメントプレシャスパークにね!」

「なんだその、プレシャスパークというのは」

「遊園地さ、楽しいところだよ。色んなアトラクションがあって、美味しいものがあって、とにかく良いところだ。デュエルをしながら君を遊園地に連れていくんだよ!」

「ゆう、えんち」

「comicaは最初の案内人、これから君にこのパークの魅力を伝えていくんだ。俺はカードを4枚セットして、ターンエンド!」

 

 残る手札は4枚、その内の4枚全てを伏せカードとしてセットする。これで相手を迎え入れる準備は出来た。あとはセレナがどう動くかである。

 外の世界に出られないというのなら、せめてどんなところであるかくらいは教えてあげたい。

 お節介だとか余計なお世話だとか思われるのはわかっている。それでも、やらずに別れるよりかはずっと良いはずなのだ。

 と、その気になっていたこちらとは対照的にセレナはプルプルと肩を震わせている。それが怒りによるものである事は、ナイフのように鋭く尖った目から容易に察せられた。

 

「……デュエルをすると言い出した時はどんな男かと思っていたが、遊園地だと?私は、私はそんなものに興味はない!外にどんなものがあるかなど、もってのほかだ!」

 

 デュエルが全てというような人間に下手な事を言うと、それは地雷に等しいようだ。どうもアプローチがよろしくなかったらしい。敵意を漲らせながらセレナはデッキに触れる。

 

「私のターン!ドロー!」

 

 荒々しい手つきで6枚の手札からカードを選び、セレナは叩きつけんばかりの勢いでセットする。

 

「現れろ!月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)!」

 

 裂帛の気合いに合わせて現れたのは踊り子の装いをした獣人だ。猫と人が混ざったような外見は妖艶で、同時に凶暴さを感じさせる。パリッとしたcomicaとは対照的な外見と言えるだろう。

 

「バトルだ!月光蒼猫でcomicaに攻撃!」

 

 月光蒼猫の攻撃力は1600、対してcomicaの攻撃力は1400。このままバトルすればcomicaは破壊されてこちらに200のダメージだが、それを回避する手段はすでに伏せられている。

 

「おおっとそうはいかない!セレナ、まずはこのアトラクションからだ!罠カード発動!『|A・∀・VV《アメイズ・アトラクション・ヴァンキッシュヴァイキング》』!」

 

 宣言すると共に伏せてあった3枚の罠から1枚がオープン、水飛沫をあげながら大回転する海賊船が描かれたカードイラストから、なんと

本当に船が飛び出す。その迫力たるや、ソリッドビジョン様々である。

 

「船だと!?」

「ただの船じゃない、それはもう滅茶苦茶に動く海賊船さ。そして俺は『VV』をcomicaに装備する!」

「自分のモンスターに装備……?」

「アメイズメントのアトラクションはその名の通り、人がいないと意味がない。まずはcomicaがその案内をするってわけさ!さあ月光蒼猫!君が今日最初のお客さんだよ!」

 

 飛び出してきた海賊船は部屋の中をぐるぐると旋回している。comicaはサッと月光蒼猫へと近付くと、その手を引いて海賊船へと乗り込ませる。

 

「『VV』の効果は相手モンスターの攻撃宣言時にその攻撃を無効にして、更に装備モンスターのコントロールを変更する!Comicaをセレナのもとへと送らせてもらうね!しばらくの間、お客として楽しんでもらう」

「自分のモンスターを私のフィールドに?小癪な事を……」

「よっしゃあそれじゃあ高らかに叫ぼうか!ヨーソロー!」

 

 海賊船による航海が始まる。部屋中を所狭しと突き進んでいく船体の豪快さたるや、セレナは目を見開いてその模様を見つめてしまう。

 乗っている月光蒼猫はと言えば、ぐんぐん進み時には急カーブする船の動きが楽しいようで満面の笑みを浮かべてはしゃいでいた。

 

「セレナ、君も一緒に乗るかい?」

「何、私も!?」

「リアルソリッドビジョンなんだ、それくらいイケるさ!」

 

 対戦相手同士である事は今は置いておき、セレナの手を取って飛び上がる。遅れて海賊船へ乗り込んで、俺はセレナを最先端まで連れていく。

 後部に飛び乗り、comicaに案内されるまま船頭に立つ。月光蒼猫も主を待っていたのか、ニコニコと笑いだす。

 

「どうだい。デュエルでこんな事は今まで無かったんじゃないかな」

「う、うお……」

 

 左右に体を揺らしながらセレナは素っ頓狂な声をあげる。怒っているわけではないのを見るに、本当に面食らっているようだ。ここで勘違いしてはいけないのはあくまで驚いているだけで、楽しんでいるわけではなさそうという点である。

 予想は的中したらしく、ハッとした顔でセレナはこちらを睨みつけてくる。

 

「ば、馬鹿にしているのか!私は降りるぞ!」

 

 目を覚ました様子で軽々とセレナは海賊船から飛び降りる。デュエルしか知らないと言うのなら、そういう反応を取るのはわかっていたので、こちらもデュエルに戻るとしよう。

 

「どうセレナ、初遊園地は」

「どうもこうもない。大体、私は行きたいなどとは一言も言っていないぞ」

「確かにその通りだ。でも、ここから出られないって言うのならせめてどんなものかだけ教えてあげたくてさ……さて、そろそろ航海は終わりかな?」

「……私はこれでターンエンドだ」

 

 セレナが宣言すると共に海賊船が止まり、ひょっこりと月光蒼猫が顔を出す。アトラクションではしゃいでしまったせいか、すっかり疲れてしまったようだ。ぐっと伸びをしたかと思えば、そのまま寝転がってしまう。役目も終えたComicaも俺のフィールドへと軽快な足取りで舞い戻ってきた。

 ほんのわずかな間だけ繰り広げられた珍妙な光景に対してセレナは渋い顔をしながらキッと俺を見つめてくる。

 

「調子の狂う奴だ、こんな、姑息な手を……」

「姑息!?いや、これも一応立派な戦術だからね!?」

「違う!遊園地に連れて行くと言いながら、デュエルもする。お前はどっちがやりたいんだ!」

「そりゃ、どっちもさ。セレナが好きなデュエルを通して、遊園地を見せたくて……君は、行きたいとは一言も言ってないけどね?」

「私は戦士だ!興味はない!さあお前のターンだぞ!」

 

 ますます怒らせてしまっている気がする、というか怒っている。思いつきでこんな事始めるんじゃなかったな……なんて嫌な汗が湧いてきていた。

 

「それじゃあ、次は真面目にいくよ。俺のターン、ドロー!」

 

 次に引き当てたカードは待ちかねていたエースカードだった。これならばセレナにちゃんとデュエルをするという姿勢を見せられるやもしれない。俺独自のカードによる連携で、目にものを見せてやろう。

 

「罠カードオープン!『|A・∀・MM《アメイズ・アトラクション・マジェスティックマネージュ》』!」

 

 光と共に現れたのは巨大なドーム状の建物と、その中で円を描くように駆け巡る幾つもの機械仕掛けの馬……そう、今度は遊園地では欠かせないメリーゴーラウンドである。

 

「『MM』は自分フィールドのアメイズメントモンスターに装備された時、攻撃力を500アップさせる!攻撃力1900!」

 

 comicaが飛び上がり、メリーゴーラウンドの馬へとまたがる。途端に煌びやかな明かりが灯り、これまたお似合いの音楽が奏でられ始めた。

 

「またこれか……!」

「そして俺はバトル!comicaで月光蒼猫に攻撃だ!」

 

 メリーゴーラウンドの回転力を活かし、クルクルとコマのように回りながらcomicaは月光蒼猫目掛けて体当たりする。のんびりしていたところに攻撃を受け、モンスターは驚きながら吹っ飛んでしまった。その差300ポイントがセレナより引かれた。

 セレナはダメージを受けながら、しかし楽しげに口の端を歪めている。先程とは打って変わって楽しそうだ。

 

「面白いデッキを使うな……ふざけている事さえ除けばだが」

「面白いだけで済ませて欲しいところかな個人的には。ともかく、ターンエンド」

「ふん、なら徹底的にやっつけてやる。私のターン、ドロー!」

 

 ドローしたカードを見て、セレナは何かを確信したらしい。微笑むわけでもなく、キッとこちらを見据える。どうやら向こうもエースカードか、それに近い何かを引き当てたようだ。

 

「今度は私の番だ。魔法カード、『融合』発動!手札の『月光白兎』と『月光紫蝶(ムーンライト・パープル・バタフライ)』を素材として、融合召喚する!」

「来たな……!」

 

 融合。2体のモンスターを素材にして強力なモンスターを呼び出す速攻性の強い召喚法だ。

 一体どんなモンスターが出てくるのか、そのステータスや効果によってアメイズメントは多くの戦術で対応可能だ。

 

「月を徘徊する兎よ! 紫の毒持つ蝶よ! 月の引力により渦巻きて新たなる力と生まれ変わらん!」

 

 セレナの掛け声の下、2体のモンスターが2色の光となって溶け合っていく。その瞬間に生じるエネルギーたるや、離れているにも関わらず肌がビリビリとした。

 

「融合召喚!現れ出でよ、月明かりに舞い踊る美しき野獣!『月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)』!」

 

 現れたのは2本の短刀を構えた妖艶なる踊り子、目を奪われそうな美貌は強かなセレナとは対照的な印象を醸し出す。

 と、見惚れている場合ではない。攻撃力は2400、間違いなくエースモンスターだ。

 

「それが君のエースモンスターか!」

「まあ見ていろ!魔法カード『月光香』発動、墓地から『月光』モンスターを特殊召喚する。甦れ、月光蒼猫!」

 

 つい先程comicaに破壊されてしまった月光蒼猫が再びフィールドへ舞い戻る。ここからセレナがどんな戦術を繰り出すというのか。

 

「月光蒼猫の効果発動!自身をリリースし、フィールドの『月光』モンスターの攻撃力を倍にする!」

「倍……倍だって!?」

 

 月光舞猫姫の攻撃力は2400、それが倍になれば……4800!

 

「更に私は手札から『月光黒羊(ムーンライト・ブラック・シープ)』を通常召喚!これに合わせて月光舞猫姫の効果も発動する。フィールドの『月光』モンスターをリリースする事で、月光舞猫姫は2回攻撃が出来る!」

 

 なるほどこれがセレナの戦術。融合モンスターの持つ絶大な火力で相手を圧倒する、戦士と呼ぶに相応しいものだ。下手なデュエリストであればあっという間に敗北してしまう事は必至であろう。

 などとアカデミアでそれなりに鍛え抜かれた観察力から評価したものの、攻撃力4800でしかも2回攻撃だなんて洒落にならない。割とまずい。伏せてある残り2枚のカードに猛攻を耐える秘策はあるが、果たして……!

 

「罠カードオープン!『|A・∀・CC《アメイズ・アトラクション・サイクロンコースター》』を月光舞猫姫に装備させ、更に合わせてcomicaの効果も発動する!」

「カードを、私のモンスターに装備だと!?」

「ああ!アトラクションはお客さんに乗ってもらう事にも意味があるからね!」

 

 思い切って秘策を放つ。2枚の伏せカードの内1枚、それはまた別のアトラクションである。効果は『相手モンスターに装備させた場合、デッキからアメイズメントカードを手札に加える』というものだがその効果では月光舞猫姫を止められない。ならば何故?それはcomicaの特殊能力を活用するためだ。

 

「comicaは1ターンに1度、装備されているアトラクション罠カードを別のモンスターへと装備させる事が出来る。俺はcomicaに装備されている『MM』を月光舞猫姫へと装備!」

 

 月光舞猫姫を挟む様にして、メリーゴーラウンドとジェットコースターが出現する。すると先程まで放っていた強い殺気が薄れていき、月光舞猫姫はなんと二つのアトラクションに目移りし始めた。

 

「これは……」

「『MM』は相手モンスターに装備された時、そのモンスターは装備されているアトラクション罠カード1枚につき攻撃力が500ポイントダウンするんだ。今月光舞猫姫には『MM』と『CC』の2枚が装備されているから、攻撃力は1000ポイントダウンして3800になる!」

「だがそれでも3800だ!月光舞猫姫、comicaに攻撃だ!」

 

 魅力的なアトラクションに後ろ髪をひかれながら、月光舞猫姫は2本のナイフを煌めかせる。光の軌跡を描いて放たれた攻撃が、一瞬でcomicaを切り裂いた。

 月光舞猫姫の攻撃力は3800、comicaは装備カードを失い1400、その差2400を受けて俺の残りライフは1600まで追い込まれてしまう。と、先程破壊されたはずのcomicaは傷つきながらもまだ俺の前に立っている事に気付く。

 

「ふっ、今度は私がお前を驚かせる番だな。2回攻撃が可能になった月光舞猫姫似攻撃されたモンスターは、1度は破壊されずに残る。だがそれは再び攻撃の対象になるという事だ!行け!」

「捕えた獲物は離さない、そういうわけか。だけど俺の隠し球はまだ残っている。罠カードオープン、『ガードブロック』!戦闘によるダメージを無効化、更に1枚カードをドロー!」」

 

 思わぬ形での連続攻撃だが捌ききれないわけではない。伏せていた最後のカードを発動させる。

 戦闘によって発生するダメージ2400を0にする。シンプルで強いものの、comicaが破壊される事は避けられない。俺のフィールドはガラ空きになってしまうだろう、手札に残されているエースがいなければの話だが。

 月光舞猫姫のナイフが再びcomicaを襲い、今度こそ破壊される。代わりにデッキからカードをドローすると、セレナが勝利を確信し笑みを浮かべていた。

 

「お前のフィールドにモンスターはいない。次のターン何を出そうが、すぐに蹴散らしてやる!」

「それはどうかな……勝負ってのは最後までわからないものだよ」

「ならば全力で来い。ターンエンドだ!」

 

 セレナの言う通りだ、このままでは俺は負けてしまう。壁モンスターを出したとしても、それは急場しのぎに過ぎない。現状を打開する必要がある。そして嬉しい事に、その手段を俺はちゃんと手札に持っていた。

 

「俺のターン、ドロー!月光舞猫姫に装備している『CC』は墓地へと送られる事でデッキから『アメイズメント』モンスターを手札に加える事が出来る。俺が手札に加えるのは『驚楽園の大使<Bufo>(アメイズメント・アンバサダー ブーフォ)>』だ。そして罠カードの効果が発動した時、手札からこのモンスターを特殊召喚出来る!」

「罠カードに連動して、特殊召喚だと!?」

「紹介するよセレナ。彼こそが遊園地の支配人、『|驚楽園の支配人<∀rlechino>《アメイズメント・アドミニストレーター アルレキーノ》』だ!」

 

 目を覆いたくなるほどの光を放ちながら、彼は現れる。燕尾服にシルクハット、そしてピエロを思わせるメイク。遊園地のメインイベントを飾るのはこの男以外には考えられない、そう断言できる。俺のエースモンスター、それこそが∀rlechinoなのだ。

 殺風景な部屋をアトラクションが、遊園地が埋め尽くしていく。このデュエルの間だけ、そのほんの僅かな時間に幸せな世界が広がっていく。俺は感極まりそうになりながら、デュエリストであると自分を律してセレナへと向き直る。

 

「それがお前のエースか!」

「そうとも!では当園の目玉、支配人∀rlechinoによるド派手な花火を君に見せよう!墓地のアメイズメント罠カードを除外して、相手フィールドのカードを破壊する!」

 

 墓地のアトラクションカードは2枚、その内の1枚を除外する事でフィールドに巨大な砲台が現れた。狙いは一点、月光舞猫姫である。セレナには効果を止める術は無い!

 

「せーのっ、ファイヤー!!」

 

 勢いよく放たれた花火は見事に月光舞猫姫に直撃し、七色の光を部屋中にまき散らしていく。デュエルのラストを飾るのにぴったりの演出である。

 セレナのフィールドには1体もモンスターは残っていない。残りライフは3700、∀rlechinoの攻撃力は2600なのでダイレクトアタックが決まれば絶大なダメージを与えられる事だろう。

 

「……ふぬけた奴だと思っていたが、まさかこれほどとはな」

「なんか、いつもよりデッキが応えてくれている。そんな気がする、なんでだろう。なんか……すっごい楽しいよセレナ!」

「楽しい?デュエルがか?」

「ああ!ずっと続けていたい、そう思うくらいに!!」

 

 

「そこまでだッ!このデュエルは中止とする!」

 

 攻撃宣言しようかというその時、扉が蹴破られる様な勢いで開かれ、アカデミアの教師陣が駆け込んでくる。デュエルに気付いてやってきた様だ。

 良いところで邪魔をされた、というガッカリの次に俺はもしや今ものすごく状況なのでは?という予感が頭をよぎり、見事にそれは的中した。

 

「奴を拘束しろ!」

「おい、よせ!何のつもりだ!」

 

 セレナの制止も空しく、軍服じみた装いの男達に取り囲まれてしまう。アカデミアのデュエリストでも上位にあたるオベリスクフォースだ。俺なんかでは到底叶わないまさにプロフェッショナルというわけである。

 

「セレナ様、この様な事をされては困りますな。プロフェッサーがお怒りになります」

「好きに怒らせておけば良い!私のデュエルを邪魔するな!」

 

 セレナがこちらに視線をやる。オベリスクフォースに囲まれ萎縮しきっている俺を、教師陣の先頭に立つ男は一瞥してすぐにフンと鼻を鳴らした。下に見られているのだと気付き、睨み返す。

 

「どこから忍び込んだのやら……取り押さえて連れて行け」

「私の話を聞いているのか!?」

 

 わっと詰め寄られてあっという間に組み敷かれる。信じられないくらい力が強く、思わず短い悲鳴を漏らしてしまう。けれどその対応は当たり前だ。プロフェッサーの管理下にあるセレナと暢気にデュエルしていたのだからガチガチに取り押さえられるのは当然であると言える。

 頭を押さえつけられ、チカチカとする視界にこちらへと走ってくるセレナが見える。心配してくれているらしい。

 

「おい、離せ!離すんだ!」

「大丈夫だよセレナ。ほら、俺侵入者だしさ。デュエルが終わるまで待ってくれないのは、空気読めないと思うけどね」

「そんな状態でふざけている場合か!」

「いや、俺も本当にそう思う。凄くヤバいのに今、俺ものすごくドキドキしてるんだ。どうかと思うくらいに!」

 

 そこまで言ったところで、思い切り頭を床に叩き付けられる。黙れと言わんばかりに勢いで、意識が飛んでしまいそうになる。

 

「セレナ様、彼は我々が処罰します。貴女はここにいてください」

「お前達……っ!なら、デュエルだ。私がお前に勝ったら奴を解放しろ!」

「子供の様な事を言わないでください。では」

 

 セレナが何か叫んでいる。さっきまで楽しくデュエルしていたのに、残念でならない。

 おかしな感覚がまだ胸の内に残っている。セレナとのデュエルはこれまでの苦しかった思い出が消えてしまいそうなほどに、楽しかった。そう、楽しかったのだ。

 

(またデュエルしたいな。それで、どうせなら……セレナに笑って欲しかったりして)

 

 なんて、そんな事を考えたところで完全に俺の意識は吹き飛んでしまった。 




本来勝つつもりなかったのですが、なんか色々出来るな?と試していたら勝ってしまいました
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