君の笑顔が見たいんだ!   作:んがんがん

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第三話 こんな風に再会したよね?

 俺の予想では、立ち入り禁止のエリアに入ってしかもプロフェッサーお抱えのセレナと接触して挙句にデュエルなんてしたものだからそれはもう大変な罰則が待ち受けているものだと考えていた。

 しかし結果はセレナの事を口外しない、それだけである。逆に言えばそれを破れば次はない、そういう意味だ。アカデミアならその気になって捜索すればすぐに俺へと辿り着いてしまうだろうし、要するに嘗められているわけだ。

 もしくは……セレナが俺を見逃してくれる様に訴えかけたのかもしれない。自意識過剰だろって?まあ、うん。

 

 それからはもう、退屈な日常の再開だ。楽しくもなんともない訓練ばかりで俺はセレナとのデュエルが恋しくて仕方がない。

 胸の高鳴り、お互いに全力を出し合った時のスッキリとした感覚、同級生とのデュエルでは味わえないワクワクがあった。もう一度あれを体験したい、セレナに会いたい。

 そこで俺は考えついた。

 

「アカデミアで一番のデュエリストになれば……色んな人達に認められればセレナに会えるんじゃないか?」

 

 天才である。プロフェッサーの目に止まるようなデュエリストにならばそれなりの発言権が得られるはずだ。あわよくばセレナに会わせて貰えるかもしれない、間違いない。

 ならばやるしかない。一念発起して俺はそれまでやった事がないくらいデュエルへと没頭し、あらゆるカードの効果を頭に叩き込もうと試みた───これはうまくいかなかったが───それでも努力は身を結びメキメキと実力をつけていき少しずつ注目を浴びるようになっていった。

 

 

 デュエリストとして磨きをかけ、学年でも上から数えられるほどになった頃に突然教師に呼び出された。曰く重大な任務を課せられるそうだ。

 詳細は明かせないが、俺が必要とされていると言うのだ。ついに俺の実力が認められたのだろうか?プロフェッサーに会わせてもらえるのかもしれない……。

 なんて、ワクワクしながら連れて行かれた先はアカデミアの奥。随分昔に忍び込んだエリアよりも更に奥にある小さな部屋で、とてもではないがプロフェッサーがいるような場所ではない。

 

「入れ。私は外にいる」

 

 言われるがままに俺は部屋をノックする。室内から「入っていい」と少女の声が返ってきて、ギョッとした。その声は間違いなくセレナのものだったからだ。

 勢いよく扉を開け放ち部屋に踏み込む。するとあの時と全く同じ様に、セレナは椅子に腰掛けて入ってきたこちらに視線を向けてきた。

 

「久しぶりだな。背が伸びたか?」

「セレナ……!本当に久しぶりだ。君こそ背が伸びたんじゃないかな、うん!」

 

 綺麗な青い髪、翡翠色の瞳、キュッと結ばれた唇。いつ会ってもセレナは気高くそして美しく見える。思わぬ再会に俺は彼女の頭から爪先までを観察して、へえへえと変な声を出してしまうくらいだ。

 しかし何故、かなりの時間が経った今セレナと再会できたのだろうか?

 

「あまりにも暇だったのでな、デュエルの相手を要求した。私を楽しませられる奴をな。そうしたらちょうど生徒の中でも特殊な戦法を繰り出すという事でちょっとした噂になっている奴がいたから、顔見知りという事もあって連れて来させたというわけだ」

「なるほどお……よかったあ!俺の努力、無駄じゃなかったんだ。嬉しいよセレナ、また会えて!」

「……で、だ。私がお前を連れてきた理由はさっき伝えたな?ここにこうしている以上、私達がやるべき事は一つだ」

「勿論!!この時をずーっと待ってた!!」

 

 デュエルディスクを装備、二人同時に構える。たった一度の出会いから、まさかこんなにも早く再会してしかもデュエルまで出来るだなんて思ってもいなかった。俺は、幸せ者だと思う。

 

『デュエルッ!』

 

 

「で、今もこんな風に定期的なデュエルを行う関係性と」

「ガス抜きとしてはお前が適任だと上は考えているらしい。近いうちに私の監視役になるかもな」

 

 少し気の抜いたデュエルのおかげでこっぴどく叱られたので、二回目は最初から最後まで真面目にやってみた。決着は実力が格段に上がったセレナの勝ちで、なかなかに得意げだ。

 

「監視役ねえ。でも怪しまれないかな俺。セレナを外に連れ出そうとするとか」

「仮にやろうとしても無理だ。まず外に出る手段の確保が難しいからな。下手な動きをしようものなら、すぐに嗅ぎつけられてしまう」

「じゃあもしも監視役になったら、セレナとずっとお話しするだけって事か。あとデュエルね」

 

 けれどもしも監視役になれたら、それはさぞかし楽しい事だろう。同じデュエル三昧でもアカデミアの授業よりはずっと、ずっとマシだ。

 と、セレナは珍しくぼーっとし始めた。視線が天井を見つめたまま、何やら考え込んでいる。

 

「セレナ?」

「……お前のせいでな、しばらく外の世界について考えていた。遊園地の事だ」

「聞きたい?遊園地の話、聞きたい?」

「食いつくな。まだ行きたいと思った事はない。ただ……デュエル以外の何かを、知りたい。遊園地以外でだ」

「ああもう全然オッケー!そうだなじゃあ……じゃあ……」

 

 デュエル以外の事、それならば幾らでも思いつく。アカデミアに送られるまでそれなりに遊んだらしたからだ、そう、たとえば──たとえば……。

 

「あれ、えーっと、うーん……おかしいな、思い出せないや。なんでだろう、デュエルしか思い出せないや。訓練して、デュエルして、それくらいしかもう俺の頭には残ってないみたいだ」

 

 心底困り果てた様子で笑うと、セレナはものすごく悲しそうな顔をする。物忘れが激しい奴だと思われているのかもしれない。でも断じて違う、ちょっとアカデミアでの記憶が苛烈すぎるだけだ。

 

「なら、この際仕方がない。遊園地の話を私にしてくれ」

「ああそれなら良いよ!遊園地ってのはさ、とにかく楽しいんだ。まずジェットコースターでしょ、それから海賊船に、メリーゴーラウンドに、そんで花火!人を笑顔にする色んなものがあそこには詰まってる。夢の国だよ、まさに」

「夢の国、か。それをお前は私に見せてくれていたんだな」

「そうだよ。俺の一番の思い出、俺の……忘れらない大切な事。セレナにはある?」

 

 セレナはしばらく考えてから、重苦しく首を横に振る。予想はしていたけれど、とても残念だった。

 

「私には、デュエルだけだ。他には何もない、ただのセレナ」

「そんな事ない!俺、セレナの良いとこ色々知ってる。まずデュエルが強くて、それから可愛くて、そんで、俺に頑張るきっかけを作ってくれた。セレナのおかげで今の俺がいる!」

「お、大袈裟なことを言うなっ」

「全然マジ!それに、セレナはただのセレナなんかじゃない。俺の友達のセレナだ!」

「友達の、セレナ」

「こんな風にデュエルするのって、友達だから出来る事なんじゃないかな。それって友達だよ、多分」

 

 初めて会った時から俺はセレナとずっとデュエルをしている。最初は俺のやり方に腹を立てていたセレナも、今は呆れながらも付き合ってくれている。少なくともそれは、お互いを知り合った友達の関係であるはずだ。

 セレナは何もないわけない。今こうして俺と話している彼女自身がその証拠のはずだ。

 

「友達、友達か」

「で、友達なら一緒に出かけたりするんだ。買い物に行ったりしてさ!あ、だんだん思い出してきた。買い物でしょ、それに遊びに行ったり、遊園地に行ったり!とにかく色々やるんだよ友達は」

「デュ、デュエルより大変そうだなそれは。やる事が多すぎないか」

「多くて結構!四つの次元を統一して、理想郷を作るのがアカデミアの目的らしいけどさ、そうなったらきっとセレナも外に出してもらえるよ。で、今言った事を俺としよう!」

 

 デュエルし続けていた俺の中にはいつの間にかアカデミアの理念が流れ込んでいた。

 もしも本当に理想郷を作るというのならそこで新しく出来た友達と、セレナとの思い出を沢山作りたい。デュエルだけでない、楽しい事をいっぱい彼女に教えてあげたい。

 

「それでさ、遊園地に行くんだ。もう俺、目一杯君を案内する。足が棒になるまで連れ回す!」

「……私は遊園地に行きたいとは言っていないぞ?」

「絶対好きになるよ、というか好きにしちゃうから!」

「勝手な奴だなお前は!」

 

 そうこうしている内に、随分と遅くなってしまっていた。良い加減に切り上げないと夜ふかしになってしまう。俺がセレナに帰る事を伝えると、

 

「そうか、もう行くのか」

 

 彼女は心なしか残念そうに口をもごもごさせた。

 あまり見た事のない仕草だったもので、俺は面食らってしまう。その仕草はなんというかものすごく女の子っぽかったからだ。セレナと言えば男勝りな性格だから、思わず呆然としてしまう。

 

「なんだその顔は、言いたい事があるならハッキリ言え!」

「そんな風な顔するとは思わなくてさ、ごめん。そうだ、一人が寂しいって言うんなら……」

「寂しいだと、私がいつそんな事を言った!私はただ……おい、なんだ急に」

 

 今度はセレナが面食らう番だ。俺が懐からデッキを取り出し、突き出してくればその反応も間違ってはいない。デッキはデュエリストにとっては魂も同然、それを手放そうと言うのだ。

 

「俺のデッキ、預かっていて欲しいんだ。エクシーズ次元に行く時は支給されたモノを使うから。俺がいない間、それで遊園地に関して勉強して!」

「……近い内、とは聞いていたが明日エクシーズ次元に行くんだな?」

「しばらくセレナには会えなくなる。今日は沢山話せて楽しかったよ」

「大事なデッキなんだろう。私が預かって良いのか?」

「他の人には頼まないよ。セレナだから、友達だからお願いするんだ」

 

 セレナはゆっくりと頷くとデッキを受け取り、両手でしっかりと包む。それからこちらを見上げ、キッと目を尖らせた。

 

「アカデミアの誇り高き戦士として恥じないデュエルをしてこい。気をつけて行け」

「勿論、それじゃあ!」

 

 セレナにみ送られながら手を振って部屋から出る。足早に廊下を進みながら、俺は数日後に待ち受けているエクシーズ次元へと思いを馳せる。叶う事なら戦わずにわかり合いたいところだが、それは避けられないのだと皆言う。

 もしもそうなったとしたら、その時自分はちゃんと戦えるだろうか?

いや、戦ってみせよう。セレナの為に。そう考えれば、たとえアカデミアだろうと負ける気はしない!

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