夢と異常が混ざりあう ~SCPfoundation×ホロライブ短編集~   作:架空柿

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 のーこめ


複製中の最悪

 呼び鈴に対応し、緑色をしたゴスロリ調の服装をした少女、らでんが自室に戻ってくる。らでんは長方形の包みを両手に抱えており、とてつもなく気分が上がっていた。

「富嶽富嶽〜♪」

 らでんは包みを机の上に置き、近くに置いてある鋏を手に取ってそれを切り開いた。すると更に気泡緩衝材で包まれていたためらでんはそれを取り除いた。中に入っていたのは、草原の中で曲がりくねる道を歩く旅人の版画である。旅人の荷物にあった手紙は強風によって飛ばされ、最奥には富士山が見える、そんな版画だ。

「いや〜、復刻版とはいえやはり葛飾北斎の作品には惚れ惚れしますねぇ」

 らでんは誰にも届かない解説と好き好きポイントを喋り尽くす。配信時と何の変わり所がない、一般美術品マニアとしてのらでん。

 らでんは予め用意しておいた掛け場所にその版画を掛けようとした。しかしその時であった。突如部屋の中に強風が吹き荒れ始め、らでんは姿勢を崩してしまった。

「な、なにがどうなってるんだ!?」

 訳も分からない事象に対応しようと、らでんは必死に周囲を見渡す。すると吹き飛ばされて行く家具の中に一つだけ、微動だにもしていない物体が存在していた。それはその版画が入っていた包みで、中に何か重りがあるような動きをとっていた。

 らでんは必死に風に抵抗し、一歩、また一歩と包みへと近づいていく。しかし、その包みに近づくにつれて風はどんどんと強く、激しく変化して行き、どうにもあと一歩のところで風に負けてしまっている。

 そんな最中、突如として呼び鈴が部屋を駆け巡った。そしてらでんは思い出す。もう一作品、注文していたものがあったと。

「い、今出まーす!」

 らでんは風の邪魔をなんとか振り切り、玄関へと向かう。いつもなら五秒とかからない距離が、今では遥か遠くに感じた。

 やっとの思いで玄関に辿り着き、配達員に申し訳なさを覚えながら、らでんは荷物を受け取るためにドアを開いた。しかし、風は予想に反して外に出ることはなく、むしろ風がやんだ。

「止んだ……?」

「あの……サインを……」

「あぁはいはい、すいません」

 らでんは近くにあったペンで偽名のサインを行い、荷物を受け取る。そして用の済んだ扉を閉めたところで、風がまた来ることはなかった。

「周期的なものなのかな……」

 らでん一時の安全に安堵し、手元を見ると、そこには元気に跳ね回る鰍がいた。

「……わーお」

 

 数時間後、らでんはこよりによって、鰍に溺れかけていたところを救出された。勿論、例の版画には『異常性喪失薬』が振りかけられた。




 次回、最終回(編)! お楽しみに!

登場SCP
hatogou作
SCP-377-JP - 富嶽"噴火"三十六景
http://scp-jp.wikidot.com/scp-377-jp
2015
CC BY-SA 3.0
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