プレゼント    作:平月

1 / 3
プレゼント 第一話

 

「先生!こんな感じですか?」 

 そう言ってポップは顔を上げた。

「おおっ!いいじゃないですかっ!!ポップはやはり器用ですね〜♪」

「いや〜先生の教え方が良いんですよ〜」

「フフ♪あなたの愛の力ですよ♪ポップ♪」

「ア、アバン先生〜!!」

 ポップはアバンの冷やかしに思わず顔を赤くする。

 ここはカール王国城内にあるアバンのアトリエ兼研究室兼アイテム開発室。

 簡単に言えばアバンの秘密基地である。

 そのアバンの秘密基地にポップが通い始めてかれこれ一週間が経とうとしていたが、その彼が何故ここにいるのかというと……

「でもマァムにサプライズで指輪をプレゼントとはあなたにしてはなかなか粋なコトを考えましたね♪」

「え……っ!?あ、ああ〜まぁ……ヘヘっ……」

 今からちょうど一週間前のこと。

 ポップはマァムへの婚約指輪をサプライズプレゼントとして自分の手で作ろうとカールにいるアバンに相談しに来たのだ。そして、その話しの中で彼が指輪の作り方を教えてくれるというコトになりようやく一週間掛けて指輪のリング部分までは成形させることが出来たのだった。

 が、そもそもこの指輪のサプライズ案は実はレオナのアイデアだった。しかしそれを正直には言い出せずにポップは口籠った。

「クリスマスも近いですしね♪良いと思いますよ〜フフ♪それでは指輪のリングの成形はそれで良しとして〜あとは一番重要な宝石ですが……どうしますか?なんとか一通りこちらに用意してみましたが」

 そう言ってアバンは作業台の上に広げていた沢山の宝石をポップにみせる。

「こっ!こんなにあるんですかっ!!?」

 ポップは思わずその宝石の数に目を見開いた。

 ダイヤモンド、ルビー、エメラルド、アクアマリン、ガーネットetc……中には薄い桃色の髪のマァムに似合いそうなピンクパールなども並んでいた。

「ス!スゴイ!!こんなに集めてくれたんですかっ!?」

 ポップは振り返ってアバンに訊ねる。

「ハハハ♪まぁフローラ王女がご贔屓にされている宝石屋さんにお借りして来たんですよ、さすがにこれだけの宝石を買い上げるのは私でも無理ですから」

「元勇者なのに?」

「あなたは元勇者の肩書きをなんだと思ってるんですか?ポップ!」

「ヘヘっ…すいません……えっと……じゃあこの中から指輪の宝石を選んで良いんですよね♪」

「ええ、もちろんです!どれにしますか?」

「そうッスね〜どれもこれもキレイだけどな〜♪ん?アレ?先生これってもしかして……」

 と、ポップはある石を指差した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 その十日ほど前。

 この日、ポップとマァムはレオナに呼ばれてパプニカ城に来ていた。

「か〜っまったく姫さん!頼みがあるっていうからわざわざマァムと来てやったってのに……ただの城の大掃除じゃねぇか〜」

 ポップはパプニカに着くなりレオナからいきなりダイと一緒に城内にある大図書館の整理を仰せつかった。というか押し付けられた……

「ごめんよポップ〜お城の人達が流行り病とかで人手が足りないモンだからさ〜レオナも困ってたんだよ〜」

 ポップのボヤきにダイは謝りながらレオナのフォローを入れる。

「あ〜流行り病な〜オレらも聞いたぜ!ロモスでも流行ってるしアバン先生のトコのカールでも流行ってるってよ」

「え〜!そうなのか!アバン先生大丈夫かなぁ〜?」

「まぁ、つい二週間前に会いに行った時はピンピンしてたぜ!特効薬作るってさ!」

「アバン先生は薬も作れるんだな〜♪やっぱりスゴイな先生って!」

「だよな〜ま、学者の家系だからアタマの出来が違うんだよな〜」

「ポップが言うのかよそれ〜!アバン先生と同じくらい頭良いじゃんか!」

「物知りってところじゃ全っ然敵わね〜よ!年期が違うんだよ年期が」

「それを言うならマトリフさんが一番じゃん!」

「師匠はもう次元が違うって……変なコトもたくさん知ってるしな……滋養強壮とか言ってよこの前だってクロイモリとアカコウモリを乾燥させて粉末状にしてからニンニクの芽とすっぽんの血を混ぜて……とかなんとかやってたぜ……」

「なんだそれ……デルムリン島でもないぞそんなの……」

「俺もなんだか不気味なんで聞かなかったコトにしたよ……ハハハ……」

 二人はそんなことを話しながら兎に角広い図書館の中を手分けして掃除した。

「ところでさポップ!マァムにはもう渡したのか?」

「へ?なにをだよ?」

「えっ……と……こんにゃく……?」

「あ?こんにゃく?」

「あ!そうそう!コンニャク指輪!!」

 

 ズル……っ!!

「お前な〜それを言うなら婚約指輪だろっ!コッテコテだなお前は〜」

 と、ポップはダイの言い間違いにズッコケる。もちろん鼻水を垂らして……

「そう!それ!渡したのか?」

「…………」

「ポップ?どうしたんだよ?」

「いや、確かに渡してねぇわ……」

「やっぱりな!」

「あん?やっぱり?」

 ポップはダイのその言葉にジロリと睨みをきかせる。

「あ!い、いや!?ホラ!マァムの指になかったからさ!まだあげてないのかな〜って……」

「って……姫さんが言ってたのか?」

「うん!……っあ!?」

 ダイはポップの誘導尋問に見事に引っかかる。

「はぁ〜大体そこら辺の勘は姫さんだろ?おめぇがマァムの指先にまで気を付けて見てるワケねぇモンな……」

「ハ、ハハハ……やっぱそうだよな……うん、実はレオナにそれとなく訊いてみろって言われてさ……」

「まったくダイまで使ってお節介な姫さんだぜ!」

「で、でも!レオナだって心配してたんだぜ!二人はいつ結婚するのかな?って……」

「どーせ面白半分じゃねぇのか……?」

 ポップは再びダイに睨みをきかせる。

「う……た、多分……」

「はぁ〜ま、でも姫さんにも気ィ使わせてる俺も悪ぃしな……確かに一理あるわな……」

「そう言うのってやっぱ欲しいのかな?女の子って……」

「ん〜まぁな〜フツーはそうなんだろうけど、マァムの場合はあんまりそういうの興味なさそうだしな〜でも、やっぱ喜ぶのかな〜」

「そうだな〜俺もいつかレオナに渡さないといけないのかな〜」

 

 ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 と、二人は同時に腕を組んで頭を捻ってしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 一方その頃。レオナとマァムは王宮の執務室の方を整理していた。

「レオナ〜ここの整理も良いけど向こうの大っきな会議室とか応接室とかやらなくて良いの?」

「あ〜あっちはアポロ達がやるから大丈夫よ……ていうか彼等があまり私にやらせてくれないのよね〜」

「え?どうして?」

 マァムはレオナに訊ねる。

「掃除なんて私達に任せて姫様はゆっくりなさっていて下さいっ!ってね……まぁ姫ってことで気を使ってるのかも知れないけどみんなが頑張ってくれてるのに自分だけゆっくりなんて出来ないわよ!そう思わない?マァム」

「ま、まぁ確かにそうね……」

「姫だろうが王女だろうがみんなでコトにあたる時はカンケーないわよ!まったく頭が硬いんだかなんだか……」

 と、レオナは公務以外の雑務を普段させて貰えないグチを言いながら手元の資料に手を伸ばしている。

「きっとアポロさん達はレオナにケガでもされたら大変って思ってくれてるのよ……」

「まぁね……気持ちは有り難いとは思うけどさ……だからせめて自分の執務室くらいは片付けるって強引に言ったのよ!ここならケガも何も心配はないからね♪」

「確かにそうね……でもレオナらしいわ」

「え?なにが?」

 マァムの言葉にレオナは首を傾げる。

「先の大戦でもそうだけどレオナはお姫様なのに戦いの渦中に身を置いてたじゃない?ダイだって心配してたのにあの破邪の洞窟の時だってあなたちょっとワクワクしてたでしょ?」

 マァムはフローラやメルルと共にレオナのミナカトール習得の為に入った破邪の洞窟でのことを振り返って言った。

「ワクワク……してたかも♪……でもやっぱり皆が命懸けで戦ってる中で自分だけ安全な場所でって言うのが私はイヤなのよ……なんでもみんなでやり遂げたいのよね!」

「それがレオナらしいのよ♪」

「そう?フフフ♪それって褒められてるのよね?アタシ」

「もちろんよ♪」

 そう言いながら二人は笑顔を交わす。

「というワケでマァム!」

「ん?なぁに?急に」

「みんなでクリスマスパーティーやるわよ!」

「ん?クリスマスパーティー?」

「そう!クリスマスパーティー!!」

 なにがというワケなのかと……レオナの突然のクリスマスパーティー宣言にマァムは目をパチクリしている。

「あれ?クリスマスパーティー知らない?」

「知ってるわよクリスマスパーティーくらい……でもみんなでって?」

「みんなはみんなよ!お城のみんなは勿論!カールからはアバン先生やフローラ様、テランからはメルルにも来て貰いましょ♪あ、リンガイアのノヴァ君も来るかな〜?でもロン・ベルクさんのところで修行中だったんだっけ?あ、デルムリン島のブラスさんも呼べばダイ君も喜ぶわね♪そうなるとクロコダインやチウ君達も当然来るわね♪それと〜……」

 と、レオナは知り合いを呼べるだけ呼ぶつもりで早口に述べた。

「そ、そんなにっ!?因みにそのパーティーってパプニカのお城でやるの!?」

 マァムはレオナの提案に驚いて言った。

「ええ、そうよ!あ!招待状も用意しなきゃね!それとホラ!クリスマスパーティーといえばプレゼントもね♪」

「プレゼント?ああ、そ、そうね……」

 そう言うとマァムはどこか気掛かりな表情を浮かべる。

「あら?なにか問題あるの?マァム……」

 と、目聡くマァムの表情に気付いたレオナは彼女に訊ねた。

「え?あ、ううん!なんでもないわよ!ほら!お料理とかもたくさん作らないといけないんじゃないかな?って……」

「そうね!たくさん呼ぶと確かにちょっと大変かも知れないけど、そこはウチのシェフに頼むつもりよ♪もちろん!クリスマスケーキもね♪」

「そ、それは楽しみね♪」

「ええ!よしっ!さっさと片付けてクリスマスパーティーの企画を練り込むわよ〜♪マァムも手伝ってね!」

「う、うん!わかったわ!」

 そう言ってレオナが腕捲くりをしながら書類の束を纏め始めたのを見てマァムも手を動かす。が……

(「クリスマスパーティーか……なんとかそれまでに間に合わせなきゃ……」)

 と、マァムは密かにそう胸の中で呟いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「クリスマスパーティー?」

「そうなの!レオナが張り切っちゃって……」

 その日の夕刻、ポップとマァムは結局パプニカで一泊することになりレオナから用意された城内の一室にいた。

「世の中が平和になったからってそんなに浮かれてて大丈夫なのか〜?姫さん」

「それがね……執務室の掃除が終わった後にそのクリスマスパーティーの企画案を練っていたんだけど……ホラあなたともこの前話した流行り病のこと……」

「ん?ああ……それがなんだ?」

「クリスマスパーティーでその流行り病の患者さんへのチャリティーとして寄付も募ろうって……」

「あーなるほど……そういうことか……うん、それならやらないとな……」

 ポップはそう言って合点がいったと言う様に頷いた。

「レオナも流行り病には心を痛めてるのよ……なにか出来ることはないかって……」

「そっかぁ……そりゃあ確かに姫さんらしいぜ♪ほっとけないんだよな困ってる人や苦しんでる人を……ま、でもそれは俺らもな♪」

「ええ、そうね!」

 ポップとマァムはそう言って笑顔で頷き合った。

 すると……

 

  コンコン……!

 

「ん?」

「はい?」

 ポップとマァムの部屋の扉をノックする音がする。

「私よいいかしら?」

 扉の外からレオナの声がする。

「どうぞ〜」

 マァムが応えると扉を開けてレオナが顔を出した。 

「ごめんなさいね〜二人の時間邪魔しちゃって♪イチャイチャしてた?」

「してねーよ!人ん家でするかっ!?」

「えーそーなのー?つまんないわねー!遠慮しなくても良いのに〜別に覗いたりしないわよ?」

「当たり前だろっ!

    なぁマァム!」

「う、うん……」

 そうポップは言いながらマァムにも同意を求めると彼女は顔を真っ赤にしている。

「マァム顔が真っ赤よ?」

「誰のせいよ!」

 マァムもさすがに声を上げる。

「まーまー抑えて抑えて……とりあえず冗談はさておき……」

「冗談って……」

 ポップとマァムは呆れ顔でため息を突くとレオナは何故か真剣な顔をしている。

「どうしたの?レオナ急に」

「うん、実はね二人にちょっとお願いがあって……」

「お願い?掃除なら終わったろ?」

「うん、お掃除はホントありがとう!助かったわ!でもこの話はもっと重要な事なの……」

「なによ重要なことって?」

 そしてレオナは今、巷で流行っている例の流行り病のことを話し出した……

 

「確かにそうだよな……まさか世界中でこんなに広がるなんてな……」

 ポップはレオナからの話しを訊いて深刻に頷く。

「そうね、レオナが流行り病で苦しんでる人達の為にパーティーで寄付を募るって話しさっきポップにもしたところなのよ」

 次いでマァムが先刻のポップとの話しをする。

「そう……ありがとうマァム……それでねポップ君、さっきカールのアバン先生から書簡が届いてね、特効薬が完成したらしいのよ!」

「えーっ!もう出来たのか!?二週間前くらいに先生から話だけは訊いてたけどまさかもう出来たなんて!本当にすっげぇな先生は!!」

 ポップは目を見開いて驚いている。

「そうなのよ!スゴイわよね!それでハイこれ!」

 と言ってレオナはポップに一つの書簡を手渡す。

「ん?なにこれ?」

「アバン先生にその特効薬を分けて頂きたい旨が書いてある書簡よ♪よろしくねポップ君♪」

 そう言ってレオナはアバンへの書簡を届けるよう満面の笑みでポップに任せる。

「えーーーっ!!なんでオレがーーー!!」

「だって一刻も早く流行り病で苦しんでる人達を助けたいじゃない?ポップ君ならルーラでひとっ飛びでしょ?」

「ま、まぁそうだけどさ〜俺、郵便屋じゃないんだけど……」

 ポップはそう言って口を尖らしているとマァムが笑いながら言う。

「フフ♪でもいいじゃない?修行で身に着けた力は人の為に使うモノだって、それこそアバン先生に言われたんでしょう?ポップ」

「う……ま、まぁな……わかったよ〜んじゃ任されました!」

「ありがとうポップ君!それにアナタにとっても良い機会になると思うわよ♪」

「へ?俺にとっても?」

 と、レオナはマァムに聴こえない様にポップの耳元に小声で告げる。

(「指輪の件、アバン先生にお願いしたら?」)

「……っ!?」

 ポップはそれを訊いて慌ててレオナを見ると彼女は茶目っ気たっぷりにウィンクを返した。

「え?なに?」

 するとマァムがそんな二人に首を傾げて訊ねる。

「ううん!ちょっとはお礼を弾むって言ったのよ♪ね、ポップ君♪」

「あ、ああ……ま、まぁな……」

「お礼なんて欲しいのポップ?」

「んーまぁ貰えるモンなら貰っといても構わないだろ?な、姫さん!」

「ええ、そういうことよ♪それで今度はマァムにお願いがあるんだけど〜」

「え?今度は私?」

 マァムは自分にも話しを振られてキョトンとしている。

「ここじゃあちょっと話しづらいから〜ポップ君ちょっとマァム借りるわね♪」

「え?あ、ああ……」

「じゃあ!ポップ君は明日、アバン先生のトコお願いね〜♪じゃあマァムこっち来て!」

「あ!う、うん!」

 と、ポップが頷くやいなやレオナはマァムの手を引いて早々に部屋を後にした。

「やれやれ……今度は姫さんのお使いかよ〜いいように使いやがって〜」

 ポツンと一人残されたポップは頭をガシガシ掻きながらボヤく。

 と……

 

  パサ……ッ

 

「ん?なんだ?」

 今レオナから手渡された書簡の間から一枚のメモ用紙が落ちた。

「あれ?これって……」

 そのメモにはこうあった。

 

 ”ポップ君へ……

 色々使っちゃってごめんなさい

なので一つアイデアをあげるわ♪     

マァムへの婚約指輪は手作りのサプライズで手渡したら良いんじゃないかしら?

 アバン先生なら指輪の作り方もきっとご存知だと思うわ♪

  頑張ってねポップ君♪“

 

「サプライズ〜!ああ〜なるほどなぁ〜それもアリか……ん?手作り?そんでもって指輪の作り方をアバン先生が知ってるって……もしかしてアバン先生から指輪の作り方を教えて貰えってことか?

えーーっ!!マジかよー!!!」

 考えもしなかったレオナのアイデアにポップは一人不安と驚きを混じえた声を上げた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「どうしたのレオナ?ここあなたのクローゼットルームでしょ?」

 マァムはレオナに連れて来られただだっ広いクローゼットルームをキョロキョロしながら言う。

「そうよ?ちょっと待っててね♪」

 そう言うとレオナは部屋の奥の方に入っていった。

「それにしても、ものすごい量の服ね〜ドレスが多いけど普段の服もどれもステキな服ばかり………」

(「私もこういう服を着た方が喜んでくれるのかな……」)

 と、マァムは驚く程たくさんあるレオナの服に目移りしながらふとポップの顔を思い浮かべる。

「あーっ!あった!あった!マァムちょっとこっち来てー!」

「レオナ?今度はなによ?」

 マァムはやや訝しみながらレオナの声のする方に行くとそこは大きな鏡が四方に備え付けられている部屋になっていた。

「わ!鏡張りの部屋……」

「ホラホラ♪マァム!これこれ着てみてよ♪」

 レオナが手にしている服をヒラヒラさせて見せてくる。

「あれ?それって……サンタさんの?」

「そう!サンタコスチュームよ♪ね、来てみてよ♪」

「でもそれスカートじゃない?女の人だっけ?サンタさんって?」

「そんなのどうでも良いから♪ほらほら♪」

「わ、わかったわよ〜!」

 はしゃぐレオナにおされてマァムは仕方なくそのサンタコスチュームに着替えてみた。

 

「ん〜ちょっとサイズ小さいかなぁ?」

 が、マァムは着てみたは良いがなんとなく自分にはフィットしていない気がして特にスカートの部分を引っ張る様にして下着を隠す仕草をしていた。

「そうね〜去年私が着たやつなのよね〜やっぱマァムはグラマーだからちょっと小さかったわね〜」

「グ、グラマー?」

「私よりちょっとだけだけどね♪ま、二つお姉さんだから大人っぽいのは確かだけど」

 レオナはちょこっとという仕草を指で示して言った。

「ん〜でもコレどうするの?」

 マァムは未だにスカートの裾を気にしながら引っ張る。

「仕方ない!マァム用のを大急ぎで作らせるわ!それは私が着るから大丈夫よ♪」

「わ、わたし用のを!?作る?なんでよ!」

「だってクリスマスパーティーはこれ着てもらわないと盛り上がらないわよ?」

「えーーーっ!!これをパーティーで着るのーーー!?」

「そうよ!去年も着たのよ?エイミやマリンも一緒にね♪」

「あーそういえばパプニカでも去年クリスマスパーティーやったらしいわよね……去年は出れなくてごめんなさい……」

「ううん!いいのよ、ロモスのクリスマスパーティーと被っちゃったんだし仕方ないわ!でもロモスではどんな感じだったの?クリスマスパーティー!」

「そうね〜パーティーというか王様もロモスの国民もみんな集まって教会でお祈りをして街では露店も出ていたけど〜こんな服誰も着てなかったわよ?」

 マァムは昨年参加した地元ロモスでの比較的地味なクリスマスパーティーを思い出していた。

「まぁロモスはロモス!パプニカはパプニカよ!大丈夫!!今年は退屈させないわ!!」

「べ、別にロモスのクリスマスも退屈ではなかったわよ……」

 マァムは苦笑してレオナに軽くツッコむ。

「マァム!楽しみましょ!ね♪」

 レオナの茶目っ気たっぷりのウィンクは先刻のポップに続いてその相手の彼女にも炸裂しマァムは苦笑いのまま頷くしかなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 翌日。ポップとマァムはネイル村に帰っていた。

 今から三年前のこと……大魔王バーンとの大戦後に空に消えたダイはその半年後に無事に地上に帰還した。その後ダイは再び結集したポップ達アバンの使徒や新生竜騎衆達と共に冥竜王ヴェルザーの地上侵攻の野望を打ち砕き世界は再び平和を取り戻すことが出来た。

 そんな中でポップとマァムはここ数年の間にお互いの距離を少しずつ縮めて来た。また、先の戦いの中でも互いにその存在の大切さを深く実感することも出来た。出会った頃のことを考えたら今では不思議なくらい自然とお互いを求め合えたのだ。

 そうして本当の平和を取り戻した今、ようやく双方の親の了解を得て婚約という形を取ることが出来たのだった。

「じゃあ行ってくるぜ!」

「うん!気を付けてねポップ!」

 そう言ってマァムはアバンの居るカールに向かうポップを笑顔で見送る。

「ハハ……いつも思うけどさルーラでひとっ飛びだから気を付けるも何もねぇけどな?」

「もうっ!おかしなヘリクツ言わないの!笑顔で見送ってるのに〜」

 そう言ってマァムはポップの鼻を小突く。

「イテッ!ヘヘ……わりぃわりぃ!あ、そうだ忘れてたぜ!」

「え……?」

 マァムがキョトンとしてるとポップが目を瞑って口を突き出している。

「いってらしゃいのチュ〜♪」

 

 べしっ!!

 

 と、マァムはポップのそれには応じずレオナがポップに託したアバンへの書簡を彼の顔面に押し付けた。

「なんだよ〜チュ〜くらいいいだろ〜?」

「何言ってんのよ!あなた一番大事なレオナの手紙忘れてるじゃない!任されたんだからしっかりしなさいよ!」

「あ、いっけね!ホントわりぃわりぃ!」

「まったくもう!」

 

 チュッ!

 

「……っ!?おっ!?」

「気を付けてねポップ♪」

 マァムはポップの頬に軽くキスをすると自分の頬も少し赤らめながら改めて笑顔で見送りの言葉を掛けた。

「お、おう!あんがとよマァム♪

  ルーラーーーーーー!!」

 ポップもそう言いながら照れた様に頬を赤くするとルーラでカールに飛び立った。

「大丈夫かしら?ルーラの着地……」

 マァムはそんなポップのルーラの軌跡を見送りながら少しだけ不安になった。

「さて!私はアレを進めないと!パーティーには絶対に間に合わせなきゃ!」

 しかしスグに思い直すと腕捲くりをしながらポップと住んでいる自宅に戻っていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「レオナ〜これ今年も着るのか〜?」

 ダイはレオナの部屋に妙なモノを持って入って来る。

「もちろんよ!あらイヤなの?」

「そ、そういうワケじゃないけどさ〜」

「じゃあなによぉ〜!それを着て今年も子供達にプレゼントを渡しに行くんだから〜みんな楽しみにしてるわよきっと♪」

「ま、まぁ……そうだね……」

(「子供達にプレゼント配るのは楽しいケド……レオナ人使いが荒いんだモンな〜」)

「あら?何か言った?」

「え!?べ、別に!何でもないよ!!」

「レオナは人使いが荒いって顔に書いてあるわよ」

「いっ!いや!そ、そんなこと思ってないよ!」

 ダイは自分の心の内を見透かされて慌てて首を振った。

「でも安心して!今年はポップ君とマァムもいるから去年よりはきっと大変じゃないわよ♪あ、メルルにもお願いしようかしら〜そうしたらどうなるかな〜♪」

「またややこしいことしなくても……」

 完全に興味本位で想像を膨らますレオナにダイは呆れていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「どわぁぁぁーーーーーーっ!!!!」

 

 ズドォォォーーーーーーン!!!!

 

 ここはカール王国。その王城の中庭に突如激しい衝撃音が響いた。

「イチチチ………」

 その衝撃音が響いた中庭にルーラの着地を失敗したポップが腰を抑えてうずくまっていた。

「うぅ……ほっぺにチューくらいで動揺するとは……いつもはもっとスゴイことしてるのになぁ〜」

 そう言いながらポップはようやく立ち上がる。

「俺もまだまだ修行が足りねぇや……」

「ポップ……っ!?ポップじゃない!?」

「へ……っ?」

 ポップが声のする方を見ると城のテラスからフローラが侍女と共に中庭のポップを見つめていた。

「フ、フローラ様!!?あ……ハハ……す、すいません……お騒がせしました…」

 ポップはルーラの着地失敗による衝撃音の件を詫びる。

「びっくりしたわ~テラスでお茶をと思っていたら突然大っきな音がしたから……」

「ホントにスンマセンでしたっ!!中庭に着地する予定じゃなかったんですけど……」

「まぁ大したケガがないようならいいわ♪ところで今日はどうしたの?」

「あ!そうだ!そうでした!!あの、アバン先生は?」

「アバンなら秘密基地よ♪今は例の流行り病の特効薬を量産してる最中だと思うわ」

 やはりレオナの言う通りアバンは流行り病の特効薬を完成させて既に量産体制を整えていた。

「やっぱそうかー!先生スゲェなぁ!!」

「フフ♪本当ね、ところでポップそんなところに居ないで上がってらっしゃい……今日は特別にお行儀よく門からじゃなくてトベルーラで良いから」

「え!?そうッスか?じゃあお言葉に甘えて〜」

 そう言うとポップはトベルーラでゆっくりとフローラのいるテラスに降り立った。

「すいませんフローラ様……お茶の最中に……ヘヘっ」

「ううん、いいのよティータイムはこれからだから♪あ、アバンも呼んで頂戴」

「はい!かしこまりました」

 フローラはポップに笑顔で応えるとお付きの侍女にアバンを呼ぶように申し付けた。

「ありがとうございます……」

「フフ♪それでどう?最近は?マァムと仲良くやれてる?」

「え!あ、ああ〜もちろんですよ!まぁたまにはケンカもしますけど……」

「あら?そうなの?でもきっとあなた達は結ばれる運命だったと思うわ♪」

「え?運命……ですか?」

 フローラの突然の言葉にポップはキョトンとする。

「私があなた達二人と初めて出会った時のこと覚えてる?」

 するとフローラは突然ポップに問い掛ける。

「ええ、もちろんです!初めての大魔王バーンとの戦いでコテンパンにやられて……俺とマァムは二人だけで海の中を彷徨って……」

「そう………あの頃に立てていた前線基地の近くの浜辺に二人で流れ着いていたのよね……」

「はい……でも俺、海の中で気を失ってしまってアイツが……マァムが俺を抱えてあの浜辺まで泳いで辿り着いてくれてたんです……」

「そう!それよポップ」

「え?」

「あの時あなた達はその身だけで四日間も海で漂流していた中で生き残ったのよ?普通に考えてこれはあり得ないことだわ……ましてや今あなたが言った様に大魔王バーンとの戦いに敗れて心身ともに大きなダメージを負っていたにも関わらずね……」

「確かに冷静に考えると本当によく生き残れたと思います」

 ポップはその時のことを思い出しながら深く頷いた。

「その中でまた、マァムがあなたを助けたい一心で自分の限界を超えてあの浜辺に流れ着いたという事実。それを考えれば彼女はあなたの為に必死に生きようと思ったとも言えるのよ……だから私はあなた達が生き残ってこうして今の未来を掴んだのは運命だと強く思うの……」

「フローラ様……」

 ポップはフローラのその言葉にマァムに対する強い熱を覚えた。そう、あの浜辺に辿り着いた後に気を失っていたマァムをポップが必ず守ると強く思ったのもまた事実だったからだ。

 それから時が経ち一度破れた大魔王バーンとの戦いにも皆の力で勝利を掴むことが出来た。

 未来……。

 そう、その戦いの最中でマァムと誓った未来を共に見るという想いは今こうして叶えることが出来たのだ。

「そうですね……マァムと俺、未来を一緒に掴むって約束してたんです……」

「フフフ♪ほらやっぱりね……」

「え……?」

「そんな約束をする相手をどうして運命の人じゃないって言えるの?あなたが言い出したことなのか、彼女が言ったことなのかまではわからないけど二人共それで未来を掴んでいるのだから運命以外の何ものでもないわ♪」

「フローラ様……へへっ!やっぱり運命の人をずっと信じて待ち続けた人は違いますね♪」

「まぁ!からかわないの!」

「へへっ!すいませんっ……」

「フフフ♪」

「ハハハ♪」

 そうして二人が笑顔を交わし合っていると……

「おやおや賑やかですね〜♪」

 フローラとポップが振り向くとそこにアバンが微笑みながら歩いて来た。

「アバン、遅いわよ!」

「いやいやすいません……増産体制がはかどり過ぎまして……ポップ、よく来ましたね♪」

「はい、先生!お邪魔してます!あ、そうそう!これパプニカの姫さんから……」

 そう言ってポップは懐から預かったレオナの書簡をアバンに手渡す。

「おやおやさすがレオナ姫!早いですね〜♪」

「催促かしら?」

 フローラはアバンに笑い掛けるとアバンは素早く書簡に目を通して言う。

「ええ、概ねそうした内容ですね♪」

 アバンはフローラに書簡を手渡すと彼女も目を通す。

「パプニカでもやはり流行り病は広がってるのね……」

「はい、それと俺達がいるロモスでも広がってます」

 フローラが憂いを込めた表情で顔をあげるとポップは頷きながらロモスの現状を口にした。

「アバン、パプニカとそれからロモスへ特効薬を用意して上げられるかしら?」

 フローラは既に女王の顔になっている。

「ええ、パプニカの分はもう準備は出来ていますよ♪ロモスの分はポップ、少し待っていて下さいね♪」

「へ?あ、もしかしてロモスの分も俺が運ぶのかな?」

「あら?そういうつもりじゃなかったの?」

「あ、いえ……も、もちろんですよ!ハ、ハハハ……」

(「ま、まぁルーラで帰るし……いっか……」)

 

 その後ポップはアバンのいわゆる秘密基地に招かれ特効薬の仕分け作業を手伝い始めた。

「これでロモスの分も完了ですね♪」

「はい、ロモスの王様も喜びます!」

「あなたが人々の役に立てて私も師として嬉しいですよポップ!」

「身に着けた力は人の為に役立てるモノ……ですよね!先生♪」

「イエ〜ス!その通りです!フフフ♪」

 ポップとアバンはそう言いながら笑顔で頷き合った。

 と、ここでポップが徐ろに例の相談を持ち掛ける。

「あの先生……それと実は今日ここに来たのは特効薬のことだけじゃないんです……」

「どういうことですか?」

 そうしてポップはレオナから提案されたマァムへの婚約指輪の件をアバンに話した。

「なるほど〜指輪の作り方ですか〜フムフム……」

「やっぱりムズカシイですか?」

「ん?あーいえいえ指輪自体は作れますよ♪あ、これはヒミツですけどフローラ王女への指輪も私が作る予定ですから大丈夫!私がお教えしましょう!」

「やったぁ!宜しくお願いします!」

「ただ、今私が考えていたのは指輪の宝石の部分のコトです」

「宝石?あ、確かに一番大事なトコっスよね?」

「マァムは好きな宝石とかあるのですか?」

「う〜ん……確かにアイツそういうのは興味なさそうだしな〜俺もわからないんですよね……」

「それと彼女の指周りのサイズもわからないといざ完成しても嵌められなければ……」

「た、確かに……」

「それではこうしましょう!私は宝石をいくつか集めておきますのであなたはマァムの好みの宝石と指周りを調べて……そうですね〜明後日にまた来て下さい!」

「あ……!明後日っ!?」

「ええ、その頃には各国への特効薬の分別と受け渡しも終わってると思いますので宜しくお願いしますポップ!」

「あ……は、はい!」

 そうしてポップは明後日にまたカールに来る約束をアバンと交わすとロモスに帰って行った。

 




 ぽぷまつり初参加の作品です✨ 
 今月 クリスマス 月ということで、今週から3週に渡っての短期連載になります✨クリスマスイヴ✨に完結の暖かいお話しです✌️✨お楽しみ下さいませ✨

さて、第一話は早速忙しそうな師走の大魔道士です 
レオナに色々使われるポップはアバンの元へ……そしてフローラから語られた運命…と、彼の中でマァムの存在がどう色濃くなっていくのか……そんな話から始まります✨ 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。