1971年9月より開始された統合軍による大規模撤退作戦は一応の成功を収めた。九州に展開していた戦力はその多くが韓国・台湾・沖縄・四国・山口に撤退し防衛ラインを再構築、各地から抽出された戦力も配備され通常のBETA種であれば問題なく駆除出来るはずだった。
しかしアルファ個体は各戦線より撃ち込まれる攻撃を無視し、福岡市勝馬小学校跡より海上に進出、統合軍艦隊の迎撃虚しく海中にロスト。一月後に再度捕捉したのはウラジオストク沖合10kmであった。
多数の対潜哨戒機・駆逐艦が海中を捜索したにもかかわらず発見出来なかった理由は不明だが、当時ウラジオストク周辺に有力な艦隊は存在せず駆逐艦一隻とフリゲート艦が3隻の艦隊にて迎撃を開始、直後に超強力レーザーが海中より発射され艦隊は消滅、ウラジオストク市外に展開していたドイツ陸軍第16機械化装甲大隊が即応し上陸中のアルファ個体に攻撃を開始した。
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1972年1月10日.....19:42
ドイツ連邦陸軍 第16機械化装甲大隊...
第307中隊第1小隊『ゼートイフェル』
小隊長:ヨーム大尉.....
突如出現したアルファ個体のレーザー障害により司令部との長距離通信は途絶、復旧は早くて13時間後…ってところね…
「…はぁ…通信可能域内の第16大隊全機応答せよ!市街地から民間人の避難民を誘導しつつ戦闘を行う!」
『こちらゼートイフェル2、よく聞こえるぜ…あー、ゼートイフェル2から6まで異常なし、損害ゼロだ』
『こちらシルトクレーテ小隊、全機異常無し』
『308中隊エルペル、アーマイゼンフレッサー両小隊も異常無し』
『309中隊、フルスプフェルト、ハーゼ両小隊全機行けます!』
「了解、我がゼートイフェルとシルトクレーテ両小隊はアルファ個体を引き付ける囮として展開し攻撃」
『シルトクレーテ1了解、小隊続け』
「308中隊もアルファ個体に攻撃を行え、尚エルペル小隊は可能な限りアルファ個体の情報収集を行え。自衛以外では発砲を禁ずる」
『了解した指揮官、アーマイゼンフレッサー小隊は長距離支援を行う、最適な射点を探すぞ』
『了解指揮官殿!エルペルは情報のみを収集します!』
「309中隊は避難民の輸送を警察と協力して行え」
『了解、1人残らず救い出します』
『ゼートイフェル2より1へ』
「なに?」
『増援の予定は?』
「今のところないわ、アタシ達だけで奴とやり合うの…最高でしょ?」
『…まぁな、作戦時間は?』
「民間人が避難が終わるまでよ」
『…あぁくそ…本当、最高のミッションだぜ』
「九州では姿さえ見る事なく撤退したけど…」
機体の望遠カメラでアルファ個体を見る
「…んー、美的センスの欠片もない姿ね」
『シルトクレーテ1よりゼートイフェル1、我が小隊は射撃準備完了』
『アーマイゼンフレッサーも射点を確保した、いつでも』
「優秀な部隊員でなによりだわ…2分後に攻撃開始、309中隊も攻撃と同時に救出を開始」
機体に装備されている90mm速射砲に装填する
「本隊が到着するまで時間を稼ぐわよ」
『『了解』』
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539:ソ連
アッ、アッー!
540:中国
気をしっかり保て!
541:インド
韓国ではなくウラジオストクに!?
542:カナダ
わざわざ遠回りして大陸に向かったな…
543:日本
本州上陸されなくてよかったぁ…
544:イギリス
その代わりにソ連さんのところに行きましたけど…
545:ドイツ
一個大隊だけ即応できたわ、周辺に展開してる部隊にも指示出したからみんなも早く展開してくれー!
546:アメリカ
前の戦闘で極東方面の無人部隊は壊滅したから欧州部隊から無人部隊を回すわ、それまでは艦隊からの長距離支援に限られる
547:イタリア
日本から戦力移動させなきゃ…
548:イギリス
九州に展開してた23連隊は損耗激しいから本土から22・24連隊を新たに派遣するわ
549:日本
対アルファ個体用部隊の編成が終わり次第大陸に向かわせる、艦隊は既に派遣した
550:ソ連
極東方面軍の全戦力を持って討ち取る!
551:ドイツ
越境してソ連国内に戦力展開させるよ?
552:フランス
コッチの軍も向かわせていい?
553:ソ連
ウェルカムウェルカム
554:中国
近い部隊動かすわ
555:カナダ
ドイツー?どんな感じー?
556:ドイツ
展開してる大隊がネームドかってくらい強い以外は九州の時と変わらん
557:カナダ
レーザー撃った?
558:ドイツ
展開してた小艦隊に向けて撃ってる
559:カナダ
ほむ…やっぱり海中だとよく冷えたのかな?前の時よりインターバルが2日早いや
560:アメリカ
じゃあ『レーザー』→『海中』なんてされたら5日に1回照射されると?
561:ソ連
勘弁してくれ…シベリアの凍土が溶けちまう…
562:日本
それどころか日本列島が消える
563:アメリカ
\(^o^)/
564:ドイツ
またアメリカが壊れ始めたぞ!
565:イタリア
叩いたら治るでしょ
566:中国
壊れてる場合じゃないぞアメリカ!立ち上がれアメリカ!
567:フランス
だが壊れる気持ちも分かる…アイツ止められる…?
568:ソ連
極東方面に増設してる各砲撃陣地やら基地からの砲撃と各機甲師団と機械化装甲師団の全力攻撃であれば…1週間は耐えられるかな?
569:インド
既に九州方面で歩兵が携行できる武装から紀伊型の51cmクラスの砲弾を耐えてますからね…どう殺します?
570:カナダ
なんともいえなーい…
571:インド
一つ、仮説なんですがいいですか?
572:日本
どうぞ
573:イギリス
どうぞ
574:ドイツ
どうぞ
575:イタリア
どうぞ
576:インド
ありがとうございます、アルファ個体は急造の個体だと考えていますよね?
577:カナダ
多分ね、他のBETA種が存在しないと言う事は文字通り全ての資材を使って生産したんだろうし
578:インド
それだったらあの修復能力は無限ではなく有限であると思います
579:アメリカ
なーる
580:日本
確かに、今までアルファ個体が周囲の放棄された機体や遺体を捕食したという報告は無いな
581:フランス
九州の時と今起きてる戦闘見比べる必要がありそうだな、ドイツー?
582:ドイツ
分かってるよ、もうちょいまってて
583:日本
日米英で九州の時のデータ纏めようぜ、もしかしたらだんだん再生のスピードが落ちてるかもしれない
584:イギリス
こんな事もあろうかと《用意してあるんだなこれが》
585:フランス
絶対今作ったろ、そのファイル名
586:イギリス
爆速で作ったよ
587:アメリカ
出来る奴だぜ…
588:ドイツ
ほい!《映像データ》
589:インド
ありがとうございます
590:カナダ
で、どうよ?
591:インド
これは…
592:イギリス
間違いなく遅くなってるんだよなぁ…
593:日本
特に大きな砲弾で撃たれた後は特に分かりやすい
594:イタリア
やっぱり戦時急造個体だと継戦能力に問題があるのかね
595:フランス
どちらにせよ良い報告じゃないか
596:アメリカ
でもアイツが再生しなくなるまで撃ち続けるのは現実的じゃないゾ
597:フランス
殺しきるまでにユーラシアは塵になりそう
598:日本
私に良い考えがある
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ソビエト連邦
極東方面司令部
民間人には極秘で建設されたこの超巨大地下基地は本来であれば万を超えるBETAに対して使われる筈だったが、今はたった一体のBETA種の為に使われている。
基地内からはソ連製 MBS『ルーク』が多数地上に送り込まれていく、ずんぐりとした機体シルエットは間抜けに見えるが、肩に装着された多連装リボルバーカノンがそのイメージを払拭する
格納庫内は他にも多数の機械化歩兵装甲を装着した兵士や戦車や輸送車両などが地上に送られるのを待っていた
そして基地の司令室は各地から到着する各国部隊の受け入れ先や部隊の展開地、補給のスケジュールなどを調整しつつ状況の把握に努めていた
「ウラジオストクとの通信途絶、プランD-2-6に従い周辺部隊を移動させます」
「現地の情報収集を急げ!早期警戒機を上げて空と陸から情報を集めろ」
「弾薬と燃料類の集積は第19集積基地、食料医療品は第37集積基地だ!纏めるなよ?各集積基地から分配してさらに分けろ!万が一レーザーに巻き込まれても幾つかは使えるようにしておけ」
各モニターと手元のタブレットを見比べつつ各部隊に指示を出す司令室と裏腹に、基地司令が居る部屋は静かなままだった。
(九州戦線であれだけの猛攻を退けた敵をどう仕留める…?)
机の上に広げられたアルファ個体の写真を見ながら考える
(九州撤退時アメリカ軍の残党と日英軍の行った脚部とレーザー照射部に対する攻撃は効果があった、だがそれは撤退する時間が稼げたというだけで勝てるわけではない…)
(かと言っていたずらに兵を消耗するわけにもいかない、この極地で活動出来る兵は少ない)
写真を睨みながら考える、奴の限界がわからない。これでは闇雲に攻撃を仕掛けるしか道は無いが、それはしたく無い
(どうしたものか)
思わず天を仰いだその時
“聞こ…か?……?
まるで部屋中に響き渡る様な声だった、だが自分以外この部屋には存在しないし、部屋自体も防音であり外部の声が聞こえることなど無い…が確かに目の前に白い人型が現れている
「誰だ!?」
すぐにホルスターから拳銃を抜き『何か』に備える
“これ……授け…す”
「何…?…ぐっ!?」
『何か』がコチラに手を伸ばした途端、様々な『情報』が流れ込んでくる、あまりの情報量に激しい頭痛に襲われ蹲る
(なんだ!?…なんなんだ…ッ!)
10秒だろうか?30秒?10分かもしれない間、頭痛に耐えて再度立ち上がった時、あの『何か』は居なかった。だが、代わりに彼の頭の中にある『作戦』が出来上がっていた
直ぐに副官を呼び基地内のセキュリティチェックを行う様に指示した後、頭の中にある作戦を検証する
(…不可能では…無いな、十分行える作戦だ…だが…)
あの『何か』は何だったのだろうか?BETAによる新しい攻撃とも思える、もしくは国内の不穏派による何らかの攻撃だろうか
だが…悪い者では無い様に感じた。例えるならば父や母の様な安心感、でも、より大きな…そう『天使』や『神』…まるで『地球』の様な強い安心感。
(オカルトの類で部隊を動かすのは…普通に考えるならば駄目だな)
(仮にこの作戦が失敗すれば多数の精鋭が消える、それは人類にとって手痛い損失になるだろうが)
(『何か』が何者かは知らないし、もう探るつもりも無い、しかし…自分でもおかしな話だと思うが……信じてみようと思う)
「この作戦に賭けてみよう」
「賭け金は極東に展開している全戦力」
「狙うは奴の首一つ」