シカゴ・プラットフォーム崩壊現場、今も尚降り注ぐ瓦礫の中シカゴ市内では崩壊した建物の中からの救助作業や病院から他の安全圏に設置された野戦病院へと移送する救急車の車列が続いている。
この危険な状況の中救助作業や移送作業が行えているのは機械化歩兵装甲やMBSの警察、救急、消防モデルが存在する為だ。
『常に頭上に注意しろ!HUDに表示される落下予測地点から目を離すな!俺達が死ねば誰も救えなくなる!』
救助隊員達が被っているヘルメットには今も尚空中で瓦礫を回避しながら飛ぶ情報収集機がリアルタイムで落下予測位置を割り出し最短で地上の隊員達に情報を与え続けている。
今も航空管制から退避するよう悲鳴のような指示が届いているが、ほんの1秒のズレが地上の隊員達の危機になるとして退避を拒み続けていた
『早く退避しろ!貴機が墜落すれば地上の救助隊員達への被害が出る!』
情報収集機の中ではコックピットに居るクルーと機体中央に座っているミッションクルーが綿密にコミュニケーションを取りながら瓦礫の間を飛んでいる。
「そんな事は分かってる!!だが俺達が安全圏まで退避すると地上の隊員達に情報が伝わるのが4秒遅れる!そんな事になってみろ、救えるものも救えなくなるぞ!」
『だからと言ってお前達が危険な目に遭う事は許可できん!!』
情報収集機のクルーは別に軍人でもなければ軍属でもない、民間企業のしがない天候調査機だ、だが今現在地上の隊員達とデータリンクが接続できる機体がこの空域に1機しかない限り彼等はこの場を離れる気は無かった。
機長もクルーもシカゴの空を飛び続けて30年のベテラン揃い、軌道エレベーターが完成した時から何年も見守ってきた
『機長、新進路2-1-4』
「了解、新進路2-1-4」
『再度命令する!!直ちにその空域から退避しろッ!危険だ!』
「地上の仲間を見捨てる事は出来ん!通信が途絶えたら地上の全員に危険を通知してくれ、俺達の回収は後回しでいい」
機長は操縦桿を強く握りしめながら叫ぶ
「せめて代わりの奴が来るまで俺達は」
『よくここまで繋いだ!』
無線に突然割り込んできた知らない声に航空管制官もパイロットも言葉が詰まる
『こちらはシカゴ・コントロール、そちらの所属は?』
『アメリカ空軍第114偵察飛行隊所属のロメオ4、そこの民間機!退避しろ!後の監視は俺達がやる』
「…ッ了解!気を付けろよ!最新のデータをそちらに送信する」
後方のクルーに指示を出しロメオ4にデータを送信し、すぐさま退避機動に移る
『…よし、感謝する、こんな危険な事二度とするんじゃないぞ!!』
「孫に頼まれてもしねぇよ!」
『機長、新進路1-2-2…このコースなら安全です』
(後は任せたぞ、後輩共)
破壊された軌道エレベーターを背後に情報収集機と米空軍の偵察機が交差した
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第114偵察飛行隊
コールサイン:ロメオ4
機体:RC-333
(こりゃ酷い)
目前に広がる光景はブリーフィングで見た時よりも酷い状態になっていた。
『全ドローンの準備完了、投下準備よろし!』
後席のオペレーターが無線越しに報告してくる、このRC333は米軍がBETA活動地域内で少しでも情報を集める為に新規設計された偵察機で多数のドローンの運用が想定されており、胴体部に存在する格納倉に最大8機の偵察ドローンが納められている。
今回ロメオ4が搭載してきたドローンの数は4機
「射出を許可する、全てのドローンの操作権をお前に渡す。上手く使え」
『了解、そちらはデータリンクの構築と操縦をお願いします』
機体の格納倉が開放されドローンが放出されていき、軌道エレベーターを中心に捉えつつ周回機動を取った
この4機でシカゴ周辺に展開している全ての地上部隊に落下情報を提供する事が可能なのである
(さて、今頃ホワイトハウスに届いてる頃か?)
政府の偉い人の事を一瞬考えすぐさま操縦に集中した
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ホワイトハウス
シカゴ・プラットフォーム対策室
普段は会議室として使用されている部屋だが、現在は多数のモニターが運び込まれ各地の被害情報が集積され政府閣僚に開示されていた。
「デトロイトからの第一報被害報告来ました!」
「カナダより支援要請!トロントに残骸が!」
「ミルウォーキーからも支援要請!」
「大統領、偵察機がシカゴに到着、ドローンからの映像が届いています」
「出してくれ」
大統領の目に前に差し出されたモニターには4機のドローンから中継された現地の映像が映し出された
映像には地上で活動する救助隊に降り注ぐ残骸や今も尚崩れつつある軌道エレベーター、巨大な質量に押し潰された街の様子が映し出されていた
「…」
大統領は映像を見た後、手元の損害情報を纏めた書類を黙って見ている
「大統領…?」
体調でも悪いのかと心配した職員が声をかけるがしばらく無言だった大統領は口を開いた途端
「軍を総動員だ」
「は…?」
「議会を通さずに総員を動かす」
「し、しかしそれでは」
「構わん、これで私が大統領に相応しくないと今の立場から降ろされるならそれでも構わん、だがここで戸惑って救助の手が遅れてみろ、例え政治生命が続いたとしても私は死ぬ」
道を塞ぐ大きな瓦礫を強化外骨格を身に纏った消防士達が集まり路肩に退けていく映像を見ながら大統領は腕時計を外し大きく息を吸う
「人として死ぬのだ」
大統領は側に居る職員の肩を叩き微笑みながら言う
「それに、緊急時には法的にも認められているさ」
スーツを脱ぎネクタイを緩めながら大統領は立ち上がる
「さぁ諸君、長い夜が来るぞ。夜明けを見るためにネクタイを緩めて袖を捲れ」
「外交班は友好国に連絡を取れ、テロに対する注意喚起と支援要請!国土安全保障班は今回の事件を起こした犯人グループの特定を急げ、今回の事件が片付き次第国土安全保障省の設立を急ぐ、緊急対応班は各地の難民キャンプに必需品を送り込め!さらに各地で国民によるパニックが予想される、各州知事にはパニックを抑えるように伝えろ!」
一息で指示を与えた大統領は鋭い目でモニターを睨みつけ、周囲には聞こえないように呟く
「覚悟しろよ『しもべ』共、これ以上合衆国で好き勝手に出来ると思うなよ…ッ」
合衆国が腰を上げ始めました