世界掲示板   作:aroma moko

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人類の歩み

 

 

 

 

《人類の歩み》

 

モニターに映る映像には、何らかのドキュメンタリー番組が放送されている。

 

「1967年から現在にいたるまで、我々人類は地球外…正確に言うならば太陽系外からの侵略種『BETA』との戦闘を行っています」

 

「月面での初接触から『月面防衛戦』『オーヴァーロード作戦』『大陸決戦』『第二次月面戦争』『しもべとの対テロ戦争』『火星沖海戦』『月沖決戦』『第1次火星上陸作戦』『第2次火星上陸作戦』と人類は多数の戦闘を経験してきました」

 

「この番組ではまず、今までの戦闘で亡くなった全ての将兵と民間人の方々への黙祷を行ってからはじめます」

 

番組のBGMも止み、しばしの沈黙

 

 

 

「それでは、今回の章では1988年から2000年代後半までの間におきた人類の技術的進歩と統合軍の歩みについて注目していきましょう」

 

「まず1987年の月沖決戦以降、BETAの太陽系内での活動が低下し。人類に安寧の時が訪れた事からある事が始まります」

 

「“それ”自体は細々と続けられてはいましたが、常にBETAや『しもべ』との緊張状態に晒され続けた人類は、この時。緊張状態を緩める事が出来ました」

 

映像では街角に立っていた兵士が警官になり、警官が何らかの記念撮影をしている学生の姿になるタイムラプスが写っている。

 

「空港から装甲車が消え、病院から狙撃手が消え、学校や幼稚園から兵士の姿が消えていきました、人々はゆっくりとですが長らく感じることの出来なかった『平和』という『空気』を得た事によりあることが起きました」

 

様々な写真から、何らかのグラフに変わる

 

「これは1987年から2025年までの人口の推移です、1989年から2002年までの間、ベビーブームが到来し人口が爆発的に増え始めて居ます」

 

「世界人口が1989年から1993年までの5年間に52億から67億人まで膨れ上がりました」

 

「結果として急ピッチで進められる住宅街の建築と病院や保育所の建築は多くの労働者が従事し。保育士・教育者などの育成が国を挙げて進められた事により軍・民限らず豊富な人材を多く世に送り出すことになりました」

 

「増えた人口により世界的な食糧危機に陥ると予想されましたが、オーストラリア政府主導の地球・宇宙空間における食料生産体制の増加政策とそれを後押しする国際的な協力もあり」

 

「人類史から飢餓という言葉が消えるほどに食料が人類社会に溢れかえりました」

 

「どんな貧困者であっても、地域の炊き出し所に行けば豊富な食料を提供されたのです、これを成し遂げた当時のオーストラリア首相は」

 

“時に批判された我が国の生産戦略が報われた様で嬉しい。何よりも嬉しい事は、これが続く限り飢える人々がいなくなる事だ。これは我が国だけでなく全ての国が尽力した結果だ、これは人類史における偉業であると私は深く思う”

 

と2000年の世界会議において発言した、さらに国連事務総長も

 

“個人個人の名前を挙げて勲章を差し上げたいが、それは不可能に近いので国際連盟を代表してお礼を申し上げたい。貴方方の弛まぬ努力のお陰で人類は広大な宇宙へと繰り出すことが出来ます“

 

「裏では膨大なフードロス問題、しもべによる散発的なテロ行為、需要が拡大し続けるエネルギー問題などがありはしましたが、世界は平和を満喫していたと言えるでしょう」

 

 

 

 

「一方統合軍にとっては問題が山積みでした、地球圏内の戦力再配置と『しもべ』残党の掃討や宇宙空間における防衛戦力の拡大整備を早急に行う必要がありました」

 

「対BETA戦から対『しもべ』対応に至るまでほとんど整備されていない兵器の確認・整備や戦争開始から休暇を一度も取っていない軍人・軍属が数多くいたため、休暇や慰安の為により少ない人数で防衛から監視任務を行えるように部隊配備を変える必要があり、作戦本部と人事部は天から地に至るまで大忙しだったのです。」

 

「当時の統合軍が調査した結果7割の兵士達が休暇を取らず職務に従事していた事が判明しています、この事は議会でも取り上げられ早急な対策を講じる事になるのですが、これはまた別の回にご紹介します」

 

「さて、話を戻す事にします…地球・月面だけでなく火星BETA群が行ったワープにより宇宙空間そのものに警戒網を敷き、さらにそれに即応する為に戦力を常駐させなければならなくなった為にある計画を始動します」

 

「オーストラリア・アメリカ・ドイツ・イギリス・フランス・ロシア・日本が共同で設計を行い、時折視聴者の皆様もテレビ等で見かける事もあるであろう艦艇の建造に着手しました」

 

「『統合宇宙軍 次世代型多目的艦』と当初は呼ばれた船、皆様には『イロコイ級強襲揚陸艦』と言った方が分かりやすいかもしれませんね。」

 

「全長は5.6km、高さは1kmにも及ぶ超大型艦であり現在に至るまで統合軍最大の戦闘用艦艇です、地球防衛艦隊・第1打撃艦隊に1隻ずつ、太陽系外縁防衛艦隊に2隻の計4隻が配備されています」

 

「特筆すべき点はこの艦の持つ自己完結性です、一種のコロニー船としても建造された本級は多数の陸上兵器と人員、さらには資源さえあれば物資を制作することができる工房までを備えた長距離侵攻用艦艇でした」

 

「さらにイロコイ級は通常配備でSCMBSを24機、空母運用されている太陽系外縁防衛艦隊所属の2隻は108機ものグラキュロスを搭載・運用しています」

 

《格納庫内部でずらりと並ぶスクランブル待機している12機のグラキュロス》

 

「ラグランジュポイントにて建造が開始された本級でしたが、1995年着工し配備されたのは2020年、25年かけて1番艦『イロコイ』が就役、2番艦は21年から32年で就役と非常に長いスパンで建造されてきました」

 

「そんなイロコイの初陣は『第1次火星上陸作戦』が失敗し、『第2次火星上陸作戦』の時でした」

 

「『第1火星上陸作戦』失敗の反省から、統合軍は新型艦艇と新型MBS・新型機械化歩兵・新型戦車などを開発し配備」

 

「苦戦しながらも橋頭堡を確保し、今で言う『火星戦役』当時は『オペレーション・アレース・ダウン』と呼ばれていた今作戦で。イロコイは僚艦と共に『キャノン級BETA』と砲撃戦を行い中破したものの、火星軌道上に出現した全22匹の『キャノン級』を排除」

 

「中破した状態で軌道上からの砲撃と部隊の展開を行い火星制圧までその場に有り続けました」

 

《火星をバックに望遠で写された写真には所々に大穴が空き、赤熱した装甲板が辺りに浮遊している船に小さな船が複数随伴している様子が写されている》

 

「この写真を見るだけでは周囲の艦艇が小さく見えてしまいますが、周囲の艦艇も500mから1000m程ある統合軍の主力艦ですから、イロコイの大きさが分かると言うものですね」

 

「…さて、次にお見せする3枚の写真はこの第2次火星上陸作戦時に初めて確認されたBETAの姿です。一つ目は先ほどイロコイの時にも出てきたこの個体」

 

《キャノンクラスと書かれた名札の上には、照射膜とデストロイヤー級の甲殻に覆われた様な姿のBETA》

 

「この写真は第4空間機動大隊所属のグラキュロスのログから抜擢した画像です、このログを送信した直後にこの機体はキャノンクラスからの攻撃を受け中破、後退しています」

 

《主に機体の左側を損壊したグラキュロスがイロコイの船体に取り付けられた衝撃吸収用のタイヤとネット群に突っ込む映像が流れる》

 

「イロコイの船体に大穴を開けるほどのレーザー照射を受けたのにも関わらず、このグラキュロスは機体の左半身を溶かされる程度の損傷で済んだことから、BETAには脅威によって攻撃出力を変える知能がある事と、今までの行動から敵に合わせた戦術を取ってくることが確実視される事になるのはまた別の機会に」

 

「さて、番組もそろそろ終幕に近づいて参りました」

 

「次回の放送では人類をこの宇宙へと広める事になる『コウヅキ・ドライブ』についてご説明したいと思います」

 

「次回もお楽しみに」

 

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