テレビ画面には大きな文字でダイダロスの名が表示されている。そしてナレーターが静かな口調で語り出す
「1950年から開始された西側主導の国際プロジェクトは開始される前の予測とは反して数多くの東側諸国の参加もあり、当時鉄のカーテンで仕切られていた両陣営の数少ない交流先であったと言えます。」
画面には、当時撮影されたのだろうか。さまざまな人々が肩を組み笑顔で写っていたり、ソ連、アメリカ、日本の国旗をつけた宇宙飛行士達がお互いに意見の交換をしている様子が映し出されている。
「当時冷め切っていた両陣営の思惑はともかくとして、現場ではお互いの文化や娯楽に触れ楽しんでいた事が非常に分かります」
「この時世界は、不思議な事に冷戦と呼ばれる状態にありながら、1945年以降、サクロボスコ事件が起きるまで表面上は平和な時代が続きます。」
「この時世界は東側、西側の争いはあったものの一つの夢…利益に向かって一丸となって協力していました。その夢を叶えるための国際プロジェクト、『ダイダロス計画』、このプロジェクトは非常に革新的でした。」
そう言った後、表示されていく写真達、様々な形のロボットアームや脚部。さらには人間が乗り込み操縦していると見られる機械も存在していた。
「このプロジェクトで研究されている技術の殆どが後のBETA大戦に何らかの影響を及ぼしています。ある識者はこの計画が無ければ人類は既に滅んでいるだろうと発言しています」
「このプロジェクトで特に注目されていたのは2つです、どちらの提案も戦後復興途中だった日本からもたらされました。『大型軌道プラットフォーム』と『軌道エレベーター』です。」
画面には天に向かって伸びる巨塔と宇宙空間に浮かぶ巨大な人工物、軌道プラットフォームの写真が写っている。軌道エレベーターは絶え間なく人や物資を宇宙に上げて、軌道プラットフォームから発進した輸送船がそれを受け取り、各所に設けられた造船所や集積所に運んでいく
「そう!今もなお我々の上空を飛ぶ『アメノミナカタ』と北米、南米に建っている軌道エレベーターは日本が最初に提案したプランでした、信じられますか?この技術が1950年には発表され、さらには1957年には一部完成していたと言うのだから驚きです。それだけこの時代は発明が盛んだったのです」
「この2つを建造する過程で生まれた各種技術や機械で人類はこれまでに無いほど進化しました。一昔前は夢物語だった宇宙探索が現実的な物に変わっていったのですから、当時の人々は希望に満ち溢れていたでしょう」
街などでは『貴方も宇宙に行こう!』というキャッチコピーのポスターが貼られ、宇宙飛行士などの採用所には長蛇の列が出来上がる様子や、軌道エレベーターの研究チームだろうか、皆がコンピューターに集まり真剣な顔で議論している様子や、計算を間違えてしまいデータが使い物にならなくなったのか、手に持つ書類をビリビリに破り捨て紙吹雪にしている様子。そして実際に軌道エレベーターの建築作業に入っていく過程の写真が映し出されていく。建築作業に使われているのは強化外骨格のようで、軽々と重量物を運び込んでいく様子も写っている。
「このダイダロス計画で研究、開発された技術は多岐に渡りますが、我々も数多くの恩恵を受けています、例えばコンピューター。これはダイダロス計画の初期の頃に開発されていました、軌道エレベーターやプラットフォームを作るためには膨大な量の計算結果が必要です、人間の働きだけでは途方もない時間が掛かりますが、計算に特化した機械に頼れば大幅に短縮出来ます。その為にコンピューターが開発されました」
「さらに今度はデータの共有がしたいとなった時。当時米国国防総省が所有していた研究データを民間用に改造したインターネットを整備する事で計画内で素早くデータの共有が行える様になりました。」
様々な技術が枝分かれしていき、現在の技術に繋がっている様子が描かれたアニメーションが映し出される。
「このようにこのダイダロス計画は今の人類になくてはならない技術を生み出し、さらに後のBETAに対抗するための土台にもなりました」
「さて、次回の放送は月面基地と第一次月面戦争を予定しております、それではみなさん、さようなら」