あの時殺していただいたラスボスです   作:ぴんころ

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第四話:第二シーズンの敵って大体前回とは別のところからくるよね

『我々は、地球人類へ通達する。地球人類へと宣告する』

 

 その声の大元は地上よりも遥か高く、地球の外からだった。

 

「なあ、レイ。もしかして俺たちがここでよろしくしたら悪の組織が攻め込んでくるってジンクスでもあったりするのか?」

 

「落ち着け、那月。そもそも一回目はよろしくする前に攻め込んで来てたぞ。人類が認知したのが吾輩たちがよろしくしてからだっただけだ。ついでに言えばこれも二回目だからジンクスっていうにはまだ弱い」

 

 膨らみ続ける嫌な予感。世界の緩んだ日常を一瞬で混沌に陥れる声。

 俺の持つ、ヒーローとして戦い続けた経験。レイの持つ、総帥として悪を率いた経験。

 そのどちらもが、この声が良いものではないと判断している。

 

『我々は星系開拓団。宇宙への進出技術すらも未熟な星々へ新たな智慧を与え、一つ上のステージへと導く者』

 

 ぽつぽつと、晴れた空に小さな影。地上へ向けて降り注ぐ何某か。その正体を視認して、これは間違いなく悪の組織だと認識する。

 はるか上空から飛来するのは、おそらく戦闘員枠に相当する尖兵。

 上位者気取り。見下す言動。姿も見せないまま雑魚に任せる精神性。どうあがいても、まともなものではない。

 

「だいたいこういうこというやつって、自分たちの知恵を過信して死ぬよな。自分たちの知恵じゃ人間の精神性を理解できなくて、怪物と罵って怯えながら死んでいく様が見える見える」

 

「おい、レイ」

 

 そうとしか思えなくなってくるからやめろ。

 これを思い出したせいで笑ってしまって負けるとか俺は嫌だぞ。

 じろり、とレイがこちらを見る。

 

「那月。お前まさかとは思うけど戦おうとか思ってるのか?」

 

「そりゃ当然」

 

「忘れたのかもしれないけど、吾輩が溶かしたやつ以外も全部使えないんだぞ?」

 

「わかってるって」

 

「そもそも、星系開拓団(あれ)は吾輩関係ないから。あの時の契約の範囲外だ」

 

「知ってる」

 

「吾輩は力を貸す義理はない。お前には戦う力はない。力の当てなんてどこにもない。なのに、行くのか?」

 

「行くよ、当然だろ」

 

「だよなぁ……お前、そういうやつだから吾輩助けたんだもんな……」

 

 はぁ、と頭をかかえるレイのを見ながら思い出すのは、彼女を初めて拾った時のこと。

 当時はまだ少女でなかったこいつが襲われかけてるのを見て、庇って、ヒーローになって。

 こいつは自分の手足が必要だったから。俺は、こっちの世界にくる怪人たちをどうにかしたかったから。

 だから、契約という形をとった。

 

 別にそれは、異世界産に限った話ではない。

 契約の範囲はレイの元部下だっただけで、俺があの時求めたのは悪いやつらをどうにかする力。

 その力がなくなったからと言って戦わないのであれば、あの時の契約だって嘘になる気がする。

 

『我々のテクノロジーへの敗北を受け入れ、我らの与える智慧への恭順を示せ。さすれば人類へと福音を、抗うならば殲滅をもって応えよう』

 

 とはいえ、正直に言って状況はとても厳しい。

 空から降ってきた存在の正体は、ロボット兵士。それが目の前に二体。剣と腕を覆うほどの大きさの盾を装備している奴と、拳銃を持っている奴。

 相手の性能次第だけど、剣の方はまあなんとかなりそう、かな。問題は拳銃の方。単純に手が回らない。

 

 一つ、息を吐く。まだ空からの声は続いていたが、もう聞くつもりはなかった。

 これらが別の場所に向かうよりも先に、排除してしまわなければ。

 

『敵対行動を確認。これより、対象を殲滅します』

 

 動いたのは、ロボットが先。剣を持った個体が前に進み出て、その後ろで拳銃が閃きを放った。

 知覚するよりも先に転がるように回避すれば、直後に先ほどまで立っていた地面が煙を上げる。

 レイは……うん、頭を抱えてはいるが、自分の身は自分で守るだろうし問題はない。考えるべきは自分のことだけだ。

 

「そんなに強くはない、って感じだな……!」

 

 怪人が使役する雑兵と比べれば、という前提にはなるが。

 迫る剣の個体の速度が、あれらに慣れきった目には非常に鈍い。

 振り上げられた剣を手首を抑えることで封じ……重い! 

 想定以上の重さ、というかこちら側が想定以上の貧弱さだったせいで受け止めきれず、このままだと切られそうだったので先んじて蹴りを入れて飛び退る。

 硬い。身体強化したにも関わらず、勢いよく蹴った足の裏が痛くなるほどに。

 

「那月」

 

 レイの声。ハッとして前を見れば、距離を詰めながら盾による押し出し(シールドバッシュ)を行おうとする姿。

 その背後で、合わせるように構えられた拳銃。引き金が引かれるよりも先に、相手の勢いも借りる形で盾を蹴って斜め後方へ。

 痛む足裏を脳内から追い出し、勝つ手段をどうにかして探す。

 今の俺じゃ絶対に勝てない。武器もない、火力もない、何もないから勝ち目もない。だけど、武器……それこそ剣を奪えればこっちにも勝ち目は生まれる、と思う。

 とはいえ、俺の身体能力じゃそれすら万に一つがなければ不可能。だったら。

 

「これしかないよなぁ!」

 

 距離を詰めてくる個体へと、今度はこちらからも距離を詰める。

 レイの声がなくとも、意識の半分は拳銃持ちの個体へと。構える瞬間を決して見逃さないように。身体能力でも殺傷能力でも勝る近接個体に割く意識を減らすのはちょっと怖いが、これしか勝ち目はない。

 振るう拳の威力は変わらない。蹴りだって通用しない。通用する手段がそもそも手持ちにない。

 このままだとどっかで息切れして死ぬ。ああ、そうなる前に見飽きたレイに殺される可能性だってあるか。性格を考えれば可能性としてはほぼないようなものだけど。

 

 まあ、それを抜きにしても持久戦はごめんだ。ここに降って来たのが二体なだけで、街の方にはもっとたくさんのロボットが落ちるのが見えた。あれを放置はできない。

 

 力があれば、なんて言ってもどうしようもないのだから、嘆いてないであるものでどうにかしないと。

 

「もらった……!」

 

 振るわれる剣を腕を逸らすことで止め、その度に盾による打撃で引き剥がされてを繰り返し数えるのも面倒になった頃。

 幾度か斬りつけられて、腕やら頬にかすり傷も生まれて。全身を打ち付ける盾による圧力が、痛みを蓄積させてくる。

 

 その最中、絶好のポジショニングが生まれた。

 

 俺と近接が至近距離で、それを遠距離個体が狙う構図はさっきまでと変わらないけれど。

 この位置なら、近距離個体の腕を盾にできる。

 

 放たれる銃弾……光線? を逸らした腕が射線上に入るようにして即席の盾代わりに。

 要するに、同士討ち。同族に効くのかもわからないけど、効いてくれれば御の字。効かなかったら、その時考えればいい……!

 

「っ、ぅ……!」

 

 だからあとは、痛みを堪えるだけ。

 ずぶり、と剣が肉を抉る嫌な音。

 めちゃくちゃ痛い、けど。どうにか、耐えて。

 

「狙い、通り……!」

 

 直後、剣の個体の腕を貫いた熱が、そこでは止まらずにこちらの肩口にも穴を開けて湯水のごとく血が流れ出る。

 二つの痛みで意識を無理矢理繋ぎ止めながら、振るわれる大楯にさらなる血飛沫をあげても踏ん張り、損傷で内部のコードがちぎれ末端まで命令が伝達できなくなった腕から剣を掠め取った。

 

「せぇ、のっと!」

 

 勢いよく振り抜いて、ようやく一機。そのまま切れ味のいい剣の腹で次弾を受け止め、そっちへ向けて走る。

 クッソ痛い。血が抜け出る。でも、ここで倒れたら普通に死ぬ。

 三度目の銃弾が放たれるよりも前に到着できて助かった。そのまま万が一を考えて腕を切り落として攻撃手段を奪ってから身体を寸断。

 

 ようやく、撃破。深く、深くため息を吐いた。

 ぼたぼたと血が落ちる。目が眩む。力が入らず、まともに立っていられない。握った剣を盾代わりに、どうにか倒れ込まないようにするのが関の山。

 

「くっ、そ……変身できてたらもっと楽だったんだろうけど……」

 

「じゃ、止めるか? 変身できないなら一体相手でも命がけだからな」

 

「止めるわけないって、わかって言ってるだろ」

 

「別に止めてもいいと吾輩は思うぞ。最悪、こっちの世界が侵略されるなら吾輩と二人で別の世界に行くって手もないわけじゃないからな」

 

「お前、めちゃくちゃ止めようとするよな……なんで?」

 

「そりゃお前、止めなかったら死ぬまで戦いそうだしな。那月があんなのに殺されるのは吾輩見たくないぞ。殺されるなら吾輩が『ああ、こいつに殺されるのはしょうがない』って思える相手にしてくれ」

 

 それはまた無茶苦茶な話だ。こいつ以上のラスボスがいると地球がやばい。なのでいないことを切実に願う。

 いや、マジで。腕の一振りで空間をぶっ壊してその破片をぶん投げてくるラスボスとか二度とごめんなんだよ。

 

「で、そろそろ回復したか?」

 

「お? おおー、助かった。治療はしてくれるんだな」

 

「殺されるのは見たくないって言ったろ」

 

 横にやってきたレイと会話をしている間、どうやら治療もしてくれたらしい。めちゃくちゃありがたい。これならまだまだ戦えそうだ。

 切り落とされた機械の腕から拳銃も抜き取って、武装完了。さっきよりは最初からまともな戦いになるだろう。

 空を見上げても第二陣はやってくる気配はない。なら、今地上にいる連中を撃退すればどうにかなる。

 

「でも、それをするなら那月がやったってことはバレるぞ」

 

「あー、あー、そういえばそうか……あの時と違って変身できないもんな……」

 

「じゃあ止めておこうぜ」

 

「ことあるごとに止めさせようとするのやめろよ」

 

 というか、なんでこいつこんなに楽しそうなんだ……?

 

「しょうがない。そんな、どうあがいてもこのままじゃ死にそうな那月に大変いいお知らせだ」

 

 その答えは、ニンマリと笑ったレイが自分から白状してくれた。

 

 ……ああ、くそっ。確かにそれは今の俺にとって都合が良すぎる話だ。

 

 

 

 

 

 

 空の彼方。宇宙空間に、それは存在する。

 巨大な戦艦。地球の直径には及ばずとも、それでも比較に値するサイズ。

 地上へと送り出される尖兵たちの製造工場。彼らの言葉で言えば新たなテクノロジーと知見をもたらす啓蒙、地球人にとっては侵略としか言いようがない行為の、本拠だった。

 

「あの未開惑星に放り込んだ雑兵の一部の反応が消失しました」

 

「ほう、珍しい。一度であればただのミスも考えられるが、確か先日も同じことがあったな。まさか、我々から数百周は遅れた程度の技術力でそこまでたどり着けるとは」

 

「感心している場合か。それはつまり、あの星で知的生命体を名乗る連中は、知的を名乗りながらも殺し合いに技術を特化させているということだ」

 

「その技術力を宇宙進出の方向性に使っていれば、我々もこのようなことはしなくて良いのですがね」

 

「我々も手を出せなかった、の間違いでしょう? その程度の技術力があれば我々を殺せるやもしれないから」

 

「口を慎め。貴様は新参ゆえに分からぬのかもしれないが、全ての星に宇宙進出技術を与えるのは我らの悲願。限りがある以上、宇宙進出に目を眩ませ母星を捨てるような連中にはもったいないのだよ、星という資源は」

 

「おっと、申し訳ない」

 

「だが、此度の星は失敗であったな」

 

「ええ。未開惑星の分際で我らの技術に一端とは言え手をかけるとは。それも、破壊という分野であるならば、宇宙に解き放つのは危険と言わざるを得ません」

 

「では、あの星ごと消し飛ばすということで」

 

 円卓。誰もが平等であることを示すその卓には、しかし誰の姿もない。

 代わりに、テーブルの上に置かれた機械から浮かび上がった、姿を特定できないホログラムが並んでいる。

 人の形はしている。しかし、声も機械音声に合成され、個人を特定する要素は何一つ残っていない。

 彼らにとっては当然の、地球にとっては受け入れがたい会議は、そんな連中の手で進む。

 

 結論は、地球の滅亡。星ごと滅ぼし、地球人という存在が生まれる土壌を残しはしないと彼らは決めた。

 

「では、キャノンの用意を。三十分でチャージを終え、あの星を消し飛ばす」

 




・主人公くん
 一年前なら多分簡単にボッコボコにできた

・ラスボスちゃん
 主人公くんの戦いでニッコニコだったりする
 多分今世界で一番エンジョイしてる

・星系開拓団
 第二シーズンのボスは「貴様らは異常だ……! これだけの力を持ちながら星の内紛に集中するなど! 貴様らのような怪物は、宇宙への進出など許さない!」とか言い出したり「ば、化け物め……」って言いながら死んでいきそうな顔をしている
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