街中を抜けて、近場で最も空に近いビルの屋上に立つ。
当然といえば当然だが、街中の方が雑兵の数は多かった。
俺たちがいたのは海。これが夏場であれば観光客や地元民もいただろうが、時節外れの今は人の気配は皆無な場所。
だから、見渡す限りの砂浜にいた戦闘員は二体だけだったけれど。
街中という人が集まる場所は、どこを見ても雑兵だらけ。そして、転がるのは死体ばかり。いいや、転がっているだけの死体ならばまだマシな状況だった。
「……っ」
死体の尊厳など、気に留められることもなく。進行方向にあって足蹴にされ、その機械人形の重量によって砕かれた残骸ばかり。
新たな叡智、などと謳いながら結局やることは殺戮。悪の組織だろう、という判断は何も間違ってなかったことを自覚する。
二体にさえ命がけだった身としては絶望的な状況だったが、それは徒手空拳の話。武器を握りさえすれば、倒すのは問題なかった。
だから今度は、ビルの屋上までそう怪我は負っていない。
これで大きな怪我をしていたら、治療に時間を取られて間に合わなかったしれないから本当に助かった。
「それで、レイ。できるのか?」
「わっかんない。地球上の金属だと魔力に耐えられないけど、
後ろには、道中襲いかかってきた連中からの戦利品を弄り回すレイの姿。
転移によって一時的に家に放り込み、ここにたどり着いてから取り出したそれらにレイが与えたのは、要するに新しい変身アイテムへの改造素体としての役割。
壊れてしまった拳銃に、変身アイテムとしての実用性を持たせるのは不可能だった。
形の修復だけならともかく、拳銃の素材に相応しい魔力への耐久性を持つ金属が地球上にはなかったから。
けど、宇宙の金属なら可能性はゼロではない、というのがレイの言い分だ。
とは言っても、わざわざそれを用意する必要性なんて彼女にはないわけで。
「ん、よしできたぞ。これであと一つ手を加えれば、お前はまた戦えるはずだ。だから、最後にもう一回だけ確認するぞ」
「何を言われても答えは変わんないぞ」
「様式美ってやつだよ」
はるか上空。太陽の光を遮る戦艦に収束する輝きが徐々に光を増す。
その下で、レイが差し出すのは銀と黒から成る二色の拳銃と同色のカートリッジ。以前使っていたのが白と金だったから、真逆の色合いだ。
けれど同時に、悪の総帥が作り出す武器としては相応しい。
「これを使うっていうなら、お前には吾輩を永遠に楽しませ続けてもらうぞ。吾輩が満足するまで死ねると思うな」
「代わりに、この力をどう使うのも俺の好きにしろ、っていうんだろ。わかってるよ」
掴み、受け取る。その瞬間、いつもの悪戯な笑みではなくにこりと微笑んだレイにちょっとびっくりした。
やるのは一年ぶり。だけど体は覚えている。
『Standby?』
「変身」
そして、引き金にかけた指に力を込めて──
『Error』
「おい」
「だから言っただろ。あと一個手を加えれば、って」
「じゃあなんで渡したんだよ。それを済ませてからにしろ」
「なに。それをするにはお前の答えを聞いてからじゃないとダメだったからな」
レイの正面に、銃口先端のものとサイズ以外は同じ魔法陣が浮かび上がる。
それを潜り抜けると同時に少女の姿は消え去って、魔法陣だけが残り動き出す。
魔法陣が収縮し、通り抜けるのは握った拳銃。見た目に変化はない。だけど、俺に変化は一目瞭然だった。
『えー、あー。聞こえてるか?』
拳銃から、脳内に聞こえてくるレイの声。……いや、なんで!?
『変身システムの構築までは間に合わなそうだからな。じゃあ、吾輩が代わりをするっきゃねえなってなった。次までには間に合わせてやるから安心しろ』
「戦えるなら文句を言うつもりはないけどさぁ……」
せめて先に一言くらいは欲しかった。
そんな思いを込めて、レイと融合したことで銀をより輝かせ、黒を深めた拳銃を見る。
『
「はいはい」
弾倉が排出され、手の中に収まる。
黒の本体に、紫で印された悪魔の姿。以前使っていたのとは全てが真逆。
けれど、使い方だけは同じだった。
『
「ああ、当然だよ。準備できてなかったら、そもそも使ってねえ。……やるか、
排出されたマガジンを再装填。銃口が狙う先は一点のみ。
こんなことをしている間も天空で輝きを増し続ける巨大戦艦。
輝きを宿し始めてからそろそろ三十分。見るからにそろそろ限界と言わんばかりの様子だった。
「『
その声を引き金に、弾丸が放たれる。
それは、ほんの一瞬の光景だった。
宇宙より放たれる、巨大な砲撃。
数千の地上より見る流れ星を束ねたかのような、地球一つを消しとばして余りあるエネルギー量を誇る、星系開拓団有する戦艦最大の一撃。
地球という星の技術も、痕跡も何一つ残さないという殺意の塊。
撃たせてもらえなかったことはあったが、放った後で防がれたことは一度として記録にない。
それが。
「な、に……?」
「バカな……ありえん……」
「これを、防ぐ技術、だと」
モニター越し、地球が消し飛ぶ光景が映るはずだったそこには、彼らの想像から外れた光景。
紫色の障壁が、白色の光線を防いでいる。
激突からたっぷり十数秒。その終結は、光線を放つ砲塔に冷却が必要になったことで終わった。
降りる沈黙。誰もかれもが、この状況を受け入れられない。
「滅ぼすぞ……」
誰かの言葉。
驚愕と、怒りと、恐れ。
これを防ぐとは、という驚愕と。
未開惑星の分際で、という怒りと。
やつらは一体何を持っている、という恐れ。
その三つが入り混じった言葉は、全員の総意だった。
「あの星を滅ぼす……! もう一度、尖兵を送れ! 今度は上位の戦士階級も送ってかまわん! あれが宇宙へ進出する可能性を微塵も残すな!」
先ほどとは比べ物にならない物量。
一つの街を滅ぼすには十分だったはずの戦士が、今度は倍以上の数同時に送り込まれる。
あの砲撃を防ぎ、けれど尖兵の転移は今回防がなかったのならば、これで皆殺しにするしかない。
怯えから行われるその所業は、一般人にとっては絶望以外の何物でもなく。
とあるビルの屋上に立つ人型にとっては、脅威ですらなかった。
「なるほど。つまりこれは……」
『ああ、そうだ。吾輩の性能を、お前の才能で振るう。言ってしまえばそれだけの姿だ』
「なんか楽しそうだな……」
黒と銀、そして紫。その三色から成る全身鎧の人型が拳を握っては開き、何かを確かめる。
騎士、いいや、あるいは悪魔と言っても差し支えないかもしれない異形。
翼を模したマント、有機的な丸みと、無機質な鋭利さの同居した有角の戦士。
天羽那月が一年前の戦いで最後に戦った存在を、彼の変身ヒーローとしての姿へと調整したかのような存在だった。
『
降り注ぐ、無数の尖兵。先ほどの剣や銃の個体もいれば、もう少し複雑化した鎧を纏う個体もいる。
それらを一瞥して、マガジンの底を押し込む。
聞こえる音声。排出される空薬莢。狙いをつけず、上空へと無造作に向けられた銃口。
引き金が、引かれる。
『Demons Shot』
展開される無数の魔法陣。数えて二百五十六。その全てから、銃口から放たれたのと同質の魔力弾が飛び出す。
そして、分裂。曲線軌道を描きながら、空から降りる尖兵へと狙いを過つことなく突き進む。
反応は、ない。そもそも、魔力というエネルギーへの見聞もない機械兵に、そんなことを望むべくもなかった。
地上から四キロ以上は離れた上空で、一つ残らず爆発して大輪を咲かせた機械兵。
「あれか……あの鎧の悪魔……!」
「レイ、行けるか?」
『おう、さっきの転移で場所は把握できたからな』
モニター越しに映る映像。それを切り替えて、どうにかその戦士の認識に至った星系開拓団。
今にも乗り込もうとする、那月。
二種類目となる地球外生命体との最初の戦いは、終盤を迎えるのだった。
・主人公くん
戦闘スタイルはガラッと変わった。シーズン1だったら一人殴った余波で他のやつを粉砕して、を繰り返して全員潰すスタイルだった。
以前は白い騎士の姿だったけど、今度は黒の悪魔の姿。親友パワーって名前の初登場補正があるかもしれない。
それはそれとして数百年もののロリババァ(悪の総帥)をスペックで劣る状態で、かつ相棒として一緒にいたから全部能力を知られてるって前提なのに、一年で倒せるようになる才能って怖いよね。
実は銃撃系必殺技を使うとき、もうちょい数は少なくするつもりだったのでびっくりした。
・ラスボスちゃん
実はめちゃくちゃニコニコ。自分の相棒が自分の力を使うのは正直楽しい。白い騎士の姿との複合にするか悩んだけど、初回なので自分の力だけ使わせてる。多分後で一人で変身できるようにするときも悩む。
自分をぶっ殺せるレベルの才能の持ち主が自分の力をフルスペックでふるったらどうなるのか興味があった。
実は銃撃系必殺技を使うとき、テンション上げすぎて予定よりめちゃくちゃ多くしてしまった。