地縛霊の井上さんは今日も元気   作:わきやくあ

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プロローグ/邂逅

地縛霊

 

それは死んだ場所に未練を遺したり、自分の死に納得できずに、そのまま霊として没地にとどまる霊達の総称である。

 

どうして突然こんなことを言い出したか。

それは俺の住んでいる所にも、同じ存在がいるからだ。

 

...わかるよ、『何言ってんだコイツ』と言いたい気持ちはすごくわかる。

俺だって実際逢う前まではそんな幽霊みたいな非科学的な存在はいないと思ってたさ。

 

心霊番組は『 あ ほ く さ 』ってハナクソほじりながらながら観てたし、友人達と肝試しに行った時だって死ぬほどビビってる友人を傍目に、呑気にワールドカップの勝敗予想とかしてた。

ボロカスに外したけど。

 

でもいるものはいるんだ。

しかも人間に友好的なタイプ。

 

寝る時に消し忘れたエアコンを消してくれるし、お風呂も沸かしといてくれたりもする。

 

しかしながらその、息子と遊んでる時に、インターホン鳴らさないで欲しい。マジで。

 

と、まぁ今から話すのはそんな地縛霊と俺の

他愛もない日常のお話である。

 

 

____________________________________

 

労働はクソである。

 

社会人となって早一年。俺は遂に生命の真理へ辿り着いた。今の俺ならば無限の命を手に入れる事など造作もない。くははは!はぁ…

 

死んだ魚の方がまだマシな位の目をした、ゾンビが如きサラリーマンの群れに加わり帰路に着く。ウォーキングデッドである。そう。俺達は現代社会が生み出した哀しきモンスター。弱点は日光と着信音。

 

1人、また1人と犠牲者を増やしながら進むの行進は、日々社会の歯車として酷使され続ける俺達にある種の一体感をもたらしていた。一糸崩れることのないコンビネーション。今の俺達ならゾンビアイドルとして、天下を取ることも夢でない。私たち、生きたい!

 

自宅が近くなってきたので泣く泣く同志達の群れから離れる。

 

駅から徒歩5分、築3年で陽当たりも良く、1DKなアパートに俺は住んでいる。しかもなかなか広い。もちろん、こんな好物件に社会人1年目のが住めているのにはワケがある。

 

なんといっても俺の部屋、"出る"らしいのだ。しかもガチで。

 

どうやら入居者の女性が仕事の無理が祟って部屋で亡くなってしまってから、その部屋で多くの怪現象が起こるようになったらしい。ソースは今までの入居者。

 

それによって入居者がいなくなってしまい、かといってせっかくの新築だからと封鎖するのも勿体ないと欲をかいた不動産屋が格安の値段で売り出していたところを、幽霊を信じない俺が借りた、という訳である。

 

しかしながら"ガチで出る"言われたものの、住んでから1年。一向に出る気配がない。まさか騙されたのか...?いやいい事なんだけど。

 

なんというか、出るよ!絶対に出るよ!!って言われたら期待しちゃうじゃん。そうか、フリだったのか。

 

と、我が家に想いを馳せていたらもう玄関前。

楽しい時間は早く過ぎるとは言ったもので、帰り道はあっという間だ。仕事から解放されてこれから自由だという心地よさがたまらない。

 

開け慣れた扉を開き天国、もとい自宅へ。

脳内で流れる神聖なBGMと共に進んだ先に

 

 

ソレはいた。

 

 

ベットの上で開かれた漫画

 

その近くで宙を舞うポテトチップス

 

冷蔵庫に入れておいたはずのコーラは机の上に

 

心霊現象だ

 

 

寸分の思考も挟まず直感する。

 

冷える背筋

 

「.......ッ......!」

 

助けを求めて叫ぼうとしても、全身が震えて声を出せない。

人間が本当に恐怖した時、叫ぶことすらできないというのは本当なのか。

 

霊障に出会したとして、なんとかできるとたかを括っていたのが馬鹿らしい。これは俺1人がどうにかできるものではない。

 

玄関から逃げれるか?

割と距離があるが...

パニックで他に解決策が思い浮かばない

呑気に部屋の真ん中まで進んだ数分前の自分が憎い...

 

えぇい!悩んでる暇はない!逃げ______ッ!

背を向けたはいいが、足が思うように動かなくて転ぶ。

 

マズイマズイマズイ!!

もしものことから身を守るため、咄嗟に振り向く。

 

ポテチは布団に落ち、漫画は変わらずあり続け、コーラは倒れ机と床を濡らしていた。

 

「……ッ……ッ………!!」

震えが増し、余計に声が出せない。

ああ!叫ぶことさえできたのなら……!

 

途端、窓が勢いよく叩かれたかのように揺れた。

 

まさか窓に赤い手形がつくヤツか....?

そう思い恐れ恐れ窓を見ると、そこには赤い文字が...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『 ご め ん (´;ω;`)

 

「お茶目か!」

流石に声出た

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