幻想郷の人々   作:[酢]

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スイカ観察日記

 

 七月二十七日 快晴

 

 里では珍しい毎日のように博麗神社を参拝する敬虔なる博麗信奉者の友人から聞いたことだが、博麗の鬼つるぺたと名高い伊吹萃香(いぶき すいか)さんの西瓜化現象なる異変が発生しているという話だ。ある日突然角の付け根あたりから芽が出たかと思うと、寄生しているかのようにすくすく育っているとか。今参拝者の間では結構な噂になっているようで、その噂を聞いて参拝者が増えたとの話。博麗信奉者脇巫女親衛隊を自称する友人としては余り興味が持てないらしく、どうせなら脇巫女さんが西瓜になれよ等という訳の分からない愚痴を散々零した後、焦ったように帰り支度を始めた。たぶん仕事の時間なのだろう。大きな仕事があるとかで暫く博麗神社に通えないことを嘆いていた記憶がある。

 もう少し具体的な事を知りたかったのだが、忙しい様子の友人に話を聞く暇もなく聞けずじまい。何でも見ればわかるからお前も言ってくればいいんではないかねとの事。萃香の西瓜化現象とはこれ如何に。ともあれ、私としては中々に気になる内容であった。伊吹さんの事は噂話で存在を知っているだけで実際にお会いした事はないのだが、鬼の西瓜化現象等が起こっているなんて聞いたら会いに行かざるを得まい。博麗神社までは結構な距離があるので早朝に出ねば間に合うまい。

 週末にでも行ってみる事にする。

 

 

 七月三十一日 曇り

 

 結論を先に述べてしまうと、伊吹さん西瓜化現象は本当の事だった。

 今日は折角の週末なので朝早くから出て行き、昼前には博麗神社に辿り着く事が出来た。道中の石段は運動不足の私には辛く、登り切った時は思わず達成感から笑みを浮かべてしまい、さらに博麗神社の神聖さとでもいうべきであろう雰囲気に感動した。小さいながらしっかりと掃除された神社は綺麗で、人里から遠くなければ参拝者も多かっただろうと予想できた。

 神社の感想もそこそこにしておき、私は懐から出した財布から小銭を賽銭箱に放るとしばし黙祷。そして一人で神社を経営してる巫女さんに挨拶する為、裏手に回ってみた。というのも、巫女さんは基本的に縁側で茶を飲んでる事が多いのだとか(友人談)。どうやら本当だったようで、裏手に回ると直ぐに湯呑みを持った黒髪の美少女を見付けた。噂に違わぬ脇巫女、脇が空いた紅白の巫女服は果たしてどの層を狙っているのか、激しく疑問である。人の趣味に口を出す気は無いのだけれど、うら若き乙女として恥ずかしくないのだろうか。とても真似出来ない精神力である。

 等という感想を口にできるはずもなく、少し緊張しながらも挨拶すると向こうも可愛らしく挨拶を返してくれ少し和んだ。彼女に伊吹さん西瓜化現象云々のくだりを話してみた所、最近多いんですよねとやや疲れ気味の溜め息を吐きながらも伊吹さんの所に案内してくれた。

 そんなこんなで伊吹さんにお目にかかる事になったのだけど、何と説明するべきか。簡単に言うなら西瓜の弦らしきものを角の根元から生やした幼鬼が、口を開けて大の字で寝ていた。私の中の鬼への幻想がが砕け散った瞬間である。二本の大きな角はくるくると弦が巻き付いていて威圧感の欠片も感じない。おもむろに弦を引っ張ってみたのだが、しっかり根を張っているらしく抜けなかった。事前に持ってきてた西瓜図鑑の写しと照らし合わせたところ、葉の形は確かに西瓜である。うん、確かに伊吹さん西瓜化現象は発生しているようだった。巫女さんに聞くと順調に育っているらしい。観察日記とか付けたら面白そうである。

 その後半刻ほど会話したが、伊吹さんは目を覚ます気配がなかったので、近い内また来ますと巫女さんに伝えて帰ったのだった。

 

 

 八月三日 晴れ

 

 三日程期間が空いてしまったが今日も博麗神社に行ってきた。賽銭箱に小銭を投げ、裏手に回るとまた巫女さんがのんびりとした様子で茶を飲んでいた。相変わらず呑気な様子。萃香さんとの面会許可を取ってみると、今日は起きているらしく直ぐに許可をくれた。今日は神社の裏庭にいるようで案内してもらったところ、この短期間で随分と立派に育っていた。

 弦の先には花の蕾が出来始めていて、今や角は見る影もないくらいに弦で覆われていた。見ようによっては巨大な帽子を被っているように見える萃香さん(堅っ苦しい名前で呼べとのこと)に西瓜化の影響等はないか聞いてみた所、弦が生えてきてからやけにお腹が空き喉が乾くんだとか。やっぱり寄生されているようだが身体は平気なのか微妙に心配である。寄生虫の類ならば宿主を死に至らしめることは中々ないかもしれないが、寄生植物はどうなのだろう。明後日いちおう永遠亭に行くんだよと、本人は笑いながら言っていたが、私的には笑い事じゃないと思う。

 その後の会話は私も嗜む酒について異様な盛り上がりを見せ、危うく日が沈む前に帰れなくなる所だった。それとなし崩しに明後日の永遠亭に私も付き添う事となった。暇すぎるので付き添わせてもらった、というのが正しいか。

 

 

 八月五日 曇りのち晴れ

 

 今日は萃香さんに付き添い永遠亭に行ってきた。里に兎耳の外界学生服を着た少女が薬を売りに来ているのは知っていたが、幸い私はこれまで大きな病を患ったこともないので実際永遠亭に来るのは初めてだ。博麗神社とはまた違う和風な造りをした建物は、何とも言えない風情を覚えた。私は診察に立ち寄らず、中をふらついていた。時折出くわす兎さんたちが頭を下げる様は可愛らしいの一言に尽きる。一匹くらいお持ち帰りしてもばれないんじゃないだろうか。いや、でもこれは。うむ。うん。

 結局、直ぐに萃香さんの診察が終わったので実行には移さなかったが、危なかった。恐るべし兎さんたち。可愛い。違った。私とした事が思い返すだけでつい文体を崩してしまうとは失態だ。仕切り直して、永琳さんとの対話でわかった事は萃香さん西瓜化現象は原因不明だという事だった。なんでも寄生でなく一体化に近いので薬では分離は出来ない云々。医者は匙を投げた。月まで届いたかもしれない。

 そんなこんなで幾つか進行を抑える薬を貰って私と萃香さんは永遠亭を後にした。途中で兎さんを一匹お持ち帰りしようと捕獲したら萃香さんに止められた。むぅ、残念。

 

 

 八月七日 小雨

 

 河童の技術は幻想郷一。そんなわけで、今日は河童に出会った。

 遠心原子分離魔導機構なる謎の絡繰りを背に、緑色の髪に変わった格好をした河童の少女が立っていた。朝早くに萃香さんを観察しに来た所偶然出くわしたのだが、その少女は何やら脇巫女さんに熱く語っているようだった。遠心力により原子干渉が魔法に似た現象を起こす云々、それを利用し螺旋状に云々、等々学の無い私には理解出来ぬ言葉ばかり。脇巫女さんにも理解出来ないのか、興味なさげだった。でも解ってないと思われるのも癪だったので流石河童、龍神様の天気予報像を作っただけはあると、解ったふりをすることにした。

 兎も角、その絡繰りを使えば西瓜と萃香さんを分離出来るのではないか。との事で、早速脇巫女さんが指揮して分離作戦は開始。絡繰りの中に未だ寝ている萃香さんを放り込み、えんじんなる絡繰りを起動させた。形容し難い音を立て回転するえんじん。まるで悪霊の怨嗟の声に似た奇音を立てながら、段々と光りだしていく。これが所謂魔力に似た何かなのだろう。電気等といっていたが詳細は知らない。それは渦巻くように収束し、耳に障る甲高い音を立てた。 

 刹那、轟音と共に爆発した。

 煙を立てて燃える絡繰り。慌てる私、落ち着いて成り行きを見守る脇巫女さん。河童さんことにとりさんは一人許容領域の拡散因子不足やら虚数空間の数値代入が失敗等、又も訳の分からない言葉を羅列していた。それに解ったようなふりをしつつ、どうやら誰も助けないようなので私が頑張って水を掛けて鎮火し萃香さんを助けたのだが、火傷の一つもなかった。流石は鬼と言うか、服は燃えて役割を果たしていないが白い肌と西瓜は無事だった。

 余談だが、絡繰りは全く効果がなかった訳ではなく西瓜に影響が出ていた。尤も一つだけだった蕾が二つに分裂したという悪影響であったという話だ。分離しかけた因子が欠けた部分を自己修復しようとしたからだとか、にとりさんが言っていた。やっぱり理解出来ないが、解ってる顔をしておいた。取り敢えず萃香さん西瓜化現象は悪い方向に進んだんだろうなという事だけは悟った私であった。

 

 

 八月十五日 晴れ

 

 日付が開いてしまったのは西瓜化現象に進展が見られなかったからである。すまない嘘を吐いた。実は仕事が忙しくて行けなかったのだ。自由気まま不定期な仕事ではあるが、こういう時困るものだ。

 爆発事件から時間も立ち、萃香さんの西瓜も良く育ってきた。最近ようやく花が咲いたんだよと嬉しそうに話す萃香さん。可愛いけど少しばかり危機感が足りないんじゃないだろうか。私としてはもう少し焦るべきではないかと思うが、霊夢さん(脇巫女さんと書いてるのがどういうわけかばれて文句を言われたので)然り随分落ち着いている。しかし所詮他人である私が口出す事ではないので、私も呑気に霊夢さんが煎れてくれたお茶を飲んでいた。今日は私が持ってきた草餅が茶菓子だ。里でも人気の甘味処のもので、ここ最近のお気に入りである。

 そんな訳でのんびりとしていた所、空から風を切る音が聞こえてきた。何なのかを確認する必要もなく、霊夢さんの友達である自称普通の魔法使いの霧雨魔理沙さんだろう。萃香さんの西瓜化現象が始まってから幾度も怪しげな茸を持ってきているのだ。この間も顔が描いてある緑に白の斑点を持つ茸を持ってきていた。いちあっぷきのこという長寿の効能がある茸らしいが、私には毒茸にしか見えなかった。食べた萃香さんの身体から高い音がなったのは果たして何だったのか今でも疑問の一つだ。

 そんな怪しい茸を持ってくる魔理沙さんは、断りも得ず霊夢さんの分の草餅を食べてお仕置きされた。霊夢さんが外来人から教わったという投げっぱなしじゃーまんなる技はいつ見ても恐ろしい。描写する事さえ憚れる。よく魔理沙さんも無事なものだ。彼女が丈夫なのか、はてさて霊夢さんが手加減しているのか知らん。

 魔理沙が今日来たのもやはり、西瓜化現象の治療に効きそうな茸を見付けたからだそうだ。早速霊夢さんが萃香さんに(無理矢理であったことを述べておこう)食べさせた所、巨大化した。いや萃香さんは巨大化する“密と疎を操る程度の能力”を持っているらしいが、それとは関係なく巨大化した。一定時間立ったらまた元の大きさに戻ったのだが、小さな赤斑点の茸にこんな力があるのは驚いた。魔理沙さんは魔法の研究に使えるぜと嬉しそうに言って、残りを回収していた。

 入手場所を聞いた所、外の世界から紛れ込んだはてなの書いてある箱を叩いてみたら出てきたそうだ。緑斑点の茸もそうだったらしいが、緑は効果がないのだろう。或いは音が出たのが効果だったのかも。しかし、投げっぱなしじゃーまんといい今回の茸といい、外の世界は幻想郷より幻想的だ。是非一度行ってみたいものである。

 

 

 八月十六日 晴れ

 

 萃香さんの西瓜はぐんぐん育っている。今や角は疎か、顔を残した上半身は弦で覆われていた。しかも、剥がそうとしても剥がせないようだ。息は出来ているみたいだが。

 

 

 八月十七日 曇り

 

 ついに実がなり始めた。普通の西瓜では考えられない速度で成長していて、既に拳大はある。大変な事に萃香さんの目覚めが目に見えて少なくなってきた。

 

 

 八月十九日 雷

 

 萃香さんが目を覚まさないらしく、霊夢さんが各地に協力を求めに行った。私は留守番役を勤めているのだが、これはかなり不味い事態じゃないだろうか。風見幽香さんという妖怪がきたが、どうも一体化しているため西瓜だけ枯らすというのは不可能ならしい。

 

 

 八月二十日 雨

 

 巷では隙間妖怪と呼ばれる八雲紫さんが博麗神社にやってきた。良く解らないが、何でも一日かけて萃香さんと西瓜の境界を解析するのだとか。霊夢さんも居ることだし、今日は早めに帰宅した。

 

 

 八月二十一日 晴れ

 

 萃香さんの事が気になりはしたものの、流石に仕事が溜まっていたのでそれをこなすのに丸一日費やした。参拝してきた友達に訊いてみた所、何なら仰々しい儀式でも始めるかのような準備をしていたらしい。明日また行ってみようと思う。

 

 

 八月二十二日 嵐

 

 雷鳴の轟く黒い空の下、雨に濡れる博麗神社の境内で、その儀式は始まったらしい。らしいと伝聞形式なのは私は儀式が開始する前に八雲さんの絶大な妖気に当てられ気絶していたと、儀式が終わった後に霊夢さんから聞いた。お恥ずかしい話だ。

 ちなみに儀式は、うん、どうなのだろうか。私には失敗としか思えないのだが脇巫女さんは八雲さんと呑気に談話していた。それを見ると成功した気もするのだけど。その傍らでは見覚えのある角の生えた西瓜があった。んんー。えーと。

 明日説明してくれるらしいので取り敢えず待っておく事にする。

 

 八月二十三日 晴れ

 

 今日博麗神社に行ったらご機嫌な笑みを浮かべた霊夢さんがいた。理由を訊いてみた所、何でも良く熟れた西瓜が手に入ったらしい。羨ましい話だ。そんな事を話していると、魔理沙さんが箒で飛んで来た。彼女は縁側で冷やされていた西瓜を見ると、意外にも(こう書くと少し失礼だが)慣れた手付きであっと言う間に切り分けた。一人暮らしなのでこの手のことは慣れているのだろう。その後色々あって私も一切れ貰ったのだが、実に甘い西瓜だった。まるで萃、いや、なんでもない。

 そう言えば結局萃香さんの事は聞けずじまいだったので、明日は絶対聞こうと思う。

 

 

 

   ◇   ◇  ◇

 

 

 

 九月一日 晴れ

 

「一つ、聞いて良いだろうか?」

「はい慧音さん、何なりと」

 

 私は今日寺子屋に来ていた。何でもスイカ異変について記した私の日記を歴史編纂の参考にしたいと、慧音さんから打診があったのだ。内容がかなり偏ったものなので人に見せることに抵抗はあったが、そういう訳ならと恥ずかしさはあったが見せる事にしたのだ。そうしたところ、どうやら疑問に思う所があったらしい。

 

「貴女は鬼を食べたのか?」

「あはは、私がそんな事出来るわけないじゃないですか」

 

 何を冗談をと笑ってみたが、慧音さんの顔は真剣だ。でも私が本気で言っているのだと気付いたのか、疲れたように目元を揉みだした。ふむ、もしや。

 

「最後まで読みました?」

 

 確か途中で萃香さんとは気付かず西瓜を食べたような描写を入れた気がする。実際、食べたわけだが。ああ、いや、そうか。そうね。完璧に西瓜化してるから後々それを知っても気にしなかったが、鬼を食べたと言えるだろう。鬼を食った人間、何だか童話でありそうである。残念ながら写本が仕事な私でもお目にかかったことはないけれど。

 先を読めばわかりますと慧音さんを促すと、まだ納得できないような顔をしながらも先を読み始めた。

 

『八月二十四日 晴れ

 

 昨日西瓜を食べた後、全員で博麗神社の庭に残った種を蒔いたのだが、今日既に芽がでていた。恐ろしい成長速度である。庭の栄養が凄いのか種が凄いのか、おそらく後者なのだろうけど。不思議な光景だった。

 余談だが、昨日食べた西瓜は萃香さんだったとか。』

 

「……なんか、やけに冷静じゃないか?」

「あー、執筆方法も理由の一つなんですが、何といいますか」

 

 博麗神社に通っている内に色々と慣れてしまったのだ。言うならば、一般常識が欠如してしまったような、いや、たぶん気のせいだと思いたい。が、少なくとも不測の事態に対する耐性は付いたと思われるのだ。私わりとあるがままに流される気質だし。

 

『八月二十五日 晴れ

 

 博麗神社の庭に、ちっちゃな萃香さんがたくさん生えてきた。ひゃー。』

 

「わけがわからないぞ!?」

「え、この文章から筆者わたしの心情を読み取れないなんて下手すれば寺子屋の先生失格になりかねませんよ?」

「いや意味がわからないんじゃなく、わけがわからないんだが……」

 

 何がわからないと言うのだろうか、文章そのままの意味しか込められてないと言うのに。等と私は微妙に失礼な事をわざとらしく考えながら寺子屋の未来を案じつつ、不服げな慧音さんに先を促した。

 

『八月二十六日 晴れ

 

 小さい萃香さんを一匹拉致して、代わりに小さな西瓜を置いておいたら霊夢さんにお仕置きされた。しかし私は反省していない。あの可愛らしさを見たら神様さえも拉致るであろう事は確定的に明らかである。ふふっ、冷静になって明日の誘拐計画を立てる事にしよう』

 

「普通に誘拐とか言ってる時点で駄目だろう!?」

「いや、可愛かったんだ」

 

 本当に。言うならば天使が降臨したかのように、鬼だけど。そう言えば、この日辺りから私の『自動筆記をする程度の能力』が可笑しくなってきていたように思う。便利なんだけど私の感情に左右されるので、小説以外の写本には余り使えないのが難点だ。

 

『八月二十七日 曇り

 

 今日は悲しい出来事があった。小さな萃香さんたちが合体して普通の萃香さんになってしまった。何という劣化、普通の萃香さんも可愛いは可愛いのだがしかし小さい萃香さんを見た後だとどうも。悲しみに明け暮れる私は手当たり次第に妖精妖怪等々、私が可愛いと思うものを拉致して家に帰った。萃香さんの時と同じく、拉致現場には西瓜を置いておいた。

 

 八月二十八日 雨

 

 今日も今日とて拉致していたが、家に帰ったら私の家の玄関で待ち構えていた魔理沙さんと霊夢さんに退治された。無念。』

 

「本当に何をやってるんだ!?」

「いやぁ、可愛いものに目がなくてつい。それに私女だし、特に問題ないでしょ?

 それにただ私の家に招待しただけだし、なんで退治されたのか今でも疑問」

 

 男なら犯罪だけど。日記とかの文章はやや男らしくなりがちだけど私は女だ。なら拉致しても良いはずだ。害は与えないのだから。妖精だってお菓子とかで釣ったら直ぐに寄ってきたし。寧ろ向こうが捕まえたと言ってきたようなものだ。

 

「……はぁ」

 

 なんか凄く駄目な人を見るような目で見られた。いや、私もやり過ぎたとは感じている。短い期間にやりすぎた。もう少しながい期間を設けてやれば異変にはならなかったかもしれない。しかしながらつい、込み上げる衝動に勝てなかっただけなのだ。それに幻想郷での妖怪妖精の拉致は犯罪ではなかった筈だし。

 

「まあつまり、西瓜異変は貴方が原因なんだな?」

 

 呆れ顔の慧音さんに頷いて肯定する。よもや異変として扱われるとは夢にも思っていなかったが、良い経験だろう。その後は二、三の質問だけ受け、返してもらった日記を持ちながら寺子屋を出た。もう授業が始まるのか、駆けていく子供達姿が微笑ましい。ふふふ。

 本日は快晴。雲一つ無い空は青々と広がり、私の清々しい心を表しているかのようだ。昨日漸く身体も全快した事だし、久方ぶりに博麗神社に行くのも良いかもしれない。異変の後はまだ行ってないが、彼女たちなら自然に迎え入れてくれるだろう。

 

 嗚呼、素晴らしきかな幻想郷。さて今日も何か面白い事が起こらないかな――――。




【あとがき】

 過去別サイトで投稿してたことのある作品。
 東方短編SSの処女作。結構頑張ってたあの頃の自分。

【せってい】

・村の娘B
 名無しの村娘。写本家。
 
・友達
 村娘の友人。外来人。

・西瓜異変
 村の娘Bが起こした異変で、極めて力の弱い妖怪や妖精の多くが幻想郷から姿を消し、消えた現場には西瓜が置かれた。これは村の娘Bが拉致監禁を行ったからであると色々あって知った魔理沙と霊夢によって解決する。尚、伊吹萃香西瓜化現象は異変の引き金にはなったものの異変には含まれない。
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