「えっへへ〜、こうしてデートするの案外初めてだよね」
「そうだったけ?……そう言えば、確かにデートはしてないな」
「そうでしょ?だから今日は目一杯楽しむよシーくん!」
「おう」
大型複合施設“レゾナンス“へやって来た翔真と束。束は身バレしないように髪を茶髪にしてサイドポニーに纏めて服装も地味にして変装していた。束がデートに行きたいと言い出し、翔真はそんな彼女の願いを叶えるべくデート場所をレゾナンスに選んだ。
「うわ〜!可愛い服がいっぱい……ねぇ、シーくん…その」
「遠慮しなくてもいいぞ。試着したかったら沢山していいぞ」
「っ!うん!」
束はありったけの服を試着して、翔真はそんな彼女の姿を写真に収めたりで忙しい。気に入った服を買った次は昼食にイタリアンを選択し、二人はパスタを口に運ぶ。
「おいひぃ…でも、シーくんのがもっと上手いけどね」
「んなことねぇさ。やっぱり店で作るパスタは本格的だから敵わないさ」
「でもこのカルボナーラ、少しとろみがないし、シーくんのカルボナーラが一番だよ……あ、そうだシーくん!」
「ん?」
束は自身が食べているカルボナーラをフォークに巻き付けて、翔真の口へ運ぶ。
「どう?」
「悪くないな……てか……あーんしちゃった」
「い、嫌だった?」
「なわけあるか。こんなリア充イベント誰が嫌いなもんか!ましてや束との間接キスという二重のご褒美――『は、恥ずかしいから言わないで!』へぶ!?」
「……バカ」
初めてのあーんを堪能し暴走気味な翔真を抑える束は赤面しつつも自然と笑みを溢す。店を出た翔真は休憩がてらソファに座り、束はそのままお手洗いに向かう。
「(はぁ、束がかわいい……可愛いくて辛いぜ)」
スマホにある束フォルダーには可愛い彼女の姿から破廉恥な彼女の姿がずらりと200枚以上の写真が表示される。彼女の写真を眺めてニヤニヤを止められない翔真の表情は他から見れば気持ち悪いと思われる程のものだ。
「(束は絶対天使の生まれ変わりだ。あ、翔真的に今の発言ポイント高い)」
「―――ちょっとそこの男」
「……」
「無視すんじゃないわよ。アンタに言ってるのよアンタに」
「あっ?」
至福の時間は咄嗟に崩れ去り、翔真に声を掛けたのはモデルと言われても可笑しくない見た目の女性……しかし、その女性は高圧的な態度で翔真の前に荷物を置いた。
「あんた男でしょ?なら荷物持って」
「……はぁ?」
「口の聞き方に気を付けなさい」
「(はぁ……女尊男卑思想か……だる)」
今のご時世立場が女性に上向き、女尊男卑思想が強くなり一部ではこうした男をこき使う女性が増えている。
「早く持ちなさいよ!私疲れてるんだけど」
「すいませんねお嬢さん。今恋人を待ってましてね」
「恋人?はん、あんたみたいな冴えない男が彼女なんて笑わせるわね?まあ、あんたを選ぶ女もロクじゃないわね。どうせそこらの男に媚び売ってる頭悪い女でしょ?なんなら、私が彼女になってあげても――『オイ』っ!?」
黙ってやり過ごそうとした翔真……しかし、束を馬鹿扱いにした発言に我慢出来ずにソファを蹴り飛ばす。
「ふざけるなよ……たかが女尊男卑風情が……お前みたいな性格悪い奴に比べたらなぁ、束なんて女神なんだよっ!!それによ……俺は束以外興味ねぇんだよ。束はな、少しドジでちょっぴりエッチで、そして俺に安らぎを与えてくれる世界一の彼女なんだよ……てめぇなんざ、足元にも及ばねぇよ……消えろ、目障りだ」
「ひぃ!お、覚えてなさい!」
ドスの効いた翔真の声に女性は後退り荷物を置いたまま逃げた……一部始終を見ていた周りのカップルは翔真に喝采の拍手を上げる。そして……
「シーくん……」
「た、束!?いや、そのだな……」
「大勢の人の前で恥ずかしいよ……でも、嬉しいよ。束さんが女神なんて……ありがとう」
「本当の事を言ったまでさ」
「……うん(もう!また惚れちゃうよ!)」
赤くなった顔を両手で隠しながらも束は内心では喜んでいたのは別の話だ。トラブルはあったものの、二人は買い物とデートを済まして、ラブラブな雰囲気を出しながらラボへと帰る。