見ず知らずのブラックカードから支援される不可解。
そのカラクリこそ退魔生徒会なのだとアルトは語り始めた。
「ガイア連合外の将来有望な霊能組織とつながりを持ちたいと思うブラックカードは意外といるんですよ。退魔生徒会はその仲介を果たす組織です」
ブラックカードと言えども人であり、しがらみや情で現地霊能者や組織に入れ込んでしまった者がしばしば出る。
間違いなく大変な苦労を背負っている彼らだが、一方で頼られ、求められることに充実を覚えて沼にハマる者も多い。
そうした充実した苦労人達を羨ましく思いつつも、直接顔を合わせてのトラブルは避けたい。もう少し気楽に現地霊能者と繋がりを持ちたいライト層の黒札向けに用意された仲介組織こそ退魔生徒会である。
「仲介?」
「はい、皆さんには生徒会の立候補にあたり、いくつかの書類を書いてもらったはずですが」
「あー、あったあった。訳分らん志望動機付きの履歴書みたいなの」
うんうんと頷くアリババ。サラリと失言をこぼしているあたりやや粗忽な性格が伺えるが、アルトは気にせず話を続けた。
「学園側の事前審査で不適格と判断された人達を弾いた最低限の実力と人格が保証された人材が一次試験の突破者。
そこからガイア連合が算出した各個人の評価値と皆さんが提出したあの書類をもとにパトロン志望の黒札が選んだ好みの異能者、いわば”推し”が二次試験の突破者な訳ですね」
「俺達はその試験を突破できたからここにいるって訳だな」
「半分正解半分外れですね。もう少し補足すると退魔生徒会メンバーは三次試験突破者です。
実はブラックカードの”推し”は退魔生徒会メンバーに限りません。
ただ一番目立って一番支援者が付きやすいのがレベルと実績で選抜される生徒会メンバーです。それだけのネームバリューはある訳ですのでご安心を」
霊的資質はブラックカードの中でもかなり重視される評価項目ですからね、と続けるアルト。
「ならブラックカードの会長自身はどうなんだ? 誰かを、その、推してるのか? それとも推されてる?」
「どちらも答えはYesです。僕は退魔生徒会の運営という任務をこなすことでガイア連合からのバックアップを受けていますし、僕自身がブラックカードとして生徒会メンバーを支援してもいます」
と、視線をヒルダ、リリィ、立夏に送る。特にヒルダと【ヴァルプルギス】は実質的に黒札傘下の組織と見なされる程にその繋がりは強い。
視線を向けられた魔女ヒルダが軽く肩をすくめ、”後輩”へとアドバイスを送る。
「ま、パトロンへは無理のない範囲で忘れず恩は返しておくべきね。ブラックカード相手でも互酬性の法則は有効だし、日本人は”恩”と”義理”って奴が好きだから。逆にそこを忘れると嫌われるわよ?」
互酬性。贈り物を渡し、受け取ること。さらに受け取ったものがお返しする流れは両者の間に何らかの関係性を築き上げる作用がある。
手紙や贈り物をやり取りする内に好意的な関係が自然と出来上がるのがある種の理想だ。
「その”お礼”とやらはどうすればブラックカードに送れるんだ?」
淡々と、しかし前のめりになって黒が問う。ブラックカードと密接なつながりを持てば栄華は約束されたようなもの。無理もない。
「先ほど各黒札からの支援に返済義務はないと言いましたが、”推し”からは最低でも週に一度、ガイア連合を通じて黒札向けに手紙を出してもらっています。敢えて言うならそれが皆さんに課せられた”義務”であり、その手紙を通じてお礼を伝えるのがいいでしょう。皆さんが得たアイテムやマッカ、お礼の品を添えるのもおススメですね」
「……手紙? 支援に対する報告書ということか? 成果と見返りを送れと?」
「いいえ、あくまで手紙です。決まった形式もありませんし、近況報告としてそうした事柄を書くのは自由ですが、むしろありふれた日常の出来事の方が好まれる傾向にありますね。もちろん個人差はありますが」
??? と困惑の表情を浮かべるのは新メンバーが多い。
支援と義務の天秤が明らかに釣り合っていない。意味不明すぎる。そんな困惑だ。
「はいはーい、手紙を書くのが苦手なので直接お礼を言いたいでーす!」
その空気をスルーして明るい声でブンブンと挙手するのは”夜戦狂”川内。ダークゾーン、ベノムトラップなど特殊ギミックがある異界を専門的に対応する変わり種の異能忍者集団の若手エースである。
(また踏み込んだ質問だなー)
(……ガードの堅いブラックカードがそう易々と顔を見せるとは思えんが)
とはいえ非常に気になる質問に困惑は一旦脇に置いて回答者であるアルトを注視するアリババと黒。
「確か川内さんは支援者と既に顔見知りだとか。パトロン側が了解していれば問題ありません」
「そうだよー! うちの旦那さんはねえ、私よりももーっと夜戦が上手い凄腕でねー。腕を磨きつつ、うちの名前を上げてこいって送り出してくれたんだー!」
『!?』
ピースピースと何故か得意げな川内の爆弾発言に驚愕の視線を向ける二人。
となるとアルトを除外し六人中四人が既にブラックカードと顔見知りということか。
旧メンバーはさておき、川内からも出遅れている事実に焦りが滲む。
「……俺としても手紙の類は苦手だ。日本語も喋れはするが、書くのは上手くない。直接会えると話が早いのだが」
「あ、俺も俺も。そこらへんなんとかならない?」
「川内さんのようなケースでもなければ少なくとも最初の一回はガイア連合を通じて手紙でやり取りしてもらう形になります」
「だが……」
「原則として優先されるのはブラックカード側の意志です」
ニコリと笑みを浮かべるアルトに二人はそれ以上の言葉を飲み込んだ。
ブラックカードを怒らせればマズイ、それが今の日本オカルト業界の常識だった。
☆キャラ紹介☆
【イメージ】
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【名前】
川内
【レベル】
12
【ステータスタイプ】
速・運
【耐性】
状態異常耐性、破魔無効
【総評】
戦後のメシア教による根切りからトカゲの尻尾切り (なお尻尾が本体)によってメシアンの目を眩ませ、市井に潜り込んだ異能忍者集団の孫世代。数十年ほど活動を一切停止させており、再開したのはごく最近。活動再開のキッカケはガイア連合の勃興。
霊能資質はRだが戦闘スタイルと才能適正が一致しているため、かなり伸びやすい。
また忍者らしく最新技術は積極的に取り入れていくスタイルで、装備品の大半は黒札経由でガイア連合から仕入れたアイテム。
ちなみに彼女の所属する忍者集団はライトマや毒床歩き、マッパーなどダークゾーンや毒エリアといったギミックに対応可能なスキル持ちが多い。
彼女とその母体を傘下に置く黒札も類似のスキル持ちであり、そうした厄介な特殊異界対策専門の要員としてガイア連合からの評価は高い。