【三次創作】カオ転学園退魔生徒会   作:理事長

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第三期退魔生徒会、発足④

 強制依頼(ミッション)

 退魔生徒会とは切っても切り離せないキーワードに自然とメンバーの意識が次の話題に移った。

 

「とはいえ皆さんも概ねは既に聞き及んでいるでしょう? ガイア連合から回される、強制受注の高難易度依頼です。基本的に断ることはできず、リタイアすればペナルティがあります。リタイアが続けばメンバー落ちもあり得るのでご注意を」

 

 大概は急ぎか、一般異能者や黒札が受けたがらない高難易度の依頼であることが多い。頻度はまちまちで何か月も来ない時もあれば、短期間に連続するときもある。

 退魔生徒会の顔触れが変わるキッカケは大抵がこれだ。

 

「注意してなんとかなんのか、それ……?」

「命の賭けどころを間違えないように、と言ったところですかね? 逆に言えば一度や二度は甘めのペナルティで済むわけですし、リタイアが続くようなら大人しくメンバー落ちした方が健全ですよ?」

「これだけの飴玉を転がしておいて言う台詞か?」

 

 ヒラヒラと支援リストを振りながら(ヘイ)が毒づく。ガイア連合に悪意はないが、その余波を受ける者はいるのだ。特に下に行くほど。

 

「零細霊能組織から見れば退魔生徒会の席はとんでもなく美味い毒饅頭だ。無理をしてもしがみつくだけの価値はある」

 

 ガイア連合と黒札からの支援は欲に目を眩ませるだけの価値があり、()()()()()を許容しようとメンバー残留を望むリーダーもいるだろう。

 

「こちらにそれを言われても……。進退を決めるのはメンバーと各組織の選択ですよ?」

「分かっている、ただの愚痴だ。忘れてくれ」

「……ま、俺のところはそうなったら早めに手を引くよ。ただでさえ異能者が少ないのに無理をしてみんなを潰したら本末転倒だからな」

 

 とはいえガイア連合に悪意はないのだから文句を言われても困る。

 肩をすくめたアルトの言葉に、雇われに近い立場の(ヘイ)と難民リーダーであるアリババがそれぞれの立場からコメントした。

 

「メンバーを続けるつもりなら支援の使い道は自己強化がお勧めよ。装備をガイア連合産のものに更新するだけで大分違うしね」

「見た目はともかくね、見た目は」

「いや、最近は男性用とか見た目が普通の霊能装備も多いよ」

 

 ヒルダが助言し、立夏が突っ込み、アルトが神経を逆撫でするようなフォローを入れた。

 

「じゃあなんで私のところに集まる装備はドスケベ霊装ばかりなんですかっっっ!?」

 

 当然立夏がキレた。そりゃそうだとほぼ全員が内心で頷く。

 

「多分初期のロマンと見かけに走った高性能装備を使っていた層がまともな後発品に更新して、要らない装備を在庫処分で押し付けてるからじゃないかな?」

 

 酷すぎる裏事情にメンバーは色んな意味でドン引く。

 なおその在庫処分品すら手が届かない零細霊能組織は幾らでもいるのだからこの業界、というよりブラックカードとそれ以外の格差が本当に酷い。

 

「ゴミでは?」

「中古品の無償提供です。それに性能は本当に優秀だからね? 売れば多分札束を積み上げても欲しいって人がいるからね?」

「一応は貰いものを売るのは人としてちょっと……」

「気にしなくてもいいと思うけどなぁ。アイテムを売り払った金を組織運営に回したり、別のアイテム購入費用に回したりするのは普通のことだし」

 

 それを聞いた立夏に電流走る――! 

 

「――つまりドスケベ霊装を全部売り払ったお金でまともな装備を購入すればいいのでは!?」

「みんな自分が贈った霊装を着込んだ立夏を見たがってるのでダメです♪ 割と真面目にそれやったらパトロン離れるからお勧めしない。立夏の戦闘力、装備頼みなの自覚あるよね?」

「正論が痛い……」

 

 なお一瞬で厳しい現実に打ちのめされ、再び机に突っ伏した。

 そこでヒルダがパンパンと手を叩いて空気を入れ替え、話の続きを促す。

 

「はいはい、話が進まないから次行くわよ。アルト、まだ強制依頼(ミッション)の話は終わってないでしょ?」

「そうでした、そうでした。実は二件ほど強制依頼(ミッション)が入ってきています。本来は依頼者であるガイア連合と受注者の当事者間のみでやり取りは終わるのですが、今回は新メンバーのチュートリアルも兼ねて公開方式で説明することになりました。次回以降はガイア連合から直接連絡が入るのでご注意を」

 

 早速の強制依頼(ミッション)に自然と気を引き締める一同。

 

「一件目、当学園の修行用異界【青龍山】でのフォルマ集め」

 

 【青龍山】。学園の裏山を丸々一つ使って作り上げた巨大異界。

 その成立に()()神主が一枚嚙んだだけあって通常では考えられないほど出現する悪魔の種類とレベルの幅が広く、なり立て覚醒者(Lv.1)から”超人”クラス(Lv.30)まで利用可能な修行用異界だ。

 

「依頼先は生徒会の全メンバー。もちろん仲間と一緒に参加してOK。

 期限は一週間、その間に出来る限り多く悪魔を倒し、フォルマを集め、納品してください。

 ノルマはありませんが出来高制で報酬が上下するので頑張ってくださいね」

 

 詳細はこちらに、と各メンバーにプリントを配るとみな一斉に目を落とした。

 

「これは……」

「マジ? いいのか、これ?」

「わ、わ。美味しいね、この依頼」

 

 プリントに書かれたフォルマの買い取り相場を見ると一般的なそれよりも割高。集めれば集める程儲かる上に、自身の力量を把握して望めば危険は低い。強制依頼(ミッション)と聞いて高まった警戒心が何だったのかと思うほど美味しい依頼だ。

 

「新年度最初に発注される生徒会メンバー全員が対象の強制依頼(ミッション)は新メンバー就任祝いを兼ねています。まさにチュートリアルという訳ですね」

 

 緩んだ空気に釘を刺すリリィ。ちなみに学内最大派閥であるメシア教穏健派のリーダーである彼女はその最大動員数も相まってこの依頼で最も多くの利益を叩きだせる一人だ。

 

「補足ありがとうございます、リリィさん」

「いえ、会長のお役に立てたのなら……」

「チッ」

 

 アルトからのお礼にはにかむリリィへ、舌打ちを一つ向けるヒルダ。この三者の関係、見ての通りトライアングラーでデンジャラスなのだ。たまに立夏が(本人は意図せず)絡むこともあるが。

 

()()()に近いのは次の強制依頼(ミッション)でしょ? 早く話を進めてくれる?」

 

 こっちの準備もあるんだから、と続けるヒルダは面倒そうな気配を隠そうともしない。アルトに近い彼女は続く強制依頼(ミッション)の詳細を既に把握していたからだ。

 

「そうですね。二件目は最近発見された異界の調査任務。情報はほぼゼロの状態からスタートです。

 依頼先はヒルダさん。

 期限はありませんが可及的速やかに取り掛かってください。

 成功報酬は一件目の強制依頼(ミッション)とバッティングする分増額されています。

 異界の傾向と出現悪魔の平均レベル帯を掴めれば依頼完了と見込んで問題ないかと」

「ハイハイっと。ま、いつも通り処理しておくわ」

 

 切り札の二体以外にも使い魔を多数持ち、遠隔からの偵察が可能。更に霊脈を調べることで異界の大雑把な規模や傾向を把握できる魔女(ヒルダ)は比較的安全に異界偵察任務をこなせることで重宝されていた。

 Lv.22という下手な黒札よりも強力な異能者であり*1、ガイア連合内部で言う”現地民勢”としての評価はかなり上位に食い込む。

 

「無理はしないでくださいね? 何かあったら僕に連絡を。すぐに向かいます」

「……ったく、過保護よねあんたも。ええ、私の手に負えない時は頼むわ。我らが庇護者殿?」

 

 アルトの気遣いに呆れているようでその実満更でもないヒルダに、今度はリリィがギリ……と聞こえるか聞こえないかの歯ぎしりを立てた。

 なお新メンバー(プラス1名)は見なかったふりをして依頼詳細について話していた。

 

「うへ、覚悟はしてたけどこのレベルかぁ」

「”黒札またぎ”か。楽は出来なさそうだな」

「あ、うち割と今回みたいなの得意でーす。回すんだったら悪魔退治よりもそういうのがいいなー」

 

 黒札またぎ。

 凄腕揃いと評判のブラックカードすら避けて通ると言われる依頼群の俗称である。

 難易度、手間、割に合わない報酬など諸々の理由で生まれる塩漬け依頼だが、退魔生徒会に流される強制依頼(ミッション)はこの黒札またぎ案件が多い。

 新規異界の調査任務も純粋な危険度と事故率の高さから嫌われがちな依頼だ。本来異界攻略とは情報を揃え、メタを張った強力な異能者に任せるもの。情報がない程事故は起こりうる。

 

「回される強制依頼(ミッション)は各メンバーの適性を考慮したものになります。全く専門外の依頼が回ってくることはまずありません。その点は安心してくださいね」

「とはいえ退魔生徒会の席次に留まりたいと思うのなら戦力強化は急務です。その点はくれぐれも油断のないように。学友としての忠告です」

「それが出来たから私達はこの席に座り続けられてるワケ。ま、精々受け取った支援の使い道に頭を悩ませなさいな」

 

 ”超人”、”魔女”、”騎士姫”。学内三強からの言葉に、未熟と不足を自覚するメンバー達はそれぞれ己と己が率いる集団の未来を考えるのだった。

 

*1
なお本気を出した黒札にはあっさり追い抜かれる模様

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