【第一章・完】拝啓、マイネイバー【更新休止】   作:いんせき

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第14話 日記 ~三日目~

 夜中の九時。天井に設置された照明が、部屋中に淡い光を灯している。

 自室に戻った僕はベッドに身体を預け、物思いに耽っていた。

 

「御手洗さん、怒ってたな……」

 

 昼間の出来事を思い出す。模擬決闘の後、僕はアリーナの前で御手洗さんを待った。実際に彼女が出てくるまで、かなりの時間がかかったけど……御手洗さんとはどうしても話がしたかったので、待ってる時間は苦痛ではなかった。むしろ彼女と話す事への期待感が増していき、気持ちが高揚していた程だ。

 後から考えると、それが駄目だったのかもしれない。自分の事で頭がいっぱいになって、御手洗さんの気持ちを考えていなかった。だから僕は、彼女から拒絶されてしまった。

 

『あなたが私の何を知っているの?』

 

 胸ぐらを掴まれながら言われた一言が、今も僕の心を締め付ける。アキトが慰めてくれたおかげで何とか立ち直れたけど、それでもまだ辛い。

 何より、御手洗さんがあの時に見せた表情が忘れられない。怒りを全面的に押し出した――それでいて何処か悲しげな、そんな表情が。

 

「…………」

 

 彼女の言う通りだ。僕は彼女の事を何も知らない。知ろうともしなかった。

 自分と同じクラスにいる特待生で、銀色の髪が綺麗な女の子。その程度の情報で、彼女の事を理解したつもりになっていただけだ。

 

「……変な話だよね」

 

 ちょっと考えれば分かる事なのだ。御手洗志紀という少女に会ってから、まだ二日しか経っていない。その状態で彼女の心に踏み入れるはずが無い。

 二日の間に親睦を深められたら、結果は変わってたかもしれないが……実際はこのザマである。彼女の心は、依然として閉ざされたままだ。

 

「……教室で会ったら、真っ先に謝ろう」

 

 明後日になったら、また御手洗さんに話しかけようと思っている。今度は軽はずみな事は言わない。少しずつ、慎重に。適度な距離感で彼女に接しよう。

 心を開いてくれるか分からないけど、努力するしかない。僕は御手洗さんと仲良くなりたいのだから。

 

「……よし」

 

 これからの決意を固めると、僕はベッドから起き上がった。

 もうすぐ消灯時間だが、寝る前にやる事がある。今日の出来事を日記に記すべく、机の引き出しに仕舞っておいたノートを取り出した。

 

 

 三日目。

 今日の土曜は、学園の方で模擬決闘が開催された。選手はミテライさんとエタン・グランベル。どちらも入学試験で優秀な成績を収めた特待生だ。

 

 試合の内容に触れる前に、決闘について説明しようと思う。そもそも、ウィッチクラフト・アカデミーには色んな国から生徒が集まっている。当然、文化や風習、考え方なども違ってくるワケで、それによる摩擦が起きないはずが無い。そういったトラブルを穏便に解決するために考案されたのが、この決闘制度なんだそうだ。

 決闘は週に一度、毎週土曜日に開催される。内容はシンプルで、どちらかが戦闘不能になるまで戦うというもの。その際、魔法の他に武器の使用が認められている。そして決闘に勝った方は、負けた方に要求を一つ通すことが出来る。相手の尊厳を傷つけるモノは禁じられているが、それ以外は基本的に何でもアリらしい。

 ちなみに今回行われた決闘は、新入生に学園のルールを教える為に開催されたモノで、特に勝敗には拘らない内容だった。

 

 模擬決闘が始まったから、僕の目はアリーナに釘付けになった。僕だけじゃない。クラスメイト全員がそうだろう。それほどまでに、二人の戦いは凄まじいものだったと思う。剣と剣の激しいぶつかり合いや魔法の応酬。ミテライさんは雷、エタンは氷といった感じで、お互いが得意としている属性で戦う姿は今も目に焼き付いている。結局、試合はタイムアップで引き分けに終わってしまったけれど、その内容はまさに圧巻だった。自分と同じ学年でも、特待生はレベルが違う。その事を十分に思い知らされた一戦だった。

 

 模擬決闘が終わった後、僕はアリーナの前でミテライさんを待った。そして彼女に会う事は出来たのだけれど……浮かれるあまり、僕はミテライさんを怒らせてしまった。

 理由は分かる。僕の配慮が足りなかったからだ。ミテライさんの気持ちを汲み取れず、自分の言いたい事ばかりを言ってしまった。彼女が怒るのも無理はない。

 月曜日に会ったらすぐに謝ろう。許してくれるかは分からないけど……謝罪ぐらいはしないと不誠実だからね。

 願わくは、ミテライさんと友達になれますように。

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