【第一章・完】拝啓、マイネイバー【更新休止】   作:いんせき

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第32話 試合続行(コンティニュー)

「何だぁ、今の炎!? すっげぇ迫力!」

「天井を突き破っていきそうな勢いだったぞ!」

 

 観客席から聞こえる、称賛のざわめき。戦いにおいてもパフォーマンスに拘るナナセにとって、この歓声は何よりも心地の良いモノだった。

 

(決まった……! アタシが編み出した大技、シャイニー・ヘプタグラム!)

 

 炎で高められた機動力で翻弄しつつ、敵を中心に見立てて七芒星の型を配置。そこから一気に火柱を打ち上げ、逃げ場を失った相手を焼き尽くす技である。

 その威力は一撃必殺。たとえ特待生でも、直撃を貰ってしまえば無事で済むはずがない。

 見栄えにもこだわるナナセが考えた、渾身の必殺技であった。

 

「この間の模擬決闘もそうだったけど、特待生って凄い戦いをするんだな……」

「入学してまだ一ヶ月だろ? 俺らとはレベルが違いすぎるぜ……」

 

 観客の反応も上々。自分の力を誇示する事に成功したナナセは、内心でほくそ笑んでいた。

 

(フフン♪ これでアカデミーでの評判はバッチリ!)

 

 タダの新入生を相手に、大技をお披露目する事になったのは想定外ではある。しかし、終わってみれば悪くない結果だと思えた。

 こうして、天住七星という少女の存在をアカデミーで強く印象づける事が出来たのだから。

 

「それにしても、相手の子も頑張ったよねー。あっちは普通の生徒なのにさ」

「正直、すぐに負けると思ってたんだけど……意外と善戦してたね。凄いじゃん」

「そうだね……結局は負けちゃったけど」

 

 ナナセの活躍を称える一方で、トモキに対しては同情が飛び交っている。

 元々、力の差が歴然としている組み合わせだったのだ。健闘したとは言っても、この結果になるのは誰もが予想できていた事だろう。

 

(まぁ……キミの頑張りは認めてあげる)

 

 七芒星の炎に焼かれ、倒れ伏したままピクリとも動こうとしない相手。その姿を視野を入れ、ナナセは心の中で健闘を称えた。

 この試合は自分の勝ち。それは揺るぎようのない事実であり、覆しようもない現実である。

 そのはず、なのだが――

 

(……おかしいわね)

 

 試合終了を告げるブザーの音が、いつまで経っても鳴り響かない。

 その事はナナセに、何とも言えない不安感と疑問を抱かせた。

 

(故障でもしたっていうの?)

 

 それならそれで、代理を務める職員がアリーナに上がってくる段取りになっている。

 しかし、それらしい人影は一向に現れない。アクシデントが起きた訳では無いようだ。

 ならば何故、試合が継続しているのか。その答えはすぐに指し示された。

 

「ああっ!? 見ろよアレ!」

 

 観客の一人が叫ぶ。その声に反応したナナセが見やると、そこには信じられないものが映されていた。

 

「う、そ……?」

 

 立っている。トモキが立ち上がっているのだ。全身を炎で焼かれ、もはや戦える状態ではないはずの彼が。二本の足でしっかりと大地を踏みしめ、力強く佇んでいる。

 

(なんで!? どうして!? アレをマトモに喰らっておいて、起き上がられるワケないじゃない!?)

 

 ナナセの頭は混乱に陥っていた。

 前述の通り、シャイニー・ヘプタグラムは一撃必殺を誇る大技である。それがクリーンヒットした以上、トモキが戦闘不能に陥るのは必然。そのはずだった。

 だが、実際にトモキはそこに立っている。一体、どうやって立ち上がったというのか。

 動揺を露にするナナセに対し、トモキは静かに口を開いた。

 

「シャイニー・ヘプタグラム……とっておきなだけあって、凄まじい魔法だったよ」

 

 瀕死の一歩手前である事は間違いない。息遣いは荒く、身体を支える手足に力が入っていない。誰がどう見ても満身創痍の状態である。

 そんな中。両の眼に宿る光だけは、依然として陰りを見せていなかった。

 

(なんなのよ、コイツ……!?)

 

 トモキの気迫に押され、後ずさってしまうナナセ。

 分からない。彼が今も立っていられる理由が。一体、どんな手品を使ったというのか。

 その思考を読み取ったかの如く、トモキは言葉を続けた。

 

「喋るだけでも精一杯だし、多くは語らないよ。ただ、一つ言える事があるとすれば……」

 

 そこで一旦、言葉を切る。

 苦しげな呼吸をゆっくりと落ち着かせてから、彼は言い放った。

 

「何も持っていなかった僕がここまで来られたのは、全て御手洗さん(あの人)のおかげだ」

 

 構えられる日本刀。

 バチバチと音を立てる稲妻が、その剣身に彩りを添えていた。

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