【第一章・完】拝啓、マイネイバー【更新休止】   作:いんせき

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第8話 模擬決闘(デモンストレーション)5分前

「…………」

 

 広い。途方もなく広い空間だった。観客席で囲まれた円形のフィールドは、一目で見ただけではその全容を把握する事が出来ない程の広さを誇っている。この学園に在校している生徒の数は四百以上。その全てを集めたとしても余裕で収まる程の広大さだ。

 

「ほう、驚きのあまり声も出ねぇって感じか?」

 

 隣に座っていたアキトが声を掛けてくる。彼の言う通り、眼の前に広がっている光景を見て僕は言葉を失っていた。

 これがアリーナ。お互いが全力を出し切る事を前提とした、決闘専用の施設だというのか。

 

「この学園には模擬戦闘を行う為のアリーナが複数あるんだ。その殆どは許可さえ取れれば誰でも使えるんだけど……ここだけは特別なんだよ」

「特別?」

「なんせ決闘を行う為に造られた専用スペースだからな。委員会の承認が無い限り、この場所を使う事は許されないのさ」

 

 また、アキトの口から聞き慣れない単語が出てくる。朝から初めて知るワードばかりで疲れてきそうだ。

 

「委員会の……承認?」

「ああ。いくら双方の合意が取れても、力の差があり過ぎると勝負にならないだろ? だから、最低でも試合が成立するかどうか。それを審査する機関が『決闘管理委員会』ってワケなんだよ」

「なるほどね」

 

 言われてみれば納得である。決闘の申し込み自体は僕のような新入生でも行える。相手が応じてくれれば上級生に勝負を挑む事が出来るが……それは流石に無理があるというモノ。そういう無謀な挑戦を防ぐ為に決闘管理委員会があるという。

 

「それで、どうして御手洗さんは決闘に参加する事になったの?」

 

 朝に聞く事が出来なかった質問を改めてぶつけてみる。アキトは「そう慌てんなって」と笑いながら答えてくれた。

 

「実は氷女サマはな、入試試験で優秀な成績を残した特待生なんだよ。筆記、実技共に文句なしの満点を叩き出したって話だ」

「えっ……えぇぇぇぇ!?」

 

 思わず大声で叫んでしまう僕。周りの生徒達が一斉にこちらを見てきたので、恥ずかしくなって俯き気味に座り直す。

 

「す……凄い人だったんだね、御手洗さん。その事を知らないまま話しかけちゃったよ」

「まぁ、大っぴらに公表されてる事じゃないしな。それに氷女サマ、入学してからずっと一人で過ごしてるみたいだし、周りが知る機会が無かったんじゃねえかな。お前だけだぜ? 氷女サマに話し掛けた奴は」

「そ、そっか……」

 

 初めて見た時から気に掛けていた女の子。それがまさか特待生として認められた才媛だとは思わなかった。そんな彼女と同じクラスに配属された事実。今までとは違った意味で、心が締め付けられる思いだ。

 

「おっ、来たぜトモキ。本日の主役二名だ」

 

 やがてアリーナの中央に現れた二人を見て、アキトが楽しげに呟く。視線の先に居るのは勿論、今回の決闘における当事者達だった。

 一人は御手洗さん。相変わらずクールな表情のまま佇んでいる――が、服装に違いがあった。白いボディスーツ。動きやすそうなその衣装は、まるで戦いに赴く戦士を思わせる。

 そしてもう一人は、御手洗さんとは対照的な男だった。金髪の髪と整った顔立ちが印象的な美男子。彼もまた、全身を覆う紺色のボディスーツを身に纏っていた。

 

「ねぇ、アキト。御手洗さんと向き合っている人って……?」

 

 僕の問いに、アキトは徐に口を開く。

 

「エタン・グランベル。アイツも今年に入った特待生だよ」

「グランベル……って事は、海外から来た生徒なのかい?」

「ああ、フランスからやって来た留学生だ。噂じゃあ、かなりの実力者だって話だぜ。もしかしたら氷女サマよりも強いかもな」

 

 アキトの言葉を聞いた事で、僕の意識は完全に目の前の決闘へと向けられる。自然と鼓動が高鳴っていくのを感じた。いよいよ始まる。特待生同士によるデモンストレーションを兼ねた決闘が。

 ゴクリと喉の鳴る音を聞きながら、僕は決闘が始まる瞬間を待ち望んだ。

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