ヤンキー中尉の能力持ってアークナイツ   作:ふろく

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読者「ふろく!?お前死んだはずじゃ...」
わし「残念だったな、忙しくて離れてただけだよ。」


第11話 中尉もどきと愉快な仲間たちwith情報屋

「おはよう、随分眠たそうだな。」

 

「......ちょっと眠れなくてな。問題ない。クソ、腰がいてぇ。座ったまま寝たのがキてるか...?」

 

次の日の朝、エドワードに仕事の斡旋と顔合わせのために会いに行くことになった4人、エドワードは基本的に忙しいため、朝に時間を作ってもらって会うことになっている。早く起きたイグニスとヴィルヘルムはリビングで寛いでいたが、どうやらヴィルヘルムは疲れが残っているようだが、何故だろうか()

 

「ほーー。」

 

「...なんだ。」

 

「いや?別に。...若いってのはいいもんだな。」

 

「なんの事だ?」

 

「これは独り言だが、誤魔化しはもう少しマシなものを用意したほうがいいかもな。」

 

「...チッ、分かってんじゃねぇかよ。どの程度聞こえてた。」

 

「独り言だと言っただろうに...少しだが、起きてる人間には聞こえる大きさだ。励むのはいいが、もう少し静かにしておけよ、スルトにまで知られたくないだろ?」

 

「へいへい...それはそれとして、マジでどこにでも居そうな格好してんなあんた。実は一般市民の生まれ?」

 

ヴィルよりも早く用意を済ませてきたイグニスの格好は、どこからどう見てもその辺にいる中年男性である(恵まれた体格と剣が腰に差されてるところを見なければ)。

 

「そうだが、言ってなかったか?」

 

「聞いちゃいねぇよなんだそれ、てっきりいい所の人間だと思ってたわ。マナーやら作法やら丁寧だし。」

 

「あぁ、それはあれだ、大騎士なのにそこら辺がなってなかったら大騎士の名折れだの恥だの言われたからな、友人に叩き込まれた。」

 

「ボロボロに言われてんな、良い友人じゃねぇの。」

 

「言い方というものがだな...だが確かに、良い友人だ。あいつは。」

 

「見てみたいな、あんたの友人がどれくらいぶっ飛んでるのか気になってしょうがない。」

 

「そうだな、お前の例に漏れずおかしい奴だよ、アレは。」

 

「おい待て、俺までおかしい奴みたいな言い方じゃねぇか。」

 

「......???」

 

「理解できないものを見る目を向けるな!俺はまともだぞ!」

 

「どうした...?本当におかしくなってしまったのか?お前がイカレてることなど今に始まったことじゃないだろう。」

 

「は?俺は常識を弁えてるだろうが、あんたの方が余程常識外れだろ。特にあんたの戦闘能力はイカれてるってもんじゃねぇよ。ホントに人間か?」

 

「俺の技術は努力したら皆等しく得られるものだ、たいしたものではない。」

 

「それよりもおかしいのはお前のアーツ能力だ。あんなモノは見た事がない。これまで俺見てきたものの中でも異常だ。

影に潜るアーツの使い手も、体に生えた源石を武器にする者も、こちらの力を奪う者とも戦ってきた。だがお前はその誰よりも洗練されていて、かつ邪悪に歪んでいる。まるで周囲の人間の全てを皆殺しにするかのような。」

 

「なぁヴィルヘルム、お前は何があってそんな力を手に入れたんだ?それとも、使わざるを得ない何かがあるのか?」

 

「前にも言っただろ?イグニス。俺は最強になる、お前の前で宣言しただろ?なんも変わりゃしない、これは生まれ持った力だし、俺の願いを叶えるのに最も適しているとも言える、俺を表すとすれば、このアーツが最適だ。これこそが俺の本性だよ。」

 

「なーに朝っぱらから重たい話してんのよ陰気臭いったらないわね。ここにいるのあんたらだけじゃないのよ。」

 

不機嫌そうに足音を鳴らしながら上の階から降りてきたWは顔を顰めながら言う。確かに朝から話すことでもないしここで言うことでもなかった。

 

「すまんW、それにイグニスも。途中で止めるべきだった。」

 

「いや、俺も途中で気づかないといけなかった。すまない。」

 

「あー、あとあれだ、おはよう、W。」

 

「おはよう。随分元気なのね。」

 

「......まだ若いんでな、ところでスルトは?」

 

「そろそろ起きてくると思うんだけど...。なかなか起きてこないわね。起こしてきた方がいいかしら?」

 

「飯作るから起こしてきてくれると助かる。」

 

「わかった。ちなみに何作るの?」

 

「そうだなぁ...オムレツでも作るかぁ。」

 

「!」

 

驚いたようにこちらにW振り返る。お前の赤髪の部分触角かよ。ピコピコ動かしやがって可愛いなおい。そんな様子でWは上の階で寝ているスルトを起こしに行った。

 

「そんじゃ頼むわ。イグニスちょっと油とってくんね?上から二段目の棚の右側の茶色のやつ...そうそうそれそれ。ありがとさん。」

 

 

─────────────────────────

 

 

「眠い...。」

 

「ほらさっさと起きなさい。あいつがご飯作ってるから。オムレツだったかしら?せっかく起こしたのにまた寝たら冷めちゃうわよ。」

 

「何をすればいい?」

 

「...もうできてるわよ。」

 

「わかった。早く行こう。」

 

「......料理が上手すぎるのも難儀なものなのね。」

 

 

 

「おはよう、思ったよりすんなり起きたな。」

 

「早く起きるくらいやろうと思えばできる。」

 

「毎日このくらい早く起きてくれたらもうちょい楽できるんだけどなぁ...。まぁ無理強いはしねぇよ。お前が朝とんでもなく弱いの知ってるし。」

 

「うるさい、それで、朝ごはんは食べられるの?」

 

「お前待ちだ。腹も減ったし食っちまおうぜ。」

 

 

「「「「いただきます。」」」」

 

「──美味しい。けど何か...」

 

「...いつもと味が違う?調味料変えたの?」

 

「よう気づくわ。こっちで買ったものを使ってみたんだ。どうよ?」

 

「いつもの味もいいけどこっちも美味しいわ。また食べたいくらいね。」

 

「嬉しいこと言ってくれる。これまで使ってた奴はここだと若干高くなってるから買いにくいんだよ。口に合ってよかった。」

 

「それはそれとして、今日の予定はどうなの?」

 

「よし来た。今日は昼頃にエドと会って一緒に飯食べながら仕事の話。仕事の話が終わったら俺とスルトはエドとしばらく話し込むかもしれん。色々積もる話もあるからな。」

 

「まぁそれがどれだけ遅くなっても夕方までには解散する。そこからは自由かな。」

 

「私とスルトはショッピングに行くつもりだけどあんたらはどうするのよ。」

 

「俺は楽器を見に行く。リターニアならカジミエーシュにあった楽器も取り扱ってるやもしれん。」

 

「お前まさか楽器も演奏できんの...?多才にも程があるだろ。」

 

「人に聞かせられるほどの腕はない、10年は触れてないからな。指の動きも忘れてしまってるだろう。」

 

「へぇ...まぁいつか聞かせてもらおうかな。俺は本を買いに行く。いい加減満足するまで読み耽りたい...。」

 

「え、あんた本好きだったの?」

 

「え?そうだけど?」

 

「「「え?」」」

 

「......言ってなかったかもしれないけど、俺は本とコーヒーと料理くらいしか趣味のない男だぞ。」

 

「...?」

「何言ってんの...?」

 

「ヴィル...お前は戦場育ちの戦闘狂じゃなかったのか...?」

 

「戦闘狂ちゃうわ!少なくともこの中で1番家庭的でまともな自信あるっつーの!」

 

「ねぇイグニス...あいつもしかして頭やられちゃったんじゃないかしら...」ヒソヒソ

「あれに限って...いやありえるな。」ヒソヒソ

 

「聞こえてんぞォ!」

 

こんなふうに俺の事をからかってくる3人だが、事実こいつらの生活スキルは壊滅的だ。

例えばイグニス。1番終わってる。料理を作ったらどうやっても不味いものしか出来ない。俺が横で監督してたのに不味かった。なんであんなに不味かったんだろう。あとこの家に来てわかったけど服を畳めない。

 

次にスルト。手際は拙いけど大体できる。けど皿が乾くの待てなくてアーツで火炙りにして割ったのまだ覚えてるからな。

 

以外というか分かりきっていたというか、一番マシだったのがWだった。

俺たちと出会うまで1人で傭兵として生きていた経験もあるのか、買い物や仕事の選別は全てWがやってくれていた。1度正直に感謝を伝えたら「別にいいわよこのくらい、どっちも私が好きでやってるんだし。」との事だった。カッコイイかよ惚れたわ。...とうの昔から惚れてたか。

 

「ハイハイいつものいつもの。ところでそろそろ行った方がいいんじゃない?」

 

「あ?おっとこんな時間か。よぉし、エドの所行くか。」

 

「わかった。」

 

「ヴィルヘルムの友人...どんなイカれた奴か見ものだな。」

 

「もう突っ込まねぇぞ。」

 

「残念だ。」

 

「言ってろ。」

 

気づけば壁にかけてある時計の短針が頂上に差しかかるところまで来ていたので早速出る準備をする。

 

...... 刀、ヨシ!エヴェリン、ヨシ!鞄とその他諸々、ヨシ!

 

 

イクゾー!デッデッデデデンデン、カーン!デデデデ...

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

昨日と同じ道を辿ってエドの家に到着した訳だが、どうにもここの近辺に住んでる人間から監視されてるような、そういう排他的で閉塞的な視線を感じる。なぁんか嫌な雰囲気だったな。例えるならヤーナムの市民がプレイヤーに見せる態度みたいな陰湿さも孕んでた、あの街の何かが起きる前のようなそういう剣呑さ。それがこの薄暗い街並みに染み込んでる。

......気をつけておいた方がいいかもな。

 

 

「ここが例の男のハウスね...。」

 

「金はやらねぇよ。てなわけで、到着だ。」

 

「随分こう...青いわね。」

 

「本人曰くこれくらい派手でもこういう場所ならバレることもないからはっちゃけたんだと。」

 

「ふぅん、面白い男。」

 

「今日どうしたお前ネタに振り切りすぎだろ。」

 

「そういう気分なの。」

 

「さいで、別にいいけど。…えーとあれだ、ちくわ大明神。」

 

例のノックと合言葉を言えば数秒の間を置いて立て付けの悪い扉を開けたエドがうんざりした様子で出てきた。

 

「......誰だ今の。やっぱり変えましょうこの合言葉。言ってて馬鹿らしくなってきましたよ。」

 

「じゃあ黒タイツのデニムにするか?」

 

「だったら今のままでいいです。それで、そちらのお2人が新しい仲間ですか?」

 

「そうだ。」

 

「ひとまず入ってください。玄関口で話してるのを見られたら面倒ですし。」

 

「そういう事であれば、失礼する。」

 

「邪魔するわね。」

 

「......モシカシテマトモナノカ...?」

 

「聞こえてんぞ。」

 

「ん”ん”。この部屋です。好きにかけてください。私はコーヒーを淹れてきます。」

 

エドに通された部屋は中央にテーブル、ソファが3つほど、壁には絵画や時計が飾られていて落ち着いた雰囲気だ。

 

「じゃあ私はここ。」

「隣。」

「ならここか。」

 

「...統率取れすぎだろお前ら。」

 

次々と座って言った結果エドと対面に座る位置になってしまった。別に嫌じゃねぇけどさ。

 

「コーヒーです、淹れたてなので熱くなってます、ご注意を...さて、では改めて、ようこそお越しくださいました。ヴィルとその愉快なお仲間の皆さん。ヴィルの仲間と言うのでどんなイロモノが来るのか内心ヒヤヒヤしてましたが、想定よりずっと常識的な方々なようで安心しました。」

 

「それは私も思ってたわ。だってこいつの古馴染みだって言うんだもの。警戒しない方がおかしいわ。」

 

「全くだ。だが、予想より余程話しやすい人間なようで良かったよ。現場でのこいつの手網は私たちが極力握るようにするから任せてほしい、よろしく頼む。」

 

「ええ、それならば安心して仕事を回せるというものです。よろしくお願いします。」

 

「...まぁ険悪になるよりは全然いいんだけどさ、その結託の仕方やめて欲しいなぁ?」

 

「「「「それはお前(あんた)が悪い。」」」」

 

「俺なんも悪いことしてねぇんだけど!?」

 

「正しく日頃の行いでしょう。」

 

「先程から思っていたが...。」

 

「ええ、この馬鹿のハチャメチャぶりは以前から変わってないようですね。私もこの阿呆になんど頭を抱えたことか...。」

 

「そうか...。苦労するな...。」

 

「納得いかねぇ...もういいや。それで?仕事の方はどうなってる?」

 

「苦労しましたよ、なにせあの悪名高いヴィルヘルム・エーレンブルグに回す仕事ですからね。そっち方面の仕事を回しても良かったのですが、そちらのおふたりは存じませんがこの都市はヴィルもスルトも随分と久しぶりでしょう。近辺の土地の把握も兼ねてこんなものを持ってきました。」

 

鞄の中から引っ張り出したファイルに入っていた紙を取りだすと俺たちに見えるように机に並べた。これは...

 

「内容ですが、危険性の高い不穏分子の殲滅です。どう殺そうが構わない、との事です。」

 

こういうのが大好きでしょう?と薄く笑みを浮かべるエドに同意するように俺も口角を上げ答える。

 

「モチロン。それで場所はどこだ?周囲への被害とかも考えないといけないが。」

 

「そう言うと思って地図を用意してました。場所はここ。数年前までは感染者の隔離場所だったのですが巫王派の一部の連中が被検体として連れ去っていくうちに誰もいなくなってしまった、所謂ゴーストタウンですね。それをいいことに新たに拠点をそこに移したようです。」

 

「今のこの国の状況から考えて俺にお鉢が回ってくることは考えにくいが──いや、そういう事か。野心家な所は変わってねぇみたいだなお前も。」

 

一介の傭兵に過ぎない自分にこのような仕事が回ってくるとは思えなかったヴィルヘルムだがなにか理解したようであくどい笑みを湛えている。しかしスルトたちはどういうことか理解が追いついていないようだ。

 

「ちょっと、どういうことよヴィル。私たちにわかるように言いなさいよ。」

 

「俺もまだゴールは分かってないが、少なくとも俺の考えてる方向と一致してるならこれはエドにとっても大きなチャンスになりうるだろうな。」

 

ちょっと飲ませてくれ、と少し温くなったコーヒーを流し込んでヴィルヘルムは心底面白いという顔で語り始めた。

 

「この国は双子の女帝によるクーデターで情勢がひっくり返った。あの女帝たちはは上手くやってるようで既にある程度の地盤固めはできているだろう。だがまだ足りないんだ。今やらなければいけないのは外国との外交、牽制や不穏分子の排除、巫王派の残党の排除、国内の権力者の懐柔とにかくやることが多いんだよ。」

 

「...!なるほどね。それは確かにチャンスだ。」

 

残った3人の中で一足先に追いついたのはスルトだった。やろうとしてる事の先を掴みかけてるスルトはエドワードとヴィルヘルムが考えてることに呆れたような驚いたような表情でボヤいた。

 

「けどこれをやったとして、これから私たちにどれくらいの危険が付き纏うかわかった上でなの?」

 

「勿論分かってますよ。私は皆さんの実力を信じていますので。権力者たちも皆さんの悪名は伝わっているでしょうし、より効果的だと思いますよ?」

 

「まぁ待てよ、とりあえず答え合わせと行こうぜ。言うて俺も合ってるかわからんけどさ。」

 

「そうですね。ではヴィル、お願いします。」

 

「はいはいわかったよ先生。

...さっき言ったように今は女帝たちはやることが多すぎて2人でも首が回りきってないだろうってのが現実だ。噂よりは手が早いが…。

そこで、だ。厄介な不穏分子を勝手に潰してくれて、権力者たちを自分側に引き込んでくれる人材が生えてきたらどうなる?まず間違いなく目につくだろうよ。ましてやそいつは手駒としてあの悪名高いヴィルヘルム・エーレンブルグ一行を従えているんだ。この時点で、こいつは女帝からしたらどう見える?」

 

「理由も経緯も不明だけどこちらの利になることしかしない、まだ裏の取れてない警戒するべき人材。」

 

「その通り。まず女帝はこう思うだろう。”何を企んでいる?”ってな。そうなったらまずそいつを徹底的に調べる。するとどうだ、裏で誰かと繋がってる痕跡もない、何かを企んでる様子もないただの便利な駒になる人材ではないか!これは使わない手は無い。何せ今は国のあれこれで潰れる勢いでやる事やってんだ。そうもなる。仮に翻意を見せたら即刻処理すればいいだけだ。って感じか。高々いち傭兵集団と少し頭の回るガキ相手だからな。」

 

「ええ、概ねその通りです。流石ですね。ますます鋭くなっているようで安心しました。」

 

「お前にゃ負けるがな。政治やそういう立ち回りに関しちゃお前はバケモンだよ。」

 

「ありがとうございます。ついでに言っておきますが、私が皆さんを裏切るという事はないと思ってください。しないではなくできないので。」

 

「まぁそうだよな。だって俺たちを裏切ったら俺は大暴れするし、こいつらも強いからそう簡単には死なない。そんなことすりゃ女帝から何されるかわかったもんじゃない。最悪殺される。」

 

「という訳です。」

 

「やっぱりお前言葉が足りない気がするわ。今の俺が補足しなけりゃしっかり伝わりきらんだろ。」

 

「ヴィルには伝わってるからいいですよ。」

 

「良くねぇよ...勘弁してくれホント。」

 

「楽しく話しているところ申し訳ないが一つ質問していいだろうか?」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「悪名高いらしい俺たちを使ってしまってはあまりいい印象を抱かれないのでは?第一印象を”突然現れては危険な手駒を使って取り入ろうとする男”にするのはまずいだろう?」

 

「ヴィル。」

 

「なんだ?」

 

「ところでそちらの彼、何者です?身に付けている装備からしてどうにも傭兵には見えませんし。」

 

「あー、自己紹介してくれるか?Wも頼む。」

 

「サルカズの傭兵、Wよ。よろしく。」

 

「わかった。自己紹介が遅れてすまない。イグニス・フェレンツと言う。よろしく頼む。」

 

「ええ、よろしくお願いします。確かWさんといえば...そこの阿呆が世話になってます。」

 

「いいのよ、私が好きでやってるんだから。」

 

「こう言うのも失礼なんですが、物好きですね。アレがいいとは。」

 

「あんな事されたら誰でも堕ちるわよ。どっぷりとね。」

 

「...まぁ、言わんとしてることは分かります。そしてそちらは...」

 

「まさかとは思いますがあのカジミエーシュ騎士競技優勝者の?」

 

「まぁ...そうなる。」

 

「まさかこんな所であの煙騎士と出会えるとは...!ヴィル!どうして言ってくれなかったんですか!」

 

「だってお前そうやって騒ぎ出すもん。」

 

「そういえばエドはカジミエーシュの銀装のペガサスやら征戦騎士やら見るの好きだったか。目を輝かせて見てたのが懐かしい。」

 

「そもそも鍵空いてる空き家に入れてテレビ見れたのが奇跡ではあったけどな?」

 

「それは私の運の賜物ですね。感謝してくれても良いんですよ?」

 

「さっきまでの策士とは思えない発言だなおい。」

 

楽しそうに話す3人の様子はまるで家族か幼馴染かのような雰囲気で、Wはそれを見て胸に蟠りが生まれたのを自覚した。

 

(...何よ、このムカムカする感じ。)

 

Wにはまだその蟠りの正体を見抜くことは出来なかった。なぜなら彼女は恋愛クソザコナメクジであった。体まで重ねてるくせに。

とはいえ仕方ないのも事実である。付き合ったのが戦場でシラクーザとかいう治安クソ悪い都市を通過して直でリターニアに来ているため恋人らしいこともできていないのである。

しかも相手は心の内で(あのWがホントに俺の事なんぞを好きになるなんて有っていいのか...?嬉しいけどさ)とか考えてるあのヴィルヘルム(クソボケ吸血鬼)なのだ、アレに彼氏らしい事とか期待しても無駄なのは明瞭なのだ。チッ、このクソボケが。

 

「談笑中すまない。エドワード、だったか。この不穏因子はどの程度の武力を持っているんだ?どの程度であってもそこの阿呆が全員轢き殺すだろうが。」

 

Wの様子を見かねたイグニスが助け舟を出すついでに仕事の詳細を尋ねた。さすがは煙騎士、クソボケと違って女子への気遣いもできるのである。

 

「大丈夫ですよ。対象の武力ですね...どうやら何年も前の軍の装備をこっそり持ち出しているようです。つまり型落ちの中古品です。ヴィルを始め皆さんの有する火力であれば容易に殲滅できるでしょう。」

 

弛緩した空気もそこそこにエドワードが再び話を始めると空気が引き締まる。旧知の仲の相手であっても仕事となればスパッと切り替えるのが彼ら傭兵であるからこそである。

 

「仕事で殺るとはいえ静かにした方がいいか?」

 

「なるべく静かに、そして残酷に無惨に殺してください。ですが死体の陵辱行為に当たることは避けるように。恐れられるのは構いませんが侮蔑されるのは我慢なりませんから。かつてカズデルの戦場で戦鬼と呼ばれ、ほぼ全ての傭兵と戦士から恐怖と畏敬を受けて余りあるその伝説、その一端を、あの哀れな供物を以て再現してください。」

 

事務的に話していたが、次第に滔々と唄うように、高らかに鏖殺の命令を下す。それを受けたヴィルヘルムは嬉々とした表情で口元を歪め、熱を持った吐息を零し答える。

 

「承った。この依頼、ヴィルヘルム・エーレンブルグの名前に誓って遂行してみせよう。」

 

ギラギラとした笑顔に奈落のような瞳を湛えた男の背後にうっすらと、彼に瓜二つな男が、全身から源石のようなものが大きく乱立しているというのに、その威圧感は弱いどころか全てを押し潰すかのようなさっきを伴っている、ように感じた。

 

エドワードが数回瞬きをしてみれば瓜二つな男の姿は消えていた。幻覚だったのだろうか?

 

ただ1つ分かるのは、あれは存在しないものなどではないということだけだった。




という訳?でお久しぶりです。いやぁ大学とその他諸々忙しすぎんよ〜。
実は生きてました。更新遅れてすんません。皆さんは危機契約の攻略はどんな調子でしょうか?わたしは22等級までは行けたんですがシロアリの契約とHP増加しんどすぎてこれ以上は無理でした。うちのモスティマ(推し)とホルン(推し)とシュヴァルツ(推し)とスルト(最推し)が大活躍でした。危機契約サイコー!
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