廃墟の地下で捕らえられていたイグニスを解放した主人公一行はイグニスを迎え入れることに。そこでヴィルヘルムが血を媒介とした記憶の閲覧で身の潔白を証明したと同時に、彼がダークソウル2の煙の騎士レイムに酷似していることを知る。そしてイグニスはヴィルヘルムの実力を測るために戦いを持ちかけてきた。
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さて、戦うことになったのはいいんだが、正直勝てる気がしない。
いくら永劫破壊で魂を喰らっているとはいえ、そもそも永劫破壊が全面的にナーフされている以上、正面から行くと地力と経験で負ける、アーツが鍵になるのは間違いない。ただ、その鍵になるアーツにクソでかい問題が1つある。
それは俺が創造位階に到達していないこと。
これに尽きる。
まず創造位階の出力じゃないと記憶通りの彼なのであれば確実に火力負けする。そもそも原作からして高火力なんだから当然だ。
いや、普段の傭兵相手なら形成位階を使うこと自体珍しいから、創造位階じゃないと勝てない相手とぶつかることを想定してなくて習得を後回しにしたツケが回ってくるとは思わなんだわ。
あと、あるかないか程度の俺のアドバンテージは、敵のアーツのだいたいの概要と戦い方を知っていることと、俺の戦い方を知られてないこと。
アーツを含めてカードはそれなりにあるが、1度見られれば対応されるだろうし、1つでも出しどころを間違えたら即負けと考えていいだろう。
まぁ幸い、手持ちのカードには格上殺しになりうるモノは持ってる。
けど...少ねぇ!もっと格上に通用するカード増やさねぇとそのうち死ぬか?
いやだが....
やめだ。落ち着こう。
できること全部やる。それでいいだろ。イグニスは恐らくこの世界でも上位以上の実力者だ。胸を借りるつもりで行こう。
今の俺がどの程度通用するのか。最強には程遠いのか、それとも間近なのか。この一戦で測る。
───行くぞ、煙の騎士。お前の過去も、今も全て、俺の糧として骨の髄まで吸い殺してやる。
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焼き払われた森の中心部、廃墟の別荘地の近辺にて、二人の男が相対してた。
片や鎧を身に纏い、その長身に迫る刃渡りの剣を無造作に提げている煙の騎士。
片やこの世界には無い第三帝国の軍服を着、無垢金の刀を携えている吸血鬼。
その様は、その場にいる者全てを押し潰すかのような圧迫感と殺気を撒き散らしながら、開戦の時を待つ槍衾のようでもある。
張り詰めた空気の中、不意に吸血鬼が口を開いた。
「そういやよォ、あの質問はどういう意図なんだ?」
「特にこれといった意図はない。強いて言えば興味だ。」
「興味ねぇ?まぁいいさ、本当に興味本位だとしても、別の意図があるとしてもどうでもいい。
....そろそろ、始めるとするか。」
呟いた吸血鬼はコインを取りだし、弾き飛ばす。
コインは空高く飛び出し、ゆっくりと地面へと落下していく。
──キィ
落ちた音が聞こえるも、
続く轟音に掻き消されてしまった。
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「凄まじいわね。私じゃどっちが優勢か分からないわ。」
その視線の先では、凄まじい剣戟の音を響かせながら目まぐるしく戦っている二人がいた。
やや離れた場所でこの戦いを見届けようとするWは、視線の先で行われている戦いのレベルの高さに驚愕する。
「あれ、人間に許された動きなのかしら....スルト?どうしたの?」
一見すると静観しているように見えるが、その実不振な素振りを隠せていないスルトの顔には冷や汗が浮かんでいる。
「──信じられない。あいつが全力なのに押されてる?」
呆然とつぶやく声にWは驚く。これまで見てきた男は、人数差をもろともせず踏み潰していたのだから尚更に。
「え?あのバカが全力で?あいつ相当強いじゃない。一息で軽く6人同時に殺すようなやつが負けてるなんてことあるの?」
事実、ヴィルヘルムはその顔に余裕のない表情と汗を浮かべ、既に源石杭を使った二刀流まで使用してなお劣勢のままであった。それも、イグニスはアーツを使わないままで。
「嫌になるくらい強いなクソッタレ!」
「年齢と経験にそぐわぬ強さだな、一体どうやって...」
「うるせェ!んなこたぁどうでもいいんだよ!」
(このままだと埒が明かないどころか体力を削り切られるだろうな。アーツをフルで使って見切られる前に殺さねぇと死ぬ。ここまで来たら)
「出し惜しみしてる場合じゃねぇか」
「何?まだ全力じゃないのか?」
「本気ではあったさ。ただ、これを見せた上で逃げられるのは、ちと困る。」
「別に逃げも隠れもせん。不要な心配だ。」
「そうかい。」
「なら、これから全力で殺しに行くぜ。」
その言葉を皮切りに、ヴィルヘルムの纏う空気が少しずつ、この世界を歪めるように変貌する。
荒々しくもこちらの様子をつぶさに読み取り、一手ずつ詰めていく狩人の様な雰囲気から、
全てを押し潰さんばかりの殺気と、まるで数百の人間が一つになったかのような存在感を放つ魔人に。
「────Yetzirah」
《Qliphoth Bachical》
「「っ!?」」
「ほう....これは」
───それは、怪物だった。伝承の、御伽噺の中で語られる怪物。
闇夜に生き、生き血を啜る。このテラの夜を、カズデルの戦場を跋扈するブラッドブルードの怪物。
身体から源石が生え、疲労困憊で今にも倒れそうな男に抱いた感想が、それだった。
「....はぁ。やっぱり、いつになっても慣れないな。」
「何よあれ、私まで押し潰されそうなんだけど!?しかもあいつのあれ....何なの?」
「そういえばお前はあれを見るのは初めてだったな。あれがあいつの本気だ。ああなると周りの被害を無視して全力で戦うから、早くここから離れるぞ。こんなことで死にたくない」
「....チッ、後で説明してもらうわよ」
もうこりごりだと言わんばかりの態度のスルトに渋々と言った様子で頷いたWは、共に遠くの遮蔽物へと消えていった。
それを視界の端で見届けたヴィルヘルムは安堵する。
(上手く離れてくれたか...よし。あいつらを巻き込む心配も無い。)
「散々遊んでくれた礼だ。全力で楽しませてやるよ」
そう言ってヴィルヘルムは拳を高く振りかぶり、地面に叩きつけた。
轟音。
まるで目の前に砲撃が飛んできたかのような音と共に土煙が舞う。
パラパラと舞い落ちる中、イグニスは警戒を強めた。何時どのように襲ってきても反撃できるように。
ザッ....
「シィ!」
背後で足音がなった瞬間。イグニスはその音に反応し、弾かれたように剣を振り切った。
が、そこには既に姿は無く、さらに土煙を巻き上げただけに留まる。
「おいおいおいどこに振ってんだぁ!?俺はここにいるんだぜ?」
振り返ると、イグニスの目の前にはヴィルヘルムが立っていた。
(瞬間移動系のアーツか?いや、違うな。昔そのタイプと戦ったことがあるが、こいつのそれはまるで違う)
──つまり、身体能力の底上げか。源石が生えているのが気がかりだが、その場その場で対応すればいい話だ。
「この程度で根を上げるようだってんなら拍子抜けもいいとこだぜ?煙の騎士よぉ!」
イグニスはヴィルヘルムの姿が煙の中に掻き消えていったように見えた瞬間、背筋が凍るような感覚がした。
「!(マズイ!)」
直感に従って前に倒れ込むように回避した直後、自分の首があった所に剣の軌跡が残っていた。
すぐさま地面を蹴り飛ばし距離をとる。
が、何かが飛んできたのを視界の端に捉え、剣で弾き飛ばした。
「....棘、か?」
「はっはは!惜しいなぁ!あとそれ棘じゃなくて杭だから」
「そうは見えないが、そう言うならっ、そうなんだろうよ」
休む暇など与えないと言わんばかりの杭を織り交ぜた怒濤の攻勢に苦悶の声を上げるイグニス。その表情には苛立ちの感情が見え隠れしている。
(まだ拙いとはいえ面倒だな。アーツで薙ぎ払うか?しかしなぁ、使おうものならこいつの体を消し飛ばしかねない。本当に、面倒でならん。)
そうして打ち合うこと数分。
形成位階へ移行したことにより変幻自在に攻め立てる事で、イグニスに少しづつ傷が生まれ始めた。
そうしていく内に、イグニスの体に小さな異変が起き始めた。
(なんだ?この違和感は。なぜ....)
「調子悪そうだなぁ!体の動きが鈍くなりでもしたか?」
「....お前の、アーツ能力か」
──自分の動きが鈍くなるのに対し、相手の動きが少しづつ冴え渡っていくことへの違和感の正体は。
「ご名答!せいぜい推理してな。そうしてる間に吸い殺すだけだがなぁ!」
「いい加減鬱陶しい!」
途切れることの無い連撃に加え、身体能力を奪われるのは流石に堪らなかったのか、ほぼ無拍子で懐まで距離を詰め、体を二分して有り余る斬撃を繰り出す。
「クソっ!ぐふっ、まだギア上げれんのかよ!バケモンが」
すんでのところで剣を間に挟み込んで防ぐもかなりの距離を離されてしまう。
だが、やられるだけの男ではない。
「....ん。」
「ちぃっ!こんだけやっても何も届かねえなぁ!」
地下から伸ばした源石杭も、あるかないかの死角を突くように放つ攻撃も容易く防がれ、咄嗟に飛び退いた瞬間に追撃が飛んでくる。
全ての攻撃を防ぎ、避け、激しく追撃し、彼我の間合いを惑わせる。
嵐のように激しく、煙のように捉え難い。
錆び付いていても、煙の騎士の技量は健在であった。
「ヴィルヘルム。お前のことは強いとは思っていたが、まさかここまでとは思っていなかったぞ。
....もうお前相手には手加減してやれる余裕はねぇ。そろそろ俺もアーツを使わせてもらうぞ。」
「せいぜい死なないように気張るんだな。」
イグニスの体から赤黒い煙が漂っていることに気づいた瞬間、ヴィルヘルムは死を幻視した。
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やっっっっっべぇ!!
なんだあれほとんど見切れなかったぞ!?フロムのボスはどうなってんだよ!
直感に従って全力で防御して良かったぁ!防御してなかったら死んでたよあれ。バグかよ。(ある意味)バグだわ。ふざけやがって。
しっかし、どうしたもんかな。あれ。
向こうがアーツを使い始めたせいで用意していた手札はほとんど潰れた。しかも残りは博打もいい所の鬼札だ。
なんせまだ使えたことないからな、展開出来たら奇跡だろう。
しくじったら多分体が四散するけど。
......やるしかないかぁ、創造位階。ここでやらなきゃ負ける。
俺がヴィルヘルム・エーレンブルグなら、こんな所で負けられない。
負けちゃいけないんだよ。
獣殿も水銀も代替も白騎士もいないのなら、負けていい理由なんか無くなってる。
.....あ?さっきの質問の意味、そういう事なのか?俺が転生者であることも知らずに?
ハハハ、笑えてくるぜ。初対面の男に気づかれるほどに空っぽだったのか?俺は。
いいぜ、やってやる。
ヴィルヘルム・エーレンブルグを名乗った以上、俺は最強になる。
利刃だのパトリオットだのペガサスだのも敵対するなら全部踏み潰す。
そして、大切なモノは絶対に取りこぼさない。奪わせねぇ。
Wは、あの一途な、狂人の皮を被った、あの愛おしい女は俺の物だ。
よし、やることも決まった。覚悟もできた。ならやることは一つだろ。
俺が最強になるその1 一歩目を刻む。
轍になれ、煙の騎士。
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「あいつ全然出てこないけど、死んでんじゃないでしょうね!?」
「いや、直前に刀を挟み込んでたから死んでないはずだ。だが、良くて気絶だろう。」
アーツを解放したイグニスに吹き飛ばされたヴィルヘルムは、未だに土煙の中から出てこない。
二人が心配する中、イグニスだけがその土煙の奥を睨みつけていた。
「あ"〜クソッタレ痛えなぁ!」
そんな声とともにバカが出てきた。
が、様子がどこかおかしい。まるで吹っ切れたような、清々とした表情さえしている。頭を打ってついにイカれたのだろうか。
「おいイグニス。質問の答えだ。」
「....聞かせてもらおう。」
「俺は、最強になる。そんで....」
そう言葉を区切るとWたちの後ろに回り、そっと肩に触れる。
「俺の大切なものは誰にも奪わせない。」
「えっ、はぁ!?」
「....ふん。」
「危なくなるから、もう少しだけ離れてくれ。」
そう伝え、再びイグニスの前に立つ。
「どうよ、満足いく答えは聞けたか?」
「いや、予想以上の良い答えだ。それにしても.....ふっ、女の為か。」
「そうだ。俺はアイツらのためなら命を懸けてもいい。アイツらにはいつも救われてるしな。」
「お前の事情はまだ知らないが、命を賭けられる対象がいるのはいい事だ。あらゆる意味でな。」
「俺が最強を目指す以上、お前には負けられないんだよ。そのために俺は、命を懸ける。」
「やってみせろ。この俺の心臓に、その杭を打ち立てて見せろ!」
────その声は祈るように、求めるように。けれど力強く、狂気の覇道を謳う。
かつて何処かで そしてこれほど幸福だったことがあるだろうか
あなたは素晴らしい 掛け値なしに素晴らしい しかしそれは誰も知らず また誰も気付かない
幼い私は まだあなたを知らなかった
いったい私は誰なのだろう いったいどうして 私はあなたの許に来たのだろう
もし私が騎士にあるまじき者だとしても あなたと共にありたい。
何よりも幸福なこの瞬間──私は死しても 決して忘れはしないだろうから
何かが訪れ 何かが起こった 私はあなたに問いを投げたい
本当にこれでよいのか 私は何か過ちを犯していないか
恋人よ 私はあなたと同じものを見 同じものを感じよう
あなたが何かに殉じることを 私だけが知っているから
ゆえに恋人よ 枯れ落ちろ
創造
Briah―
死森の薔薇騎士
Der Rosenkavalier Schwarzwald
まされる兄貴誤字報告ありがとうございます
【悲報】イグニスさんテンションぶち上がって殺してみろ発言してしまう。
忙しくてめちゃ投稿間隔空いちゃいました。申し訳ない。
ヴィルヘルムの詠唱をそのままにするか変えるかで悩んだんですけど、原作とこの主人公は別人だということを強調したかったので変えました。死森の薔薇騎士はそのままですけども。
ヴィルヘルム・エーレンブルグのガワを使って俺として最強になりたい。という渇望ですので最後は変えたくなかったっす。
また投稿間隔空くと思われます。よしなに
ヒロインをモスティマとWとシュヴァルツの内から選びたいんだけど誰がいい?
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モスティマ
-
W
-
シュヴァルツ