痛い痛い痛い痛い痛い痛い!! 痛くないけどとりあえず叫んどくぅー!
あれからどれだけの時間が経っただろう。俺の大切な服は見事に食い破られ、身体は血塗れになっている状況で目を覚ます。
その場から立ち上がり辺りを見回せば既にアサインメンツの奴らはおらず、サーフさんとその他幹部の皆さんが爆心地とも言える眩しい光を溢れさせるクレーターの前で集まっていた。
俺も釣られてそのクレーターの中を覗くと……あらあらなんてことでしょう。産まれたばかりの姿でうずくまる10代半ばの少女がいた。
するとレッド。名前はヒート君が興味津々にクレーターを覗き込みに来た。
「不思議な女だ……どこかで会ったような気がする……。俺はこの女を知りたい……。お前もだなサーフ」
反応それだけかよ! てかみんなさっきから目死んでるけどなんか辛いことあった? いや言うまでも無いか。みんなあのサーフさんに喰われた訳だし。
その本人は変わらず死んだ目で女の子を見つめてるけど。自覚は……無えな。
そうしばらく沈黙の時間が続くと急にサーフさんがクレーターの下に降りて女の子を回収しやがった。
すげえ慣れた手つきでお姫様だっこして。
あー、あー、あー! 少女のあらぬ姿が眩しすぎる! キャー! 謎の光さん規制処理お願いしまーす!
ピカーン! 俺の目だけに謎の光は少女の全身を包んだ。
それからみんなでエンブリオンの基地ムラダーラに帰還する。
ムラダーラは6つのトライブの中で唯一地下に伸びる基地で、初見なら入り口が絶対分からないが、他のトライブに場所は一般公開されているのでなにも問題は無い。
サーフさんは帰ってくると、中の個室のベッドにそのままの姿で寝かせ、薄い布を布団代わりに被せると親切に女性用の服を側に置いて部屋を去った。
俺も続いて部屋を出る。そうすると幹部の皆さんは最奥の作戦会議室に入り、謎の少女を調べるべくアサインメンツのアジトに乗り込むことを即決した。
アジトに乗り込むメンバーはヒート、ピンクのアルジラさん、サーフさんと俺がついていくことになった。
え? 俺は戦力外だって? やだね。だれがなんと言おうがついていくから。
「サーフさん、本当にアサインメンツに乗り込むんすか? あれだけの惨事を1つのトライブが用意できると思いますか?」
「俺が知るわけがないだろ。アサインメンツに直接聞くんだ」
「俺はあの女のことが知りたい……」
ん? サーフさん少し前と違ってなんか変わったか……? ヒート君は変わらないが……。
「あ、そうですよねー。失礼しました。ハイ」
それから俺たちはムラダーラを出てお隣さんのアサインメンツのアジトに向かった。
アサインメンツのアジトは廃墟ビルのような構造で、緑色の電気が至る所から光っていることから一応電気は通っているっぽい。
ただアジトには嫌なほどに静か過ぎる違和感があった。
アジト前に警備などは一人もおらず、そこに人がいたと言う気配すらない。まるで雲隠れしているかのように。
「警備が一人もいない……様子がおかしい」
「なら尚更乗り込むまでだ。わざわざ警戒する必要は無い」
アルジラさんが冷静に状況を分析すると、ヒート君はアジト正面の扉を何食わぬ顔で開ける。
いやー緊張するー! なんでこんなにもガバガバセキュリティなんだよオイ。
ヒートが開けた扉にサーフさんとアルジラさんと一緒に中へ入ると、中もまた薄暗く、誰一人いた痕跡が見つからない。
もしかて逃げた? いやまさかね。
そうして誰もいないアジトを奥へ奥へと進むと、次の扉を開こうとした時、ガタンと物音がした。
自然に物が落ちた音ではなく、間違いなくこの奥に人がいる気配だった。
静かにサーフさんが扉を開けて中に入ると、すぐ正面奥に見慣れた顔の金髪のハーリーが、きっと必死に組み立てただろうバリケードの奥でクロスボウを構えながら突っ立っていた。
「くるな……近づくな……。喰うな……喰わないで、喰わないで、くれ……」
ハーリーは歯をガタガタと震わせ、じっと固まって動かなくなっていた。ここ……そんなに寒いか?
訳も分からないのでアルジラさんも疑問符を浮かべる。
「何を言っている……?」
すると、その発言が逆鱗に触れたのかハーリーは急に声を荒げて叫ぶ。
「だってお前ら喰ったじゃねぇか!! どいつもこいつも化けもんみたいな姿になっちまってよう。俺の兵隊……皆、喰っちまったじゃねぇか……。
光だ……光が飛んできて、あの場所にいた全員化物みたいな格好になっちまって……」
そう言いながらハーリーはクロスボウを構え直し、アルジラに向かって撃ち始める。だがあまりの震えで当たることはない。
「やめろ……」
「敵も味方も分からねえ乱戦で……負けた奴らてんでに素手で引き裂いて……それで、それから!」
あーすっげえ、俺ってそんなに影薄い? ハーリーの真正面に立ってんだけど、他の部下もみんな俺に撃ってこねえ……。
そう、アサインメンツ側の矢をヒートもアルジラもサーフさんも物陰に隠れつつ避けるが……ハーリーの言葉に呼応するようにサーフさんは頬から、アルジラさんは胸から、ヒートは腕から、それぞれ青、ピンク、赤色の光を発し始める。
俺は……手の甲にしようかなぁ。おぉ! 虹色だ! 確定演出じゃんこれ!!
するとついにアルジラさんがブチ切れたのか、静かに口を開ける。
「黙れ、黙って……」
「それからあああぁぁ!!」
ハーリーも手の甲から黄色の光を発し始めると、腕を抑えながら叫ぶ。
「止めて!!」
アルジラさんは遂にプチンと来たのか、アサルトライフルを構えハーリーとその部下に向かって乱射攻撃を仕掛ける。
その弾丸はハーリー除く部下二人の頭を打ち抜き、二人とも絶命したかと思いきや、二人の死体が全身紫色の光に包まれ、震え出すことにハーリーは怯え、そのまま叫びながら奥へと逃げていった。
「ひいぃ! うわあああああ!!!」
だがそれでもなお、アルジラさんはなぜか混乱している。
「私……していない。あたし……違う。そんなこと、してない……。あたし、喰らってなんかいない……あたしじゃない!!」
うおおぉ……? どうしましたアルジラさん? え、こっわ……。
そうすると、バリケード奥から光が漏れたかと思えば、真っ黒な姿の化け物となった二人が奇声をあげて襲ってきた。
「ウウウウ……ウァア"ア"ア"ッ!」
それに続いてヒート、アルジラ、サーフのみなさんも姿形を変えていく。ヒート君は真っ赤な体に頭二つと鋭い爪を持ったゴリラに。
「カルルル……グガアアァァッ!」
アルジラさんは全身黄土色の包帯に巻かれたような姿で胸に二つの口がある化け物に。
「ううぅ……うああっ!」
サーフさんは全身青黒い体と青白い王冠を頭から胸あたりまで深く被り、両腕から鋭い折り畳みブレードが突き出た限りなく人間に近い姿に。
「ウオオォアッ!!」
んじゃ俺も変身しよーっと。どんな姿が良いかな?
数秒考えた後、俺の姿は赤黄青の信号機カラーの頭三つで、腹部に縦に開くでっかい口に、両腕から突出式ブレードを備えた。
三人に負け知らずな姿となった。
「(「・ω・)「ガオー」
俺、一番化物じゃね……?