オーバーロード-七極星-   作:シンメトリー飛行船

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オバロ二次が書きたくて書きたくてうずうずするぜ!!!
というわけで書きました。
やったー
多分にわかなところやら拙い文章やらを晒すかもしれませんが、
どうか温かく見守っていただけると幸いです。

※ability10さん、誤字報告ありがとうございます。


first contact
side―パラディン― Goblin teacher /Messiah


 

 

 

 

 

「.............ん?」

 

 

気づけば自分はここに居た。

 

 

 

何か特殊なことが起こって飛ばされたとかでは間違いなく無い。突然この場所に居た。

 

 

 

 

それもそのはず、彼は少し前までオンラインゲームのサービス終了時間に、仲間たちと共に終わりを迎えたはずだった。

 

 

「なんだ....? 何が起きている.......ユグドラシルはもう終わったんじゃ無かったのか?」

 

 

疑問を口にして、その発した声にも違和感を感じる。さらに辺りの景色が、申し訳程度に木々の生えた草原らしき場所であることも違和感を加速させる。しかも追い打ちとばかりに吹く風を感じ、その風が吹く音を聴覚で、それに乗った大地の匂いを嗅覚で感じ取る。

 

 

 

「サービス終了が延期に....? いや、それなら何で俺はこんなところに居るんだ。第一おかしいだろ、急な転移はおれのワールドアイテムがある限り不可能だぞ? 運営権限か?それとも仲間に飛ばされた?....なんだってそんなことを..................というか、これは」

 

 

 

徐々に鮮明になっていく感覚ではっきりと分かる。これは間違いなく現実だと、自身の五感が訴えている。先程から鎧を触っても剣に触れても同様に触覚が働いている。

 

 

 

ともすればこれはユグドラシル2が始まったのかとも思えるが、さすがにこんなことができる程今のユグドラシル運営に金はないだろうし、告知無しでやるなんて....いや、あの運営ならば有り得るかもしれないが。

 

 

「とりあえず、色々と分からなすぎてパニックだな.... とはいえ、一応まだゲームの可能性もあるんだろうから、焦ることも無いか....?」

 

 

些か楽観的すぎる気もするが、何もかも唐突すぎる以上、仕方ない事だ。とにかく情報が欲しい。まだゲームの中ならば、お知らせが届いていたりGMコールが使えるかもしれない。仲間も同じ状況ならば、チャットで会話出来るかもしれない。

 

 

「....ダメか、お知らせが見れなければGMコールも使えない。チャットもダメだし、なんならログアウトも出来ない。正直ステータスとかを表すウインドウが見れてない時点で、嫌な予感はしてたが.......」

 

 

となるとこれはかなり不味い状況なのかもしれない。荒唐無稽な話だが、もしこれが現実ならば、いきなり知らない場所に、ゲームキャラのコスプレをした状態で、食物も道具も何もかも持たないまま放り出されたことになる。

 

特によく分からないまま彷徨くのは良くない。下手したらその辺で野垂れ死ぬことになる。

 

 

先程はあんなに楽観的だったのに、いざこれが現実だと分かると途端に不安が襲ってくる。一体何が起こっているんだ....?

 

 

「一先ず誰か居ないか....?他にプレイヤーでも居れば何とか....。

いや、下手したら誰も居なかったりするのか....? せめてここが地球であってくれよ....。異星人とか出てきたら嫌だぞ俺は........」

 

 

どうでもいいことだが彼はオカルトマニアでもある。だから本来怖がる必要の無い何かにもビビり始めていた。

 

 

 

「.......お? 何か音があの林から聞こえてくるな....」

 

 

少しだけその林の近くまで寄ってみれば、何やら獣の鳴き声と、ギャッギャッっという何とも形容しがたい声....?のようなものが聞こえてくる。

 

 

「よく分からないな........もう少し近づいてみるか....? でも危険かもしれないしな....。かと言ってとにかく情報は欲しいし、ううむ........」

 

 

 

葛藤の末....、遠くから確認してみて、危険そうなら全速力で逃走することにした。なんにせよ恐怖よりもこの状況をどうにかしたいという気持ちが勝ったのだ。

 

 

「変なのが出てくれるなよ................え」

 

 

そして彼が林の中で見たものは、複数匹の獣と、複数のゴブリンと思しき存在が乱闘になっているところであった。

 

 

遠くから見たそれは、きちんと戦っており、推定ゴブリンが推定狼を切りつけて血が噴き出したり、あるいは推定狼が推定ゴブリンに噛み付いているところであった。

 

 

そのような感じで戦っているのが両陣営合わせて10匹程。あと追加で何匹かも付近に倒れている。

 

 

「うおっ生々しい、完全に血が出てるじゃん。グロいな....というか本格的だな? ゴブリンらしき存在とかいるし、もしかして割とマジでユグドラシル2なのか........?」

 

 

 

そんなことを思っていると不意にゴブリン達がこちらを向く。どうやらこちらの声に反応したらしい。

 

 

 

「え、は?............あっやっべ」

 

 

 

直ぐに恐ろしい事態を把握した自分だが....あまりにも早々に見つかりすぎたことと、現実で戦ったことなんてない人間にとっては、急な殺意など受け入れ難いものであり、今まで立て続けにわけのわからない事が続いたせいか、上手く足に力が入らず転けてしまった。

 

 

 

「おいマジかよふざけんなって....!? こんなとこで死にたくねぇよ!?」

 

 

 

先程から保っていたなけなしの威勢もほっぽり出して泣き出したくなってしまった。

 

 

 

それもそのはず、目の前で闘っていた武器を持った怪物と、明らかに危険そうな獣が、こちらをまるで餌を見つけたかのような勢いで見ながら襲いかかって来ている。それもすぐ目の前まで迫ってきているのだ。

 

 

 

「くっそ....、なんだってこんな目に会ってんだよ!来るなって!!」

 

 

 

そう言っても奴らは止まらない。ものすごくゆっくりと迫ってきているように感じるほど、徐々に距離が縮まる。

 

 

死の瞬間はこんなにも呆気ないのかと文句を垂れるが誰もどうもしてはくれない。ここでようやく自分がいるのがはっきり現実だと本能でも理解できたが、時既に遅し。

 

遅すぎる時間の進みを経て、ようやく彼の胸元に武器が突きつけられ.......

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキンッ!

 

 

 

 

 

 

.................え?

 

 

 

 

 

えーと、なんだろうこれは。

 

 

 

 

 

 

いや、うん。すごい危険な状況なのは変わりないはずだった。何せ戦い方も分からない一般人に、ゲームに居た怪物と獣がおそらく現実になって襲って来ていたから。

 

 

しかしどうだろう。いざ攻撃されてみれば、痛いどころか、全くもって奴らの攻撃が通っていないではないか。更に言えば、さっきから奴らが驚いた様な顔をしてビビり散らかしているし。

 

なんだ?、この鎧そんな硬いのか?コスプレじゃなくてガチの鎧とか?

 

 

 

 

....それって.............それって.............

 

 

 

 

 

 

 

 

 

めちゃくちゃ強くない!?

 

 

 

 

 

だってあれだろ!?

ゲームと本当に全部同じかは分からないが、もし同じなら、神話級(ゴッズ)装備を今着てることになるんだが!?

 

この辺の相手があのゴブリン共程度なら、おそらく無双できる性能を持っているはずだ!

 

 

 

 

.......ならば、武器の方はどうなんだろうか?

 

 

 

..........

 

 

 

...................

 

 

 

...............w.............

 

 

 

うおおおおおおおおおおお!?

 

 

 

 

結論から言おう。

 

俺超強い。

 

というか、試し斬りした結果、ほとんどゲームと同じ感じだった。軽く神器級(ゴッズ)武器を振り回しただけで、気づけば辺りにゴブリンと狼だったもの(大量の血と肉片)が散らばっていた。

 

 

最初はやっぱりリアルすぎるだけのゲームか....?とも思ったが違う。自身の内に意識を向けてみれば、なにやらHPやMP、今自分が使えるスキルや魔法なんかを認識出来る。さすがにこんな機能は実装出来ないはず、超リアルな五感も本物だ。

あと魔物を切った時の血とか生々しいし....。

 

 

 

これは本当の本当に現実らしい。でも上位物理無効化IIIが発動した時はビビった....。やっぱりまだゲームなのでは?ともなった。

あと最初に攻撃を防いでたのも上位物理無効化Ⅲだった。なので実はまだ鎧の硬さは確かめることが出来ていない。武器の感じから見るに多分本物だろうけど。

 

 

「いや、これは凄いぞ! 本当に凄いこれ!

え!?なにこれなんでこんなことになってんの!?神様からの贈り物ですかぁ!!なるほどそうですかぁ!!!やったぜ!!!」

 

 

 

 

 

ふぅ........閑話休題(落ち着いた)

 

 

 

 

何はともあれこれは凄い(語彙力)。

とりあえず何かに襲われて死ぬという危険は限りなく低くなったと見ていいだろう。

 

 

あともしやと思ってアイテムボックスが使えないか試してみたら、これまたびっくり。手が黒い虚空の様な空間に吸い込まれたと思ったら、自身のアイテムが何処に入っているかが感覚的に分かったし、試しにポーションを取り出してみたら出来た。

 

 

同じ要領で食料を取り出して見ても大丈夫だったので、とりあえず食べる。現実で言うポテチである。普段はあんまり食べないのだが、戦闘後に腹が減っている時は格別に美味く感じる。

 

食べ物も無事確保出来たとなると、これで餓死の危険性もほとんど無くなった。

 

 

 

ならば次はどうするべきか。

 

 

衣服?の変えも一応はあるし、これで衣食は揃った。

とすればあとは住。雨風を凌げる場所が欲しい。今の季節がいつか分からないが、さすがに体が冷えてはたまらない。

 

 

 

............この体冷えるのか....?

 

 

 

そう、そういえば自分は先程から全くもって息切れしておらず、走り回ってもジャンプしたりしてもめちゃくちゃ早い速度や高度を出せているのである。しかも重そうな鎧やらを装備したままで、剣やらを振り回しながら。

 

 

何より敵の動きがとても遅く感じるのだ。まるで時がゆっくり進んでいるかのよう。

 

最初に命を狙われた時の感覚は、決して死ぬ前の時間がゆっくり感じたとかではなく、単に実力差があり過ぎて動きが見切れていただけだった。

 

 

 

元の自分では考えられない身体能力。それに体力。

これが自分の体でないことは明白だったが、それ以上に自由に動ける体が楽しくてしょうがない。もう元の体では満足に走り回ることも困難だと思っていたからこそ、これ程嬉しいことは無いのだ。

 

 

「いやぁ、最初は色々と困惑してたけど、こんな最高な体なら別に訳わかんない場所に放り出されたとしても全然いいよなぁ。

 

というか、マジでここどこだろう。安全そうなのは分かったし、とりあえず何処かに人が居ないかな。あっ、てかそれこそプレイヤーとかいるかもしれん!

 

 

 

よし!とりあえず当面の目標は、住める場所を探しながら俺と同じような境遇にあるプレイヤー探しだ!」

 

 

 

 

まだ不安はあるものの、最初に比べればずっと楽だ。分からないものは分からないのだし、気楽に行こう。

 

 

 

 

 

 

 

そういうわけでこの世界―オーバーロードにおける転移後世界―に、ひとりの超越者が降臨した。

 

 

それは世界を変える物語。その序章。哀れな絶望に満ちた世界を嘆くものにより、本来降り立つはずの魔王に対して喚び出された、揺り戻し以外でここにやって来た本来ここに存在しない者(イレギュラー)

 

 

 

果たしてこれがどんな結末を齎すのか。

それは()()()()()()()()

 

 

 

 

.................................

 

 

 

 

..................................

 

 

 

 

 

.........................

 

 

 

 

 

とりあえずスキルやらなんやらを試して見た結果、周囲のゴブリンさん達は犠牲になりました。流石に殺して命を奪うのが怖くなって、その場から立ち去りました。ちゃんと供養もしましたよ。火葬だけど。

 

 

 

いやー、俺のクラスが聖騎士で良かった良かった。

聖炎で何とか出来たわ。危うく通りかかった林を血の海にするところだったぜ。そんなのは聖騎士のすることでは無いよな、うん。

 

 

 

「ありがとうございました。ゴブリン先生!お世話になりましたっっ!!」

 

 

 

そんな訳で最初の戦闘を終え、無事にまた先程の草原へと戻ってきた。落ち着いてよく見ると、うっすらと遠くに街道のようなものが見える。

 

 

もしかすると人の居る街へ繋がっているかもしれない。ならば善は急げ、すぐさま道に沿って歩き出した。

 

幸いこの体になってから体力にはかなり余裕がある。今の自分ならば2日程飲まず食わずで休まず歩いても平気だろう。

 

 

 

よっし、なんか元気出てきた。大体のことはできるしもう何も怖くない!(フラグ)

 

 

というフラグを立てつつ道を歩いている。そういえばあいつも、もしかして呼び出せたりするんだろうか。こんな状況だし、役に立ってくれるかもしれない。普段は索敵なんかさせないけど、こんな事態なんだし。

 

もしかしたらいつも通り()()()かも............!?

 

 

 

 

なんて考えながら歩いてしばらく、少し先に明かりが見える。街に着いた!?と思ったが、違うらしい。

 

 

どうやらいくつかの光源が重なって大きな光に見えていたようだ。気づけばもう夜であった。余程ゴブリン先生のところで学んでいたのか、それとも単に歩いた時間が長かったのか。

そういえばなんだか今は丘陵っぽいところにいる気がする。

 

 

「あれは........もしかして人か? おおやった!

ようやく人と会える!!」

 

 

良くなった視力で少し遠くを見る限り、道の先にどうやら人間の集団がいるようだ。異形種とかが闊歩してなくて良かった........と思うのもつかの間。

何やら良くない雰囲気を感じ取る。

 

 

 

自身の聖騎士センサーが、何やらあの人間達の危険を知らせてくる。よく目を凝らして見てみれば、彼らは何かと戦っているようだ。それもかなり大人数で。

 

しかし苦戦しているらしく、おそらく非戦闘員と思われる人間が数人。それが聖騎士らしき人達数人と、兵士らしき大勢の人が護るように辺りを囲んで、敵と思わしきヤツらと相対している。

 

 

 

対する敵はと言えば、なんだかよく分からない種族だ。亜人っぽい見た目をしているが、そうでなさそうな奴らもいる。

 

特に目立つのはあの後方から魔法を撃っている種族。あいつが多分、この亜人達のリーダーだろう。

 

 

 

ぶっちゃけてしまえば、自分はあまり種族がなんだろうと関係は無い。ユグドラシルでも、亜人種や異形種でも良いプレイヤーはいっぱい居たし、人間種でも悪質なプレイヤーは存在した。

 

もちろんエネミーは別だが、話し合いで解決できるならばそうしたい。なるべく殺しはしたくないのだ。

というか、いつもつるんでる仲間達も亜人種や異形種だし。

 

 

 

なお度がすぎる悪党はその限りでは無い。

 

 

 

 

今回の場合は、どうやら亜人どもに非があるらしい。

 

 

耳を澄ませば、やれ「その人間共を寄越せ!」だの「目障りな聖騎士共め、今すぐ殺してやる!」だの、どう考えてもヴィランにしか思えない口調な上に.....何体かは、怯える非戦闘員に向かって襲いかかろうとしている。

聖騎士や兵士達は武器を持っているし、もし戦争中だったりするならばまだ仕方ない、と理解できるものの、流石に無抵抗の人間まで殺るのはいただけない。

 

例えこれが現実だとしてもやることは変わらない。怖いが。

 

 

だってあの亜人達見たことないし....、もし俺より強かったらどうしよう。颯爽と助けに入ったのに秒でやられるのはダサすぎるぞ....。

 

 

 

 

...................ええい、悩んでても仕方ない。とにかく助太刀だ!

 

もし人間側が悪いようなら後でどうにかする!自分の謎の聖騎士センサーを信じるのだ!

 

 

 

足に力を込める。今度は怯えずに、されど慎重に。眼前に迫る敵に向けて右手に持つ剣を振るった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

魔現人(マーギロス)であるオロスト・ネイト・アールは、自身の部族の長であるナスレネ・ベルト・キュールから指令を賜り、配下の亜人達を率いて人間をなるべく多く攫い、自分たちの部族の集落に帰還しようとしていた。

 

 

しかし、途中で愚かにも護衛を付けずに街道を歩く人間たちを発見してしまった。

本来の作戦にはない以上、余計な手間や危険は犯したくなかったが、あまりにも無防備に夜の街道を歩いているものだから、配下の亜人共があれも捕らえようと訴えてきた。

 

 

抑えるのも一苦労だと判断したため、直ぐにあれらを確保して撤退する予定だった。万が一強者だった場合の被害を抑える為に。しかし、それこそが油断であった。

 

 

 

人間共を捕らえようと、怯えるヤツらの目の前まで来たはいいが、ちょうどその瞬間を狙っていたのか、聖騎士共が飛び出してきた。攫うのには失敗し、既に捕らえていたこちらの人間を、背後から強襲してきた兵士共に何人か奪われた。

 

 

襲う気満々の状態であればどうにかなったかもしれないが、あいにく直ぐに退けるよう撤退を命じていたために反撃が出来ず、どうにか陣形を成せた時には、向こうも人間共を囲って護るように陣形を展開し、それぞれの陣営が真正面からぶつかる事態となっていた。

 

 

ただ、そのお陰で乱戦にはならなかったため、自身が前線に晒されるという最悪は回避された。

 

 

元々第四位階までの魔法を行使できる自分は、魔法詠唱者(マジックキャスター)としての能力にも恵まれ、第五位階の魔法も扱える。ナスレネ様には及ばないが、これでも亜人の中でも指揮能力や魔法は随一だという自信がある。なんなら時期族長候補とも持て囃されているのだ。まあ、ナスレネ様は代替わり(そんなこと)考えていないだろうが。

 

 

 

案の定普通に戦っているだけで奴らは疲弊し始めた。こちらも何体かは既にやられてしまったが、その分向こうの兵士の手勢も大分削ることが出来た。

 

 

未だに、背後に護られている人間に手を出せていなかったり、聖騎士共が一人も倒せていないのは問題だが、それも自分の狙いやすい位置までこちらの前線が上がれば焼き払ってくれる。

 

 

もしこれ程の数の人間を連れていくことが出来れば、さすがのナスレネ様も私を認めざるを得ないだろう。下手すれば族長にもなれるかもしれない。

 

 

そんなこれから起こる楽しみを想像しながら、しかししっかり指揮を執って奴らを追い詰めていく。もう少し、もう少しだ!

 

 

 

今思えば、この優勢な時に引いておけば良かったのかもしれない。

 

 

 

 

まさか............あんな化け物が来るなんて、誰が予想できるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「グァッ」「ガハッ」

 

 

「_____ッ!?なんだ、何が起きた!!前線が急に崩れたぞ!?誰か報告しろ!」

 

 

「報告致します!何者かが急に前線に出現し、他のものをまるで易々と蹴散らし始めました!

 

 

何体かは抵抗もさせずに一瞬で!他にも襲いかかろうとした者達があっという間に倒されました!!!」

 

 

「なんだと!!!??増援とでも言うのか!!

そうだとしても手練すぎる!まさか例の聖騎士団長とか言うやつか!!??」

 

 

「いえっ....それが....!!....どんどん倒されていくようです!現在の倒された者の数..........に、二十....??ま、まだ増えているようです!!」

 

 

「な........何かの間違いでは無いのか....?実力はまちまちとは言え、我らは聖騎士団ともやり合える本隊だぞ!?お荷物の人間共も今はほとんど抱えていないと言うのにか!?」

 

 

嫌な予感がする。このままでは我らは一体も残らずに全滅する。そんなことを優れた直感で理解する。

 

 

 

いくら聖騎士団長とやらが強かったとしても、戦った奴らの話によれば、高くても人間の英雄の領域の中でも、上位という程度。ならば、被害は被るとしてもこんなに手痛いほどの壊滅はしないし、何より撃破速度が尋常ではない。明らかに人間業ではないのだ。

 

 

 

なにかもっと恐ろしいものが迫ってきている気がして、咄嗟に後退りする。すぐ様撤退を指示して、少数の人間共と自身だけは帰還しなければ。

 

 

いや、なんならもはや人間など捨ておけば良い。どうせまた攫えばいいし、自分程の個体を失ってしまうことの方が損失だ。生憎と、前線で戦うのは得意では無い。

 

 

 

オロストの判断はとても正しかったし早かったが、

それ以上に()()は早い速度で、指揮官たる者の所へと直行してきていた。

 

 

 

「くっ....お前たち邪魔だ、どけっ!

致し方ない、直々に吹き飛ばしてくれるわ....

 

 

ここに辿り着いた時、既に貴様は灰となるのだ!

魔法最強化(マキシマイズマジック)龍炎(ドラゴンファイア)》!」

 

 

 

龍の如くうねる豪炎が、全てを呑み込まんと荒れ狂う。避難させていたものの、あまりの威力に何体かは巻き込まれてしまったが構わない。目の前の化け物を倒せなければ、どちらにせよ敗北だ。

 

 

 

「《魔法抵抗力上昇(レジスト・マジック)》〈ワイドガード〉

星共防御(スターリンクディフェンス)〉〈守護者の誓い(ガーディアン・オース)

 

さて....念の為に....〈究極障壁(アルティメット・バリア)〉」

 

 

 

冷たい声が響く。

それはまるで相対しているはずの自分など眼中に無いようで、普段ならば無性に腹が立っていたが、今は逃げられるかもしれないという淡い希望を抱く。

 

 

 

しかしそれは、自身の放った魔法が尽く意味を成さずに、当の本人である、淡い黄金の龍の刻印が刻まれた鎧に身を包んだ 聖騎士(化け物)が、何事も無かったかのように炎の中から飛び出してきたことによって壊された。

 

 

 

なんなんだあの化け物は?なぜあの魔法を真正面から受けて無傷でいられる?亜人達の中でさえあれを無傷で受け切り、なおかつ直進して来たやつなどいなかった。

 

 

唯一、豪王バザーはあまり効いていない様子だったが、それでも手傷は負っていた。

 

 

効かないのはせいぜい種族的に効かない土精霊大鬼(プリ・ウン)か、水精霊大鬼(ヴァ・ウン)の連中くらいだ。だが、目の前にいるのは人間にしか見えない。人間ならば、かの聖騎士団長とやらでも無事では済まない筈なのに!だ!

 

 

「ふ、巫山戯るな貴様ァ....!一体どう云うカラクリだ!!我は魔現人(マーギロス)の長、ナスレネ様が配下、オロスト・ネイト・アールだぞ!其れを知って尚の狼藉か!」

 

 

 

しかし、全く動揺した様子は見せずに()()は、

 

 

 

 

 

 

 

「あ、馬鹿だなコイツ」

 

 

 

 

 

 

そう言い放った。

 

 

 

 

 

................は?

 

 

 

 

 

「はぁぁァァァァアアア!!!???殺すっ!!、貴様は殺すっ!!このオロストを侮辱した罪っ!度し難いッッ!生きて帰れると思うなァ!」

 

 

普段であればその程度の挑発、なんてこともなかったはずだが、命の危機に晒されているという実感の下、余りにも拍子抜けな、しかし、単純で語彙のない罵倒のせいで、彼は冷静さを失っていた。

 

重ねて人間を攫う任務も失敗し、焦りを生んでいたのも原因だろう。

 

 

 

本来ならば、オロストはまずこのような事態になっても交渉を優先する。しかし、今の彼に交渉と撤退の二文字は無くなってしまった。

もはや止まることは無い。もし、交渉していれば。あるいは相手が彼ならば自身だけは助かったかもしれない。

 

 

舌戦においては、オロストは人間にも多少詳しいため得意なのだ。今の転移したばかりで常識の定まっていない()()ならば、いくらでも丸め込めたはずだ。

 

 

 

だが、そうはならなかった。彼の剣は弧を描く。そして気づけば、魔法を放とうと声を発する直前に、哀れな魔現人の首は飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

とある聖騎士はただ呆然と、その光景を見ていた。

 

 

 

 

最初はなんてことの無い。亜人の討伐に出掛けていた。

最近この辺りで、人攫いが頻発しているとの報せを受け、複数人の聖騎士と大勢の兵士を引き連れて出撃したのだ。

 

 

本命はいなかったが、何体かの人を攫おうとしていた亜人達を倒すことが出来た。無事攫われそうな人達も保護できたし、これから帰ろうと言うところで、夜の道には似つかわしい無い、護衛も付けずに街道を行く一般人を発見した。

 

 

 

直ぐに保護し、出来れば街まで護送しようと考えていたのも束の間、次の瞬間には、亜人達がその人達を攫おうとしているではないか。

 

 

彼らを助けるため、即座に飛び出す自分に続き、他の者たちも我先にと踊り出す。

 

 

無事に一般人達に被害は出なかったものの、相手の亜人達は部隊規模の徒党を組んでいた。最初こそ抑えられていたが、徐々に劣勢になってきていた。

撤退しようにも、後ろの彼らを見捨てて逃げる訳にも行かない。

 

 

 

よく見れば、相手は下手すると亜人の本隊かと思うほどの規模であり、それを裏付けるように、一番後方で指揮をしている亜人を見つけた。劣悪な戦況だが、最悪ではない。要は指揮官を叩けばいいのだ。幸いこの部隊の核はあの指揮を執っている亜人のようだ。

 

 

余程指揮官として優れていると見える。

ならば奴を倒せれば、優勢とは行かずとも敵は瓦解し、現状の打破にはなるだろう。そう思い兵達や隣の聖騎士達に指示を出す。

 

 

「各隊、深追いはするな!あの指揮官の亜人を狙え!!!兵士は敵を抑えつつ横に展開して敵を引き付けろ!聖騎士は、このまま後ろの民間人を護れ!

 

魔法詠唱者(マジックキャスター)は、押されているところの援護を!指揮官への道が開けたら私を先頭に、我々聖騎士が吶喊する!その場合、代わりに数名の兵士と魔法詠唱者は民間人を護れ!」

 

 

張り裂けんばかりの声を出す。だが、敵の指揮官まではまだ遠い、流石に奴には聞こえてはいないだろう。

 

 

 

そう、まだ遠い。

指示出してしばらく、さらに戦線は押され始め、もはや吶喊などと言っている場合ではなくなった。

 

 

特にあの亜人の指揮官の魔法がまずい。

かなり位階の高い魔法を行使するようで、連発とは行かずとも、的確な場所に打ち込まれて兵達が次々やられていく。そうして時間が経つ度に先に疲弊するのは、人間種である自分達。

さらに、向こうは余裕そうだが、こちらの魔法詠唱者の魔力は有限だ。その内尽きてしまう。

 

 

芳しくない戦況で、それでもと勝つ方法を模索する。何とかならないか。そう思考を巡らせるも、段々と悪い想像が頭に浮かぶ。

 

 

 

ついに前線が完全に崩壊する一歩手前になり、このまま終わってしまうのかという負の感情が止まらない。

 

 

 

だが、それでも民を、仲間を見捨てることは出来ない。最後の力を振り絞り、目の前に迫って来ていた亜人を斬り倒し、自分だけでも指揮官に吶喊して時間を稼ごうと考える。注意を引き付けている間、仲間に民間人を引き連れて離脱してもらうのだ。兵士たちには悪いが、ここで自分と共に死んでもらおう。

 

 

申し訳なく、辺りに指示を出すのを戸惑っていると、部下の一人が声を掛けてくる。

 

 

 

「フォシス殿!我々は大丈夫です!気にせず指示を!」

 

 

まるでこれから出される指示を読んでいるかの物言いに、そんなに自分は分かりやすい表情をしていだろうかと吹き出す。

 

 

先程まで悩んでいた気持ちは晴れ、覚悟は決まった。

 

 

 

「ありがとう。おかげで、迷いなくこう言えるよ。

 

 

各員!我々は今からこの死地で命を掛ける!何としてでも民間人と、一部の彼らを連れていく仲間を護るのだ!臆すな!我々は決してこれから敗北するのではない!彼らを逃がせたその時が!我々の勝利だぁ!!!!

 

 

「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」」

 

 

 

最後までできることはしてみせる。その覚悟でたとえ命を落としてでも。

 

我らは聖騎士、そしてそれに連なる者なのだと。

 

ローブル聖王国、そして聖女に誓って今、敵に突っ込んでいく。

 

 

 

 

 

彼らが命を散らすほんのあと少しのタイミング、そこでようやく救世主は現れたのだ。

 

 

 

 

 

「助太刀しよう。勇敢な聖騎士殿」

 

 

「!?」

 

 

 

瞬間、辺りが眩い閃光に包まれた。それはまるで伝説に出てくる様な神々しい威容の、立派な鎧を着て、見事な剣を携えた聖騎士であった。

 

 

 

 

 

そこからはあっという間だった。

 

 

一瞬で目の前の亜人共複数を倒したかと思えば、次に襲いかかってきた亜人共に向かって、先程と同じように閃光を纏った剣で、今倒した亜人共よりも多い数を薙ぎ払っていた。

 

 

その後は、さらに剣に炎も纏わせながら、次々に屠っていき、最終的には指揮官向けて直進した。

 

 

今まであの指揮官の亜人が使った魔法と比べても、一際強力な魔法を真正面から受けたのにも関わらず、それをまるで意に介さないかの如くそのまま進む。その後、もう一度魔法を放とうとしていた奴の首を、瞬きの間に刎ねていた。

 

 

 

何が起こったのか理解する間もなく、次は、残った亜人達が炎に焼かれていた。あの亜人が放った魔法かとも思ったが、それとは違う。聖なる力を感じる炎―聖炎―によって、それらはとっくのとうに燃え尽きていた。

 

 

彼が放った魔法だと理解してから、安堵からか全身の力が抜ける。その場にへたりこみ、こちらに近づいてくるかの聖騎士に対して、フォシスは....

 

 

 

「ありが....とう....ございました....っ!」

 

 

「何、気にするな。ちょうどいいタイミングで通りかかったのだ。故に助太刀させてもらった。.........余計なお世話だったかな?」

 

 

いえ....!いえ....!本当に感謝します!

........つかぬ事をお伺いしますが、名のある御仁とお見受けします。我らの恩人である貴方のお名前を、教えて下さらないでしょうか?」

 

 

 

すると、かの偉大なる聖騎士は、少しだけ間を空けてから、こう答えた。

 

 

 

 

「........う........うむ....。

 

 

.........我が名は、龍と星振りの聖騎士。ノグナス・リーティス・インドラ。其方達の助けに参った、通りすがりの聖騎士だ」

 

 

 

 

 

 

continue....




キャラ詳細
◾︎ゴブリン先輩達with狼s
スキルやらなんやらの試し斬りにされたヤツら。元々は縄張り争いをしていただけなのだが、通りすがりの聖騎士(災厄)に轢かれて死んだ。この世界の性質を教えてくれた恩人?である。
聖炎による火葬できちんと魂は鎮魂された。

◾︎オロスト・ネイト・アール
ナスレネの配下の中でも特に優秀な魔現人。ナスレネを慕っている。
一日5回、第五位階までの魔法をMP消費無しで撃てるという現地にしては破格の性能のタレントをもつ。(本人は魔力が多いとしか思っていない)
指揮官としては亜人の中でも一二を争う実力で、人間相手でもそう簡単に侮ることはしないので、ナスレネにも重宝されている。
現在のLvは大体30程度。本来なら原作開始時点で、強敵のひとりとして名を連ねる予定だったが、通りすがりの聖騎士(災厄)に轢かれて死んだ。尚、生きていても亜人連合としてナザリック勢にボコボコにされる模様。
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