オーバーロード-七極星- 作:シンメトリー飛行船
いつもUA、感想、評価、誤字報告、お気に入りなど
ありがとうございます
side―シャーク―はさくさく進んで行きます。
聖典は判明してる所以外ほぼ私の独断と偏見により決められているのでご容赦ください。
というかスレイン法国の描写が少なすぎて、訓練場とかすらも想像で書かなきゃいけないとか、スレイン法国二次書いてる人達は大変だなぁ(すっとぼけ)。
とりあえず、手始めに出来ることから始める事にした。
まず、自身の存在が周辺国家にバレたら不味いこと間違い無しなので、その辺の情報封鎖を行った。この国は秘密主義の国家という事もあってか、こういう秘密を秘匿する任務は得意なようだ。
現在知っているのは最高執行機関の12人の長の面々、そして私の為に仕えさせると言って(彼らが勝手に言い出した)近くに置かれた側仕え2人である。
この側仕え達も基本的には私の身の周りの世話をしてくれるらしく、あまりここからは出ないらしいので、ここから情報が漏れる心配は無い........ということらしい。
お世話されるのは悪くないけど、こうも何でもして貰えるとダメ人間になりそう.......。
と、まあそれも気になるけれども、今はそれよりもするべきことがあるんだった。
片手間に内務の仕事、と言っても本格的な仕事では無く、この国の文化や法律などを見て、直すべき所を修正するなどの作業の様な事をしているだけだが。
仕事をしようと言ったら、畏れ多いと言われてしまったが為に、まぁそもそも文字も読めないし効率は悪いよな.......とか思いながら、「いや、これはこの国をより良くするための下準備の様なものだ」とか言って無理矢理ぶんどった仕事である。
とまあそんな感じでやるべき事をやりながらも、一番のすべき事を口に出す。
「色々やるべき事はあるけれど、一番は...........プレイヤー探しか」
側仕えの二人を少し下げさせて、近くにいる火の神官長に話しかける。
最初は全員他の事ほっぽり出して、新たに自分専用に与えてくれた私の部屋に常に傍で控えていたものだから、流石に気まずいし、国の運営が滞るしってことで一人だけ残して、あとは普段の業務に戻ってもらってる。
そんな中でベレニスさんだけ残したのは別に理由はないけど..........強いて言うなら、同じ女性だし安心できるからかな。一応この部屋、私の部屋になったんだし。あと一応、側仕えの人達も女性だ。
でも、話に聞く限りではこの国は質素な部屋を好む傾向にあるのに、この部屋は何処と無く豪華な気がするんだよね....。神の部屋は別扱いなのか。
まぁ、元の私の部屋の方が豪華だけど。
「お前達はプレイヤーの存在は知っているんだな?ではその100年の揺り返しとやらはそのプレイヤー達.......六大神以外にも来ているんだな?
.............例えばその、八欲王や十三英雄とやらだ」
「はい。我々の持ちうる知識の中にも、しっかりと
「..........ふむ、確かそういうプレイヤー───神に縁が深かったり、あるいは人類にとって大切な契機となった場所は、土塵聖典が守護しているんだったな?」
「仰る通りでございます。ワダツミ様」
ちなみに六色聖典という、ちょっと面白そうな特殊部隊の存在がある。
こっちも中々興味のあるものなので、後で直接色々と確かめてみようと思う。ま、今はそれよりもプレイヤーの情報と.............あれだ。
「人類の為に..........ねぇ」
部屋に飾られている、白い額縁に入れられた筆か何かで描かれたと思われる標語のようなものを見る。その崇高でご立派な目標を否定するつもりは無いけれど、それはそれとして面白くてしょうがない。
だって
こんなに慕っているのにもしも人間種では無かったら、彼らはどんな反応をするのだろうか。そもそも皆は言及しないようにしているようだけど、六大神の中にもどうやらスルシャーナというアンデッドが居たはずなのに、随分都合のいい教義である。
それもこれも、現在戦争中だと言うエルフ国が原因の一端でもあるんだろうけど。
まぁとりあえず、仮にも彼らが私に反逆してきたとして多分、いや万が一にもおそらく私は負けようがないのであまり心配していない。この国の軍隊も、英雄級の強さを持つものたちがいる漆黒聖典とやらも、大して脅威では無い。唯一怖いのは複数残っている六大神の遺産であるとかいうWIだけども、この辺は私もWIを持っているんだし、一応対策は出来る。
最悪、
話を戻そう。
この世界の強さについて、大分考察やらなんやらを彼らの手を借りてみてやれるだけしたのだ。
その結果、この世界の強さは大陸中央ならまだしも、この辺の地域では全くもって私達プレイヤーには敵わない事が判明した。
というか本当にこの世界人間種に厳しいな。景色やなんやらを除けば、ムスペルヘイムやヘルヘイムだと言われても納得するぞ。
とにかく。
目立つ可能性があるから未だ実戦はしてないけれど、一先ず彼らの言うことに間違いが無いなら、私は少なくともこの辺りでは無双出来ることが分かったのだ。それならこの強さを軍事力として使わない手はない。
特に、デス・ナイトですら出たら都市が終わると言われてるとか、真面目に救ってやらないと本当にやばすぎるからな。
彼らがどんな価値観を持っていて、それでその価値観のせいで私に牙が向こうと関係ない。全部力で捻じ伏せればいいからね。
ただ、彼らの言うことが全てという訳じゃないだろうし、油断してたら嵌められるかもしれない。
もしその時に彼らの言うような実力が自分になかった場合、確実に終わる。そうならない為にも、なるべく穏便に支配することが肝要だし、何より実戦の経験も積んでおきたい。もちろん、訓練あるいは実力を見定めるという名目で。
最初の方は別に武を示す必要は無いだろう。それよりも頭が使える事を証明しておくべきだ。何か解決出来そうな事案があれば、私が解決する。それによる私への株を上げさせる。なるべく私自身の株を上げておくことによって、何かあった時に周りの人間に守って貰うのだ。
こういう根回しは元の世界では常套手段だったし、今のこの状況もそれは変わらないだろう。敵をなるべく作らない立ち回りをするのだ。
流石にまだ来たばかりの私が戦争に口出しするのは早いだろうし、となれば中の問題からとなるわけだ。彼らにも実際あの場で私が改善するって言ったしね。言ったことはちゃんと守らないとね?まあ、もしかしたら多少の齟齬はあるかもしれないけど、約束は破ってないからね。
とにかく沢山の観点から、彼らの人間至上主義すぎるところはなんとかしておかないと。早期に取り組まないとややこしい事になりそうだし。
しかしいくら情報封鎖を行っているとはいえ、その秘密を彼らだけに明かすという形態は、いつまでもという訳には行かないだろう。
何より、彼ら一部の上の人間が受け入れたとしても、急な国の方針転換に国民は着いて来れないかもしれない可能性だってある訳だしね。
.............今は目の前の事に集中するしかないか。何をするにせよ、彼らの協力が不可欠だ。そもそも彼らとも協力関係を築けませんでした、では話が進まない。
一番最初に彼らの価値観を大きく変える。そしてその後に、この国の排他的な主義にもメスを入れてやるのだ。私が支配しやすくなるように。間違えた、よりよい国にする為に。
いや、別に嘘は言っていない。
「ベレニス....しばらくしたらあの部屋に皆を集めてくれるか?
ああ、君たちも来たければ来るといい。今後に関わる大事な事を話そうじゃないか」
「かしこまりました。ワダツミ様」
さあて、正念場という程では無いだろうけど、程々に気を引き締めないとねぇ.......。
◆◆◆◆◆
「よく集まってくれた、礼を言うぞ」
「いえ、我らはワダツミ様のお声が掛かれば、何時如何なる時でもすぐに御前に参上致します」
「そうか、それはいいな。今後も“よろしく”頼むぞ」
「はっ!仰せのままに!」
我らが神.............ワダツミ様は、聡明で気高く、尚且つ慈悲深い御方である。特にその観察眼は目を見張るものがあるのだ。
問題点を直ぐに指摘し、それに対する代案を出すことに長けておられる。
本人は「この程度大したことは無い。私の居た世界を救うほどのことは出来なかったからな」と謙遜なさっていたが、そんなことはないと私、レイモン・ザーグ・ローランサンは思う。
そんな事を神に対して思っていると、ワダツミ様は続く言葉を放つ。
「時にお前達、他種族についてはどう思っている?この国を治める者としてでも、個人的な主観でも構わない。何を言おうが私はそれを咎めん。
さぁ、申してみよ」
その言葉を受け、大元帥がそれに対する答えを話す。
「国を守り、他種族とも戦うことの多い身分の者達を纏めている立場から申させて頂きますと、他種族.......特に亜人種や異形種等は恐ろしく感じます。正直、あまり相手はしたくありませんな。あ奴らは、人を食うものも居ますから」
それに対し、我らが神はこう言った。
「ふむ、そうか。....ちなみに、お前達が崇拝している六大神の中にもスルシャーナなりしアンデッドの、つまりは異形種の者が居た訳だが、それについてはどう思っている?」
その言葉を聞き、大元帥はビクッと体を震わせるが、しかし慈悲深き神はそれにも優しく言葉をかけて下さる。
「ああ、気にするな。咎めている訳では無い。最初にもそう言っただろう?我はただ、気になったが故に聞いたのみよ。お前達の捉え方が知りたいのだ」
その言葉により安心したのか、大元帥も震えが止まっている。そしてそれに対する言葉を返したのは風の神官長のドミニクであった。
「私達は、国民の見本となるべき立場です。だからこそ軽々に他種族と交流を深めよ、とは申せません。..........ですが個人的な主観では、他の種族とも交流などをし見聞などを広めねばならないのではないかと薄々考えてはいます。何よりの証拠が、この国を最後まで守護して下さり、未だに従属神である御方を残して下さったスルシャーナ様の存在でございます」
その意見を発し、そしてそれを静かに頷きながら聞いている神を見て大丈夫だと判断したのか、次いで闇の神官長であるマクシミリアンが答える。
「確かに大元帥殿の言うような野蛮な種族もおりましょう。現に、多くの人類国家では、あまり他種族.......特に亜人種や異形種は認められておらず、討伐の対象として見られています。我々もなるべく奴らは倒すべき敵と認識しております。..........が、風の神官長殿の言う通り、スルシャーナ様の様に理知的な存在もおります。そういうことを考えた場合、必ずしも倒すべき敵にはなり得ないのではないかとも考えます。
.......ですが、民衆はかなりの間他種族を排斥してきました。今まで築いて来たそれが間違いであるとは一概には言えませんが、急に他種族と協力関係になるのはあまり簡単な事では無いかと思われます。特に今は例のエルフ国との戦争中でもありますので.........」
至極真っ当な意見だと思う。それを聞き神は、肯定するでもなく否定するでもなく、ただただ分かっていたと言わんばかりに聞きに徹するだけだ。
そして、その後に誰かの言葉が続かないのを確認した神は、鷹揚に向き直り、こう仰った。
「そうだな..........。お前達の他種族に対する捉え方、考え方は分かった。すぐ様大衆を変えるのは叶わなくとも、少なくとも現状を何とかしたいとは思っていたり、例え他種族だったとしても思慮深い存在であったならば問答無用で殺すわけでも無いことは」
神はお座りになっている状態から立ち上がり、私達の近くに寄ってきて下さり、しっかりとした真剣な面持ちで、こう答えられた。
「今回の本題となる要件を話させてもらおう。
お前達が慕うこの私、ワダツミ・トーリトンは、何を隠そうその種族は人間では無い。私は亜人種、シャークノイドという種族なのだよ」
全員が驚きに包まれている。それはそうだろう、私だってそうだからだ。しかし不思議なのは、我らが神を見てもあまり人間との差異は見られないことだ。
思えば最初から、神を見た時は人間だと思っていた。いや、勿論神は神なので、我々人間とは似ても似つかないだろうが。
だがその身は殆ど人間であるし、身につけられているお衣装も灰色とほんの少しばかりの青の衣を着られていて、それに加えて長めの色の着いた浮いた布がフワフワと纏われているだけである。あのフワフワしたものがその特徴の可能性もあるが、着脱した所を見たことがあるゆえに、やはりあれは身につけているだけだろう。服も着ているだけであろうし、特に変わった点は見られない。
では一体何処が。もしくは見た目には変化が無い種族なのだろうか、とも思っていたところで、我らの神が例の布を少しずらす。すると、どうやって上手く隠していたのだろうか。神のその首筋には、魚類の鱗の様なものが見えた。
他にもいくつかの箇所の布をずらしたりすることによって、その神の隠されていた部分が露わになった。それらの場所には別の種族だと言うことを示すように、鱗やエラ、鰭が見られた。
と言ってもそれらはそこまで大きな部位でもなく、せいぜいがエラが少しだけ気になる程度のものだった。
あまり人間とも離れていない見た目にも見えるが故に、ともすれば人間種なのでは?とも思ったのだが、どうやらそれはワダツミ様だけが特別で、他の同じ種族の者は違うらしい。
やはり我らが神は特別な存在なのだと思う。その容貌はとても美しく、誰が見ても立派で格好良い
覚悟をしていた割にはそこまで衝撃的な告白では無かったな。と私は思う。しかし、他の知らされて居なかった面々はまだやはり驚いて動揺しているようだ。こうやって客観的に再度改めて見てみれば、やはり私はその程度のことは大した問題では無いと納得が出来る。
そう、私を含めて一部の神官長や最高神官長には、実は予め我が神は話をされていたのだ。
曰く、これから各面々に自身の事を話す。自身の事とは即ち、自分がシャークノイドという亜人種であり、その証拠を見せるというものだったのだ。
当然最初に聞かされた時は驚いたが、神はこの事を「事前に話しても受け止められる度量のある者にしか教えていない」と仰っていたために、私を認めて下さったのだと感じて感動すると共に、その期待に答えようと覚悟を決めたのである。
実際はこのくらいのことであった為に、想定以上に異形の様な姿になる衝撃で無くて良かった思う。仮に知っていたとしても、元からでは無く人の姿から異形になるというのは、結構きついものがあるのだ。
そんなことがあったため、私はもう神には少しも恐怖を抱いてはいない。当然畏れは未だ持っているつもりだが。
神は話が一段落しそうになるならば、私に話を引き継いで欲しいと告げられていた。上手く流れに流す事で無理矢理に受け入れる様に仕向けるとのことだ。やはり、神は策士である。
「.......いや、しかし亜人種だと言うことには驚きはしましたが、こうやって話していても我が神に対する信仰心に、揺らぎはほとんどございません。これも神の知性的な部分を、皆も理解しているからでしょう」
何人かの者がはっとして落ち着くが、しかし他の数人の神官なども肯定的な意見を上げる。この流れを作ることで、否定的な先入観をあまり抱かせないようにするのだ。
その結果、皆渋々としている面々ですらも、だがまあワダツミ様ならば問題は恐らく無いはずだと、そういう考えになっている。
それを見たワダツミ様が少し微笑んだ後、布を元に戻して話を続けなさる。
「さて、お前達。このように私は確かに亜人種ではあるが、現実としてお前達とも交流が出来ているし、何より正体を明かしてまでお前達と関わろうと思っている。
このように分かりやすくとはなくとも、きっとこれらのことは他の種族個体相手でも、行うことは可能であるはずだ。
勿論、戦争中の相手と仲良くしろだの、人喰いの者共とも共存しろとは言わないが、しかし人間至上ではなくとも成り立つということを理解して欲しいのだ」
極めて冷静に、合理的な話をする我らが神。誰かが他種族に対する恐怖で反抗しようとする意志をなるべく削ぎ落とし、自身の意見を聞かせる。
決して対立するような話には持っていかずに、可能な範囲で段階的な他種族への受け入れを方針として決めさせる。
それこそがワダツミ様の魂胆である。
方針だけでも変えていけば、時間がかかるにしろやがて閉鎖的な思考も無くなるだろうと言うのがワダツミ様が仰っていた考えだ。
結局、その場はワダツミ様に支配された後、他種族に対する意識改革をまずは小さくとも少しずつ進めて行くという事になった。
大々的に全員にやらなくても良いが、身近だったりこの情報を知っている相手にはなるべくそういう考えを持ちながら接すること。それが今自分が一番実践して欲しいことだと仰った後、我が神は今回はこれで終わりだと言って、扉の辺りに控えていた側仕えを連れてご自分の部屋へ戻って行かれた。
我が神の目論見は、今回これにて自然な形で達成されたのだった。
◆◆◆◆◆
ふぅー!!!あーーーー神経使った。
一応根回しはしていたとは言え、やっぱドキドキするなぁーああいうの。
別に嫌な訳じゃないけど、支配者ロールって若干疲れるねぇ....。
ま、これから慣れていけばいいか。
とりあえずこっちの要求は通せた。勿論遠回しに。
要は彼らに、こっちは種族明かすまでやったんだから、君らは私の事迫害とかしないでね!と伝えたのである。
なんか別の感じで捉えられる可能性もあるけど、過半数がきちんと分かっていればいいのだ。
予め、話が比較的に通じそうな(と言っても、彼らはまだこの国じゃ話が通じる人達だけど)面々だけに事前に話を通しておいて、本番ではこちらの味方をするように動いて貰っていた。
ぶっちゃけ乗ってくれるかは賭けだったけど、何とかなったね。
この分の借りは後で返しておけば、足元を見られることも無いでしょう。
流石に賭けの材料が薄すぎて、彼らの信仰心に漬け込むような真似になってしまったけれど、無理なら無理でやりようはあったし。彼らの信仰心がどの程度のものなのかというのを確かめる良い機会でもあったから、結果オーライ..........かな。
いやぁ.......もっと慎重に動きたいものだけど、こればっかりは状況が状況だからなぁ.......。まぁ、現状ならまだ何とかなるでしょう。
さて、とりあえず最初の方に話しておくのは正解だったな。あとは他にも情報が漏れる時用の為に、きちんとした手段で広めていく準備を進めねば。.............そういえば。
「お疲れ様、とりあえず今回はこれでいいだろう。お前達も驚かして済まなかったな。それにベレニス、良い援護射撃だったぞ」
「いえ、ありがたきお言葉です。神のお役に立てたのならば、幸いでございます」
「私達のことはお気になさらず。事前に聞かされてもいましたし、何よりその程度の差異であれば気になりは致しません。
我らが神は理性的な方でございます」
「ありがとう。さて、ではそろそろ本格的に外にも出る必要が出てくるか。内務において精を出すのもいいが、流石に怪しまれてしまうだろうしな。少なくともお前達だけならもう心配は無いだろうし、そろそろ段階的に情報封鎖を解く頃か」
情報封鎖を段階的に解く、というのは神殿の重要機関の内部のみで情報を公開する。ということである。他国のスパイが居ないとも限らないので、そこら辺は慎重になる必要があるが、そもそもそんなことは最高執行機関の面々に既に混じられて居たら終わりなのだ。
むしろ撒き餌にして誘き出してやる、くらいの勢いでやらなければ。
兎にも角にもまずは一部の重要人物たちと、あとは六色聖典の面々に教えるのである。
特殊部隊である彼らには、全員ある程度情報を秘匿する心得はあるだろうし、その中でも風花聖典や水明聖典の口は堅いはずだ。
何より不審な動きをしていて、一番疑われたら厄介なのが彼らなのだ。いくら力で捩じ伏せることも出来るかもしれないとは言え、それではやはり蛮族と変わりないのである。
あと、一緒にこの世界のことについて調べた彼らによれば、この世界は極めた技術においてレベルが全てでは無かったり(それでもレベルの比率は大きいが)する上、例えレベルが高くても、この世界独自のタレントやらは十分警戒に値するものなのだ。
一応、神人と言う切り札も抱えているっぽいからね。彼らが所属する漆黒聖典がどの程度なのか、直接確かめる必要もある。
あと、どうやら私の仕様が大分ゲーム寄りというのも厄介なのだ。
普通なら何でも出来るはずの自身の身体だが、自身の修めていないクラスが必要な専門的な事、分かりやすく例に出せば剣を振るう等である。
そういうのをやろうとした時、自身が対応するクラスを習得していないと、上手く振るうどころか装備すること、下手すると握ることすら不可能になるのだ。
これはかなり厄介だ。ただ、余りにも自分に都合が良すぎるんじゃないかと今まで思っていたが、漸くデメリットらしき所が出てきたおかげで、少し安心することが出来た。
取れる手段を全部把握するためにも、そういう特殊部隊みたいな使い勝手良さそうなのはどんどん利用していかなきゃね。
それに、何と言うかやっぱり.............弱いが故に、納得出来ない目に遭ってる子達が居るからね。そういうのは、どうにかしたくなってしまうものだから。
.......はぁ。
全く、“巫女姫”なんて言う趣味の悪い物を使いやがって..........。おっと、いけない。冷静に落ち着いてっと.......。
そんなことするくらいなら、もしあいつらが出せたら全部替わってやるか。んで役目が終わった子らは取り敢えず、あいつらから貰ったポーションだのマジックアイテムだの医療道具だのを用いて何とかすればいいでしょう。
“巫女姫”なんて役目をさせるくらいなら、いっその事私のものにしてやるから覚悟しとけよ............全く。
................?なんか今、変じゃなかった?..........まぁいいか。
とりあえずは、本格的に行動を開始するとしましょうか。段階情報封鎖解除をすれば、結局あいつらを
あ、そうだ。どうせならこの部屋の彼女達や、一部の神官長達とかにも見せちゃうか。
「お前達.......。私の力の一端を、見てみたいか.......?」
そうして、時間は数日過ぎて行く。
...................
ワダツミが転移してから二週間ほどが過ぎた頃。
現在ワダツミはとある広めの部屋へ来ていた。
その部屋には、備え付けの泉を模した水が流れる場所が存在している。
しかしそれ以外には大して目立ったものの無い部屋であり、神と言われるワダツミが居るには不自然な部屋である。
しかして、この何も無く、そこそこ広くて水のある空間というのは、ワダツミにとってはベストなポジションなのであった。
「時は満ちた。.......やろうか」
あれから情報封鎖を段階的に解除したワダツミと最高執行機関の面々は、流れるような連携でパニックの起こらないように情報を統制しつつ浸透させた。神が降臨したという情報を。
それに伴い、ワダツミ自身はあらゆる面で役に立つ戦力達を、すぐ様召喚し始めていたのであった.......。
(ちゃんと出来るかは五分五分だけど.......上手くいってくれよ.......。
..........
................よし!)
ワダツミが水辺に手を翳し、念じる。それはもはやユグドラシルにおいてやり慣れた動作であったが、この世界では初めて行うのだ。不安に思うのも無理は無いだろう。
その様子を後方で見守っている、数人の神官長と側仕え二人。
しかし、その不安とは裏腹に。手を翳した地点から段々と、水面が揺らぎ始めて、さらに小さな水飛沫が上がり始める。それはやがて大きな波となり、最終的には水が有り得ない浮き方をしていたりしつつ、何もいないはずの水中から、浮かび上がってきた魔法陣を介することによってそれらは主の元へと飛び出して来た。
「〈
ザッパァァァァッッッッン!!!!
水飛沫が晴れた所に、ワダツミの前に降り立つ.......いや、上がった者が合計三体。それは、全身鮫のような見た目をしているが、手足を持った亜人のような見た目をした奇怪な怪人共であった。
だが、ワダツミからしてしまえば、それらは自身の最も頼りになる戦友達以外の何物でもないのだ。
(一応今は神みたいな扱いだし、もしかしたらこいつらもそういう類の奴らかもしれない。違ったら適当に誤魔化せばいいな)
「よくぞ、我が召喚に応じた。忠義の者達よ。我こそは鮫の頂きに在りし、異端なる鮫の覇者・王である。名を、ワダツミ・トーリトンと言う。好きに呼ぶがいい」
すると、三体の内の一体が顔?を上げ、忠誠の姿勢を維持したままに声を上げる。
「我ら!偉大なる鮫の王、ワダツミ・トーリトン様に召喚されし鮫の騎士の精鋭。シャークノイド・エリートナイトであります!
これより主に仕えられることに忠誠を誓いまする。何卒!我らを重用して頂ければ、これに優る喜びはございませぬ!」
「うむ。お前達の働きに、期待しよう」
こうして、召喚がなされた。それらは
これらは大した戦力では無いが、しかし..........。
(ふ、ふふふ.............ふははははははは!!!!!よし!よし!よし!
有り得ん力が使えるというのが分かったのはデカすぎる収穫だ!これならあの軍団を直ぐに再現出来る!くくく!私の伝説の再臨だァ!!!
さぁて!!じゃんじゃんじゃんじゃん呼び出して!召喚して!一人鮫大国だぁ!!!!!!!!!)
決して表には出さないが、それはもうハッスルしまくっているのであった。
その後、気が遠くなるほど..........は流石にあれなので、とりあえずあと何回かの召喚だけ行い、また何日か日を跨いで召喚したり、テイムしている奴らを呼び出したりするのだった.............。
それはもう、色んな種類の色んな奴をたっくさんである。
その間、ワダツミ様はとてもいい笑顔をしていました。と、とある側仕えは後に語っていた。
◆◆◆◆◆
スレイン法国 法都シクルサンテクス 中央の神殿 とある一室
巨大な聖堂とも見間違えるほどの部屋。中央の聖壇に立つは彼らが新たに崇める神。この国を導くとされた鮫の神そのもので在る。
それに大勢の者が膝を着き、平伏している。
ともすればこれは、本当に聖堂で神に祈りを捧げる信者達にも見えるかもしれない。事実、それは決して間違いでもなかった。
ここでは六色全ての聖典の隊員が、どんな者であろうとも
いくら少数の人数で構成されており、せいぜいが一部隊100名近くしか居ない特殊部隊だとしても、流石に大きくとも一つの部屋に全聖典が揃えば、かなりの大人数に見える.......いや、事実それほどの規模の人数がここに押し寄せ、そして忠誠を誓うためにいるのだ。
その中で、一歩前に出た陽光聖典の隊長であるニグン・グリッド・ルーイン。そして、
そう、あの秘密裏な存在とされた漆黒聖典ですらも、この場に呼ばれたのだ。それほどに大事な事でもある、という面も勿論あるが、一番の理由は
流石に神本人にそんなことを言われたら断る訳にもいかない。
元々可能であれば来るつもりだったが、これにより全員がここへ招集される事となったのだ。
しかし、彼らとて代わりはそうそう居ない国の特殊部隊である。今にもしなければならない任務があれば其方を優先するだろう。
それでも彼らがここに全員揃っている理由は、それを現在進行形で代わりに神が行っているからである。正確には、神が召喚、あるいはテイムしていたものを使役して、それらに彼らの代わりをさせているのである。
彼らからしてみれば、自分達の代わりにわざわざ神の使いの神獣とも呼べるものたちに仕事を任せてしまっているというとてつもない状況ではあるのだが、その神本人が良いと言ってしまっているので、従うしかない。
しかし、呼びつけたのは自分だから気にするなとは言われても、気になるものは気になるのである。おまけに、それらの神獣は、大抵の隊員達の働きよりも上の成果を上げるのだ。
そんな感じで少々恐縮している漆黒聖典の面々と、一部の仕事があった他の聖典の者達。
だが、当の本人(神)は何も気にする様子は無く、ただ堂々とその言葉を授けるのだ。
「よく集まった、敬虔なる信徒達よ。私の急な招集にもかかわらず、自分達の仕事を差し置いてでも来てくれた事に感謝を示そう」
その天上から降り注ぐ御言葉を受け止め、前に出た二人は神へ傅く。
「「我ら六色聖典、これより貴方様の為、全身全霊を持って任務を遂行致します。偉大なる我らが神、鮫の神のワダツミ・トーリトン様に忠誠を」」
真なる忠誠を捧げるそれらに対して、神は再び御言葉を紡ぐ。
「その忠誠、受け入れよう。以後、お前達のこれまでどおりの見事な働きに、期待する。」
「「有り難き御言葉、胸に刻みます。」」
そうして彼等もまた、現世に降り立った一柱に忠誠を誓ったのであった。
厳正な空気のまま、かの神はその場を優雅な所作で立ち去る。
途中、立ち止まり何かを待っている素振りを見せた。
すぐ様隊員の一人が動こうとするも.......それより早く、かの神の使いの神獣と思われる鮫の獣が神の御前にやってくる。
「ギャルル」
「ご苦労」
「ギャール」
そのまま神は神獣に乗り、自身の御殿へと戻られて行った。
神が居なくなってからしばらくして、ようやく重苦しい空気の重圧が無くなった面々は息を吐く。もしかすると、この時が一番全部隊の息があっていたのかもしれない。
「はぁーーー.............物凄かったな、あれは.............」
「オーラ....というか、この場合は神気と言うのだろうか。そういうものを隠そうともせずに、わざと我々にぶつけていたのだろうな....。緊張どころでは無かったよ」
「どうですか、【絶死絶命】あなたが持った感想は」
「................あれが、本当の神..........初めて、恐ろしいと感じたわ。こんなの、あの龍王ほどよ、きっと」
「................まじかよ、あんたがそんなにビビるなんてさ、良いもん見れたわ。な?【無限魔力】?」
「.......どうしてそこで私に振るかな〜。.......まぁ、確かに凄い事だけどね〜。.......こんなの見れるの一生で一度有るか無いか」
「【疾風走破】ブルブル震えてたけどなっ!かく言う俺もさっきから膝がヤバいんだがよ」
そう、あの鮫の神。あろう事か、最初にお巫山戯で外していた探知阻害系の指輪を、今この時再び全部外していた。
勿論無計画では無く、実力重視の彼らに舐められない様にする為だが、本人の予想以上に溢れ出る神気により、比較的レベルの低い他の聖典のメンバーの中には、忠誠を誓ったポーズのまま気絶している者たちもいる。
その為彼らはその神気を真正面から浴びて、人によっては大変な事になっている。【占星千里】とかはちょっとトイレが必要なレベルである。
そんな感じで彼らが久々に任務の事以外で控えめな談笑をしていると、手前の奥側から土の神官長である、六色聖典のまとめ役のレイモンがやってくる。
「あー、怯えているところ悪いんだが、火滅聖典、陽光聖典、そして.......漆黒聖典の者達。.......いいかな?」
「どうしましたか?レイモン神官長。任務でしょうか。」
唐突な神官長の到来で場が引き締まるも、それは丁度いい雰囲気である。あくまでも先程のあんな目にはあわないだろう。それにしてもすぐに声がかかるとは、何か火急の任務でも入ったのだろうか。
「うむ。明日、君たちにはワダツミ様と、模擬戦闘訓練を行なって貰う」
「なるほど。ワダツミ様と戦闘訓練を.............」
.........................................
「「「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」」」
召喚/テイムモンスター詳細
◾︎シャークノイド・エリートナイト
Lv55程度の、人型鮫の騎士の中でも精鋭と呼ぶべき存在のモンスター。主に忠誠を誓い、人間の騎士さながらに忠義を尽くせる者達。質も高く、並の相手ならば余裕で蹴散らす強さを持つ。比較的強力な魔法を使える個体も存在する。主を守る事をどちらかと言うと優先する。
現地世界の人類圏で敵う相手はほぼ居ない。
魔法・スキル詳細
◾︎ ハイ・シャーク・サモナースキル
〈
前提: 〈
条件:ハイ・シャーク・サモナー
魔法とはまた別に召喚することができる回数制のスキル。1日に12回まで、レベル50~60後半程度の人型鮫か鮫魔獣を召喚出来る。
尚、ワダツミの習得クラスによって、召喚出来る数が一度につき一体ではなく三体にまで増えている。水辺を介して召喚するので、付近に水が全く無かったり、水辺で無いと失敗しやすく、召喚出来るモンスターの質が落ちる。
───────────────────────
あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!俺は昨日の昼前に小説を書いていたと思ったら、いつのまにか次の日の朝になっていた。な…何を言っているのかわからねーと思うが、私も何が起きたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。
はい。
感想や高評価を貰えると、私のモチベーションにも繋がりますのでよろしければ是非お願いします 。
投稿頻度
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一話ごとは短め、投稿間隔は早め。
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一話ごとは長め、投稿頻度は遅め。