オーバーロード-七極星- 作:シンメトリー飛行船
新年明けましておめでとうございます(大遅刻)
新しいポケモンやってました...............(唐突な懺悔)
このままだと更新しなくなりそうなんで上げます。
ルーファスさんとやらが、普段何処に居るか分からなかったので、特定エリア徘徊ユニットとなりました。ごめんよ.......。
例によって2話分以上あります。
スレイン法国 法都シクルサンテクスの聖殿の一区画
本来ならばそこに余人が入り込む余地は無く、例外としてあの御方だけは、気まぐれにそこを通りかかるくらいだろう。
かくいう私も例外の一人であり、それもそのはず。この場所は今の私の住処だからだ。
「ん.............あれ、ここって」
神官長達が部屋の前に立ち寄ることもあるが、余程の要件で無ければ中に入ってくる事もまず無い。そんなこともあってか、私に気づかれずに部屋に入れる賊が居るはずもなく。普段からこの部屋は私だけの空間だった。
勿論私が外へ出歩けば別だが、ここにいれば誰かとコミュニケーションを取らなくて済んでいたが為に、今のこの状況を正しく認識出来ないでいた。
そう、以前ならばこの部屋には私しか居ないはずだったのだ。
「おや、起きたか。寝覚めはどうだ?番外席次?それとも【絶死絶命】と呼んだ方が良いか?」
しかし、最近になってこの部屋に入ることのできる唯一の存在が増えた。それこそが新たに降臨した、我らが神である
「な、なぜここに?.............というか、これは..........」
「ああ、君はもろにうちのペットの全力攻撃を受けていたからな。レベル的にはあの中で一段、いや二段以上も格上だったとは言え心配になったんだよ。どうやら君の攻撃を脅威だと認識して、つい本気を出してしまったらしい」
今のこの状況を言葉で表すとするならば、そう..........大変不敬かもしれないが、その、今私は神に膝枕..........とやらをされているのでは?
「〜〜〜〜〜〜〜っっっ!?な、なにを.............いえ!直ぐに退きますからっ!」
ようやく頭がはっきりしてきて、冷静な判断が出来るようになったところで、不敬にも頭を乗せて寝ていた自分に驚き、またそんなことをする神にも動揺しつつも速やかに退こうとする。
「おっと、待った待った。せっかくだからこのままで良い。どうせ直ぐに此処を移動してしまうだろうから、しばらくこうしていよう。まぁ嫌だと言うなら無理にはしないが」
だがそれも神にがっしりと体を確保されて止められてしまう。さらに動揺してしまうが、しかし神へ返答しなければ。別に良いと言われるのならば、多少は甘えてもいいかもしれない。
「い、嫌だと言うわけでは.............そこまで仰られるならば..........失礼します」
「ああ、そうするといい。..................」
思えばこの様に誰かにもたれかかったり、膝枕されるなど何時ぶりだろうか。昔ナズルおばちゃんに、この様に無理矢理された様な気もする。
別に私の腕力なら退かすのは容易だったが、何となくそうしなかった。母親に一度もされなかったからこそ、そういう愛情に飢えていたのかもしれない。
そして、今も同じような状況なのかもしれない。あの時と違うのは、腕力でもっても敵わないというところだが。
すると、神が私の顔やら髪やら、アクセサリーやらを見ている。何か気になることでもあったのかと聞くと、何とも珍妙な返事が返ってきた。
「いや、なに。可愛らしいなと思ってな。戦闘中の気迫ある雰囲気を知っているからこそのギャップもあるだろうが、なんというか..........ああ、可愛らしいな」
急に至近距離でそんなことを言われたものだから、思わず面食らってしまった。しかも相手に見下げられて、何だか不思議な気持ちである。
さらに相手は神なので、余計に変な緊張も感じてしまう。あまり容姿を褒められるのは好きでは無いし(かと言ってファッションを馬鹿にしてきたら苛つくが)、今までは褒めてくる相手も隊長などの事情を知らない者が最初に1回だけ*1だった。その時の言葉も心が篭っていなかったけど。
今神に───ワダツミ様に言われた言葉は、とても心が篭っていたと思う。
我ながら、年甲斐も無くこんな事を考えてしまっているが、要は直接的に褒められて嬉しかったという事である。まあ、何時もよりもなんだか嬉しさが大きいのは、相手が神だからなのか。それとも単純にシチュエーションと伝え方のせいなのか。
「あの、カミサマ..........いえ、ワダツミ様..........えっと、他の者達は皆生きている───のでしょうか?」
恥ずかしさを誤魔化すために質問を投げかける。
どっちにしろ気になっていたことではあった。吹っ飛ばされた【時間乱流】や【天上天下】、それとおそらくあの鮫にやられたであろう【疾風走破】など。そのほかの面々の事もワダツミ様に聞いてみる。
その言葉にワダツミ様は、驚いたような笑みを零した後にこう言った。
「へえ.............なんというか、本当に意外というかギャップがあるんだな。そういう事は気にしないタイプだと思っていたし、話に聞いてたんだが.............うん、まぁもういいか。
全員無事?だよ。一人死んでしまったけれど、うちの上位の蘇生魔法を使える奴にやらせたし、力の喪失も殆どないと思う。
.........実を言うと、あれも想定の範囲内だったからさ。蘇生魔法やら回復魔法やらの対象にしてみたかったんだ。
こっちの過失だし、ちゃんと蘇生アイテムも使ってほぼどころか以前と変わらない状態で今も生きてると思うけど.......。模擬戦とは言え、こんな人を試すような真似をしてすまなかったね」
ワダツミ様がそう言ったあと、私に向かって謝罪してきた。どう考えても謝罪する体勢ではないし、というかさり気なく大事を口走っていたような気がするが..........。
それはまたの機会に置いておくとして、今はそれより気になってしまうことが出来たので、ワダツミ様に問い掛ける。
「とりあえずは分かり───ました..........。でもあの、口調が.......」
「ん?.......ああ、口調に関しては気にしないで。..........本当の事を言うとね、普段のあれで結構神経を使うんだ。常にやってるのは疲れてさ。
この部屋は良いね。神ならば入っても問題は無いけど、彼らは遠慮するみたいだし。一人になりたい時には絶好の場所だ」
そんな事を今私に明かしてしまっても良いのだろうか。それにしても、神も人のように人前で雰囲気を繕うのは疲れるのか。
.............感性も私みたいな感じだな。とか色んな思考が頭を駆け巡る。だがそんな思考を断ち切るが如く、ワダツミ様から続けて言葉が放たれる。
「それにしても、君は中々やるね。対処法を知らなければ危うく死んでいたところだったよ。..........まぁ、蘇生アイテムがあるから。一度や二度の死では終わらない可能性もあるけど、此処でそれが使えるという保証は無いからね。.......それも後で試すべきか.............」
そうなのだ。模擬戦とはいえ、危うく私は神を殺してしまうところだった。結果的には、ワダツミ様がこう言うように一度殺した程度では問題は無かったかもしれないが。それでも確か蘇生アイテムとやらは貴重な代物だ。神々の宝物殿に一つや二つしか無いことを考えると、やはり、殺してしまわずに済んで良かったと思う。
「................申し訳ありませんでした.......。あまりの闘いに、我を忘れていて.......」
「いや、先程言ったでしょう?こちらにも模擬戦とは言え落ち度があったと。もしそっちが我................えーーーと、私を殺してしまうかもしれない事を憂うなら、こっちだってお前...................えーーと、貴方の仲間を死に至らしめた訳だし。
蘇生したとはいえ、結局それは一度死んだ事に..........私が1回死んだこととも変わりないのだし、気にする必要は無いよ。気になると言うのなら..........私の所業と、相殺と言う形で手打ちにしない?」
確かに彼らの命もタダでは無い。私達からすれば、ようやく降臨して下さった救世の神に居なくなられない為にも、多少の犠牲は厭わないが。それでも何も思わない訳では無い。蘇生されたとは言え、彼らのことも考えれば神からのお咎めが無いのも当然かもしれない。
というか、そもそもあれは神が挑発してきたのだし、乗った私は悪くない.............筈だ。
「はい。ならこれで両方とも遺恨は無しとしたい.......です。神官長達がどうするのかは知りませんが....」
「ああ、こちらとしてもその方が助かるかな。ありがとう。神官長達には別で話は通してあるし、そもそも始まる前から分かっていた者も何人かいるよ。その辺のことはこっちで上手く話をつけておくから、後は本人たち次第だけれど」
元々、全力で来いとの命令に全員が従った形なのだ。皆その神の命に従ったに過ぎない。..........私は唯一、この鎌以外の神々の武装は持って来れなかったけれど、それでもあの鎧以外はほとんど全力で挑めたはずだ。
「ワダツミ様.............私は本来ならばもっと強い防具をつけていたので、本当の完全装備とは行か───ませんでしたが..........それでも私の限りない全力は出せたと思───います。
.............期待には答えられましたでしょうか.......」
「ああ、勿論。皆いい動きだった。
とは言え、やはり私から見ればまだまだだったが。これからもっと戦ってレベリングをさせて行こうと思うよ」
「れべりんぐ.......確か、ぷれいやー様達の間で伝えられている特別な鍛錬方法─────効率的に強くなる儀式.........でしたよね?私も昔、無理矢理母にそれで鍛えさせられました。とは言え、伝わっているのも不完全なもののようですが」
「ああ、そうらしいね。その辺も丁度これからの課題として取り組んでいこうと思っていたところだったんだ。模擬戦もその一環でもあるね。
.............あ、そうそう。ところで貴方のフル装備って?」
神が興味深そうに聞いてくるので、簡潔に分かりやすく答える。ある程度把握しているという話だったが、全てを把握している訳ではないということなのだろうか。
「本来なら神々の装備は、あの鎌に加えて風神の鎧を装着していたんです。何故かあの鎧は許可が降りませんでしたが、もし装備出来ていたら最後のあの一撃も何とか受けきれていたと思───います」
するとワダツミ様は、納得したように頷いてその理由を述べた。
「なるほど。それは多分、私が事前に「貴重な防具などは壊してしまうかもしれないから、余程大事なものならば使わないでくれ」と頼んだからかもしれないね。武器ならば傷つけずに何とかなるだろうし、打ち合うだけで使えなくなる武器は使わない方がいい。そこそこの性能の防具も、私ならある程度余ってるしね。
ただ流石に
.........それはそれとして、全力の貴方とも戦っては見たかったけどね」
「そうだったん───ですか.............」
「.......ふふっ。無理に敬語で話さなくてもいいよ。なんかぎこちないし。私もそっちの方が楽だから。皆の手前ではそんなことは出来ないけどね?」
ずっとさっきからぎこちない敬語を使っていることを見兼ねたのか、ワダツミ様が気を使ってくれた。私としてもその方が楽だし、恐れ多いけど、少なくとも二人きりの時は普段の口調にさせてもらう。
「ふむ、しかし風神.............輝煌天使ねこにゃんか..........」
ワダツミ様が顎に手を当てて考える。何かあったのかと聞けば、何やら風神である輝煌天使ねこにゃん様の名前には、この国の文献で調べる前から心当たりがあったらしい。
何でも一度だけ同じ“カリバ”とやらでレベリングしていたとか。しかし、それ以上は特になにかある訳でもなく、この話はここで終わった。
「さてと、もう少ししたら別のところに用があるから行かなきゃいけないんだけど.............。それまでもうちょっとだけ、何か話そうか」
「あ、ええっと..........はい──────じゃなくて、うん」
未だにこの神との対応は慣れないが、何となく要領は掴めてきた。
とりあえず、何から話そうか。といっても、ワダツミ様を喜ばせるような話題などあるだろうか。そもそも、同年代の相手がこの国に居ないので、どういった話題が良いのかも分からない。
ファッションの話とかした方が良いのだろうか?いや、ワダツミ様はどちらかというと武芸に関することの方が良いのでは?それに、なんか自然に膝枕されているが、そもそもこういうのは逆に私がするべきなのではないだろうか?いや、そんなこと死んでも嫌だが。別に神に限った話では無く、そんなことを私はしないという風に思っている。
とにかく。
こういう感じの
普段から私よりも強ければ、子を孕んでも良いなどと言っているが、あれは結婚をせがまれないための建前に過ぎないし、本当のところはそんな奴が居てもあまり乗り気では無い。
強い子供にしか興味が無いなど、話に聞く私の父の事を考えたら有り得ない。これらは全て、あの母親への皮肉でもあるのだ。それを周りの人間が真に受けているだけである。
と、そんな風に思考の海につい耽ってしまっていると、ワダツミ様の方から話題を振ってくれた。
「そうだね..........例えば、何か困っている事は無い?........小さな事でも構わないけど、何か大事な悩みでも良い。そういうのは話すだけでも楽になるものだから。実を言うと相談室的なものを作ろうかとも思っているし」
丁度、私の思考を見透かしたかの如く聞かれたものだから、話そうかとも思ってしまう。
結局、そこそこの時間無言で迷った挙句、前々から聞いてみたかったこととも合わせて、神に話してみることにした。..........この私の身の上を。
「実は..........私は.........................」
私の出生について、厳しい教育について、法国での待遇について。それから現在の立ち位置に対して思うことや、もし実際に世界の危機が訪れた時の自身の気持ち..........。
私が話している間、神は静かに頷きながら聞いていた。利き上手なのか、本来は言おうとしなかったことまでいつの間にか声に出ていた。
ワダツミ様が特に興味を示していたのが、私の出生についてとその環境についてだ。
現在戦争中の敵国の王である、私の父らしいデケムと、当時法国の漆黒聖典の切り札である母親のファーインから生まれたこと。母親の憎しみが私に向けられて、虐待とも言える鍛錬をずっとさせられていたこと。当時の神官長達や法国の民の私に対する扱い。今まで百年程の間、任務以外はこの聖殿辺りに縛られていたこと。
それから、私がこの国や民や仲間をそれでも大事に思っていることや、もしこの国が戦争を本格的にした時に、私が手を貸すこと。世界を守る気持ちがあるという事も話した。
その時も神は、私の話を静かに聞いてくれた。
なんだかまるで、懺悔をしているような気持ちになったのだ。そのせいか、いつの間にか私は頬に水滴が垂れていて..........それが自分の涙だとわかった時、さらに追い泣きしてしまった。大声で泣いた訳ではなかったが、それでも何処か心の堰き止めがなくなったようだった。
ここまで話してしまうほど、心を神に開いているなんて..........会ったばかりなのに、不思議である。死闘を繰り広げたからこそ、一種の信頼的なものが芽生えている可能性もあるが、それだけでは無いように思う。
何と言うか、思わず従ってしまいそうな気分になる。年上の女性に感じる包容力のようなものだ。私は長らく味わっていなかったが、そういう風にされるのが心地よかったからなのだろうか?
相手は
「...................よく話してくれたね。
.......でも、慰めの言葉をかけるだけではダメだろうと思う.............。
だから、こっちも自分のことを話しておくね」
そうして、今度はワダツミ様が自身について語り始めた。
「まず、最初に言っておくけれど.............
私はそこまで大した存在じゃない。人を従えることや、考えることがある程度得意なだけで、この力も気づけば持っていたものだ。だから貴方達が神だと崇めているのは、あくまで偶像の私であって私自身ではない」
その一言で私は唖然としてしまって、神に対して何も言葉を返せなかった。だってそんなこと、言ってしまって..........明かしてしまって良いのだろうかと思う。
続けてワダツミ様は、私の実力は貴方よりも上だけれど、決して絶対では無い。純粋な戦士や戦闘に特化した魔法職ではない為に、貴方でも届きうる存在だと教えて下さった。
「だからこそ、今ここで貴方に早めに正体を明かしておきたい。貴方の秘密を共有した以上、私の秘密も教えないとね?」
そういうワダツミ様は、私に向かって微笑んだ。
ワダツミ様曰く、かつては荒廃した世界の中で、支配者層に位置する一家系の一人娘だったそうだ。重い重圧がのしかかるが故に、マトモな人格形成はされずに、色々と大変な目に遭ってきたと。
唯一自分が癒される時間が、部屋で飼っていた鮫のシロであり、そこから鮫にハマったのだと。
そこから紆余曲折あり、様々な冒険をして今の力を得たところで、この世界に飛ばされて来た...........ということらしい。途中難しかったり、知らない言葉だったせいでこの辺は曖昧だが、そういう事を言っていた。
最後に、再びワダツミ様は自分は神と崇められるような存在では無いと締めくくった。
「もちろん、貴方だから言ったことであって、神官長達にもこの事は話していないけど..........どうせ言っても説得力が無いしね。でも貴方にはきちんと言っておくべきだと思って................
幻滅..........したかな?」
とんでもない、と思った。むしろ、自分と似た境遇に親近感まで湧いている。相手が天上の存在だと思っていたからこそ、より親密で俗に感じるだけかも知れないが、それでも私はこの神................いや、この人に悪感情はもう持ててはいなかった。
「ううん、そんなことは...........。
貴方も、大変だったのね。何だか不謹慎かもしれないけど、仲間が居るって.........少し安心するわ」
私は思った通りのことを言った。
するとワダツミ様は嬉しそうに微笑んで
「別に良いんだよ、共有出来る仲間が一人も居ないのが辛いのは、自分が一番よく知ってるから」
そう言っていた。
しばらくして、そろそろ時間だとワダツミ様が立とうとしたので、私もずっと乗っけていた頭を退けて、ワダツミ様に向き直る。
なんだか名残惜しいが、再びこの部屋には来ることもあるだろうと言われたので、楽しみにしておくと返した。
「ねえ、【絶死絶命】.............いや、この名前は呼ばなくていか。
.............アンティリーネ。もし良ければ、これからも私に力を貸してくれる?大勢の鮫達が居ても、心の内を話せるのとそうじゃないのとでは大違いだから」
「ええ........もちろん。それを話してくれた事は、私嬉しかったから。私のことを認めてくれた事も。だから、これからも貴方と話したいわ」
きっと、いくら私の秘密を聞いたとはいえ自分の..........神としての自分を否定するのは、怖かっただろうから。だから私も、その思いに答えるのだ。下手な慰めよりも、この悲しみを共有してくれたからこそである。
そういえば、と去る前に一つだけ。ずっと気になっていた事を聞いた。どうせなら全部今聞いてしまえと思ったのだ。
「その.........................ワダツミ様は、男性.......なのよね?でも、凄い女性らしさがあると言うか、別に馬鹿にしてる訳じゃ無いんだけど......。さっきも自分の事を一人娘と言っていたし..........」
それを聞いて初めてワダツミ様は、ピシャリと動きを止めて、吃驚した顔をしていた。
「.............え?男性?.......ちょ、ちょっと待って。い、いや確かに皆の反応が時々おかしかったけど..........え?まさか、そんな馬鹿な.......?」
明らかに動揺しているので、どうしたのか聞くと、どうやらワダツミ様は元々女性だったらしいのだが、この世界に来る拍子に、姿が変わると共にその姿と同じ性別になったんだとか。“あばたー”とか言うらしい。
よく分からないが、とにかく性別が変わってしまっていると聞き、物凄く焦っていた。私はてっきり、もう把握しているものだと思っていたのだが.......。
「ま、まじか.......皆にもそう思われてるのは不味いな.......。でも確認する時間無いくらい忙しかった.......。ああ、でもなぁ.......」
何だか焦っているワダツミ様を見るのは新鮮で、少し面白い。
思わずクスリと笑ってしまったが、ワダツミ様はそれを見て恥ずかしそうに咳払いをして仕切り直していた。
「ん"ん"ん".............まぁ、事実今は男になってしまっているから、今後の事はまた後で話し合っておこう。とりあえず、早速性別の誤解は解くのに協力して欲しい..........」
何だかおかしくて、また少しだけ笑いが零れる。その後、ワダツミ様にはっきりと、感謝も込めてこう言った。
「ええ、もちろん。任せて、ワダツミ様」
こうして私は、この日から
◆◆◆◆◆
聖殿 廊下
とある一区画の部屋を後にしたワダツミは、前よりも軽やかに廊下を歩いていた。
そんな中、一人の男性が声をかけて来る。
みすぼらしい槍とは対称に、衣装の施された防具と、精悍で若々しい顔を持つ青年。実際はまだ10代だということを聞いて、ワダツミが実際に見た時は驚いたものだ。
「ワダツミ様。ご機嫌いかがでしょうか。..........と、聞くまでもありませんでしたね」
「ああ、【隊長】か。少し、いい事があったんだよ。まあそれはいい。それより、今回の模擬戦ではお疲れ様....と言ったところだな」
「いえ、神のおかげで何かを掴めた気がします。とても実りのある戦いでしたよ」
足がかりとしての思惑や、自身の能力なんかの考察はあっても、あの模擬戦自体にはそんなつもりは無かったんだけどな.......。と、若干苦笑気味に言葉を流す。こういう扱いはやはり疲れるなと、アンティリーネに胸の内を語り合って良かったと思う。
「ところで、お前は彼女に対してどう思う。率直に聞かせて欲しい」
そう聞くと、少しだけ考えたあと隊長が口を開く。
「彼女は私よりも強い、まさに神人中の神人と言えるでしょう。この国の切り札であり、もっとも強い存在です...............。
ただ、私個人の感想を述べさせて貰うならば、彼女は普通の女性です。まぁ、最初は色々と酷い目にあったので、その時は恨みもしましたが...................共に死線を潜り抜け、普段から接していれば、少なくとも最低限の人間性は持ち合わせていると思います。
確かに嗜好があれなとこはありますが.......いえ、これは彼女に怒られてしまいますのでこの辺で。それに彼女はもっと..........ですが、漆黒聖典もそれ以外の仲間も、皆大事にしたいと思っています」
なるほど。確かに、彼が隊長なことはあるなとワダツミは思った。同時にまだ若いのにしっかりしているし、アンティリーネが比較的に話す方だと言うのも理由が分かった。
「ずっと居た訳でもないのに、随分思い入れがあるようだな?」
「ははは、確かにそうですね。私はまだこの部隊に来て1年と数ヶ月しか経っていませんが、それでも隊長の席を預かるものとして、精進していくつもりです」
「.......そうか」
何と言うか、彼も彼で大変そうだなとワダツミは思う。でも、自分で何とかしてくれそうな安心感があるのは何故だろうか。
「他の面子は、もう大丈夫そうか?」
「はい。神が呼び出された神獣たちや、神の使いである亜人達により適切な治療が施されています。もうまもなく全員が完治しているかと」
「そうか、それは良い。さて、我は向かうべきところがある故に先に行かせて貰う」
「了解しました。では、ご案内します」
「そうか?感謝する。.............ああ、そうだ隊長」
「はい、何でしょうか?」
さあ行こうというところで、こちらに振り返った隊長に対して、ワダツミはこう言った。
「よく今まで頑張った。これからも漆黒聖典は任せるぞ」
と。
隊長は、万感の思いで感激しながら道中を案内した。
...............................
しばらくして、ワダツミはとある部屋の前に辿り着いた。
そこは第九席次【疾風走破】..........つまりクレマンティーヌがいる部屋であり、今回は
扉を開けて、中に居る女性と目が合う。模擬戦でワダツミ自慢のペットに宙に投げ出されて起きながら、何とか受身をとってあの場でも最後の方まで戦っていた軽戦士である。
隊長には部屋の外で待っているように指示をして、完全に中に入る。
「さて..........待たせたかな」
「い、いえ。あの..........先程は御無礼を........どうか御容赦ください....」
しかし、今相対している彼女は何というか.............とても借りて来た猫のような感じになっている。アンティリーネとは別のギャップがあるな..........とか思いながらワダツミは用意されていた椅子に腰掛ける。
「問題ないとも。最初から君らの行為は全て有事の際のものだと分別をつけているのだから。無闇に罰するような真似はしない、と約束しよう」
そう言い切ることで、ようやく納得してくれたようだ。全く、この国の人間は総じて信心深過ぎると、ワダツミは心の中でため息を吐く。六大神とやらに文句を言ってやりたい気分だが、今は目の前のことに集中しなければと、ワダツミは切り替える。
だが、この女性はそれだけでは無いのだ。勿論相手が神だからというのも有るのだろうが、それとは別に。何だかなにかに怯えて、それに憎悪しているようにも感じ取れる。その一部分がこの態度や、あの模擬戦での態度にも現れているのだろう。と、ワダツミは当たりをつける。
「ふむ、確か.......名を、クレマンティーヌ.......と言ったか?」
「は、はい!そうでございます!」
一応分かりきっていたことだが、再び質問をする。あくまでこの場だけの情報で判断したと相手に示すためだ。ワダツミがよく使う手法である。
「そう怯えずとも良い。我はただ話に来ただけなのだから。..........それとも、別の事が気がかりかな?」
「い、いえっ..........。そんなことはございません。....ただ....」
「ただ.............なんだ?申してみよ」
ワダツミは、恐らくはあの事だろうなと頭に浮かべる。事前にここ最近の事件や過去の事件。更には神官長を揺さぶって吐かせた情報まで、今自分にはかなりの知識アドバンテージがある。
ちょっとの態度だけでも、その人物が何を気にしているかくらいは大体わかる。特に、このクレマンティーヌという者は、優先的に解決すべき問題を抱えていることが、情報収集で明らかになったのだ。
今まで内に警戒を割かなかった神官たちの落ち度と言ってしまえばそれまでだが、こういう問題は、神の強権を振りかざしてでも、早めに解決した方が良いのだ。他のメンバーも大なり小なり問題はあるようだが、まずはこの者だ。どうせなら、彼女を相談室の客1号にしようと、ワダツミは意気込んでいた。
「その、この部屋に..........ク.......、兄が来るんですよね?」
「ああ、その通りだ」
「あの、私別の場所が良いかなぁ〜なんて.......あはは」
「いや、申し訳ないがお前にはここに居てもらう。これから来る人物にも関係のある事だしな」
完全に退路を絶たれたクレマンティーヌは青い顔になっている。一体自分の部屋(といっても本来の住居はまた別だが)に何の用なのか。そもそも何故あのクソ兄貴と、我らが神と同時に話さなければいけないのかなど疑問は尽きない。
すると、神がクレマンティーヌに触れた。何故か申し訳なさそうに優しく頭を撫でてくるものだから、彼女は思わず飛び退いてしまった。
「________ッ!も、申し訳ございません!このような.......」
「.....構わない。少し急だったな。すまない、ついな」
なんだこの積極的すぎる男は..........とクレマンティーヌは思った。
しばらく微妙な空気が続いていた。やがて、耐え切れなくなったのかクレマンティーヌが口を開く。
「あの..........なぜ、私の部屋に.......それにお話とは?兄を呼んだ理由を聞かせて貰えないでしょうか」
それに対してワダツミは理由を述べる。
「クレマンティーヌ..........お前は確かに優れた戦士なのかもしれない。その技術や胆力、肉体の精強さは目を見張るものがあるだろう」
「は、はぁ..........ありがとうございます..「だが」.......は、はいっ!?」
「戦士としては一流でも、腹黒さ..........いや、違うな。本心を隠すのは三流と言ったところだろう」
なんだろう、なぜ急にダメ出しされているのだろうとクレマンティーヌは思った。しかし言われていることは大分的を得ており、神は心でも読めるのかと、神という存在に少し嫌悪感を抱く。
「質問に答えよう。お前の部屋に来たのはきちんと逃げられずに話をする為で、話の内容はお前の身の上についてだ。それからお前の兄を呼んだのは、その人物こそが元凶の一端を担っているからだ」
あんまりにもストレートな言い草だったために、クレマンティーヌは固まってしまった。ワダツミは続ける。
「お前はかつて、酷い仕打ちを受けていただろう?それにより人格が歪む..........有り得る話だろう。.......実を言うとな、我もそういう時期があったのだ」
衝撃的な発言を聞き、目を丸くするクレマンティーヌ。そんな発言はまだまだ続く。
「詳しくは語らない.......。お前が語らないならばな?とにかく、我もお前の境遇には思うところがあるのだよ。
一度武器を交えた以上、無関係では無いだろう?別に下手な同情をするつもりはないが.......そういう目に遭った者としては、往々にしてただ穏やかに寄り添って欲しいものだ。..........何も言わずにな」
「え、..........あの、まさかそれだけの為に、私の所へ来たのですか?」
「ああ。ついでだからな、お前の兄にも一言言っておこうと思っていたのだ」
人間離れならぬ神離れした言葉を連続で聞いたせいか、クレマンティーヌは混乱していた。
なんとも慈悲深い..........いや、細かな事も気にする神だなと思うクレマンティーヌだが、不思議と神に気にかけて貰うのは悪い気はしなかった。最も、緊張はさらにおかしなくらい増しているが。
しかし、展開は更に加速していく。
神と二人で、ぎこちなくも世間話をしていたところで、コンコンと扉をノックする音が響く。
それから扉の向こう側から、聞きたくもない声───
「ただいま参りました。漆黒聖典第五席次、【一人師団】でございます。ワダツミ様、入ってもよろしいでしょうか」
その声を聞いた神が入室を許可する。なんで許可するんだよと思いながらも、そういえば最初からこれが神の目的だったのだから仕方ないと、腹を括るクレマンティーヌ。
「改めて、我らが神に御目通しをさせて頂き、誠に感謝申し上げます。つきましては、お待ちになられている間、彼女が何か不敬を働いていたりはしていないでしょうか。何分腕は確かなのですが、性格に問題がありまして」
そうして入って来たクアイエッセには視線を向けず、なるべくワダツミなどの方を向くようにする。向こうも何かを察してか、こちらに声をかけてくる様子は無い。
「問題無い。それより、よく来たな【一人師団】....我の部屋ではないが、まぁ座るが良い。そして....まずはご苦労と言っておこう。模擬戦での立ち回りは、不利ながらも見事だったぞ」
「お褒めに預かり、恐縮です。ワダツミ様も、見事な腕前でした。あれほどの魔獣を同時に操るとは、それだけではなく、亜人まで!感服致しました」
世間話を続ける二人を見ながら、兄に向かってボロだせ!とクレマンティーヌは思っていた。
いや、そもそもあのクソ兄貴のことだから、神がいる間は慇懃な態度を貫くだろうと腹の中で舌打ちする。よく腹黒そうと言われるが、あの兄の方がよっぽど腹黒い。面と向かって話すのも気持ち悪いくらいだ。
優秀な兄、比較されて窮屈な思いをして来たのは、確かに私の根幹にも関わってくるだろう。
いつも親の愛情は兄にばかり注がれていたし、兄がいつも優先だった。
何より、あの兄は恐らくはサイコパスである。まだ弱かった頃、私が
このように、クレマンティーヌは様々なことから兄を軽蔑し、嫌悪していた。
彼女が歪んだ人格を持っているのは、そういったことや、他にも任務での人殺しや、友人の死を目撃したこと、拷問を受けた事などが原因である。
にも、関わらず。クアイエッセは平然とこの部隊で一人師団として持て囃されていて、英雄様のような扱いを受けている。彼女の事は、最低限隊員として接すること以外は気にも留めないのだ。
そういう事があったからこそ、近々このクソみたいな国から脱走して、何かしらの宝をパクってトンズラするつもりだった。
だが、神の降臨とあってはそういう訳にも行かない。それに何だかこの神は話が通じそうだし、上手く行けば私に都合のいいように協力してくれるかもしれないなと、彼女は思い浮かぶ。
そう考えている間にも、ワダツミとクアイエッセは会話を進めていた。内容は、何と直球にもクレマンティーヌのことであった。
「では、そろそろ本題に入らせてもらう。ズバリ聞こう、クレマンティーヌは君にとって何だ?クレマンティーヌは大事か?」
他にもっと聞き方は無いのかとツッコミたくなったが、しょうがない。一応ちゃちゃは入れずに回答を待つクレマンティーヌ。
「..........ええ、それはもちろん。クレマンティーヌは私にとって大事な妹です。とても大切ですよ」
虫唾が走る台詞だったが、この状況で割り込む訳にも行かず、神の続きの言葉を待つクレマンティーヌ。
「そうか。ならば、彼女がこの状況で一番欲しいものが何か知っているか?」
「.....それは.......すみません。さすがにそこまでは....」
「そうか、ならば教えよう。クレマンティーヌが欲しいものとは、クアイエッセ.......お前という兄の呪縛からの解放だよ。自由になるとも言うかな」
この神無茶苦茶過ぎるだろうとまたもやクレマンティーヌは突っ込みたくなった。人の機微とか分からないのかなとも思ったが、そんなことは無い。むしろワダツミは人の機微に人一倍鋭いのである。
「...............................」
沈黙してしまったクアイエッセ。その様子を見て、少し気分が晴れたクレマンティーヌだが、神の追撃は終わらなかった。
「別に今すぐどうこうしろと言うのではない。しかし、お前がその調子ならば、いつか彼女は取り返しのつかないことをする.......あるいは巻き込まれてしまうかもしれないな。それを背負う覚悟はあるのか?」
「...................ええ、もちろん。彼女が例え何をしたとしても、その責任を背負う気でいます。彼女の失態は全て私の責任でもあるのですから」
「.........................は?」
その時、クレマンティーヌがクアイエッセに飛び掛った。ワダツミは反応出来たが、クレマンティーヌからは殺気よりも怒りを強く感じた為、少し様子を見ようと踏みとどまる。
反応出来たのはクアイエッセも同じではあったが、流石に純戦士職であるクレマンティーヌの動きには追いつけず、胸ぐらを掴まれる。最も、彼も動こうとはしていなかったが。
「ふざけんなよ!!クソ兄貴!!何が私の責任をテメェが背負うだ!!今までアタシになんもしてこなかった癖によく言えるなぁ!!あぁ!?その腐った性根いい加減ぶっ潰してやる!!!“ 刺し殺して”終わらせてやる!!!覚悟しやが──────」
クレマンティーヌがさらに押し倒して馬乗りなろうと飛び上がり、腰に差しているスティレットで刺そうとする。しかしその前にクアイエッセが応えるように声を上げる。
「私はッ!!!!」
「__________ッ!?あっ─────────?」
急に今まで出したことの無いような大声を出され、クレマンティーヌは動揺する。その拍子にバランスを崩し、2人纏めて倒れ込んでしまった。
「_______ッ!!!」
本来であれば、クレマンティーヌがバランスを崩すなど有り得ないが、度重なる予想外に動揺していた。
そして彼女は、次の瞬間に自分の状態を見て、今日一番───いや、一生で一番の驚きをした。
「________ってぇ..........................は?」
それは、今まで最悪だと思っていたものが、視点を変えて見れば意外とそうでもなかったように。この世で人間の中では一番憎悪を抱いていたはずの人物が自分の下敷きになり、自身が体を打ち付けないように守っていた事だった。
「...................おい、どういうことだよ..........これ。なんでテメェが、クソ兄貴がアタシの事を庇ってんだよ...........」
「...................」
固まる空気に、クレマンティーヌもあまり手を出しづらくなってしまった。偶然だとか、なんの事だととぼけられればまだ怒りを保てたものの、何故か黙られてしまった。そんな態度を取られたばかりに、クレマンティーヌが呆気に取られていると、ワダツミがそのタイミングを見計らって口を挟んでくる。
「.............水をさしてすまない。少しいいかな?..........クレマンティーヌ。君がどこまで知っているのか知らないが、彼は一度も君の事を苦しめ........裏切ってなどいないよ」
「..........え?.....は?あ、あの、何を言っている.......のか....?」
理解し難い.......いや、脳が理解を拒んでいるが為に、その言葉を素直に呑み込めない。
「さて、そろそろ正直に向き合ったらどうだ?【一人師団】。いや、クアイエッセ・ハイゼア・クインティア。お前のその自身で解決しようとするところは美徳でもあるが、言葉足らずなとこは悪い癖だな。それも、妹限定で飛びっきりの」
さっきから神が何を言っているのか理解出来ない。しかし、そんなクレマンティーヌにはお構い無しに、クアイエッセが口を開く。
「.............流石.......ワダツミ様はお見通しですか。上手く隠したつもりだったのですが.......」
「この際ハッキリ言っておくが、そうやって隠れて誰かの為に動くのは悪いことではないが、女からすれば嫌なことこの上ないからな。
特に、過去救えなかった家族を助けようと奮闘していることに対して自己陶酔しているような男は特にな」
「.............はは、敵いませんね。..........ああ、本当に。余りにも不敬ですが、貴方がいなければ良かったと、今凄く思っていますよ」
「そうか。我は今、猛烈に自分がお前達に会えて良かったと思っているよ」
クアイエッセの言葉に、ワダツミが笑顔で返す。彼は物凄い顔をしているが、クレマンティーヌからすれば、何が何だかという状況であった。
「もう、誤魔化しは効かないな?...........自分で話したらどうだ?」
神の言葉に、天井を仰ぎ見るクアイエッセ。しばらくした後、観念したように言葉を紡ぎ始めた。
「.......最初は、特に気にしていませんでした。確かに私の方が優秀でしたし、褒められるのも当然の事だと....。しかし、あの時の私は未熟だった。裏で彼女がどんな躾をされているかも気づきませんでした。
.......その後、私も妹も法国で実力を少しずつ伸ばし始めていた時も、結局私の知らない所で、妹は酷い目に遭わされていた.......。.......武力を使う所で、女性一人だけで居ればどんな目に遭わされてしまうかを、分かっていなかったのです。あの頃の未熟な私はそれにも関わらず、ずっと魔獣の事ばかりかまけていました。.......知らないと言っても許されない事とはわかっています。本当は、私にそんな事を言う資格が無いことも。
それから、漆黒聖典に入って.......今度こそは妹を守ってみせると決意しました..........。しかし、私はもう既に嫌われてしまっているようでして....。当然の事です。結局私は、ワダツミ様の言う通りにコソコソと裏で動いていた訳です」
「.............はっ、何をべらべらと....アンタがやって来た所業に変わりは無いだろうが.......」
その言葉を全て言い終わった後、神がこう言った。
「うん。お前はまずはその胡散臭さを直した方がいいな、とだけ言っておこう。まぁ、身内ばかりに構っていれば依怙贔屓だと言われて、余計に面倒な事態になってしまうという考えも、分からなくはないがな。それにしてもだ」
すると今度は、神がクレマンティーヌに向けて言葉を放つ。
「君が男達に乱暴されている間、彼はまた別の男達に行き先を妨害されていたらしい。街中だった為、魔獣も連れずにたった一人で立ち向かったそうだぞ」
「それって..........」
したくもない可能性を想像する。そして、答えが告げられた。
「彼は.......最初から君の事を助けに行こうとしていたという事だな。.......ああ、その男達も他の実行犯たちと同じように処罰されたようだから。気にする必要は無い。
.............これらの情報は、この国の情報網をかき集めていた時に発覚したことだ。神官長達に確認して、事実確認をした書類にきちんと国の司法機関名義で記されていたから間違い無い。
念の為、我の鮫たちにも情報を精査させたからな..........
*2ついさっき届いた新鮮な情報だ。まぁ、生き証人達に聞いたから、間違いないぞ?」
そう神に保証されて、ようやく拒絶していた脳が認めた。いきり立っていたクレマンティーヌは、その場に崩れ落ちてしまった。
「最近彼は君の為に、裏で君にちょっかいを掛けてきている者達を極めて平和的に追い払っていたんだよ。
............相当な数をな。君はかなり多くの人間に因縁を持たれているようだな?..........別にその性格を直せとも言わないし、任務上仕方ないことであったのだろう。だが、少しは治す努力をしておくといい、少しづつでもいいのだからな...............先輩からの忠告だ。
..........何かあれば、そこの男をこき使うがいい。どうせまだ一部、正義感に酔っているんだ。目を覚まさせてやれ」
そうして、言いたいことだけ言ったあとワダツミは、部屋の外に出ていこうとする。
兄だけでなく、神にも何か言ってやりたくなったクレマンティーヌだが、それよりも..........
「..........おい、クソ兄貴.......」
「...................」
「...................今度、私の任務に着いて来やがれ.......」
「.............それは───?」
「それから、私のやる事にいちいち口挟むんじゃねぇ。言っとくけどまだ私はアンタの事を認めた訳じゃねーからな。.......でも、このままでいるのも癪だ。一発思いっきり“ぶん殴って”やる。それまで勝手にウロチョロしてんじゃねえぞ」
「.................ああ..........そうか。.......ふふっ、そうですか」
「うわ、なんだこいつ気持ち悪ぃ」
もう大丈夫そうだと感じたワダツミは、一応隊長に、何かあったら知らせてくれと伝えて部屋を後にする。
後は本人達同士の問題だ。ワダツミはそう思い、自身がやる事の為に儀式の行われる棟に向かって行った。
◆◆◆◆◆
あーあ、全く。なーにが兄弟喧嘩ですか。あんな深刻な件だと思わんかったわ。私じゃなかったら重すぎて吐いてるわ。
いや、やばい今吐きそう。
ふぅ..........
きっと、今までプライベートでそこまで言ってくれる人物が居なかったんだろうな。人事運が皆無だな彼らは...............神である私がちょっかいをかけて、ようやくか.................。
さて、じゃあ時間も無いし。お次はあそこに行きますか。
やれやれ、なんでこの国はこんな胸糞な事が多いんだか。..........いや、元の世界も大概だったな。
ま、私の知ったこっちゃないけど。今私がいる所が現実ってね。
そんなこんなで、はい。巫女姫たちのいる部屋にとうちゃーく。
はぁーーーーーー(クソデカ溜息)
マジでさぁ..........法国どうしてやろうか。いや、こんなに疲弊した人間種が悪いから、ある意味彼らだけの責任じゃないんだけど..........。
んじゃ、予め待機させてた鮫達ーー。うん、ちゃんと居るね。準備は万端?......................おーけーおーけー。.......あー?神官長達は頷いてたけど、元老院の奴らが何か言ってきたって?
鮫の餌にしてやろうか?って言っとけ。
ほい、じゃー始めてね。あ、そこの子からね。うん。
...................え?受け止めてやって欲しい?..............あーー、確かにお前らじゃ見た目やばいもんな..............。
よしっと.......こうやって、....抱きとめてるからほら早くやっちゃって。
...........................
............................
............................
夢の中にいる。ずっと夢の中。
一生覚めることはなく、覚めてしまった時が私の終わりだ。
だから、国の為にこの身を捧げた時点で、私の人生は終わりだと、そう思っていた。
別にそれが嫌な訳ではなかった。神に仕える巫女として、立派に送り出されたのだ。家だって、元々素質のある血筋だった。今更どうとも思わない。私一人が勝手を言ったところで、他の子が犠牲になるだけなのだ。
.............だから、別に。どうも思わない。
確かに、未練はあるかもしれない。やりたいことだって、あった。本当は私だってこんなのは嫌だ。
それでも。私達がやらなければ、他の誰かが困るのだ。
................そう。私が、やらなきゃ........いけないから.......
そこまで思考したところで、ふと違和感に気づく。
叡者の額冠を被ってから、ここまで自分の意識が明瞭になった事があっただろうか。
いや、無かったはずだ.............こんなことまで思考できるほど、あの道具は生易しく無かったはずだ。
..........自身の頭にあった違和感が無くなっていく。かかっている靄が薄れていくように感じる。
どこか遠くから、何かを詠唱するような声が聞こえる。
「................上手く聴き取れない」
朧気ながらに、男性の声が聞こえてくる。
「お目覚めかな?お姫様。よく頑張った。後は我に任せておけ。今はそう.............ただ、ゆっくり休むがいい」
その、言葉を聞き、私は安心しきってゆっくりと再び───今度は本来の意味での眠りを迎えた。
.........................
あーーー何かあんまり良くなさそうだなぁ..........。
予想した通り、後遺症が残りそうだな........................どうしようか。
無理やりに治させた分、発狂はせずに人格は取り戻せたけど。
ダメージを回復しきれてないなぁ..........全く、とんでもないものをこんな子達につけやがって。レイモン許さねぇ..........!*3いや、彼は関係なかった。
はぁ.............救うと言っておきながらこの体たらくか.......。
あんまり回復系には伸ばしてないからなぁ..........。
召喚した奴らじゃ限度があるし........いや、あいつらは多分いけるけど、人間種に使ってくれるかどうか.......。
あ゛ーーー私も
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ぶるっ.............
「................??何か今、南の方でとてつもなく自分を必要としていそうな気配を感じた気が.............」
「フローレンスさん?どうかしましたか?」
「.............いや、なんでもないンフィーレア。...........行こうかツアレ」
「ぁっ!はい!」
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うーーん、巫女姫はとりあえずこれで全員か。..........いやしかし、良くもまぁこんなにたくさん.......
やっぱり、このままじゃダメだな.............。
何か劇的な一手を打たなければ。
いや、既にこの国で短期間にかなりイベント挟んでいるけれど。
これが組織のトップってことかぁ..........。流石にこんな人数纏めあげたことはないわぁ...............いやいや、気を引き締めんと。上がしっかり手網握らないと何処で何があるかわかったもんじゃないしね。
うん、次の目標はズバリ.............
国交だ!
◾︎補足
人でなしが漆黒聖典に所属出来るのか..........?ってことで、まぁ出来そうですが。当小説ではクアイエッセの扱いはこうなりました。解釈違いの方はごめんなさい.......。でもこうしないと彼がいずれ鮫の餌になっちゃうんで.......。クアちゃん好きなんで今後活躍させたくてこうなりました。地味にクレマンの救済も入れたかったのもある。
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今回の話.......凄いだろ?前半ほぼ膝枕で消費したんだぜ.............?
書いてて自分でも驚いてます。今回でside―シャーク―は一区切りです。次回からは別sideになります。
後プロットが完全に完成したので、これからは書くことに時間使えるようになるんで投稿早くなると思います.......多分。(いつもの)
投稿頻度
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一話ごとは短め、投稿間隔は早め。
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一話ごとは長め、投稿頻度は遅め。