オーバーロード-七極星-   作:シンメトリー飛行船

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お久しぶりです。大変お待たせ致しました。


投稿が滞ってもUA、感想、評価、それに誤字報告、お気に入りなど
ありがとうございます


約1年近くも投稿期間が空いてしまった事など多々話したいことはありますが、ひとまず必要な事だけ書いておきます。もし詳しく知りたい方は活動報告をご覧下さい。


今まで待っていてくれた皆様には感謝と謝罪の気持ちで一杯です。今後もしっかり執筆は続けていきたいので、どうぞよろしくお願いします。


また、前話とさらに前話を大幅に改稿しました。
その影響でこのsideのオリ主の内面の性格などがかなり変わりましたので、一度読んだ方ももう一度目を通していただけると幸いです。ストーリー的にはほぼ一緒なのですが細かいところを変更して、読み易くわかり易くしています。


他の話も全体的に、少し台詞の句読点を無くして、改行しました。


※タイトル間違えていたので修正しました。


それでは本編どうぞ


side―コマンダー― Baziwood / Suddenly

 

 

 

 

 

 

 

心地よいベッドで寝返りを打ったことで、目を覚ます。

 

 

重々しい瞼を開けると日差しが窓から差し込んできており、それは外が良い天気である事を知らしめてくれている。

 

 

この場合の良い天気というのは、いつもより灰で出来た曇り空の雲が少しだけ薄いとか、空の合間がチラッと見えるとかでは当然無い。

前居た世界では考えられないくらい、文字通り青空が広がっているのである。

 

 

この世界に来て良かったこと。

いくつか上げるとするならば、まず自然が素晴らしいことである。現に今、史上最高峰の目覚めの時を迎えているのだ。

 

 

「~~~~~んーーー!日差しが気持ちいいですね〜.............」

 

 

軽く伸びをして、そして外の景色を見る。やはり素晴らしい青空だ。大気汚染の影響で今までこんな空は見れなかったからこそ、余計にそう感じるのかもしれない。

 

 

「・・・・さて、なんやかんや色々ありましたが........」

 

 

やっぱり昨日のご飯は美味しかった.............ではなく。

 

 

いや、確かに食事も最高だった。ここが皇城だからというのもあるかもしれないが、それにしてもリアルとは比べ物にならない食事だった。

 

 

一応立場はあやふやなものだし、皇族が食べれるような豪華な食事という訳ではなかったものの、それでもとても感動する味わいだった。量も満足できる程度にあったようだし。

 

 

先程の話で、次に良かったことを上げるとすれば、食事が美味しいことだろう。やはり自然が豊かであると、食事の質も上がるらしい。

 

 

元の世界(未だそう断定出来るとは限らないが)では、自分はただのゲーム好きな一般人であったので、俗に言う粗末な食事しか食べたことは無かったため感動もひとしおである。

 

庶民の自分はともかく、支配者層共はもしかしたら違うかもしれないが、少なくとも自分にとっては最高な夕飯であった。

 

 

「今日の朝ごはんが楽しみになりますねこれは.......」

 

 

そんなことを考えながら、朝の支度を済ませていく..........まあ、最低限の支度に、いつもの装備さえしていればいいのだが。

 

 

 

 

何故ならば─────────

 

 

 

コンコンと、部屋の扉をノックする音が聞こえる。しばらくして、聞き覚えのある声が扉越しに聞こえて来た。

 

 

「ヘクトールさん?起きてますかい?」

 

 

と、このように迎えが来てくれるからである。

 

 

「ああ、バジウッドさん。丁度今支度を済ませたところですよ」

 

「そりゃあ良かった。んじゃあ入りますぜ」

 

 

 

そうして部屋に入って来たのは、やはり想像通り帝国四騎士の一人であるバジウットであった。

 

 

 

彼とは昨日からの仲なのだが.....そう。何を隠そうこの彼に、これから皇帝陛下の元まで連れていってもらう予定だったのだ。

 

 

 

 

 

何故こうなったのか、それは昨日の夜まで遡る・・・・

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

結局、あの後フールーダ翁が帰り。

青い顔をして確認しに来たバジウットが部屋の扉を割と容赦無くズバーンと開け放ち、その二つ名に相応しい速度で部屋に入り込んできた。

 

 

「おや、貴方は確か帝国四騎士の.............一人。ですよね?」

 

「おう、バジウットだ。素直に分かんなかったんなら誤魔化さなくてもいいんだぜ!」

 

 

「....すみません。バジウットさんはなぜここへ?」

 

「いやぁ何、フールーダの爺さんがあんたのとこに行ったって聞いてよ──────あー、単刀直入に聞くが。大丈夫だったか?」

 

 

何かを心配そうに尋ねてくるバジウット。.......なんとなくどんな要件で来たかは察しがついたよ・・・・

 

 

「ええ、来ました。.......中々その、元気なご老人ですよね?」

 

 

俺の返答によって、彼は何かを察したようだ。腰に手を当てて天を仰いでいる。

あーー、なるほど。あれ平常運転なのか.......

 

 

「まあ、何だ。災難だったな.......ヘクトール、殿」

 

 

なんか呼び方の歯切れが悪いのだが、.......ふむ。

 

 

「好きに呼んでもらって構いません。

 

と、言うかぶっちゃけ殿呼びされるような人物ではありませんよ、私は。

ですから敬語も要りません」

 

 

そう言うと、バジウットは少し笑いながら頷いている。

 

 

「いやぁ、助かるぜ。ぶっちゃけ俺はお堅いのがどうも苦手でな。あんたも見た感じ....まあ、あれだ。高貴なお方に見えたもんでな」

 

 

ふむ、言われてみれば確かに。知る人が見れば一発で軍師だと見抜けるような格好だろうが、知らない人からしたら何か高貴な身分の人物にでも見えてしまいそうだ。

 

 

せっかくだから、その辺の認識についても周りに伝えておく必要があるか?

 

というか、俺は別になんだって構わないのだが..........。

 

 

 

............................

 

 

 

そのままバジウッドは結局、フールーダの事について陛下に報告しに行った。

「これから宜しくな!」と、一言残して去っていった彼もなかなかにうるさい方の部類だろう。

 

 

だが、悪い人物では無いことは確かである。自分もああいう手合いの方が話し易い分疲れずに済むので、嫌いでは無い。勿論、陛下のような人と交わす会話も楽しんではいるが。

 

 

それから、豪華な食堂で久々にいい気分*1で満腹になりながら、前世では入ったことも無い風呂にまで入れてもらった*2。兵達が使うような所だったので貸切というでも無かったが、偶然人が少ないのもあって快適な時間を過ごす事が出来た。陛下様々である。

 

 

 

こんなにいい気分で眠りにつけることなど今まで無かったため、より一層陛下に何か返したいという恩義を感じた夜だった。

 

 

 

その後。

食事時に、バジウッドさんに明日陛下と改めて話したいと伝えていたので、寝る前に兵が部屋の前に来て、「明日は四騎士であるバジウッドが迎えに来て、そのまま陛下の居る執務室へ行く」という旨の話を伝えられた。

 

 

 

それに了承し、結果今朝に至るというわけである。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

バジウッドに連れられて荘厳な雰囲気の廊下を抜け、堅そうな扉が開かれた先の部屋に入ると、そこは昨日も陛下と話した執務室であった。

 

 

昨日と違い、今日は椅子に寝転がるような体勢でこちらを待っていた。

 

 

そんな体勢でいいのか....?とも思ったが、どうやら特定の人物しかいない時はだいたいこうらしい。あのフールーダ翁だけ居る時とか。

 

 

なんだか自分が信頼されているようで嬉しくなるが、実際のところはまあ所謂、「お前に対して謙ったりはしないからな?覚悟しろ(拡大解釈)」ということだろうが。

 

 

..................いや、まぁ違うか。なんでだ?

 

 

 

「待ちかねたぞ、ヘクトール。今日はお前の為に時間を取った。一先ず、そこに座るといい」

 

「恐縮です、陛下。では──────」

 

 

そう言って俺は、陛下と向かい合う椅子に座る。

 

 

こう見ると意外と陛下のその格好も何故か絵になっている。絵画とかで書かれていそうな風貌である。

 

 

俺が座ったのを確認すると、バジウッドともう一人、「不動」の名を冠するナザミという四騎士が私の席の後ろに回る。何気にまだ警戒されているようだ。それはそうだなとは思うが。

 

 

とはいえバジウッドさんをつけてくれているところを見るに、完全に警戒している訳でも無いのだろう。勿論監視しやすいという思惑もあるんだろうけど。多少なりとも陛下の配慮が見えて良いものだ。

 

 

因みに陛下の後ろには四騎士の代わりに文官であるロウネという人物だけついている。他の四騎士は今は居ないようだ。

 

 

しかし、実際は自分の実力があればこの程度の警戒など気休めにもなりはしないのだが、果たして陛下はそれには気づいているのだろうか。

 

 

さすがにこっちの事情を完璧に把握はしていないだろうし、100Lv程強くは無いと思われていそうではある。

 

 

そして陛下の格好を見ても、この警戒はひょっとしなくても、形だけの物で、あくまで俺が襲いかかるなど勘定に入れていないのではないだろうか。

 

 

 

..........まぁ、その通りである。一宿一飯だけではなく、あんだけ好待遇で迎えられておいて、反発しようなどと思う人間などそうは居ないのだ。

そう考えると、陛下の目論見通り牙を抜かれたのかもしれない。牙なんて最初から引っ込めてるが。

 

 

 

そんな事を考えていたら、給仕らしき人達が朝食を運んで来てくれた。

 

 

・・・おおう、ここで食べるのか。いや、俺は良いんだけど。陛下は大きなテーブルのある部屋とかで食べなくていいんですか?

 

 

.........別にいいらしい。せっかく楽な時間が作れたのだから関係なく寛ぎたまえと言われた。嬉しいですけどほんとに良いんだろうか。

 

あ、いや陛下も楽しそうだからいいか()

 

 

そんなこんなで、バターやハムらしき肉の乗った暖かいパンや、淹れたてのホットコーヒーなどを取りながら会話を始める。しかし数人しか居ないことや穏やかな静けさもあって、さながら王族たちの優雅なモーニングである。

 

 

満腹(みたされ)感が顔に出なくて本当に助かった。ガチ王族の陛下の前で、だらしない顔を晒すところだった。

 

 

「さて、いきなりだが。先にこちらの気になることから尋ねたい。

.......なに、心配するな人払いは済ませてある。盗聴の心配も爺の魔法で対策済みだ。

 

..........とは言え、話題はその爺に関してなんだがな」

 

 

ああ.......(察し)とりあえず言葉を返す。

 

 

「.......なるほど。だいたい把握致しました。

要は陛下は、かの御仁が無礼を働いていたり、口を滑らせて機密を喋っていないかが気になったのですね?」

 

 

あえてストレートにそう言うと陛下は、苦虫でも噛み殺したような表情と口調で述べる。

 

 

「ああ、そういう事だ。

爺はあれでもこの国、いや周辺国家で見ても最高とも呼べる魔法詠唱者だ。この国に古くから仕え、発展に尽くしてきた。私の教育係を担当していたこともあり、信頼は厚い優秀な宮廷魔術師なのだ。そこは信じて欲しい。だが、確かに些か問題点もある」

 

「それが昨日のあの.......発作のようなあれですね....」

 

「そうだ.......まぁ我々は“魔法狂い”とでも呼んでいるが....」

 

「なるほど魔法狂い───とても的確な表現ですね・・・

.......心中お察しします。とは言え、確かに優秀な人物のようですね」

 

 

貶してばかりでもいけないので一応申し訳程度に褒めておく。

いや、確かにもっと褒めた方がいいんだろうし、実際凄い人なのはこの皇帝から厚い信頼がある事や歴史を鑑みれば分かるんですが。

 

 

それ以上にあのインパクトが強すぎて全部消えてるんだよなぁ.......。

 

 

 

「ああ.......。

 

・・・さて、まあ前置きはこの程度にしておこう。

そちらからの話もまだだろうしな」

 

 

茶化*3していたのがバレたか。薄々聞かれるんじゃないかなとは思ってスルーしたかったんだが、陛下くらいの相手に話題のすり替えは通じないと。

 

 

こうなっては仕方ない。なるようになれ、別に悪い事をした訳では無いのだから堂々と答えよう。

 

 

「本題の話したい事とは他でもない。

爺から聞いたのだが──────

というか、聞かなくても爺が暴走したという時点で予測出来るが....。

 

 

ヘクトール、そなたはもしや高位の魔法詠唱者では無いか?」

 

 

成程、今でこそ探知阻害系の指輪をフルで填めてはいるものの、フールーダ翁に会った時はつけていなかったから、口止めしたとしても結局彼が興奮した様子という客観的事実でバレたのか。

 

第七位階なんてこの世界じゃ使える人間はいなさそうだし、そりゃあ注目も浴びてしまうだろう。

 

 

さて、どう答えたものか。正直に話してもいいような気はするが、なるべくならこういう情報は小出しにしたい。情報は交渉においてあらゆるアドバンテージになる。つまり取引材料なのだ。

 

 

勿論陛下の為に何かしら協力するのは吝かではないにしろ、情報となるとタダで教えるというのは気が引ける。ここは丁度良くバランスを保ちつつ取引出来るかどうかの見せ場でも有るだろう。

 

 

もしかすると、陛下はこのようなところも品定めしているかもしれない。まあ本音を言うと陛下の為に全部ぶちまけちゃいたい気持ちもあるけれど、急に全部話しても情報過多で混乱させてしまうだろうし。

 

 

「そうですね.......教えることは構いませんが.......こちらも聞きたいことがあります。それらの情報と引き換えというのはどうでしょう?」

 

「ああ、それで構わない。こちらが提示出来る情報であれば、そちらの情報と引き換えに教えよう」

 

「ありがとうございます」

 

 

ふむ.......陛下の言葉と周囲の人選から察するに、多分前のような暗号みたいな情報の取引をするように気を使わなくてもいいが、しかし重大な機密までは話せないと言ったラインだろうか。

ならばこちらもそれに合う程度の情報を渡すとしよう。

 

 

しかし、タダで渡すのも忍びない。

特に自分はこの世界でもかなりの異端のようだし、自分の事を語るのは慎重にならざるを得ない。

 

 

 

考えに耽っていると、給仕さんが丁度食べ終えた朝食を片付けてくれていた。何と言うか、すごく良いなこれ。高貴なとこの食事って感じがする。

 

 

 

.......ふと、一ついい事を思いついた。自身の出身についてはまだ話せないにしろ、いずれ話すことにはなるだろう。その時までの為に、何かしらカバーストーリーを用意しておく必要がある。

 

 

生半可な嘘では見破られてしまうだろうし、もし自身の出身について今後他の者にも尋ねられた時答えられるようになっておかねばならない。

 

 

ならばいっその事ボロが出ないよう、辻褄合わせに支障が出ないようぶっ飛んだ設定にしてしまえば良いのだ。

理解し難いものというのは、一見悪手のように思えるが、相手が理解を示そうとしている状況で出せば、一種の撹乱として使えるのだ(主に相手の頭をバグらせるという意味で)。

 

 

そんなこんなで、頭をフル回転させ、そこそこの設定を練った。

それを陛下に話すとしよう。

 

 

「陛下。実は私はとある辺境の国の出身なのです」

 

 

勿論半分は嘘だが、もう半分は嘘は言っていない。島国ジャパーンは充分辺境と言えるだろう(屁理屈)。

 

 

「ふむ。前に違う世界からという風に言っていたと思うのだが、私の記憶違いだったかな?」

 

「いえ、私も最初はそうだと思っていたのですが。

言葉が通じたりある程度の常識が通用したりと、もしかすると単純に遠い場所から来たのではないかとの疑問が湧いてきまして.....その結果私は、その辺境から来た身だという確率がそこそこあるのではと踏んでいるのです.........」

 

 

こっちの言い訳は勿論嘘である。この世界のどこにも恐らく私の故郷の国は無いだろうし、逆に元の世界のどこにもこちらで聞いた名前の国々なんかは存在しないだろう。

 

 

問題はそこではなく、こちらの情報を詳らかにしているという姿勢が大事なのだ。例え見抜かれそうになったとしても、彼らから見たらそれを判別する手段は無い。世界地図というものの存在なんて少なくともこの国にはまだ無いというのは分かっているし、その時点で文明レベル自体はこちらの世界の方がより低い。

 

 

それに親近感を与えるためには別世界の者というのは些か馴染みづらいところがあるからな.....。

 

 

つまり、情報アドバンテージ的にはこちらに分があり、尚且つこの状況ではわざわざ陛下たちに不利な情報は与えるわけが無い。結果、私の異端さを納得させるために、これは必然の話として彼らに受け入れ─────────

 

 

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

 

「お、お話中失礼いたします!皇帝陛下!!」

 

 

 

 

 

いま人が説明してる途中でしょうが!!!!

 

 

 

 

 

.....と、言うのはまあ置いといて。

別に本当に声に出して説明していたわけもなし。それよりもなんだか焦ったような声だが───

 

 

「なんだ。今は見ての通り客人との対談中だ。しばらく人は近寄せるなと言ったはずだが」

 

 

扉の向こうから聞こえてきた声に対して返す陛下。まあ、この際無礼とかはもう俺が居るから気にしない方向性で行ってもらうとしてもだ。一体何の用か聞く必要はあるだろう。

 

 

「し、しかし。緊急を要する案件でしたので、直ぐにお伝えしろと.....()()から.....ここまで急いで来た次第であります」

 

 

「なに?.................」

 

 

何やらただ事ではないと受け取った陛下が、一応客であるこちらに目配せしてきた。

俺は勿論拒否なんかしないので、首を軽く頷いて肯定の意を示してみた。すると陛下は扉の向こうに聞こえるように少し表情を張り詰めらせながら言った。

 

 

「分かった、今扉を開けさせる。入ってくれ。」

 

 

起き上がり陛下がそう言ったとき、ナザミさんがいつの間にか扉を開けていた。文官と言うよりは伝令らしき人が中に入ってきて、すぐ様焦るように

 

 

「申し上げます!

10分ほど前に魔道具での通達があり、都市カナンダラの物見櫓の兵士から詰所経由の報告によれば、約数キロ先の森から都市周辺に向かって魔物の大群が進行しているとの情報が届いております!

 

 

早ければ、あと1時間も経たない内に外壁に接触。都内への侵入の危険性があるほどの勢いで向かってきているとの事!」

 

「なんだと......!?」

 

「!?」

 

「ハァ!?マジかよ.....!!」

 

 

その言葉に皇帝陛下や四騎士の二人は驚きを隠せない様子。対して俺はと言えば

 

 

「.....カナンダラ?(.........ああ、昨日陛下が仰っていたパンや牛肉、ミルクの生産地として有名なところですか.........)」

 

 

とまあ、あまり現実感が無く他人事のようだった。しかし───

 

 

(パン、牛肉、ミルクといえば昨日のディナーを思い出しますね.........あれはとても美味しかったです.....。そしていまさっき頂いたモーニングも.............それにしても大変ですね.....魔物の大群ですか.........................ん?)

 

 

 

 

 

・カナンダラはパンや牛肉などの生産地

 

 

→魔物の大群に襲われる

 

 

→この世界の人間達のレベルでは太刀打ちできない

 

 

→都市は崩壊、生産の供給が滞る

 

 

 

 

 

 

 

 

→美味しいディナーが食べられなくなる.............!!!???!!

 

 

 

(な、なななな.....!?一大事ですよこれは!?!?あんな美味しいご飯が食べられなくなるですって!?!?そんなことにさせる訳には行きません!!!タダでさえ以前はまともな食事という食事をほとんど口に出来ていなかったのに、今度は目の前で奪われる.....!?そんな暴挙を許す訳には.........おっと───)

 

 

 

自分のこと(食べ物の事)しか考えていなかった。

 

 

(お、落ち着け.........さすがにこんな事態なのにそれは不謹慎です.....!

 

.............い、いやでも冷静に考えれば。もしこれで都市が崩壊したとして、帝国のリソースをカナンダラに集中させることになった場合。今中途半端な立ち位置にいる私の立場は直ぐに後回しにされるでしょう。

 

結果、放置されるだけならばまだいいですが.........。これで私の事が面倒になり、余計な要素と思われれば城を出て行かされる可能性も充分あるんじゃね.....!!?

 

この前こちらの世界ではそれなりの価値の武器を一つ献上しましたが、それ以外これと言って何かした訳ではありません.....。まあ1日前なので無理もありませんし、陛下には気に入られている様ですが、それが何時までも通用するとは限りません。

私は一体何時までここに居られるか.............)

 

 

 

と、焦りのあまり若干崩れそうになった長々としたRP思考を挟みつつある結論に辿り着く。

 

 

(.........これ、もしかするとチャンスなのでは.........?)

 

 

そう、兵士達の力量やそもそも現地の状況にもよるが、もし自身が手柄を上げれば正式に貴賓として.........は無くとも。

 

 

少なくても堂々とこの城に残れるのではないか?という打算が浮かんだのだ。街を守って私も陛下に守って貰う的な.........。いや、まあそれだけでは無い(食べ物の事も有る)が。

 

 

 

となれば善は急げだが、しかし一つ問題がある。いや実際にはもう幾つかあるが、まあ陛下になんとかしてもらおう。それに、対応策ぐらいなら提案できそうだからな。

 

 

 

目下問題の一つは.............陛下がそもそも私の話に耳を傾けてくれるかどうかだが、.................問題ない。.............やりきるさ........有能軍師ロール!!!

 

 

 

 

 

「.............陛下、少々よろしいでしょうか。.........ご提案がございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

皇室地護兵団(ロイヤル・アース・ガード)の騎士からの報告を受け、()は驚愕と焦りを隠せないでいた。皇帝たる()は本来ならばあまり動揺を表に出すべきでは無いが、内容が内容である上に、ここに居る面子ならばそこまで問題では無いだろう。

 

 

なぜ、いきなり魔物の大群何てものが都市カナンダラの近郊に出没したかは分からない。

 

だが、少なくとも最近の周囲の調査では特に怪しい報告は上がっていなかったはずだ。一体なにが起きているのか.........。

 

 

 

とにかくまずは、状況の把握と対応を全現地部隊に通達できるように触れを出さなければ。

 

 

 

しかし、どうする?

 

 

こんな急な襲撃、対策も何もあったものでは無い。今から出来る最善のことと言えば、すぐに動かせる実働部隊を率いて1秒でも早く現地に赴くことだろう。

だが、敵戦力の詳細も不明な上に急な出撃に対応出来る指揮官は居ない。

 

 

いや、正確には居ない訳では無いのだが、どうしても軍議を通す必要があるのだ。その分時間がかかってしまい結果的に到着が遅れることになる。

 

 

兵達の練度は高くいつでも出撃できるようにはしているが、それはそれ。結局指揮官や率いる将がいなければどうにもならないのである。

 

 

 

時間もない故に本当にどうしたものかと思考を巡らせていた時。

 

 

 

 

──────悪いこととは重なるものなのだと思い知らされる事となる。

 

 

 

 

しっ、失礼します!!!

 

 

 

「おい!今は緊急事態だ。他のことは後回しにしておけ───」

 

 

バジウットが急に立ち入ってきた士官に声を上げ返そうとするが、言葉は最後まで続かず、その士官に遮られる。

 

 

「突然の入室ご容赦を!しかし今はご報告が優先でございます!!」

 

「なんだ、申せ───」

 

 

またもやただ事ではないと思い至り、バジウットを制しながら続きを促そうとする。士官は私の言葉を全て聞き終わる間もなく、こう続けた。

 

 

 

 

 

 

 

「都市ヴァーキンにて!魂喰らい(ソウルイーター)が出現!!被害甚大!直ちに救援を要請する!!!との事です!!」

 

 

 

 

 

「─────────は?」

 

 

 

 

あまりの出来事に流石に動揺が隠せない。魂喰らい?あの伝説にも語られる、三体で都市を壊滅させた魂喰らいだって?それがこのタイミングで現れた?既に大きな被害も出ている?

 

 

 

「なっ.........」

 

「お、おいおい.............」

 

「.............!!!」

 

「・・・・(は!?そうか!!!ならばここは──────)」

 

 

 

想像を絶するこの報告に驚いているのは自分だけでは訳は無く、他の者も同様なようだ。そのおかげか、一先ず落ち着きは取り戻せた。

 

 

何としてもこの状況を打破しなければならないが、まさかの二方面攻撃となればかなり厳しくなってしまう。過去にそんな作戦を取られたことはあったが、いずれも人間相手の戦いだ。

 

 

今まで魔物が軍を成して攻めてくることなど無かった。ましてや人間の都市にだ。明らかに何者かの意思が介在している軍事侵攻だと捉えるのが妥当だろう。だが──────

 

 

以前の人相手の戦いでは、彼らが人であるが故に取れる作戦などもあり、人心を読むのが得意な私や、魔法使いとして長けている爺あっての勝利であった。

 

 

しかし、魔物となれば話は別だ。

 

 

やつらは命以外では、何をもってしても止まらない暴走漢。例え同じように策に嵌めようとしても、言の葉を交わそうとしても意味は無いだろう。

 

 

 

そうなってしまえばあとは単純な物量と実力の差がモノを言う。

相手の強さ次第だが、今から皇帝権限で急造で軍を編成し、向かわせたとして・・・・

 

 

果たして、勝利できるだろうか。無駄に兵達の命を散らし、都市も救援出来なかったとなれば、未だ残っている僅かな敵対している貴族共につけいる隙を与えることになる。

 

 

 

 

かと言って──────都市を、民を、見捨てるのか?

 

 

私ならば出来るだろう。国の総合的な未来を見据えれば、そのくらいの判断は可能だ。確かに被害は甚大どころでは済まないかもしれないが、軍事力さえ残っていれば、後に都市を制圧して取り戻し、復興に回せばいいだけだ。

 

 

幸い今は経済的に余裕もあるしこの手段を選んでも、最終的には問題ないだろう。伊達に"鮮血帝"とは呼ばれていないのだ。

 

 

 

しかし、勿論食糧の供給ラインや領地としての支配圏の主張。そして相手が指揮された軍ならば、都市攻めをするとして通常よりも多くの戦力が求められるだろう。

 

 

──────勝てるか?本当に。放置するのは愚策では無いのか?

自身の頭をフル回転させ、今できる最善を探す。時間は無い、こうしている間にも状況は刻一刻と変化しているかもしれないのだから──────

 

 

「・・・・直ぐに出陣(でる)と伝えろ。爺も呼べ。

私がカナンダラの方へ赴く。爺やそれ以外にはヴァーキンの方の軍指揮を任せると」

 

「は!直ちに!」

 

「陛下、何時でも行けますぜ」

 

「(コクッ.....)」

 

「ああ、助かる。今すぐ出立の準備を──────」

 

 

やはり放置はできないと判断し、強引だがこのまま救援に向かう。そもそも、負けるという確信も無い以上、ほかの要素は色々あるにせよ放置では何かと不都合が生じる。ならばより大きな成果を想定し動くべきだろう。

幸いこちらには丁度爺がいるし、怯んで両方の都市を取り戻せ無い方が不味い。

 

 

 

結果的に、戦果さえ上げれば良いのだ。そうすれば奴らにも余計な言い分を与えずに済む。

 

 

 

 

 

そうして──────

 

半ば言い聞かせるように自身の不安を押し隠し、誰にも悟られてはいまいと、安堵した時。

 

 

 

 

 

 

「.............陛下、少々よろしいでしょうか。.........ご提案がございます」

 

 

 

 

──────何故だ?

 

 

何故(なにゆえ)そこで、そなたが出てくるのだ。

 

 

見透かされていた?それとも矢張り間諜の類だったかと思い足りそうになる前に。

 

 

その男はまるで全ての問題を見据え、表には出していなくても不安に駆られる私に向けるかのようにこういったのだ。

 

 

 

「私なら、必ずや陛下のお役に立てましょう。一刻も早く取り戻したいのでしょう?助けましょう。我々の力で・・・・なに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から」

 

 

 

 

 

その男は、こんな事態を前にして、事も無げにそう言ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△

 

 

 

 

 

あれから集まった人員は軍部の人間含めてそこそこだ。軍議の場所も私の執務室から既に移動し作戦会議室をとってそこで行っている。

 

 

 

 

「皆さん。焦るのは解りますが、一旦冷静になりましょう。我々が揺らいでしまえば、その下に居る幾千幾万の民の命も失うことになります。焦って判断を誤るくらいであれば、落ち着いて、今出来ることを致しましょう」

 

 

 

そう彼は、周囲の人間に対して諌める。

わかっていたつもりだが、実際に改めて言われると自分達は存外慌てていたのだと気づいた。

 

 

辺りを見渡せば、戦略畑の人間達は皆同様に彼の言葉に頷いている。そうでない者たちも一部。

 

 

「ふっ、全くみっともない所を客人に見せてしまったな。其方の言う通り、ここからが反撃開始だ。皆、覚悟はいいな?」

 

 

全員が鷹揚に頷く。

 

さて、これからというところで

 

 

 

 

 

 

 

continue.........

*1
戻ってきたバジウッドと一緒に食べた。気分が上がってつい2人で酒盛りしてしまった。仲良くなった。

*2
ちゃんと酒が抜けてから入った。抜けてなくてもスペック的に絶対死ぬようなことは無いが

*3
マスター「ティータイムだけに」???「いやモーニングだろ」





次回更新は1/8です。

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