オーバーロード-七極星- 作:シンメトリー飛行船
いつもUA、感想、評価、誤字報告、お気に入り大変感謝しています。
最近は寒くて鼻水が止まらないので、ちょっと
これからも応援していただけると幸いです。
王女様をつけろよ!デコスケ野郎!
唐突に名前呼びを要求されたせいでテンパって敬称を外してしまった....。一応申し訳程度に殿はついてるけども!
どうやら聖王女様は、自分と仲良くしたいらしい。ありがたいことだが、こちとら中身小市民の一般聖騎士()なので........。どうにか呼び方を変えたいが、一度この呼び方をしてしまった以上はどうしようもない。是非も無し。
まぁ、結局あの場では上手く緊張してまともにやれそうに無かったが、今は相手が4人だけ―内一人は知った相手―なのだから、多少は交渉なんかは出来る余裕が生まれた。
おそらくはこちらの事情を汲んで、この様な形で話せるようにしてくれたのだろう。
そこの法衣の女性、例の神官団長のケラルトさんの手腕だと思うが、確かに聖王女について国を支えているという評判に偽りは無いようだ。
ただ、ということは俺の緊張がバレてしまったのではないかとも危惧したが、そんな事は無いらしい。
少なくとも聖王女様と、鎧の女性─────聖騎士団長のレメディオスさんは気づいていないようだ。だって見るからに尊敬の眼差しを正面の美人さんから感じて、居心地が良いのか悪いのか分からなくなってきたし、隣の聖騎士団長様はキョトンという擬音が聞こえてきそうな程に首を傾げているからな。
あと妙に聖王女様からの視線が熱いものの様な気がするのは俺の自意識過剰だろうか。いやそうに違いない。貶される理由は思い当たれど、好かれる要素が皆目見当もつかない。それともあれか?聖王女様って物凄く面食いなのか?なんかそれはそれで嫌だなおい。
「ん"ん".......それでカルカ殿、先程から話題に上がっている、亜人被害について聞きたいのだが?」
そう、いくつかテンプレな挨拶を交わした後、雑談や自身の境遇など(多少情報はぼかして)を教え、では報奨の話をと言ったところで。勿論報奨は渡すし、証拠というか担保として、首都の建物の一角を拠点として提供するので、こちらの頼み事を聞いてくれないかとの相談を受けたのだ。それにも対価を支払うとの確約をして貰って。
「はい。現在、この首都ホバンスの近郊にある山に、亜人が住み着いており、最近になってはっきりと存在や大凡の数、戦力が判明したとの情報の公表を致しました。
しかし、調査に時間がかかった為、噂などが国内で回りきっておらず、現段階ではまだ内部でも、この事を知っているのは一部の重鎮と、現場で調査に当たっていた責任者を含む者たちくらいなのです」
「なるほど。それで?聞く限り、私に頼むほどの火急を要する案件ではないとは思うが。それにしては焦っているように見えるな」
「........なんでもこの亜人種は、かつてこの国に夜襲をかけて国土を蹂躙した、スラーシュ達であるとの調査報告結果を受けています。おそらくは、彼等の中の上位種も混じっていると思われます」
ふむ....そのスラーシュって奴らがどれだけ強いのか知らないが、俺に話を持ってきたってことは余程倒すのが困難な相手なのだろうか。例えば、数日前に倒したあの亜人本隊の指揮官みたいな。
「事情はなんとなく把握した。それらは自分達では手に負えそうに無い相手だからこそ、俺に討伐を頼みたいと?」
「いえ、それももちろんあるのですが........。
実はその山の近くには、この国の九色の一人であるパベル・バラハさんの御実家がありまして............
彼らの家族は最近キャンプをしにその山へ行っているのだとか。
今は偶然休暇を出していたところでして....。もしかすると、そのスラーシュ達に運悪く遭遇してしまうのではないかと憂慮していたのです」
要はこの国の重要人物がその山にいるかもしれないから、場合によっては助けて欲しいってことか。でも..........
「失礼、一応聞かせてもらってもいいだろうか?
その調査に当たっていた人員が、彼らに伝えてあげれば良いのではないだろうか。それとも、そう出来ない事情が?」
「はい。恥ずかしながら、休暇を出した日と、調査隊が帰ってくる時が丁度すれ違ってしまい。まさかあの山に出現しているとは思わずに、結局今から伝令を出しても、もし戦闘になっていたら間に合わない可能性があるのです。
それならば急ぎ直接戦力を派遣して、亜人討伐のついでに彼らへ事情を説明して安全な場所にいてもらう。.....とする方が良いとの判断になったのです」
すると横合いから、ケラルトさんが続きを話す。
「本来ならばすぐに部隊を編成、出立したい所なのですが。
あのクソ─────失礼。他の上の方々が中々纏まらず、予定より多少遅れそうになっているのです。
昨日までは、本来フォシスさん達を救援に行く精鋭部隊がいたのですが、彼らをそのままスラーシュ達の亜人討伐へ回そうとしても、厄介な能力を持つ相手なために再編する必要が出てきて、その際にゴタゴタしてしまっているのです。
そのため正式な部隊を出す前に、こちらで個人的な依頼として腕が立つという貴方を雇いたいのです。
もし貴方が先に到着して、バラハ家の方々がキャンプに出ておらず、そのまま家で待機なされるならばそれでよし。もし山へキャンプに行っておられる最中ならば、そのお力で救出を行って頂き、後のことはこちらが派遣する部隊に任せていただきたいのです」
「だいたい理解した。要は俺は先んじて現地に赴き、そのバラハ家の者たちの安全確保にだけ、優先して務めればいいということだな?」
「その通りです。もし何かありましたら、我々の名前を出しても構いません。ほとんどの問題はこちらで対処しますし、その方が検問なども早く通れると思います。念の為ここに私たちの書状を用意したので、すぐに話は通るかと」
用意がいいな....もしかして、俺の話が首都に伝わった時からこれを考えてたのかな?
そのバラハさん達を助けはしたいが、つい昨日まではフォシスさん達のために集めていた戦力を、山の方まで回せなかったと。それが俺の登場で一気になんとかなりそうになったから、表面上は恩赦の場面を設けて、その間新たに依頼を出して一先ず俺には救出だけお願いして、亜人の方は後からでも対処できると踏んだのかな。
急にしてはすんなり行きそうな作戦だけど.....何だか怖くなってきたな。余程信頼してくれてるという事なんだろうけど、フォシスの言葉ってそんなに信用に値するものなのか。
「承知した。現場の状況によって仕事の内容は変わるだろうから、そちらに関する報酬の話はあとでも良い。今はとにかく、その者たちの救出をする為に急ぎ出立しよう」
そう言うと、カルカ聖王女様がこう尋ねてくる。
「お願いしている立場ではありますが、その.........本当によろしいのですか?急を要するとはいえ、いきなりの依頼ですし。それも国からでは無く、個人の依頼です。
勿論重要度としては国としての依頼とも差し支えないですが.........言ってしまえば、場合によっては命を懸けることもあります。
疑っているわけではないのですが、知り合ったばかりの私達をすぐに信用してくれるのは、嬉しい反面まだ心配という部分もありまして........。
その、なんと言いますか。見ず知らずの人に頼むというのはなんとも。聖王国の民として、私に仕えてくれているわけでもないようですし....」
言わなくてもいい事まで聞いてくる聖王女様。もしかしてこの人は、こんなよそ者の俺に対して引け目を感じているのだろうか。
余程優しい....というか、国家のトップとしては難儀な性格をしていると感じるな........。
勿論、まだ俺のことを信頼しきれていないというのもあるだろうが。
あと少し前からレメディオスさんにめっちゃ睨まれてるんですけど。怖い。何?何でそんな怖い顔してんの?今にも大声で突っかかって来そうなんですけど。なんかギリギリで堪えてるみたいだけど。
とにかく質問に答えなくては、まぁもしノグナスという聖騎士ならば、こういう場面どう答えるかといえば──────
「問題無い。仮に危険が襲ってきても、なんとでもして見せよう。
もしあるのだとすれば、既にその家族が命を落としていたりする場合だが...............話を聞く限り、急げば間に合うのだろう?ならば俺にやらせてくれ。例えどんな苦難だとしても、彼らを必ず救出して見せよう。
.............まだ、会ったばかりの者に言われても不安だろうが、任せてくれないだろうか。こう見えて、腕に覚えはあるのでな!」
頼りになる聖騎士としての発言、これならば多少は王女様も、信じる気になるのではないだろうか?というかぶっちゃけ、本当に何が起きても今のところ大丈夫そうなんだよな。
敵の強さは大したことないだろうし、余程要救助対象がピンチに陥っていたとしても、俺なら治せるし。
まぁ辺境の騎士としての設定上の力量ではカバーしきれない可能性もあるが、最悪全力を解放すれば、多分なにが起こっても文字通り問題無くなるだろうしね。とはいえ、完全な正体を明かすのは最終手段かな。今のところ、まだ明かさない方が物事が上手く進みそうだし。
「あら.........ふふ、なるほど。
やはり話の通りの方のようですね。一先ず安心しました。
その自信に満ち溢れた目を見れば分かります。どうか、彼らを無事救出して下さい。よろしくお願いします、ノグナス様」
深々と礼をしてくる王女様。ぶっちゃけ国のトップにこうお願いされては、断れる人間なんていないと思うの、どっちにしろ受けますけども。人命がかかってるみたいだしね.........それもこの国の重要人物。
「ああ、任せてくれたまえ。では早速───」
と、出立の準備をしようとしたらようやくレメディオスさんが口を開いて引き留めてきた。なんだろう?
「急いでいるのは分かるが、私はまだどうもそいつの実力が信じられていない。やはりこの目で見ないとな。
それに、カルカ様のお願いなら、報酬なんてなくとも二つ返事で了承するのが普通だろうが。
まぁお前は早めに受けていたから、そこはまだいい。要は、私はお前の実力が知りたいのだ」
「レメディオス聖騎士団長?いくらそうは言っても、彼もすぐに出発しなければなりません。もし問題があったのなら、私が責任を負います。ですからここは、私の顔に免じて見逃してはくれませんか?
ノグナス様も、終わったあとであれば、もしかしたら手合わせを受けてくれるかもしれませんし.........。
ああ........勝手にこんなことを言ってしまってすみません........ですが....」
「いや、そこの聖騎士団長殿の意見も最もだ。私だって同じ立場ならそう思うだろう。そして、カルカ殿が諌めていることもまた正しい。
気にすることは無い。今は急いでいるので無理だが、戻ってきた後であるならば、いくらでも手合わせの申し出を受けるとも」
そう言うと、少しレメディオスさんの方から感じる態度が軟化したように感じた。ふむ、まぁこの調子でこの人は抑えればいいのか。
「何より、こうまで言っている上司の顔を立てないのは、逆に貴女が慕っている聖王女様への失礼に当たるのではないか?彼女のことを考えるならば、素直に受け取るべきだろう。と、俺は思うのだが」
すると、少し驚いたようにレメディオスさんが言う。
「むむむ.......お前....。
確かに、カルカ様に仕える騎士としては、お前の言っていることは正しい............分かった。
なら急いで行ってこい。ただし!帰ってきたら私と絶対手合わせだ!絶対だからな!忘れるなよ!」
何やら妙に納得されてしまった。しかも絶対の約束も取り付けられた。いや、別にいいのだけども。
「ありがとうございます、ノグナス様。私達に気を遣っていただいて....。私も、まだまだ話したいことがありますから、ぜひ戻ってきたらお話をさせてくださいね?」
さっきよりも好感触な聖王女様がそう言う。まじでどうしたんだこの人。いや、嬉しくないわけでは無いんだけども。
「ああ、勿論構わないとも」
二人にそう言う。
そういえば、ケラルトさんはどうしたんだろう。何やらそわそわしているが、もしかしてケラルトさんも何か聞きたいことがあるのだろうか?
「神官団長殿、どうかされたか?何か聞きたいことでも?」
「えっ........いえその........。
あの、出来れば私も、帰ってきたら魔法について詳しく語り合いたいなと思いまして........」
「ああ、なるほどそういう事か。勿論それも構わないとも。ならば三人とも、帰ってきたらきちんと話合おうではないか」
めっちゃ三方向からの期待の眼差しが重い、くそう。立派な聖騎士ロールしすぎたか?ちょっと控えた方がよかったかもしれん。国のトップ3とも言える人達にそんな風に思われるのは悪い気はしないが、如何せん緊張してしまう。オマケにみんな美人だし!
助けてフォシス!
だが、フォシスは未だに項垂れてダウンしていた。
くっそこのポンコツ!全然ダメだこれ!
兎にも角にも、しばらくしてからノグナスは色んな必要な手続きやら、必要な物を預かるやらを迅速にこなし、首都ホバンスを出発して、件の山へと向かった。
急行馬車で約半日と、そこまで遠くは無いが、途中激しい山道や坂道を通ったので、大きな部隊で一斉に移動しようとするのは確かに時間がかかりそうだと思ったのだった。
自分に同行しているのは、すぐに動ける精鋭の聖騎士数名と、バラハ氏達、及び関係者に事情を説明、あと俺の強さを間近で観察するための文官が2名だけと、少人数の移動だった。
彼らはバラハ家の人達を救出及び安全が確認出来た後、あとから来る主戦力部隊と合流するらしい。
俺は任務を達成したら、場合によってはすぐ帰って構わないとのことだ。帰りの馬車は、主戦力部隊と一緒に手配してくれるんだと。それまではバラハ家か、近くの簡易拠点で待機とのことだ。
もちろん仕事はちゃんとこなす。龍と星振りの聖騎士の名にかけて。まぁただ、流石に既に死んでたとかは困るから、頼むから生存くらいはしておいてくれよ〜........。
一応バラハ家の父であるパベル・バラハさんは、九色の内、黒色を授かっている凄腕の弓兵の兵士長さんで、お母さんも精鋭の聖騎士という話だから、その辺の亜人相手ならば、例え襲われたとしても持ち堪えられるだろう。
無事であることを祈りながら、一行は馬車に揺られて目的地に向かうのであった。
◆◆◆◆◆
ノグナスが出発してから数時間後、それぞれの業務が一段落した彼女達は、先程の部屋で集まっていた。
女性だけの集まりな為、フォシスはいない。というか、彼は今自身の報告書の対応に追われているので、今は忙しいのだ。
「ねぇ、二人とも。彼の事、どう思った?」
先程とは打って変わり、気楽な口調で話しかけるケラルト。それに対しカルカとレメディオスの二人が答える。
「話にはあったとおり、確かに強そうだと感じた。それも実際に戦ってみなければ判断はつかんがな。少なくとも相手が例の亜人たちならばなんとかなるだろう。
まぁ、私が行っても良かったんだが。お前に止められてしまったしな。
個人的には直ぐにでもあいつと手合わせしたかったんだがな.......とはいえ、オルランドほど私は愚かじゃないからな!あいつは中々カルカ様に対してのことを弁えている。見所はあるぞ!
帰ってきたら手合わせができるのが楽しみだな!」
「そう........姉さんがそう言うのは珍しいわね。それほど強い上に、直感で好意的に感じた人物だということかしら」
「私もあの方は好意的に感じます。レメディオスが突っかかっても嫌な顔一つせずに対応してくださいましたし、何より私が女でも尊敬の念が見られました。無作法とは言っていましたが、少し話をして分かった彼のどちらかというと庶民派な部分は、私は好きですね」
「私も彼と話してみて、頭の回転はそこまで悪くはないとは思います。
私や優秀な者と比べると、さすがに私たちの方が上でしょうが、それでも頭の回らない者よりは余程判断も早いですし、何よりそれを可能とする技量も目が見張るものがあります。
一国のトップと相対しても動じない胆力も持ち合わせているようですし」
本当は緊張しまくっていたのには気づいているが、二人が気に入っているようだし、現状敵対だったり脅威としては考えなくて良さそうなので、それについては何も言わない。
むしろ、あんなに緊張しているのにも関わらず、言葉がすらすら出てくるところは賞賛すべきだとも思っている。
カルカはしかしその辛辣な物言いに、あらあらと思った。
「あと、ケラルトが魔法について話したがっていたのは少し驚いたな。そんなに凄い使い手なのか?あいつは?」
「ええ。恥ずかしながら、少しだけ気が浮ついていました。
死者蘇生の魔法というのは、基本的に最低でも第五位階は使えるのが前提です。私は使えるようになりましたが、兄さんからの報告を聞く限り、複数人を蘇生した上、それらの人は全て普通よりも力の喪失が少なかったというのです。
つまり、付け焼き刃の習得したてではなく、かなり扱いに熟達していると見ていいでしょう。ともすれば第五位階をマスターしているとも言えますし、出来れば詳しく魔法について語り合いたいと思っているのです!!」
「なるほど....?よくわからんが、まぁ魔法も使える凄い奴ってことか!やはり早く帰ってきて欲しいな!」
「そうですね。フォシスさんのこともありますし、今度またきちんとしたお礼の場を設けましょう。私もあの人とはもっと話してみたいですから」
カルカは完全にノグナスをロックオンしていた。身の上話を聞いて、未婚だとわかったのだ。ついでにその人柄にさらに惚れ込んでいる。出来ればしばらくはこのままこの国にいて欲しいと考えていた。
この聖王女、徐々に距離を詰める気満々である。
しかし、実はケラルトも同じことを考えていた。無論、彼をロックオンしているとかそう言う色恋沙汰の話では無い。
(うっふっふ、もし彼がこの国の戦力として重宝出来れば、多くの問題がうんと解決に繋がる可能性がある。その実力が確かなら、それだけでも取り込めれば価値のある人材でもある。姉さんに気に入られているのは大きいし、兄さんとも仲は良好のようだし、いずれ九色でも与えてこの国に............あれ?)
「あの、そういえばカルカ様。兄さんの九色の授与はいつ行われるのでしょうか。そろそろだったはずなのでは?」
「....はい、そのはずだったのですが........」
本人達の知らないところで、彼女達の話は進む。
◆◆◆◆◆
しばらくして目的地に到着した。時間は夜で大分暗いが、きちんと明かりの用意もあるのでその辺は問題無い。それよりも厄介なのが、人探しをする上で見つかりづらくて大変だと言う点だ。
最初にバラハさん宅に到着して、文官の一人が訪ねたのだが、家族の誰もおらずに留守だった。
ということはまぁ.........十中八九山へキャンプに行ってしまったのだろうという風に判断し、一応戻ってきた時の為に連絡要員として文官一名を置いてきて、今は残った人員で手分けして山の捜索中だ。
仮にもキャンプをしているというのなら、襲撃されてから移動して逃げたとしても、どこかしらにキャンプの後や明かりはあるものだが、未だ発見出来ていない。
ということは余程山奥にその跡があるのか、あるいはまだ襲われずに家族揃ってキャンプ地にいるのか。
どちらにせよ急いだ方がいいので、なるべく早く見つけるために、こっそりと
後になって、ここで使うのは勿体なかったかな?と思ったが、結局人命がかかってるからまぁいいか、という結論に至った。
途中、なんだか魔獣なのか野生動物なのかよく分からないヤツが何体か出てきたけれど、特に苦戦もせずに倒した。あれが、スラーシュとかいうやつだったのだろうか。
さて、使ったはいいものの、中々見つからない。
この山にいるのならば、彼らの家族の一人や二人、ないし敵の亜人達の姿くらいは見つけられそうなものだが。これで発見出来ないとなると、いよいよもってこの山にはいないのかもしれない。
そんな事を思いつつ、せっかくなので最後に高いところへ登って、そこから探してみようと決める。
「《
「さてとー........いい加減見つけられないと不味そうだけど........。
《
ただでさえ良い100レベルの視力がさらに強化される。そして闇視を付与することによって暗闇はデメリットでは無くなった。また、スラーシュとやらは種族的特徴で、上位種の中には《
本来はこれらの魔法は使うつもりはなかったし、そうでなくともすぐに見つかると思っていたのだが、思いがけないほど見つからないため、さすがに出し惜しみしている場合ではなくなった。周囲には他の人もいないので大丈夫なはずだ。
......................................
......................................
......................................
「______ッ!?」
そして、遠くにそれを見つけた。
──────急げっ!!
すぐ様自身の愛剣を鞘から抜剣する。ユグドラシル時代ではあまり使っていなかった、プレイヤー相手には通じない程度の、初見殺しの対遠距離用形態に移行させる為の
「
ガシンッ!という音を立てた後、ガキンガキンと造りを変えながらその形態を剣から大弓へと変えていく。刀身は弓柄になり、その剣の柄だったものは持ち手のグリップとなり、弦は白く輝く魔力で形成される。
さらに剣の鞘だったものは、いつの間にか矢筒へと姿を変えていた。
矢筒から魔力で作られた矢を取り出して弦に番える。
思いっきり引き絞り、補助の魔法を自身に掛けていきつつ、再び
「《
《
どうか間に合ってくれ!そんな事を思いながら、願いを込めて矢を放った。
「
一条の白く輝く閃光の矢が、夜の山を駆けていく。それはまるで流星のようにも見えたと、後にとある少女は語った。
◆◆◆◆◆
その日は、家族で出掛けていた。
いつものように近くの山へキャンプに行き、また父と母がなんとはなしに微妙な空気になって、自分がどちらも好いていると言って、両親を宥めるのだ。
そして父が焼いた肉を食べ、母が切った野菜を食べる。あったことをお互い報告し合い、結局最後は仲良く家へ帰るのだ。
母は少し納得しないようだが、それもご愛嬌。結局また父と母が仕事の日の朝になると自分達は揃って出掛ける。そんな日々を妄想し、そして今日のキャンプもそのはずだった。
最初に異変を感じたのは、父が少し気になることがあるから様子を見てくると言って、近くの川に向かっていった。
母が何故か少し機嫌が悪そうだったので、どうしたのか聞いたら、嫌な予感がすると言っていた。
また父がなにかやらかすのかな........とその時は思っていた。
次にどこからかガサガサと、草木が揺れる音がした。父が戻ってきたのかとも思ったが、それとは違い。何かが辺りに彷徨いているような気がして気味が悪かった。
早く父が戻って来ないかなとも思った。
しかし、中々父が戻って来ない。痺れを切らした母が、武器を取って平時の時に着ている軽鎧を着て、そのまま奥に行こうとしていた。
私はここにいるように言われ、しかし一人でいるのは怖くてそれに頷けなかった。
聖騎士に憧れて、父や母に手解きを受けているのにこのザマだ。
きっと失望しただろうと思ったが、母はやっぱりここに残ると言って、近くを索敵しただけだった。
もし、父が危ない目にあっているとして、それで助からなければ自分のせいだと考える。しかしそれは、別の形で裏切られることとなる。
「逃げるんだネイア!我が家の方角に!なるべく遠くへ!早く!」
夢だと思いたかった。あの強くて立派な父と母が、亜人相手に押されている。
父がこちらに戻ってきた時、凄い形相でここから逃げるぞ!と言った。なにがなんだかわかっていないうちに、父が私を抱えて走り、母が後ろを警戒しながらついてきた。しかしどこに潜んでいたのか、亜人達が現れ、そのままこちらに攻撃を始めた。
母が前衛として前に出て、父が弓で敵を撃つ。
不意打ちをしてこようとしてきた母の背後の敵を、的確に父が撃ち抜く。ならばと、父の射線へ私が被るように移動した敵の首を、母が剣を投擲して突き刺す。
敵の内、魔法を使って父の背後に素早く動いた者もいたが、ギリギリの距離で父の後ろを剣で母が両断する。何かの言葉を発そうとした敵の口目掛けて、父が強化した射撃をぶち当てて、そのまま体が地面に打ち付けられる。
訓練や戦線でも中々見れないコンビネーションに、一瞬このまま勝ってしまえるのではと楽観的な思考が駆け巡るも、その希望は打ち砕かれた。敵方が本気を出してきたのか、それとも何かが変わったのか。激しい猛攻が起こり始めて、一気に劣勢になる。
敵の数はそこまでいっても多くは無いはずだった。
両親も万全の装備では無いとはいえ、このような状況は想定して、いくつか戦闘用のマジックアイテムやらポーションは持っていた。
それでも敵の首魁らしき、上位種と思える亜人が強力な伏兵として現れ、戦況は一気に傾き、さらに逃げ出すのすら困難になりかけた時、ようやく自分は、どうやら両親の負担になっていることに気づけるくらいには、最低限マシな頭脳をしていた。
咄嗟に逃亡を図った。もう既に泣き出したくはあった。
だが、そんな事では両親が戦いに集中出来ないし、何よりせっかく暗くて見えずらいから狙われにくくなっているのに、敵に狙われる確率を上げるだけだ。
そして、自分の中の聖騎士見習としてのなけなしの誇りが、まだ泣くなと云っていた。
二人に叱られるなとは分かっていたが、それでもいいと思った。せめて二人の力になりたかった。
こんな自分でも、二体か三体くらいは引き付けられれば、両親の役に立てると思ったから。
しかし、予想に反して私の両親は、もっと立派だった。
「逃げるんだネイア!我が家の方角に!なるべく遠くへ!早く!」
「私たちは大丈夫!決して貴女にこいつらを近づけさせはしない!」
見れば両親は、私に向かって襲いかかろうとした奴らを食い止めて、ほぼ全ての敵を同時に相手どっていた。
目に涙が浮かんでいるが、決して号泣はしない。えずきそうになる声を、必死で抑える。なるべく自身の出せる最高速度で山を下る。助けを呼ぶ為に。
(早く....!早く!もっと早く!!!間に合わなくなる前に!頑張れ私の足っ!)
もうどれくらい走っただろうか、まだ、両親は無事だろうか。そんな事を考えてもどうにかなる訳では無い。気にしないように走ることに集中しようとした時、どこかから叫び声が聞こえた。
絶望感が襲って来る。母と父の悲鳴で無いことを願いながら早く助けを呼びに行かなければと焦る。
「お父さん.........お母さん.................」
しかし自分の足は、先程とは逆の方へと向かっていた。
何故か元の道を登って行く自分。降りていた時よりも体力が奪われる。しかし止まることは無い。もっと急げ、もっと走れ。もう二度と会えないかもしれない。下手すれば、自分も死ぬかもしれない。
「はぁっ........はっ........はぁっ........はっっ!!」
それでも前へ進む。足を動かす。
そうして走りきって体力も底を尽きた時、なんとか先程の場所まで戻って来ていた。その視線の先には、トドメを刺されそうな両親の姿。
「やめて.......。やめてぇぇぇえ!!!」
もう声も充分には出ていない。それでもお腹から力一杯吐き出す。亜人に届いているかは分からないし、届いたところで見逃してくれるかは分からない。
それでも、少しでも敵の気を逸らして、両親を助けたかった。それが数秒の延命に過ぎなかったとしても。
聖騎士としては失格かもしれないが、両親の気持ちを踏みにじるかもしれないが、自分は死ぬ時は両親と一緒にいたかった。誇れる両親と一緒に。だから両親が、自分が見ていないところで死ぬのも嫌だった。
二人がせっかく作った逃げる機会すらも無駄にし、案の定、敵の亜人は両親から離れてこちらに向かって来た。
それが油断かもしくは余裕か。どちらにせよ今の自分には何も出来なかった。
恐怖で足が震える。それでも泣きはしない。どれだけ恐ろしい殺気を向けられても、なんとか泣かないように耐える。それがせめてもの抵抗だった。
丁度奴らが何体か両親から離れて私達の間に来たくらいの時、私は死を覚悟し、段々と目を閉じようとして──────
──────その時、目の前に光が墜ちた
「________っえ?」
少しだけ眩しくて目を半開きにして見ると、目の前にクレーターのようなものが出来ていた。
それはまるで、強力な魔法を至近距離でかましたかのような、とても高威力で大規模な砲撃。
何が起きたのか分かっていないうちに、次の砲撃──────いや、光の爆撃が墜とされる。
「ギュッ──────」
亜人が何が言う前に、光の中で塵と化す。
信じられない光景を見ている間に、もう一撃、一射、また一射と....。
この辺になって、ようやくこれが何者かの射撃によるものだと気づけた。
それは自身の弓に対する、父から受け継いだ眠っていた才能か。それとも単なる直感か。
とにかく理解した時、少女は―ネイア・バラハは―その射撃が打ち出されている方を見上げた。
そこからは、まるで天から降り注ぐ白い尾を引く流星のように見える魔力の矢が、こちらにいる敵目掛けて少しずつ弧を描きながら直進してきていた。
何を思ったのかネイアは、それに向かって、いや正確にはそれを撃っている名手に向かって....
「....綺麗.............」
そう、言葉を零した。
装備詳細
◾︎ 神器級
〈セイクリッド・ブレイド「コードナー」大弓形態〉
とある
〈大弓形態化〉
「
〈強化射撃状態〉
「
スキル・魔法詳細
◾︎その他系魔法《
第三位階魔法。
◾︎その他系魔法《
第五位階魔法。使っている間、常に眼の能力(特に視力)全般が上昇する。こちらの魔法は使っている間MPを消費し続ける。また、目が金色に輝くエフェクトが起こる。
◾︎その他系魔法 《
第四位階魔法。一定時間の間、細かい動作をする時に限り、直感的にどこを動かせばいいかが分かる。これによって、多少技術が必要な物でもある程度は対処出来るようになる。
◾︎その他系魔法 《
第四位階魔法。一定時間の間、技術的な動作を行う時、それを通した攻撃やスキルなどに対してボーナスを得る。ゲーム的には、剣士の剣術での技量値や射手の命中率が上がるというデータ的な物だったが、転移後世界では実際に本人の技巧さが上がる物になっている。
◾︎ その他系魔法《
第六位階魔法。自身の攻撃や射撃、スキルや魔法の発動などで外したりミスをする場合、高確率で謎の力による補正が働き、ミスを帳消しにしたりする(外したはずの攻撃が当たるなど)効果を得る。
───────────────────────
少しだけ補足。
ケラルトのレメディオスへの公での呼び方が、姉様ではなく姉さんの理由ですが、本来なら原作開始前にとある事件が起こる予定なので、その件を経て、姉様呼びになっているという設定です。
また、レメディオスが原作より少し性格が丸くなっていたり、ケラルトの闇が比較的マシなのは、フォシスが存命なのが大きいです。もちろん彼が居ても居なくても、北部と南部はどっちみち分裂していますが、原作よりはだいぶ良くなっています。
さらにバラハ一家の件も、本来ならレメディオスが担当していました。しかしながら、フォシスは死んだとの訃報が届くわ、バラハ一家は助かるものの、そのせいでしばらくレメディオスが機能しなくなり、パベルの立場及び聖王女の判断力が問題視されたり、挙句の果てには家庭内での空気がしばらく悪くなったり(原作の不穏なところ)するわと悪いことずくめでした。
ただ、この話では通りすがりの救世主によって殆どが解決してしまいました。亜人達から見たら、本当に突然
投稿頻度
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一話ごとは短め、投稿間隔は早め。
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一話ごとは長め、投稿頻度は遅め。