ギター自作JK   作:水里露草

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(改造ギターの話してたら文字数が)こんなになっちゃった……
 なっちゃったからにはもう……ネ……(倍プッシュ)(ギターの自力改造は自己責任でね☆)

 あ、今回から平常運転です


美竹蘭とファズ
テレキャスはもちろん素晴らしいがES-335も素晴らしいしジャズマスも最高 なぜならアームを付けられるから


 

 

 

 この間……そう、冬休み初日の話なんだけど。散々股下1メートルだなんだっつってたせいか、とうとうランウェイでギターを弾くことになった。

 ちょーっとばかしシャレオツなもん弾いちゃおっかな〜と思ってたんだけど、その日出番のあるモデルのお姉さんたちの中になんかガールズメタルバンド大好きグループがあって、めちゃくちゃ大盛り上がりして壁ドンとかしたりされたりしてウキウキで楽しんでたら最終的にお気に入りのトーンベンダー系ファズをベタ踏みしてエグいソロかますハメになった。

 バカばっかの弊事務所はもちろん先方もなんか大喜びで、そのおかげか別のところからもオファーが来て今さっき……いや、夜中だったから忘れたけどギリ昨日か? まあデカめのところでワンモア弾いてきたんだけど。

 

 そのとき思ったんだわ。シャレオツなコードやエグいソロでビブラートかけるならアーム欲しいな、って。

 あと移動中に聞いてたナンバガの『TATTOOあり』が死ぬほどカッコよかったからジャズマスのトレモロユニット付けてぇ〜〜〜……! って。

 

「んで作ったもんがこれってわけよ」

「なにしてるんですか」

 

 CiRCLEのロビーで暇そうにスマホをたぷたぷしてたギター仲間──美竹蘭ちゃんがそっけなく言った。

 少し体のラインが強調されるクールな黒いレザージャケット、下にはエメラルドグリーンの眩しいタートルネックのセーターと黒いスキニーパンツ。セーターが薄手っぽくて若干寒そうだなって思うけど、まあセーターの中にヒートテックとか着てんだろうな。そして足下は真っ赤なスニーカー。ナイスセンス。

 黒にエメラルドグリーンにいつもの赤メッシュでAfterglowのバンドカラーコーデな幼馴染大好き蘭ちゃんに私はめちゃくちゃほっこりしてんだが、彼女から向けられる目はちょっと冷たい。黒コーデとはいえ私も今日ドロップショルダーのデカいレザージャケットにタートルネックシャツだから親近感すら抱いてるというのに! まあ下はダメージショートデニムとハイヒール付きふわもこサイハイブーツで全然違うんだが。足首までファーに覆われてるこれ、蘭ちゃんは絶対履かねえだろうなぁ。

 

「なにさ! 蘭ちゃんに頼まれてた調整は完璧にやったんだぜ? ちょっとくらい構ってくれよ」

「いや、まあ……それは感謝してますけど」

 

 実は蘭ちゃんのギターのメンテとピックアップ交換を頼まれていて、ブツを引き渡すために仕事終わりに家から持ってきたのだ。サボってなんかないもんね! マジで!

 ついでに趣味で吶喊工事した自作ギター見せびらかしてダル絡みしているんだが、どうも反応が芳しくねえ。蘭ちゃんは片眉を上げて口元を引くつかせるマジで困惑してるときの顔で言う。

 

「でもこれは……本当になにしてるんですか」

「昔作った普通のテレキャスのピックガード外してアイロン当てて塗装削ってライターで軽く焦がしてネック削ってストラップピンの位置変えてジャズマスのトレモロユニット付けた」

「……むごい」

 

 いや、いいじゃん。かっこいいだろレリック加工。

 ごめんやっぱレリック加工じゃねえかも。仕事が雑すぎる。

 

 テーブルの上に置かれているのは私が昔自分用に作って、それから仕事には持ってかなくても家で弾くときはとりあえず手に取る趣味1軍のテレキャスである。

 いや、だったというべきか。もはや見る影もねえって意味でも、多分こいつ仕事の1軍になるだろうなぁって意味でも。

 

 薄っすらと下の木目の透けて見える、少し赤らんだ肌色のようなブロンドカラーのアッシュボディはかなり分厚くて、胸元に当たる深いコンターの入ったところでようやく普通のテレキャスと同じくらいになる。ヒールカットもちょい入れたな。ストラップピンもボディの肩から背骨、ネックの真後ろに移している。エンドピンもボディの真下から背面の右下あたりに移動させていて、水平に構えんのは楽になったけど普通に持つのはもう無理だと思う。もうこの時点で私専用機だ。

 ヘッドはテレキャスタイプのリバース、指板一体型のローステッドメイプルネックは丸太みたいに太い。なんでボディが分厚いか? このネックになんも考えず合わせたからだ。バカすぎるだろ。

 そのバカネック、親指が当たるところは少しヤスリがけされていて、そこだけサラサラしている。ヘッド側から15フレットにかけて細長い二等辺三角形みたいにざーっと削ったのがガイドの役割を担っていてなかなか弾きやすい。使用感出すためにやっただけだから嬉しい誤算だった。

 ピックガードは取り外されて配線の斜めの穴が丸見だし、ボディの縁や本来ネック側のストラップピンが付いてるあたりの塗装は削れて剥がれている。ピックガードが元々ないあたりは削るだけじゃなくて軽く炙られていて、タバコの灰を何度も何度も落としたみたいに大きな焦げ跡がついていた。

 何より、ブリッジプレートの下側にはくすんだトレモロアームが取り付けられている。ジャズマスタイプだ。バカみたいに太いネックに合わせて少し高くされたブリッジがこれまたちょうどいい塩梅で、弦自体はまあ問題なく張れていた。オクターブチューニングは何故か合ってる。理由はわからんがヨシ!

 ピックアップはBare KnuckleのPiledriver。ハイが良く出てレンジが広い。いつものだ。電気系にはそんなに強くないから流石に自作はできなかったし、そもそもする気もなかった。Bare KnuckleとLundgrenがピックアップメーカーの中で一番好みだし。

 他にもフレットがジャンボフレットだったりナットをブラスにしたりついでにボリュームノブもくすんだブラスにしたり色々してある。最高!

 

「蘭ちゃん57年代とかのヴィンテージには憧れなかったクチかぁ? こういうのロマンだろ! ロマン!」

「ピックアップカバーとかプレートとか、わざわざ後から錆び付かせたんですか? 意味分かんない……」

「結構ボロクソに言うなぁオイ。蘭ちゃんにゃこの渋さはまだ早かったか……」

「む」

 

 ピキッた顔がなんかそんなに怖くないというか、蘭ちゃんほっぺがちょっとぷにぷにしてんだよな。なんか愛嬌がある。

 や〜い赤ちゃん肌! これ褒め言葉になんじゃねえか?

 

「なんならちょっと触ってみるか? これでも良い音すんだぜ。……まあ? 高密度のホワイトアッシュに丸太並みの極太メイプルネックだし? 下手なベースより重いし? 鳴りもすごいしぃ? 蘭ちゃんに使いこなせるかはわかんねえけどぉ?」

「……弾かせてください。絶ッ、対に良い音出します」

 

 ちょろかわ。

 

 

 

 

 

 まあ先にお仕事を済ませよう。

 

「蘭ちゃん、これあなたのレスポールな」

「あっ……すみません、ありがとうございます。料金は」

「後でいいよ後で」

 

 ピックアップ交換と擦り切れかけたフレットの打ち直しと、あとボディ磨いたり配線ちょっと直したり弦変えたり。可愛い割と友達割と可愛い割と可愛い割と嬉しそうな控えめ笑顔割を適用するとピックアップと弦こっち持ちで1000円だな。大黒字過ぎて億万長者になっちまうわ。

 

 蘭ちゃんが受け取った真っ赤なレスポールと自前のペダルボードをマーシャルに繋いで、その間に足下のツマミをちょいちょい弄る。

 この子はペダルで全部なんとかするタイプなんだけど、スタイル固まっててものすげー潔い構成だ。カッティングとサスティーンのためのDynaComp、前までメイン歪みだったStrawberry Red Overdrive、なんかCiRCLEでライブのトリやったら後日お客さんからもらったらしい現メイン歪みSHIGEMORIのMUSE、みんな大好きFuzz Face Mini。私が上げたゲルマニウムトランジスタの赤いやつだ。以上。

 

「蘭ちゃん、なんで歪みばっかなん? 一個くらい空間系あってもいいと思うけど」

「空間系つけるとどうしてもちょっと音滲んで、こう……位置が奥に引っ込むじゃないですか。あたしがやるの、基本的にコードの刻みとちょっとオカズ入れるくらいだから要所でくっきり聞こえてくれた方がよくて」

「あー……そっかそっか。逆にリフ弾きまくるモカちゃんが空間系入れてんのは」

「住み分けです」

 

 さらっと言ってスタンバイスイッチもオン。派手なスライドで6弦ローポジションへの直滑降からぶっとい音で16分のメタルコアみたいなリズム、ときどきロックな低音リフをかますために左手が残像作りそうなくらいグンッと跳ねて12フレットでハンマリング・プリングでコードを飾り立てる。意地でも高音弦を使わず、鋭いスライドノイズが火花を散らして彩る。

  

「いやうんめぇ」

 

 そこらの下手なバンドにぶち込んだらリードがどんなに目立ちたがっても黙殺されかねない灼熱のバッキングだ。音抜けの良さがエグい。私がBare KnuckleのAftermathを載せたからってだけじゃなく、ほとんど彼女の腕によるところだ。

 

 蘭ちゃんは私とは違う方向で左手が上手くて、紗夜ちゃんとは違う方向で右手が上手い。

 まず左手。押さえる力自体は最低限で、指先立ててスマートにやってんだけど……リバーブとかでサスティーンを稼がずにきちんと必要なだけ音を伸ばしてから、点から点に瞬間移動するみたいに力づくでぶっ飛ばす豪腕フィンガリングをやってのける。

 普通は指が追いつかないし余計な力が入るし、実際ちょっとバタつくんだけど、蘭ちゃんはこれできちんと弾けてる。そうすると、バンドの方向性的に全力感が味になって魅力激増って寸法よ。

 

 右手もすごい。蘭ちゃんはダイナミクスの付け方が意味分かんないくらい上手いというか、なんかめちゃくちゃ劇的に緩急つけてる()()()弾けるのがすげえんだよな。歪んでるっぽいのにそんなに歪んでない太い音作んのが得意でなぁ。今回ピックアップ交換頼まれたのもそれを生かすためだし。きちんと自分の武器をわかってるのも偉い。かすみんとはまた別の方向で、パッションを形にするセンスがぶっ飛んでる子だと思う。

 

 私ふつーに蘭ちゃんのファンなんだよ。マジ大好き。

 

 最終的にゴリゴリの速弾きから2音半くらい上下するエッグいビブラートをやって、せり上がるフィードバックノイズをもう一度派手なスライドでブチのめして試奏を締めた。かっこよすぎる。

 

「はぁー……悪くないね」

 

 きゃ〜〜〜〜〜〜〜♡♡ はにかむお顔がキュート♡♡ いや顔面良いな?

 

「Bare Knuckleでしたっけ、結弦子さんが好きなメーカー。覚えときま……なにしてるんですか」

「いやちょっと……」

 

 私は自分の顔を両手で引っぱたいて正気を取り戻した。危ねえ、推しが尊い。心の中の日菜ちゃんが浮気だ浮気だと騒ぎ立ててるけどいや違うんだよ、紗夜ちゃんも大好きだけど好きピと推しはやっぱ別枠っていうかさぁ……! まだ正気取り戻せてないかもしらんわ。

 

「蘭ちゃん♡ 私のギター使って♡ いやごめん違うわ、さぁ挑むがいい!」

「やっぱりいいです」

「そっかぁ……」

 

 残当。

 もうちょい早く正気を取り戻せてたらなぁ、と内心未練たらたらで自分もセッティングする。フロントで借りたOrangeのRockerverb、あと仕事に使ったガチ用ペダルボード。最近見直してコンプを外したりファズを増やしたりした。ファズばっかだな、と思ったけど何故か幅広く仕事に対応できてるから構わんだろ! ガハハ!

 

 蘭ちゃんが私の足下を見てまたドン引きした。

 

「結弦子さん……それ、歪みは全部ファズじゃない?」

「あ、わかる?」

「Myriad Fuzzは散々聞かされたし、その黄色いやつは見るからにトーンベンダー系だろうし……ピンクの、それNew Ginger Fuzzですよね。Effects Bakeryの」

「よく知ってんなぁ」

「モカが買ってたから……」

 

 あぁ、パン大好きだもんなあの子。全種類持ってても驚かねえよ私は。

 

「音作りってどうしてますか?」

「手元フルテンのままOrangeのDirtyチャンネルでクランチ作って、そこから6くらいまで絞るのが基本かなぁ、私は。そんでMyriad Fuzz踏んだらもういつもの音だな」

 

 仕事のとき、ほぼ毎回OrangeのRockerverb 50C MkIIIとMyriad Fuzzを使ってんだよな。すっかり欠かせないふたつとなっている。

 ちなみに50Cがなにと言うと50ワットのコンボアンプって意味だ。筐体が丈夫なのをいいことに、音の確認中や全員同じブースに集まって一斉に弾くライブ録りなんかのときはアンプに座って弾いてたり。

 

「この黄色いのは……あ、2セクションある」

「BAEのROYALTONEだな。こいつ、Fuzzチャンネルと3バンドのブースターチャンネルに分かれててさぁ、同時に踏むと擬似的にファズにEQ掛けられるって作りなんだけど……普段はこっちのToneってスイッチだけ使ってブースターにしてんだよ。で、ファズチャンネルのこの赤いツマミ、AttackってやつがいわゆるGainでな? 曲に合わせてここ調整しといてソロで踏む」

「新生姜はブースターにも使えるんでしたっけ」

「そうそう! あとファズフェイスみたいに鈴なりクリーン欲しいときに踏んでんなぁ。……公式はマフ系っつってるけど」

 

 いや、こんなローゲイン対応できて手元への追従性良くて鈴なりクリーン出せるやつがマフ系なわけあるかよって思うけど、でも音色の方向性は確かにマフ系っぽいから、こう、なんだこいつ! とりあえずゲイン絞りめで便利に使っている。

 

「空間系はアンプで?」

「おう! まあリバーブユニットなかったり壊れてることもよくあるから、一応ペダルも入れてるけどな。StrymonのFLINTとディレイはEl Capistanで……こんな感じ」

 

 Myriad Fuzzと新生姜だけ踏んで手元を絞り、ちゃらーん、とDM9をストロークしてアームで揺らす。そのまま軽く揺らしっぱなしでFM7-5、Bm7、E9、AM9。オシャレなコードをふんわりと広げていく。

 ボリュームを小指でぶち上げながらスライドを入れて今度はF#m。King Gnuの飛行艇みたいにアームでガンガンにビブラートをかけるフレーズから軽くペンタの速弾きで低音まで降りてROYALTONEのスイッチを両方オン。ブチブチのファズトーンでオク下のTrue Color、蘭ちゃんたちのオリジナル曲のリフをちょっと擦り、最後の音を一瞬伸ばした隙に手元を一気に絞ってROYALTONEのFuzzスイッチだけ切りながら7フレットのナチュラルハーモニクスを振り抜く。

 そのサスティーンが消えるまでアームで揺らしながら見送った。

 

「どんなもんよ!」

「…………流石。まだ勝てないですね」

「いえーい! まだまだ若いもんには負けんよ!」

 

 全力でぶいぶいするが私もちとビビった。なんかめちゃくちゃ良い音する。トレモロユニット付けて金属部分増えたとかザグリとコンターとヒールカット増やしてバランス変わったとか要因はめちゃくちゃあるだろうけど、昔より明らかに良い音してる。奇跡的に上手く出来たとはいえ私の初めて作ったギターだから、そんな大したもんじゃないはずなんだけどな。

 

 …………!

 

「やっぱファズとアーミングが世界を救うのか……?」

「……」

「あれ?」

 

 ツッコミがねえ。

 振り返ると、蘭ちゃんは真剣な顔で私のファズまみれのボードに目を落としていた。それから彼女自身のを一瞥して、私に向き直る。

 

「……あの、結弦子さん。ちょっと相談があるんですけど」

「んぁ、なになに? なんでも聞いていいぜよ!」

「……くすっ、なんですかその語尾」

 

 お、笑った笑った。よしよし。気楽でいいんだ音楽なんて。

 ちょっと気の抜けた顔で蘭ちゃんは言った。

 

「ファズの使い方教えてくれませんか」

 

 ……………………。

 

 ……………………ファズの話をしてええんか!?!?!?!?!?(オタク)




 明石結弦子
 実は前回のライブは端の方で聞いてて大号泣の末にうずくまってたので香澄から見えてなかった

 美竹蘭
 前回のポピパのライブに触発されて即オタクにギターを預けるなど音作りに余念がないけどファズオタクにファズの話を振るのは迂闊だったかもしれない
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