神滅《かみごろし》の三王の異世界進行録   作:不浄皇

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皆様、大変お久しぶりでございます!!
そして、誠にお待たせして申し訳ございませんでした!!

それではどうぞ!


小悪党組(バカルテット)

 

 暁サイド

 

 

 あの後俺達は、神山の頂上の正教教会本部から魔法で動くロープウェイみたいな物に乗って、受け入れ先のハイリヒ王国の王宮へと直接向かった。

 そして王宮に着いたらそのまま王座の間に案内されて王様と謁見……と言っても内容は王様と王妃、その子供である王女と王子、後は騎士団長や宰相等の高い地位の紹介がメインだ。

 …だが、王座の間について早々、王様が教皇の手を恭しく取ってキスしていた辺り、どうやらあの教皇(狸爺)の方が立場が上のようだ。…いや、その教皇(タヌキ)も神とやらの傀儡(ペット)だから実質上、この国の支配者も神様ということになるな…。

 その後、親睦を深める為の晩餐会が開かれ、それに参加する。正直言って親睦云々はどうでもいいが、異世界の飯が食えたのは嬉しかった。見た目は地球の洋食に近いが、たまにファンタジー色全快の品(ピンク色のソースが掛かった肉料理や、虹色に輝くドリンク等)があり、どれも非常に美味だった。

 

 

 「はぁ~、食った食った……んで疲れたぁ~…」

 

 

 そして晩餐会がお開きになった後は、早速明日から始まる訓練に備えて、各自に振り分けられた自室にて休むことになり、俺はその内の一室にある天幕付きのベッドで大の字になっていた。

 

 

 

ハジメ

 「……あのぉ~、暁く~ん。休むなら自分の部屋のベッドで休んでくれないかなぁ~?」

 

 

 …もっとも、此処は俺の部屋じゃないんだがな。

 

 

 「悪りぃなハジメ。一息着いたらドッと疲れてなぁ?()5()()で良いからちょっと休ませてくれ~」

 

ハジメ

 「気持ちは解かるけどそれ(5年)はちょっとじゃないよねぇ!?どこの第七宇宙の破壊神(ビ〇ス様)!?」

 

 

 何時も通り、打てば響くが如く俺のボケに素早くツッコミを入れるハジメ。…だが今はそれが物凄く落ち着く。

 

 

ハジメ

 「…その様子なら、もう大丈夫みたいだね」

 

 「…あぁ、あの時は悪かったなハジメ。迷惑かけた」

 

ハジメ

 「…気にしなくて良いよ。普通、あの状況で冷静でいられる人間なんていないよ」

 

 情けない話だが会談の時、俺はとても冷静とは言えない状態だった。もしもハジメが止めてなかったら、あのまま教皇に掴みかかっていただろう。…そんな事したらどれだけ面倒な事になるのか考えずにだ。

 

 

ハジメ

 「…やっぱり心配?飛鳥(女将)さんのこと」

 

 「まぁな……すぐにどうこうなる程、脆弱(ヤワ)精神(メンタル)はしてないけど、流石にこんな状況じゃなぁ…」

 

ハジメ

 「…夜士郎さん(マスター)が亡くなって、もうどれくらい経つんだっけ?」

 

 「もうそろそろ5年になるな…」

 

 『飛鳥(あすか)』とは俺のお袋、『夜士郎(やしろう)』は親父のことだ。

 そもそも『黄昏(ウチの店)』は最初、親父が一人で始めた店で、お袋と結婚し(くっつい)た後は、夫婦二人で経営していた。

 ……だが俺が12歳、中学入学の寸前の時に親父が急病でポッくりと逝っちまってからはお袋が店を引き継いだ。幸いにも親父の頃の常連が今でも通ってくれているので、親子二人で食っていける分には稼いでいるし、俺も当初から色々と手伝い始めて少しぐらいは負担を軽減している。

 

 

 「…ま、そんな事考えても今は仕方ねぇし、とりあえず、これからどうするか考えようぜ?」

 

ハジメ

 「……そうだね」

 

 コンコンッ

 

 

 気持ちを切り替えて話を進めようとしたその時、突如として扉からノック音が鳴り響く。

 

 

香織

 「…こんばんはハジメ君、香織です。ちょっと今いいかな?」

 

ハジメ

 「白崎さん?…どうぞ、鍵は開いてるよ?」

 

 思わぬ人物の来訪に戸惑いつつハジメが入室を許可すると、すぐさま扉が開く。

 

香織

 「お邪魔しま……って五十嵐君、いたの?」

 

 「オウ、いるよ……で、どした白崎?ハジメに夜這いでも仕掛けに来たか?」

 

ハジメ

 「ちょっ!?」

香織

 「よばっ?!…ち、違うよハジメ君!?そんなんじゃないからね!?」

 

 「香織、落ち着きなさい。五十嵐君もそれ、下手したらセクハラになるわよ?」

 

 顔を真っ赤にしながら白崎が全力で否定していると、扉の影から八重樫が呆れながら出てきた。場の微妙な空気に居たたまれなくなったのか、ハジメが話を切り出す。

 

ハジメ

 「えっと…二人共、こんな時間にどうしたの?」

 

 「ちょっと私達の現状と今後の方針について、南雲君達の意見を聞きたいのだけど、良いかしら?」

 

 

 どうやら二人も俺と同じ目的で来たようだ。…まぁ、白崎の場合はハジメに会いたかったのもあるんだろうけど。

 

 「丁度良いじゃねぇか。ハジメ、どうする?」

 

ハジメ

 「もちろん歓迎するよ。こういうのは人が多い方が良いからね」

 

 

 とりあえず二人は部屋のソファーに座らせて、俺とハジメはベッドに腰掛ける。

 

 

 「まず私達の現状だけど…南雲君、あなたの率直な意見を聞かせてくれない?」

 

ハジメ

 「…決して良いとは言えないけど、最悪ってほどじゃないと思う。戦争に参加するように誘導はしてきたけど、僕らの自由意思を奪う様なマネはしてこなかったし…」

 

 ちなみにハジメが想定した最悪のパターンとは、『全員、有無を言わさずに奴隷として戦場に送り込む』というものだった。確かにそれに比べればマシだろう。

 

 

ハジメ

 「それに、これはあくまで僕の憶測だけど、今後しばらくは向こう側も強引な手段は執らないと思うよ?」

 

 「…何でそう言い切れんだよ?」

 

ハジメ

 「…事情説明の時、『僕らには優れた力を有している』って教皇が言っていたのを覚えているかい?」

 

 あぁ、『上位の世界から来た~』とか、『こっちの人間の数倍の~』とか言っていたな?

 

 

 「それがどうしたんだよ?」

 

ハジメ

 「話を聞いて思ったんだけど、多分彼らは僕達にどんな能力があるのか、…正確には自分達とどれだけ能力に差があるのか把握していないんじゃないかな?」

 

 そこまで聞いて俺はハジメの意図に気付いた。他の二人も同様だったのか目を丸くする。…っで、代表するように白崎が口を開いた。

 

香織

 「…そっか、それだと下手に手を出したら、私達に返り討ちにされる可能性があるね?」

 

ハジメ

 「その通り。単純な武力行使はもちろん、魔法とかもどうやら万能ではないみたいだし、失敗した時のリスクの方が圧倒的に高そうだ」

 

 

 …成る程、それだったら虚言甘言で上手く唆して、自主的に動いてもらった方が遥かに楽だろう。

 

 

 「…んで、()()()()()()()()()のお陰で、見事俺達は向こうの思惑通り……ってとこか?」

 

雫・香織

 「うっ…!?」

 

ハジメ

 「あ、あははは…」

 

 俺がそう言うと、白崎と八重樫はビシリと固まり、ハジメは乾いた笑い声を上げる。

 …にしても、天之河のアホはともかく、七彩路の奴まで承諾するのは予想外だった。

 …何を考えてんだアイツ?まったく読めねぇ…。

 

 

 

 「…ま、過ぎた事を何時までも愚痴ってもしょうがねぇか…」

 

ハジメ

 「…そうだね。それよりも今一番大きな問題は、”現時点で、この世界(トータス)について圧倒的に情報不足だ”って事だよ」

 

 何せここは異世界だ。魔法を含め、法律、価値観、倫理等、地球とはまったくかけ離れた理となっているだろう。それが解らなければ対策も何も付けが無い。

 

 

 「確かにそうね。それなら今後しばらくは、訓練を受ける合間に情報収集に勤しむってことで良いかしら?」

 

 

 八重樫の確認に、その場全員が無言で頷く。…っていうか、今の俺達に出来る事はそれぐらいしか無ぇしな。元の世界に戻る方法が見つかれば儲けモンってぐらいは思っておこう。

 

 

 

ハジメ

 「……あの、白崎さん?ちょっと聞きたい事があるんだけど、いいかな?」

 

 これで話は終わりだと思ったその時、ハジメがためらい勝ちに挙手しながら発言する。

 

 

香織

 「…何かな、ハジメ君?」

 

ハジメ

 「……前から気になっていて、この際だから聞いておきたいんたけど、透織君の容態って、現状はどうなっているの?」

 

香織

 「っ!」

 「………」

 

 ハジメの問いに対し、白崎は驚愕と困惑が混じったような表情を浮かべる。八重樫も沈痛な様子で黙り込んでいた。

 

 

香織

 「…ごめんなさい。それについて詳しいことは解らないの…」

 

ハジメ

 「解らないって、どういう事?」

 

 何でも白崎家では、透織の容態については基本的にアンタッチャブルな扱いだったらしく、詳しいことは両親しか知らないと言う。

 

香織

 「…ただ、これはあくまで私の勘でしかないけど……多分、あまり芳しくないと思う。…3ヵ月前、ルーくんが長期入院してからお父さんとお母さん、明らかに暗くなっていたし……入院した理由も、『大事を取るため』の一点張りで、詳しいことは教えてくれなかったの……」

 

暁・ハジメ

 「………」

 

 …それ、明らかに『何か良からぬ事がありました』、と言っているようなもんじゃねぇか。

 …場に沈黙が満ちるなか、白崎がゆっくりと語り出す。

 

 

香織

 「……私ね。最初この世界に連れて来られた時は困惑したし、戻れないかもしれないと聞いた時は絶望しかけたよ?…でも今は、これはチャンスだって思うんだ…」

 

 「…チャンス?」

 

 思わぬ言葉に、俺達は首を傾げる。

 …そんな中、いち早く気付いただろうハジメが、目を丸くする。

 

 

ハジメ

 「白崎さん、ひょっとして…」

 

香織

 「…うん、この世界でルーくんの病気の治療方法が無いか、探し出すつもりだよ」

 

 

 …成る程、向こう(地球)じゃ難しくても、こっち(異世界)なら魔法という超常現象がある分、何とかなる可能性もあるだろう。

 

 

香織

 「…あ、でも、これに関しては二人を巻き込むつもりは無いの。これは私と雫ちゃんの二人で探すつもりだよ?」

 

ハジメ

 「『二人で』って……天之河君と坂上君は?」

 

 「…二人にはギリギリまで黙っておくつもりよ。…光輝は今、クラスの主柱みたいになってるでしょ?伝えると下手したら……いや、間違い無く暴走して全員を混乱させる事になるわ…」

 

香織

 「龍太郎君は……あんな性格だから、秘密にしても絶対に光輝君にバレると思うから…」

 

暁・ハジメ

 「あぁ~~…」

 

 確信を持って遠い目をする二人に、俺達は納得した様な声をあげる。…うん、そりゃ英断だわ…。

 

 

 「…だから二人共、透織の事は私達に任せて、自分達の目的を果たす様に行動してちょうだい」

 

 八重樫の言葉に、白崎も決意を込めた目をしながら無言で頷く。…おそらくこれは、俺達に対して気を遣っているのだろう。

 …これが天之河か坂上だったら、『俺達も手伝う!!』とか抜かすだろうが、現状を冷静に考えれば、俺らにそんな余裕はあるとは言えない。

 

 

 ……ま、かといって放って置くことも出来ないんだがな?

 

ハジメ

 「………」

 

 ふと、ハジメに目をやると、向こうもこちらをジッと見つめていた。長年の経験から、その視線の意図を察した俺は、『仕方ねぇな』と言いた気に苦笑を浮かべながら肩を竦めて見せた。

 …それを見たハジメも申し訳なさそうに苦笑して返す。

 

 

ハジメ

 「…わかった。でももし何かあったら、抱え込まずに僕らに頼ってね?…二人に何かあったら、透織君に顔向け出来ないからさ…」

 

香織

 「……ハジメ君」

 

 「変な気は必要無ぇぞ?透織自身の事もそうだが、坂上と天之河から変に恨みを買いそうで面倒だからよ?」

 

 「……言われてみれば、確かにそうね。…わかった、もしもの時はお願いするわね?」

 

 八重樫は気遣うつもりが、逆に気遣われてしまったことに申し訳なさそうにするも、苦笑しながら感謝の言葉を述べる。一方白崎は、罪悪感より嬉しさが勝っているのか、ハジメを熱を帯びた眼差しで見つめていた。

 …多分あれ、脳内で『二人』の部分が、『香織』に変換されているな……。

 

 

 「…本当にお前って、普段ヘタレのクセして、こういう時に限っては自ら首を突っ込んでくるよなぁ~」

 

ハジメ

 「…あはははは……毎度の事ながら、巻き込んで本当にごめん」

 

 「…もう慣れたわ」

 

 …ま、今回は透織の事があるからしょうがないし、一応確認をとったりする分、天之河よりは大分マシだ。

 因みに、白崎がハジメに興味(好意)を抱いたのも、このお人好しが原因で起きたトラブルがきっかけなのだが、詳しいことはまた別の話ということで…。

 

 

香織

 「…ところでハジメ君。何でいきなりそんな事聞いたの?」

 

 白崎は先程の表情から一変、疑問符を浮かべて首を傾げながらハジメに問い質す。それに対しハジメは、気まずそうにしながら答える。

 

ハジメ

 「えーとぉ、その……もし可能だったら透織君にも無理が無い範囲で手伝って欲しかったんだけど………やっぱり止めてお…

香織

 「あ、それは全然問題無いっていうか、むしろこっちからお願いするからルーくんも混ぜてくれないかな?」

ハジメ

 ……って何でやねん」

 

 あっさり許可するどころか、本人(透織)が不在にも関わらず勝手に決めようとする白崎(あね)に、思わず関西弁でツッコミを入れるハジメ。

 …すると八重樫が苦笑しながら、白崎の代わりに説明し始めた。

 

 「……南雲君の気遣いはありがたいのだけれど、それだとむしろ、逆効果になる可能性があるのよ」

 

 「…どういう事だ?」

 

 八重樫の話を聞くと、どうやら透織も先程の俺達の考えと同意見らしい。

 …で、幼なじみの二人によれば昔からアイツは、自分のためよりも他人に対してアグレッシブに行動するタイプだそうだ。

 

 

 

香織

 「……というか、行動力があり過ぎて、たまに色々とやり過ぎちゃうことがあるからねぇ…」

 

 「…ええ、そうね。…今回の場合、仮にもし一人で行動させたら、情報を得る為に皆に隠れて絶対無茶な行動に出るわね」

 

ハジメ・暁

 「あぁ~~……」

 

 過去の前例を思い返しながら再び遠い目をする二人に対し、俺達はまた納得したような声をあげる。成る程、それなら最初(ハナッ)から一緒に居て、睨みを利かせた方がまだ安全だろう……というか、さっき遠慮していたのは、コレを頼もうとしてたからか…。

 

 

 「…そういう事なら了解した。ついでに透織の事も見張っておくよ」

 

 「本っ当にごめんなさい!もしも手に余るようなら、遠慮無く声をかけてね?()()()()叱っておくから!」

 

 

 …やたらと『キッチリ』の部分を強調しながら宣言する八重樫……流石はオカンと言ったところか。

 

 

ハジメ

 「…さて、話は大体纏まったことだし、今日はもうこの辺にしy…

香織

 「ちょっと待って、ハジメ君」

ハジメ

 ……何かな、白崎さん?」

 

 今度こそ話は終わりと思いきや、突然白崎が呼び止める。…その際、ニッコリと満面の笑みを浮かべているが、有無を言わさない様な威圧感を発していた。

 

 

香織

 「…ハジメ君、私達ってこれから、お互い協力し合う仲になるんだよね?」

 

ハジメ

 「う、うん……まぁ、そうなるよね?」

 

香織

 「…だったら、何時までも『白崎さん』って呼ぶのもどうかと思うし、これからは

名前で呼び合うべきだと思うんだけど、どうかな……かな?」 

 

ハジメ

 「…へっ!?」

 

 ……どうやら白崎はこれを機に、ハジメに否が応でも名前で(『香織』と)呼ぼせようとしているようだ。ハジメの方を見ると、助けを求める様にコチラに視線を向けてくる。

 

 「………」

 

 「……はぁ~」

 

 …が、明らかに面倒臭そうなので、俺は瞬時に八重樫にパスする様に視線を向けた。八重樫はタメ息を吐きつつ、白崎に対応する。

 

 

 「…香織、あんたいい加減にしなさい!別にどう呼ばれたっていいじゃないのよ?」

 

 若干面倒臭かったのか、半場投げ槍気味に嗜める八重樫。それに白崎はムッとした表情でカウンターを放つ。

 

香織

 「……じゃあ、雫ちゃんはルーくんに、『八重樫さん』って呼ばれても平気なの?」

 

 「なっ?!…べ、べべ別に、それくらいどうってこと無いわよ!」

 

香織

 「絶対ウソでしょその反応!…それに私、知っているんだからね!?本当はルーくんに『雫』って呼び捨てで呼んで欲しいんでしょ!?」

 「は、はぁっ?!デタラメなこと言わないでよ!?」

香織

 「デタラメじゃないもん!この前『黄昏(トワイライト)』に一人で来た時に愚痴っていたって女将さんが言ってたよ!」

 「ちょっ、飛鳥さん!?『黙ってて』って言ったのに何で言っちゃうのよぉおおおおおお!!」

 

 (……八重樫、なんかすまん…)

 

 顔を真っ赤にして大絶叫する八重樫に、俺は心の中で謝罪する。…多分お袋、親友の白崎なら言っても大丈夫だと思ったんだろうが、ムゴいことしやがる…。

 

 

 

 …まぁ、そもそもの話なんだが…

 

 

 「南雲君、五十嵐君違うの!今のは…

 「あ~、落ち着け八重樫。この際だから言っておくが……お前が透織にベタ惚れなのは、ウチのクラスのほぼ全員が承知しているからな?」

 ……ふぇ?」

 

 涙目で必死に弁解しようとする八重樫にそう告げると、そのままの状態でビシリと硬直する。

 

 

 「…まさかお前、今まで本気で隠し通せていたと思ってたのか?日頃の態度を観てりゃバレバレだからな?」

 

 具体的には、普段から自然と透織に視線が向き勝ちだし、基本的に誰にでもハキハキと喋るクセに、透織の場合は明らかにしどろもどろになる。通院等で不在の時はあからさまにタメ息が多くて上の空の状態だ。

 

 

 「…で、極め付けはお前、透織に色目使う女に対して、鋭い視線で牽制してくるだろ。さっきの晩餐会の時もそうだったじゃねぇか?」

 

ハジメ

 「あ~、あれスゴかったなぁ。…参加した貴族のご令嬢から配膳担当のメイドさんまで、タワーディフェンスゲームみたいに撃退してたよね……何か、高校入学の時のことを思い出したよ……」

 

 以前にも少し説明したが、透織は天之河と七彩路に並ぶ程の美少年だ。その為、最初の頃はクラスどころか学園中の女子生徒から注目の的で、虎視眈々と狙われていた。

 だがその際も八重樫は獅子奮迅の如くの勢いで、群がる女子生徒を次々と撃退。結果、今では事情を知らない後輩や、それでもお構い無しな一部の猛者を除いて、透織に近付く者はいなくなった。

 

 

 「ま、待って?!『クラスのほぼ全員』って言ったわよねぇ!?ままま、まさか!?」

香織

 「えっと、雫ちゃん?『安心して』って言うのもどうかと思うけど、普段の様子から見て多分、ルーくん自身は気が付いてないと思うよ?」

 

 「…後未だに知らないのは、せいぜい天之河と坂上の二人ぐらいじゃねぇか?」

 

香織

 「あっ、龍太郎君は若干気付いている節はあるよ。…光輝君は間違い無く気付いて無い……と言うか、思ってもいないんじゃないかな?」

 

 因みに、現在ウチのクラスの女子達は透織のことはすでに諦め、八重樫の恋を応援する方にシフトチェンジしており、陰ながら見守る態勢を取っている。

 一方男連中は、二大女神の片割れたる八重樫に好意を寄せられる透織に嫉妬しつつも、白崎(もう片方)の弟であることと、似た境遇でありながらより敵意(ヘイト)を稼ぐ存在(ハジメ)のおかげで、大半が表向きは普通に接している。…ま、()()()()()()()()()()もいるけど…。

 

 

 「…あ、あぅ……うあぁあああああああ~~~……」

 

 とうとう八重樫は羞恥心が限界突破(キャパオーバー)したのか、何故か顔に自分のポニテを巻いて隠し、そのまま呻き声を上げながら項垂れる。

 

 

 「…とりあえず白崎、今日のところは部屋に戻って休もうぜ?…明日から早速訓練が始まるし……何より、八重樫をこのままの状態にしておくのもアレだから落ち着かせてやれよ?」

 

香織

 「……あ~うん、そうだね。そうするよ…」

 

 八重樫の様子を見て流石に言い過ぎたと自覚しているのか、白崎は意外にあっさりと引き下がった。

 

香織

 「雫ちゃんごめんね……ほら、立って。もう部屋に戻るよ?」

 

 「うぅ~香織ぃ、もうダメぇ……私もう生きていけないよぉ~~~」

 

香織

 「ハイハイ、大丈夫だよぉ~。部屋に戻ったらゆっくりお話しようねぇ~」

 

 そして未だに悶えている八重樫を宥めながら、部屋を後にしようとする。…完全に立場が逆転してんな…。

 

香織

 「………」

 

 …だが去り際に一瞬、ハジメに向かって何か訴えかけるような視線を向けるも、そのまま何も言わずに部屋を後にした。

 二人が出ていってしばらくした後、ハジメは安心したかのように息を吐く。

 

ハジメ

 「はぁ……暁君、ありがとう。本当に助かったよ…」

 

 「…言っておくが、この件に関してフォローするのはこれっきりだからな?後はもういい加減に自分で決着(ケリ)つけろ」

 

ハジメ

 「そう言われても……どう選択しても、茨の道(ハードモード)未来(ルート)しか見えないんだけど?」

 

 「…俺も他人(ヒト)の事言える立場じゃねぇし、天之河みたいな事を言いたくないが……元はと言えばお前の日頃の態度が原因だろうが。このままのらりくらりと回避(かわ)してたって、自分の首を締めるだけだぜ?」

 

ハジメ

 「…それはわかっているんだけど……はぁ~……」

 

 …何より、流石にこのままでは白崎が不憫だ。

 受け入れてそのままゴールインするのが最善(ベスト)なんだが、ハジメのこの様子だと若干難しそうだし、拒否られ(ダメだっ)たにしても、早めの方が傷が浅くて済むだろう。

 

 「…まっ、どう選んでも変わらねぇなら、せいぜい悩んで自分にとって悔いの無い選択をしてくれ。…じゃ、俺そろそろ部屋に戻るわ」

 

ハジメ

 「あっ…うん、おやすみ」

 

 そう言って俺はハジメの部屋を後にする。

 …正直、色々と不安が尽きなくて頭が痛いが、悩んでいる暇は無い。

 

 

 「…せいぜい足掻いてやるさ。テメぇの思い通りにならねぇぞクソッたれ……!」

 

 決意する意を込め俺は、誰にも聴かれない程の小さな声で俺達をこの世界に呼んだ(とされてる)エヒト神とやらに吐き捨てた。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 翌日、早速訓練を始めるために訓練場に集められた俺達はまず最初に、12cm×7cm位の銀色のプレート状の物と針が配られた。

 

 

???

 「よし、全員に配り終わったな?これはステータスプレートと呼ばれているモノだ。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれる。最も信頼のある身分証明書でもあるから、これがあれば迷子になっても平気だからな?失くすなよ?」

 

 そんな風に気楽(フランク)な感じで説明しているのは、この国の騎士団長である『メルド ロンギス』だ。昨日の歓迎会の際少し話したが、豪放磊落で飾らない性格をしており、『これから戦友になろうってのに、何時までも他人行儀に話せるか!』と、他の団員達に普通に接するように忠告して、素直に従わせるほど人望も厚い。

 ちなみに、『騎士団長が訓練に付きっきりいいのか?』と思ったが、『勇者様一行を半端な者に預けられない』という上が判断しており、当の本人も、『むしろ面倒な雑事を副店長にに押し付ける理由が出来て助かった』と豪快に笑っていたので……まぁ、約一名(副団長)を除いて問題無いだろう。

 

 …で、話をステプレ(ステータスプレート)に戻すが、プレートの一面にに刻まれている魔方陣に、血を一滴垂らせば登録完了(針は傷を着ける為の物)。後は、『ステータスオープン』と言えば表に自分のステータスが表示される筈だ。

 

 

メルド

 「…あぁ、原理とかは聞くなよ?これは“アーティファクト”の類いの物だからな」

 

光輝

 「…アーティファクト?」

 

 団長さんの説明によると“アーティファクト”とは、遥か昔、まだ地上に神やその眷属達がいた、“神代”と呼ばれていた時代に、その時使われて、今では失われた魔法と技術で創られたマジックアイテムの総称だ。

 本来なら一つでも国宝級の価値がある代物だが、このステプレに関しては、これ自体を作成、量産できるアーティファクトを教会が厳重に保管しているそうで、一般市民にも身分証明として配布が可能だそうだ。

 …っで、説明を聞き終えた俺達は、早速針で指を傷付け、それで出た血を魔方陣に擦り着けた。

 すると、ステプレが一瞬淡く輝いて、真綿にインクが染み込むように変色していった。団長さん曰く、魔力には色があり、個人によってそれぞれ違うらしい。そしてステプレに自己の情報を登録すると、このように同じ色に染まるそうだ。

 

 (あぁ~、成る程。この色と、本人の魔力色の一致で、身分証明になるのかぁ)

 

 因みに、俺の魔力色は黄みがかった赤(確か”緋色“だったか?)で、隣にいるハジメは空色だった。

 

 

メルド

 「オイオイ、珍しいのは分かるが、内容も確認してくれよ?」

 

 苦笑する団長さんに促された俺達は、早速ステータスを確認する。

 

 

==============

五十嵐(いがらし) (あきら) 16歳 男

レベル:1

天職:狂戦士

筋力:110

体力:120

耐性:80

敏捷:90

魔力:50

魔耐:50

技能:心軆狂化(バーサーク)・直感・生存本能・言語理解

==============

 

 これが現在での俺のステータスだ。

 その後、団長さんの説明を要約すると…

 

 

・レベルについて

 

 ゲームとは違って個人の“強さの数値”ではなく、“成長の限界値”を示しており、最大値100になるまで、各ステータスと共に上昇していく。

 ステータスは日々の鍛練はもちろん、魔法や魔法具で上昇が可能だそうだ。

 

・天職について

 

 これは云わば、ステプレの所有者本人の才能で、ステータスの一番下に記載されている“技能”と連動していて、その“天職”の領分においては無類の才能を発揮する。

 また、“派生技能”という、一つの技能を長い時間磨き続けた結果、新たに得られる能力だそうだ。

 ちなみに“天職”とは、本来誰でも取得している訳ではなく、戦闘系統なら大体は千分の一、生産職等の非戦闘系統は十分の一ぐらいの割合で持っているらしい。

 

 

 最後に団長さんは……

 

メルド

 「後は……各ステータスは見たままだ。大体この世界の一般人のレベル1の平均は10ぐらいだな……まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!」

 

 

 …と、愉快に笑った後、訓練内容の参考にする為に、ステプレの内容を提示するよう求められた。

 

 

 

 

 …いや、ちょっと待て?

 

 

 …ステータスは…まぁ、良いだろう。さっき言っていた通り、『レベル1の平均は大体10ぐらい』なら、これを観る限り俺も十分ハイスペックってことだろう。

 問題は天職の”狂戦士“と、技能の“心体狂化”の部分だ。…物凄く不穏な感じがするんだけど、大丈夫かこれ?

 

 

 「……なぁ、ハジメ?ちょっとこれ見てくれ……って、どした?」

 

 

 とりあえずハジメの意見を聞こうとするも、当の本人は、自身のステプレを凝視しながら固まっていた。

 返事が無かったので、勝手に横から覗きこむと……

 

 

 

================

南雲(なぐも) ハジメ 17歳 男

レベル:1

天職:錬成師

筋力:10

体力:10

耐性:10

敏捷:10

魔力:10

魔耐:10

技能:錬成・言語理解

================

 

 

 ………Oh

 

 

ハジメ

 「……暁君?レベル1のステータス、平均ってどれぐらいだったっけ?」

 

 「……団長さんの話だと、オール10だな」

 

ハジメ

 「…だよねぇ」

 

 

 ガックリとうなだれるハジメに、どうフォローするか悩んでいると、ここで面倒な奴に目をつけられた。

 

 

???

 「ぎゃははははは!おいおい南雲ぉ、これマジかよぉ~!完全にモブ(一般人)レベルじゃねぇか~」

ハジメ

 「わっ!?ちょ、檜山君!?」

 

 そう言ってゲラゲラと笑いながらハジメの肩を組んできたのは『檜山 大介(ひやま だいすけ)』。言動から容易に察せられる通り、典型的な小悪党だ。

 

 

檜山

 「おっ!五十嵐いたのか?悪りぃなぁ、全っ然眼中に入ってなかったわ~」

 

 「…ほ~、そりゃ大変だな檜山。だったら今すぐ眼科行って検査してこいよ。…んで、眼鏡でも作ってもらえ。牛乳ビンの蓋みたいな形の分厚いやつ。きっとお前に似合うぞ?」

 

檜山

 「はぁ!?」

 

 煽ってきたので煽り返してやると、いっそ面白いぐらいに檜山は瞬時に怒りで顔を真っ赤になる。

 

 

???

 「ちょ、大介!?お前何やってんだよ!?」

 

 そこへ、取り巻きの一人である『近藤』が慌てて止めに入り、さらに後から残りの二人、『斉藤』と『中野』が、『何だなんだ?』と言った表情でついて来る。

 

 …小悪党組(バカルテット)の勢揃いだ。

 

 

檜山

 「おっ!お前ら、丁度良い所に来たな。これ見てみろよ。マジウケるぜ!?」

 

ハジメ

 「あっ、ちょ…!?」

 

 そう言って檜山は、ハジメからステプレを掠め取ると、それを近藤達(三バカ)に投げ渡した。

 

 

近藤

 「……ブフォ!?ちょ、マジかよコレぇ!?(w)」

中野

 「ひゃははははははは!?コイツはひでぇな~!これ下手したらそこら辺の子供にすら負けてね!?」

斉藤

 「ぎゃははははは無理ムリ、絶対直ぐに死ぬって!肉壁にもならね~!」

 

 

 …案の定、三人は確認した途端、何がそんなに面白いのかゲラゲラと耳障りな笑い声を上げながら大爆笑し出した。その光景を観て檜山(大バカ)もニヤニヤと満足げに笑っていた。

 

 

 「…相変わらずおめでたい思考回路した連中だなぁ。こんなんでそこまで笑えるって、マジで羨ましくなるわ…」

 

檜山・斉藤・中野

 「…あぁ!?」

 

 煽ってやると、三人はいっそ面白い程に怒りで顔を真っ赤にしてイキリ立つ……本当、単調な奴らだなぁ……。

 

 

近藤

 「バッ…大介、んな挑発にいちいち乗んなよ!?信治と良樹も落ち着けって!!」

ハジメ

 「…暁君、お願い…もうこれ以上煽らないで!」

 

 慌てて近藤は三人、ついでにハジメは俺を止めに入るが、向こう(檜山側)は収まる気配は無い。

 正に一触即発の状態という、その時だった。

 

 

光輝

 「おい、五十嵐!何を騒いでいる!?」

 

 突如その場に怒声が響き渡る。声のする方に目をやるとそこには、険しい表情でこちらを睨んでいる天之河と、透織を含めた何時ものメンバーがいた。

 それを見たハジメと近藤は安堵した表情を浮かべ、俺、中野、斉藤は若干顔をしかめる。

 

光輝

 「お前、また檜山達に絡んでるのか!?いい加減にしろ!」

 

 「……言っても無駄だろうと思うけど、吹っ掛けて来たのは向こうで、俺は何もしてねぇよ」

光輝

 「嘘をつけ!!檜山、大丈夫k…

檜山

 「お、おお、おはよう()()!昨日は良く眠れたか!?」

 

 そして檜山はと言うと、心配する天之河をガン無視して、白崎に挙動不審かつ馴れ馴れしい態度で話し掛ける。

 

香織

 「…おはよう檜山君。…うん、昨日はゆっくり休めたよ」

檜山

 「そ、そうか!今日から訓練だな!一緒に頑張ろうぜ!」

 

香織

 「う…うん」

檜山

 「何かあったら遠慮なく言ってくれよ!そしたら俺…

透織

 「あぁー、檜山君。ごめん、ちょっと良い?」

檜山

 ……何だよ、()()?」

 

 白崎と(ほぼ一方的に)喋っているのを邪魔されたのか、あからさまに檜山は不機嫌そうに透織を睨み付ける。一方透織はそんな檜山に意に返さない様子で、淡々と告げる。

 

 

透織

 「ちょっと南雲君に要があってさ、悪いんだけどカオちゃんと話すのは後にしてくれない?」

 

檜山

 「はぁ!?んなもんテメェらで勝手に…

香織

 「あ、ハジメく~ん!」

檜山

 …て、ちょっ?!」

 

 荒い口調で透織に反論する檜山を他所に、白崎はパタパタとハジメのもとに向かっていた。

 そしてそれを確認した透織も要が済んだとばかりにその場から立ち去る。

 

 

檜山

 「テメェ、白崎っ!!……うっ?!」

 

龍太郎・雫

 「………」

 

光輝

 「す…すまない檜山。透織には後で注意しておくから大目に見てくれないか?」

 

 頭にキた檜山が透織を呼び止めするが、それを八重樫と坂上が鋭い視線を向けて黙らせる。特に八重樫は若干殺気を孕んでおり、俺でも気圧される程の迫力を醸し出していた。

 そんな中、天之河だけは苦笑いを浮かべながら謝罪する。

 

 

近藤

 「いやいや天之河、気にしなくて良いから……大介、いい加減落ち着けって!白崎姉も居るんだぞ!?」

檜山

 「ぐ、ぐぎぎぎぎ…!!」

 

 そこへ間に割ってきた近藤が、代わりに天之河の対応をしつつ、小声で檜山を宥める。白崎の名前を出したのが効果有ったのか、檜山は憤りつつも何とか怒りを押し留めようとした。

 

 

香織

 「ハジメ君おはよう!今日から頑張ろうね?」

 

ハジメ

 「う…うん」

 

檜山

 「っ!?~~~っっっ!!!」

近藤

 「……大介、気持ちはすっっっごくわかるぞ?…だが頼むから堪えてくれ」

 

 

 …が、嬉しそうな白崎と会話するハジメを見て再び……いや、先程よりも更に強い怒りの形相でハジメを射殺さんとばかりに睨み付ける。

 …ま、周りの奴ら(主に男子)も似たような表情だがな……。

 

 

ハジメ

 「と、ところで白崎さん?僕に用があるらしいけど、何かな?」

 

透織

 「それについては僕が説明するよ」

 

 そんな視線に耐え兼ねたのか、ハジメが話を切り出すと、透織が苦笑しながら対応する。

 …若干、白崎が不満そうに頬を膨らませていたが、話が進まないのでここはスルーしておく。

 

 

透織

 「…ハジメ君、ちょっとこれを見てくれない?」

 

 そう言って透織は、自身のであろうステプレ(白に近い灰色)を懐から取り出してハジメに手渡した。

 戸惑いながらも受け取ったハジメは、すぐに内容を確認する。ついでに俺も(アイコンタクトで透織に了承は得た)横から覗き込む。

 

 …そこに表示されたのは

 

 

=============

白崎(しらさき) 透織(とおる) 17歳 男

レベル:1

天職:虚使(うつし)

筋力:0

体力:0

耐性:0

敏捷:0

魔力:1000

魔耐:0

技能:■虚■・虚■■・魔力操作・魔力変換[+■■■]・言語理解

==============

 

 

暁・ハジメ

 「………何これ??」

 

 …と、真顔で思わず口にしてしまう程にツッコミ所満載だった。

 

 

透織

 「あ~、やっぱりそういう反応になるよねぇ~……それでハジメ君……と、ついでに暁君。これってどんな天職だと思う?憶測でも良いから君達の意見を聞かせてくれないかな?」

 

ハジメ

 「………」

 

 (ンなこと言われてもなぁ…)

 

 まず天職の『虚使(うつし)』ってのが意味わかんねぇし、幾つかの技能は一部読めない箇所がある。

 …何よりステータスが魔力が1000でそれ以外は0という、完全に極振りな状態になっている……思わずどこぞの防振り少女(メイ〇ル)の同類かと言いたくなるな。

 

 

斉藤

 「……えっ、ちょ、何アレ?」

中野

 「…なぁ。あれってどう思う?弄っても大丈夫かな?」

近藤

 「やめとけよバカ!?絶対ヤバいって!俺の勘がそう言っている…!」

 

檜山

 「…いや、お前(礼一)何っ時(いっつ)もそればっかじゃねぇか……まぁ、とりあえずは様子見しとくぞ?」

 

 

 ……何か、盗み見した小悪党組(バカルテット)がコソコソと話しているが、今は無視しておく。

 

 

ハジメ

 「……透織君ごめん。流石に情報がこれだけだと憶測も何も判らないよ」

 

 「…右に同じく…」

 

透織

 「……ですよねぇ~…」

 

 

 流石にハジメもこれにはお手上げらしい。

 もっとも、透織自身も無茶振りだと承知してたのか、苦笑いを浮かべてはいるものの、落胆はしていなかった。

 

 

光輝

 「…だから言っただろ透織。この場合南雲じゃなくてメルドさんに相談するべきd《ドスッ!!》…ぐふぅ?!」

 「光輝、失礼でしょうが!!二人共ごめんなさい!気にしなくて良いからね?」

 

 「…別にいい、何時もの事だ」

ハジメ

 「あ、あははは…」

 

 …ま、言い方はムカつくが事実ではあるし、八重樫の肘鉄を脇腹に受けて悶える天之河を見て、十分に溜飲が下がったので問題無い。

 

 

 「…なら、さっさと団長さんのとこに行くか。俺も聞きたいことがあるし……おい、近藤!そろそろハジメのステプレを返せよ」

 

 俺の言葉に、ハジメは自身のステプレが未だに奪われたままなのを思い出したのか、『ハッ!?』とした表情になる。

 

 

近藤

 「あ、ああ~、そうだったな……悪かったよ。今返s…

檜山

 「待て、礼一…」

近藤

 …えっ?ちょっ、大介?」

 

檜山

 「その前によ五十嵐ぃ~。お前のステータスってどうなってんの?ちょ~~っと気になるから見せてみろよ?」

 

 現在ハジメのステプレを所持している近藤が素直に渡そうとすると、檜山がそれを止めてニヤニヤ笑いながら俺の目の前に出て、俺のステータスの提示を求めて来た。

 

 「…はぁ?何でお前に見せる必要があるんだよ?」

 

檜山

 「あれれ~~、どうした五十嵐ぃ?ひょっとして、お前も南雲(キモオタ)並みのクズスペックだったのかぁ?」

 

 「……はぁ?」

 

 …つーか、何コイツ?普段俺の前では取り巻き達とコソコソと陰口叩く程度なのに、さっきからやけに強気な態度だな?

 

 

近藤

 「大介ぇ?!ちょ、おま、何やっ…

中野

 「まぁまぁ、待てよ礼一。せっかく五十嵐のステータスを拝めるチャンスじゃねぇか?」

 

斉藤

 「そうそう。それにひょっとしたら本当に南雲と同等クラスかもしれないだろ?慌てる必要()えって」

 

近藤

 「お、お前ら…」

 

 

 あー、なるほど。…何となく察したわ……。

 

 

 「…わかったよ。ほら、とっとと確認しな」

 

檜山

 「おっ!そうそう、それで良いんだよ。どれどれ……へ?」

 

近藤・中野・斉藤

 「………」( ; ゚Д゚)

 

 

 とりあえずいい加減ウザかったので要望通りにステプレを提示すると、檜山は嘲笑うような笑顔から一転、なんとも間が抜けたような驚き顔になって硬直する。後ろの三人も同様だ。

 

 …ふむ、この反応からして、どうやら俺のステータスの方が奴らよりも上らしいな。

 

 

透織

 「あー、暁君?僕らも見せてもらえるかな?」

 

 「どうぞどうぞ~」

 

 するとその様子に透織達も気になったようなので、遠慮無く見せることにした。

 

 

香織

 「わぁ~、これはスゴいねぇ~」

 

 「ええ、そうね……特に“筋力”と“体力”は光輝を超えているわ……」

 

龍太郎

 「確かになぁ……そうだ、光輝!せっかくだからお前のステータスも此処で見せてやれよ?」

 

光輝

 「えっ?…まぁ、良いけど…」

 

 そう言って天之河も自身のステプレ(純白)を提示した。

 

 

================

天之河(あまのがわ) 光輝(こうき) 17歳 男

レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適正・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

================

 

 

小悪党組

 「………!?」(; Д)゚ ゚

 

 「…ワーオ、粗方予想はしてたが、想定以上にハイスペック……いや、もはやチートの権化じゃねぇか……逆に面白く無ぇわぁ~」

 

光輝

 「……五十嵐、何を期待してたか知らないが、ご期待に添えなくて悪かったな」

 

 

 俺の反応に対し、天之河は皮肉気味で返す。

 …なお、それを見た小悪党組は更に唖然…というか、切迫した表情になる。

 

 

ハジメ

 「………」((( ;゚Д゚)))

 

 …あっ、此処にも同様…いや、それ以上な奴が一人いたわ…。

 

 

 

 「…んで?これでもう文句は無いよな?…ならさっさとステプレ返してくんね?」

 

 

檜山

 「うっ、ぐう……!」

 

 檜山は何か言い返そうとするも、白崎の前であるのも相まって何も言えないでいた。

 …だが、未だに強い敵意を孕んだ目で俺を睨み付けている。

 

 

 「あとなぁ檜山?この際だから二つ程お前に言っておくがよ…」

 

檜山

 「…な、何だ…

 ガシッ!!

檜山

 …ぐぇええっ?!」

 

 …なので、トラブルの種を取り除くために俺は、檜山の服の襟を掴んで持ち上げながら、()()()()()()忠告してやることにした。

 

 

 「まず一つ、尊大な(デカい)態度を取るなら相手の力量を確かめてからにしろ。…そしてもう一つ、これは後ろの三(バカ)にも言えることだがな?」

 

 そしてそのまま奴を眼前まで引き寄せ、威圧を込めて告げる。

 

 

 「……俺を甘く見てンじゃねぇぞ?雑魚共が!」

 

檜山

 「ッ?!…カッ…ヒュッ!!」

近藤・中野・斉藤

 「ヒィィッ?!!」

 

 …よし、効果は覿面(てきめん)だ。檜山(大バカ)は首が絞まって真っ赤だった顔が一瞬で真っ青になり、三(バカ)はそれに加えて完全に逃げ腰になっていた。

 ちなみに他の面子(メンツ)は天之河を含め、突然の事で完全に硬直している。

 

 

近藤

 「わ、悪かった!マジで悪かったよ!!ホラ、これで良いだろ?!」

 

 そんな中、誰よりも早く我に返った近藤が、必死の形相でハジメにステプレを返却した。

 

 「……フン」

 

檜山

 「フゲェッ?!」

 

 それを確認した俺は檜山をその場に投げ捨てる。

 

 

 「…たく、無駄に時間使わせやがって……行くぞハジメ」

 

ハジメ

 「う…うん」

 

香織

 「あっ、待ってハジメ君。私も行くから」

光輝

 「おい待て五十嵐!!…

 

 そして俺とハジメ、あとついでに白崎はその場を後にする。後ろで天之河が騒ぎ立てるが、面倒なので無視した。

 

 

 暁サイドend

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 Noサイド

 

 

 「…たく、無駄に時間使わせやがって……行くぞハジメ」

 

檜山

 「ゲホッゲホッ、オェ!」

 

 

 そう言い捨てた暁は、その場で咳き込む檜山を置き去りにして立ち去った。

 

光輝

 「おい待て五十嵐!!…

透織

 「放っておきなよ光ちゃん。どう見たって檜山君達の自業自得だよ」

光輝

 …えっ、透織?」

 

 我に返った光輝が暁を咎めようと騒ぎ立てるが、それを透織が辛辣な意見と共に引き止める。

 

 「透織の言う通りよ。…むしろ彼らにとっては良い薬だわ」

 

龍太郎

 「まったくだぜ。…つーか、お前もいちいちそんな奴らに気を使う必要無ぇって」

 

 

 更にそこへ雫と龍太郎も賛同するように告げる。その際、小悪党組へ冷ややかな視線を向けていた。

 

 

光輝

 「りゅ、龍太郎と雫まで!?…というか三人共、何で毎回檜山達に対してそこまで冷淡なんだ!?」

 

 「普通に嫌いだからだけど?」

龍太郎

 「()に同じく」

透織

 「…というか、何で君は暁君には敵意を向けているクセに彼らのことは庇うの?」

 

光輝

 「いや、その……確かに檜山達は言動や素行は誉められたものじゃないが、五十嵐と違って警察に通報される程の大事は犯して無いだろ!?」

 

透織

 「なるほど……つまり光ちゃんにとって彼らは、『口先だけで取るに足らない小物』だって言いたい訳だね?」

光輝

 「何でそう捉えるんだ!?」

 

 三人の容赦無い意見に光輝が異議を唱えていると、近藤が疲れ切った様子で告げる。

 

近藤

 「……天之河、もういいから、早いとこ白崎姉の後を追ってくれよ」

 

光輝

 「えっ?でも…」

近藤

 「いや、マジでいいから!俺達別に気にしてないから!…なあ!?」

 

 近藤の声に、中野と斉藤がぎこちない笑みを浮かべて同意するように首を縦に振る。ちなみに檜山は未だに咳き込んでいた。

 

 

透織

 「ホラ、彼らもそう言っているし、もう行こう?」

 

 「ええ、そうね」

龍太郎

 「おう!」

 

光輝

 「あっ、ちょ!?……本当にすまない!それじゃ!」

 

 

 そして四人は暁達の(光輝は透織達の)後を追うようにその場を後にした。やがて彼らが遠くに離れたのを確認した近藤は檜山に語り掛ける。

 

 

 

近藤

 「…あ~、大介?大丈夫か?」

 

檜山

 「ゼェ、ゼェ……だ、『大丈夫か?』じゃねぇよ!!お前らビビってないで助けろや!」

 

近藤

 「悪かった、悪かったって!」

 

中野

 「つ、次はちゃんと助けるからさ!」

 

斉藤

 「だから許してくれよ……なっ?」

 

 

檜山

 「……クソォ!!」

 

 怒り心頭で喚き散らす檜山に、三人は苦笑しながら謝罪する。それに対し檜山は了承ではなく悪態を吐き捨てる。

 

 

檜山

 (…今に見てろよ五十嵐ぃ!!南雲(キモオタ)白崎(モヤシ野郎)共々、必ず後悔させてやるからなぁ!!)

 

 そして、暁達の向かった先を睨み付けながら、心の内に怨嗟の炎を燃やしながら決意する。

 

 

 

近藤

 「冗談じゃねぇよ。…アイツも五十嵐のステータス見ただろ?…全項目で負けてんじゃねぇか!」

 

中野

 「そうだよ!俺達の中で一番上の大介でダメなら、俺ら三人じゃ尚更勝ち目が無いって!」

 

斉藤

 「それに白崎姉と天之河もいたのに、荒事になって印象悪くしたらかえって不味いだろ?…相変わらず、“頭に血が昇るとDQNになるクセ”、何とかして欲しいぜ!」

 

近藤

 「…とにかく、もしもの時は最悪、大介(アイツ)を見捨てでも五十嵐との直接戦闘だけは避けるぞ?」

 

中野・斉藤

 「異議無し!」

 

 …一方、近藤・斉藤・中野の三人は檜山に聴こえない程の音量で、自分達の安全牌を確保していた。

 




以上になります。
すみません。今回もまた長くなってしまったので、ステータスの説明は次回になります。

それではまた。

ハジメのヒロインについて(ハーレムは確定)

  • 原作通り(某吸血姫様がメイン)
  • 香織がメイン(吸血姫様が挑戦者)
  • 両方(香織と吸血姫)いってまえ!
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