神滅《かみごろし》の三王の異世界進行録   作:不浄皇

5 / 8
大変遅れて申し訳ありませんでした!
そして今さらながら新年明けましておめでとうございます。
それではどうぞ!


ステータス

 

 Noサイド

 

 

 暁達が目的の場に向かうと、メルド団長の他に意外な人物が居合わせていた。

 

 

ハジメ

 「…あれ、七彩路君?」

 

晴彦

 「むっ?…なんだ、お前達か」

 

 そこにはいたのはバインダー(の様な物)とペンを持って、何かを記入している晴彦の姿だった。

 

 

光輝

 「追い付いたぞ五十嵐!……って、何をしているんだ七彩路?」

 

晴彦

 「…見て分からないか?各人員のステータスの内容の記録、及び今後の運用についての模索だ」

 

メルド

 「『何か手伝える事は無いですか?』と聞かれてな?それならばと有り難く受けて貰ったんだ!」

 

 

 嬉しそうなメルド団長の話によると、今朝の朝食の後直ぐ辺りに、彼の事務室に来て申し出たらしい。

 

 

 「…お前、異世界(こんな所)に来てまで模範生気取り(ポイント稼ぎ)かよ?御苦労様なこった……」

 

光輝

 「おい!そんな言い方は無いだろ!?」

 

 呆れ半分、感心が半分といった様子で語る暁に光輝が瞬時に声を荒げると、晴彦が何気無しに発言する。

 

 

晴彦

 「…まぁ、()()()()()を任された手前、いつまでもお客様感覚(何もしないまま)の訳にはいかないからな」

 

光輝

 「っ?どういう事だ?」

 

晴彦

 「あぁ、そう言えばまだ誰にも言ってなかったな?…本日より神の使徒(このクラス)の指揮役に任命されたから、今後よろしく頼む」

 

 

 …………

 

 

光輝

 「…はぁっ?!ちょっと待て!俺は何も聞いて無いぞ!?」

 

晴彦

 「それはそうだ。ついさっき決まったばかりだからな」

 

 サラッととんでもない情報を口にする晴彦に、光輝は狼狽の声をあげた。他の面子も唖然としている。

 

 

透織

 「…えっと、七彩路君?何でそうなったか、理由を聞いて良いかな?……あっ、別に不服ではないんだよ?ただ、決定打は何なのか気になっただけだから…」

 

晴彦

 「…それを説明するならまずコレを見てくれ」

 

 そう言って晴彦は、懐から自身のステプレ(翡翠色)を取り出して見せた。

 

 

 

==================

七彩路(しちさいじ) 晴彦(はるひこ) 17歳 男

レベル:1

天職:祓魔師(ふつまし)

筋力:50

体力:60

耐性:40

俊敏:100

魔力:130

魔耐:110

技能:全属性適正・複合魔術・弓術・符術(ふじゅつ)・魔力感知・高速魔力回復・視覚操作・思考強化・念話・言語理解

==================

 

 

ハジメ

 「……メルドさん?この”祓魔師”ってどんな天職なんですか?何か、かなり凄そうな感じがするんですけど?」

 

メルド

 「おう!『凄そう』というか、実際に凄い天職だぞ!」

 

 メルド団長の説明によるとこの祓魔師というのは極希少な上、魔法を主体にして戦う戦闘系、所謂“魔法職”に分類される天職でありながら他には無い特別な性質があるそうだ。

 トータスの人間が魔法を使う際には、魔方陣が描かれたアイテム、所謂“触媒”に詠唱を唱えることで魔法陣に魔力を注ぎ込むと発動する仕組みとなっている。

 

 そしてこの“触媒”には主に二種類のタイプに分けられる。

 一つは鉱石類に刻み、杖やアクセサリー等に加工して術者が身に付ける事によって力を発揮する“装備品タイプ”。これらは一つでも使える魔術の種類に制限があり、嵩張るので多くは持てないが、基本壊れ無ければ何度でも使えて効果も十全に発揮する事が可能だ。

 もう一つは特殊な紙や素材を使った“使い捨てタイプ”。こちらは先程とは真逆に、持ち運びが容易でバリエーションが豊かになる反面、文字通り一回限りしか使えない上、効果も弱体化する。

 

 だが、天職“祓魔師”はこの使い捨てタイプ(晴彦の場合は特に“魔符(まふ)”と呼ばれる御札のような物)の威力、効果、持続時間を装備品タイプと同等近くに強化させることが可能。加えて、一般的な魔法職だと低くなり勝ちな俊敏も高く、前衛に負けない程に素早い移動により、回避はもちろん、多方面からの魔法攻撃が容易にできるそうだ。しかも晴彦は“全属性適正”を所持している為、攻撃だけでなく、回復や支援の魔法も扱う事ができ、戦況において様々な立ち回りが可能となる。

 

メルド

 「おまけに”弓術“も持っているから、魔法だけでなく弓矢での遠距離射撃もできるな!これはあくまでも俺の予測だが、成長すれば中・遠距離での戦闘では敵無しになるだろう!」

 

光輝

 「…確かにスゴいですけど……それは“戦士”としてであって、指揮官とはまったく関係無いですよね?」

 

メルド

 「おっと、言われてみれば確かにそうだ。すまんすまん、話が脱線してしまった!…まず最初に明言しておくと、晴彦を指揮役に任命したのは俺だ。理由として一番大きいのは、晴彦が“念話”の技能を取得しているからだ」

 

光輝

 「…確かにありましたね?…これはどんな技能ですか?」

 

晴彦

「(こういう事が出来る技能だ)」

光輝

 「ッ?!!」

 

 突如、頭の中に晴彦の声が響き渡ったことに、光輝は驚きながら思わず辺りを見回す。一方、暁を含めた他の面々は、その様子を訝しげな表情で見ていた。

 

 「…光輝、何?どうしたの?」

 

光輝

 「い、今、七彩路の声が頭の中に響き渡ったんだが!?」

 

 「えっ?…私には何も聞こえ無かったけど?」

 

晴彦

 「(それはそうだ。さっきのは、天之河にしか送ってなかったからな)」

 

雫・透織・香織・ハジメ・暁・龍太郎

「っ?!!」

 

 今度は雫を含め、その場全員の頭の中に晴彦の声が響いた。

 

 

メルド

 「ハハハッ、凄いな晴彦!もう“念話”を使いこなしているのか?」

 

晴彦

 「コツを掴めばあながち難しくはないですよ。…と言っても、今のところはまだ視認できる範囲の人物が限界ですけどね」

 

メルド

 「十分大したもんだ!それに訓練次第でほ範囲も含め、色々と強化が可能だぞ?」

 

 更に晴彦は、“視覚操作”と“思考強化”を所持している為、前者で戦況を常に把握、後者でその時に応じた戦略を瞬時に立てることができる。

 

 

透織

 「…そして、先程の“念話”を使って全員に確実に伝えることができる。…なるほど、確かにこれ程の適任者は居ないね」

 

晴彦

 「そういう事だ。…とはいえ、流石に最初からは無理があるから、今後しばらくはメルド団長が請け負い、俺がその補佐をしながら学ばせてもらうつもりだ。…もっとも、すぐにモノにしてみせるがな?」

 

メルド

 「ガハハハハ!!言ってくれるじゃないか晴彦!良いだろう!遠慮無くビシバシ叩き込んでやるから、覚悟しておけよ?」

 

晴彦

 「…フッ、望むところですよ」

 

 愉快そうにに大笑いながらシゴキ宣言をするメルド団長に対し、晴彦も不敵に笑いながらそれに応える。そんな晴彦の様子を透織達を含め周りに居たクラスの全員が、感服した様な眼差しを向けていた。

 

 …が、そんな中、光輝だけは未だに不満そうな表情を浮かべていた。

 

晴彦

 「…天之河?何か意見(もんく)があるなら聞くぞ?」

 

光輝

 「いや、その、七彩路?…説明を聞けば確かに透織の言う通り、君が適任だとは思うぞ?…だが、出来れば俺や他の皆にも話合う機会が欲しかったというか…

 「…天之河。『“勇者(じぶん)”を差し置いてそんなリーダー的ポジションに着くのが気に入らない』ってはっきり言…

光輝

 …っ!!」(ギロッ)

 …あ~はいはい、俺の思い違いでしたすみません…」

 

 鋭い視線を向ける光輝に対し暁は、これ以上言うと面倒臭いと判断して大人しく引き下がる。…ちなみにハジメ、そして透織達からも…

 

ハジメ・透織・雫・香織・龍太郎

 (お願いだからこれ以上余計な事は言わないで)くれ!)

 

 …と、訴え掛ける様な視線を向けられていたのも要因だ。

 

晴彦

 「なるほど、それは悪かった。次からは気を付けよう。…だから天之河、色々と思うところがあるだろうが、今しばらくは俺に任せて貰えないか?必ず結果を出してみせる」

 

光輝

 「……わかった。君がそこまで言うなら任せるよ」

 

 

 実のところ、光輝自身は晴彦の事をそこそこ信用している。なので渋々といった様子ではあるが、晴彦に指揮役を任せることにした。

 そしてそのままの流れで、ステータスの確認作業に入る。

 

 

晴彦

 「…これは凄まじいな……ステータス値と技能の数、共に現状だとどっちもこの中じゃ明らかにダントツじゃないか。…今後、間違い無く俺達の主力となるな」

 

メルド

 「流石“勇者”様だな!…規格外な奴め!頼もしい事この上無いじゃないか!!」

 

光輝

 「…いやぁ~、あはは…」

 

 確認したメルド団長と晴彦の称賛の声、更に話を聞いていた周りの生徒達からの感嘆と羨望の眼差しに、光輝は思わず照れながら頭を掻いた。…どうやら完全に機嫌は直ったようだ。

 

 …続いては雫の番だ。

 

=============

八重樫(やえがし) (しずく) 17歳 女

レベル:1

天職:剣士

筋力:60

体力:50

耐性:30

俊敏:150

魔力:50

魔耐:40

技能:剣術・縮地・先読・気配察知・隠業・言語理解

=============

 

 

メルド

 「ほぉ~、“俊敏”が突出して高いな。スピードを生かした戦法ができるな!」

 

晴彦

 「天職はやはり“剣士”か。お前の剣術の腕前、思う存分頼らせて貰うぞ?八重樫」

 

 「ええ、私も最善を尽くすわ」

 

 次は龍太郎。

 

=============

坂上(さかがみ) 龍太郎(りゅうたろう) 17歳 男

レベル:1

天職:拳士(けんし)

筋力:80

体力:90

耐性:80

俊敏:50

魔力:30

魔耐:30

技能:格闘術・縮地・物理耐性・全属性耐性・言語理解

==============

 

晴彦

 「…ふむ、ざっと見た限り、特攻(オフェンス)盾役(ディフェンス)の両方をこなせる近接型といったところか。…必然的に最前線の配置になるが……坂上、問題無いな?」

 

龍太郎

 「おう、上等だ!(おとこ)は身体張ってナンボだ。受けてたつぜ!」

 

メルド

 「ガハハハハ、お前も頼りにしているぞ龍太郎!…だが、決して無理はするなよ?」

 

龍太郎

 「押忍(オス)ッ!!」

 

 そして次は香織。

 

==============

白崎(しらさき) 香織(かおり) 17歳 女

レベル:1

天職:治癒師(ちゆし)

筋力:20

体力:30

耐性:30

俊敏:20

魔力:120

魔耐:150

技能:回復魔法・光属性適正・高速魔力回復・言語理解

==============

 

メルド

 「おっ、”治癒師“か!回復が専門(メイン)の支援タイプだな!こいつが部隊に一人いるだけで全体の生存率がグッと上がるぞ!」

 

晴彦

 「ある意味、天之河並みに重要なポジションですね。白崎姉、お前働きで俺達の命運が決まると言っても良い。気を引き締めておけよ?」

 

香織

 「う、うん。頑張るよ!」

 

 

 …そして次は透織の番になり、確認したメルド団長は困惑した表情になる。

 

 

メルド

 「う~ん……これはどういうことなんだ?天職もまったく聞いた事が無いんだが、このステータスの表示の仕方はあり得ないぞ?」

 

透織

 「っ?…えっと、どういう事ですか?」

 

 メルド団長の話によると、本来ステータスはどれだけ低くても……それこそ、危篤状態で昏睡した老人でも、体力等に“1”とステプレに表示される。

 だが透織の場合、魔力は1000、それ以外は0という異様な事になっていた。

 

 

晴彦

 「…ふむ、確かにそれだとこの表示はあり得ないですね……ちなみに白崎弟。身体に何か不調や異変は無いか?」

 

透織

 「う~ん…()調()はまったく無いんだけど、逆に言えばそれが()()になるかな?」

 

晴彦

 「っ?…どういう意味だ?」

 

透織

 「…何故か解らないけど、こっち(トータス)に来てからむしろ身体の調子がとても良好なんだ」

 

 

 昨日の時は『そんな気がする』程度の認識だったが、今朝から過ごしてみて確信したという。具体的に言えば、起きてから動悸が安定し、呼吸が楽で身体が軽いという状態が現在まで続いている。

 本人曰く、此処まで調子が良いのは初めての事だそうだ。

 

 

晴彦

 「なるほど。一応良い傾向(プラス)にはなっているが、原因が不明のままだと手放しには喜べないな…」

 

透織

 「…うん。正直言って、後から何か来そうで逆に怖いよ。…メルドさん。あと他に何か気になる点ってありますか?」

 

メルド

 「……そうだな。この“魔力操作”と“魔力変換”という技能についてだ」

 

 説明によるとこの二つは文字通り、前者は魔力を詠唱等を使わずに直接操作でき、後者は魔力を別の力に変換する事ができるそうだ。

 

 

メルド

 「……ただ、この二つは本来、この世界の人間は持っておらず……主に魔物が所持している技能なんだ」

 

透織

 「…あぁ~…」

 

 要するに、この二つを持つ透織はほぼ確実に厄介事の種になる可能性がある訳だ。かといってこの情報を上層部に伏せる訳にもいかない。…もし後に露になった際、余計に話が拗れるからだ。

 

 

光輝

 「…だ、大丈夫だ透織!さっきのメルドさんの説明だとあくまで()()()()()()()ではって話だろ?俺達は例外だ!!……な、七彩路!?」

 

晴彦

 「……まぁ、確かにまだ全員の確認は済んでない以上、他にもいるかもしれないし、考えようによっては大いに役立つ可能性は十分あるな。…そうですよね、メルドさん?」

 

メルド

 「そ、そうだな!使い方によっては俺達の大きな切り札になるだろう!…だから安心しろ透織」

 

透織

 「……はい、ありがとうございます」

 

 …結局透織については、珍しく的を得た光輝のご都合主義な回答(フォロー)に晴彦とメルド団長を含め、その場全員が乗っかる形で幕を閉じた。

 

 

晴彦

 「これで天之河達(勇者パーティー)は終わったな。じゃあ次は……五十嵐、南雲、さっさと見せろ」

 

ハジメ

 「……暁君、お先にどうぞ」

 

 「…おう、先に()ってくる」

 

メルド・晴彦

 「…っ?」

 

 暁とハジメの鬱屈とした表情に疑問を抱えつつも、晴彦とメルド団長は暁のステプレの内容を確認する。

 

 

メルド

 「なっ?!…きょ、“狂戦士”…だと!?」

 

 確認した途端、メルド団長はあからさまに驚愕、及び戦慄した表情になる。…ついでにそれを見た暁も何か悟ったような虚無顔になる。

 

晴彦

 「……あの、すみませんメルド団長。これはどういった天職なのですか?早急な説明をお願いいたします」

 

メルド

 「っ!?…あ、ああ、すまない。…“狂戦士”とはその、稀に出現する戦士職の一つだ。…この天職を持つ者は、必ず“心軆狂化(バーサーク)”という技能を所持しているんだ」

 

晴彦

 「…ええ、確かにありますね?コレってどんな技能なんですか?」

 

メルド

 「…簡単に言えば、光輝が持っている“限界突破”と似て非なる代物だな」

 

 “限界突破”とは、己の魔力を消費し続けることで、一時的に身体能力全般を文字通り、限界(リミッター)()()()程強化する技能である。

 非常に強力ではあるものの、長時間の使用は不可能な上、解除後は使用時間に比例して能力が著しく低下するという副作用がある為、いざという時の切り札として使用される。

 

 対して“心軆狂化(バーサーク)”は、人間…もとい生物に生まれながらに備わっている肉体の抑止力(リミッター)を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()技能だ。“限界突破”と比べると肉体強化の上昇率が遥かに高く、魔力消費も比較的に少ない為、発動時間も長い。

 …だがその反面、副作用(デメリット)の方はその比ではなく、発動中は常に身体に強い負担がかかる為、重いダメージを継続的に受け続ける上、解除後は反動で体力を大幅に消失する。

 …そして、発動時間が長ければ長い程、使用者の命を大きく削ることになる。

 

 

晴彦

 「……正に諸刃の剣という訳ですね………ですが火力は申し分ないし、説明を聞く限り短時間の発動なら…

メルド

 「いや、コイツはそんな容易に扱えるモノじゃないんだ」

 

晴彦

 …と、言いますと?」

 

メルド

 「……この技能にはもう一つ、大きな問題(デメリット)があってな……それは…」

 「…あぁ~、団長さん、ちょっといいか?」

 

 重苦しい感じでメルド団長が説明していると、それを遮るように今まで黙って話を聞いていた暁が口を開いた。

 

 

 「……そっから先の言葉を当ててやるよ。…その問題(デメリット)って、発動すると所謂、『暴走(トランス)状態に陥って、敵味方問わずに襲い掛かる』ってやつか?」

 

メルド

 「………何故知っているんだ?」

 

 (やっぱりかぁ……)

 

 メルド団長の解答に、暁は思わず顔に手を当てながら、『あちゃ~』と言った表情になる。一応話によれば過去には鍛練と経験を積んだ末、ある程度は意識を保つことが出来た者も何人かは居たが、完全に抑え込んだ者は皆無だったそうだ。

 しかもそんな状態故に、一度発動すれば自力で解除することは基本的に不可能。よって魔力切れ、もしくは本人の死亡以外に止まる術は無いとされている。

 

 

光輝

 「そ、そんな周りを巻き込むような代物なんて使えないじゃないか!…というかそれ以前に、そんなの持っている奴と行動なんて出来ないぞ!」

 

 ざわわぁ(同感だ(よ))!!

 

晴彦

 「…確かに『使わなければ問題無い』という訳にもいかないな……メルド団長、何か対策はありますか?」

 

 先程(透織の時)とは打って変わって、光輝は騒ぎ立てながら非難する。晴彦も同意見な様で、渋面を浮かべながらメルド団長に尋ねる。

 

 

メルド

 「ま、まぁ、“心軆狂化(バーサーク)”に関しては安心しろ。コイツは技能を封じる魔法具(マジックアイテム)で対処可能だ」

 

光輝

 「…そんな物があるんですか?」

 

 詳しい説明によると、特殊な鉱石で製作した拘束具の一種で、アーティファクトの類いではないが、非常に有効だそうだ。本来は戦闘系の天職を持った犯罪者や奴隷を拘束するのに使用する物だが、“狂戦士”を持っている人間にも、()()()()()装着するよう義務付けられている。

 

 

 ざわぁ(ほっ)

 

 話を聞いていた周りの生徒達は安堵するように息を漏らす。

 

メルド

 「…とはいえ、この方法だと他の技能も封じてしまう上、()()()()()()()()()()()()()()んだ……しかも“言語理解”を除いた二つはかなり有用だから、非常にもったいないんだよなぁ~」

 

 

檜山・中野・斉藤

 「………(キュピーン)!」(☆∀☆)

近藤

 「お、お前ら…」

 

 …メルド団長の言葉に約三名は、怪しい笑みを浮かべながら目を光らせ、その様子に一名(近藤)が顔を引き吊らせていた。

 

 

光輝

 「だ、だとしても、皆の安全には代えられないですよ!」

 

メルド

 「そうなんだよなぁ~………いや、待てよ?“アレ”を使えば…」

 

 ふと、何か思い付いたメルド団長はその場で思考を巡らせ、やがて不敵な笑みを浮かべる。

 

晴彦

 「っ?…どうしました?」

 

メルド

 「…一つ妙案がある。暁、恐らく時間が懸かるだろうから詳しい説明は後程になるが、安心して俺に任せてくれ。晴彦、お前には協力してもらう事になるからこの後説明する」

 

 「っ?…了解ッス」

晴彦

 「わかりました。…次は南雲、お前だ」

 

ハジメ

 「………」

 

 晴彦の呼び掛けにハジメは一瞬ビクリと震えたが、覚悟を決めて大人しくステプレを提示した。

 

 

メルド・晴彦

 「………はっ?」

 

透織・香織・雫・光輝・龍太郎

 「………へっ?」

 

 確認した途端、二人(ついでに覗いてた五人)は思わず目を点にしながら間が抜けた声を漏らす。その後、晴彦は眼鏡を外して目を擦り、ついでにレンズに異常が無いか確認し、メルド団長はハジメのステプレを指でコツコツと叩いた後、もう一度二人で確認した。

 

 …だが、ハジメのステータス値が変わることは無かった。

 

 

ハジメ

 「…あの、メルドさん。この“錬成師”ってどんな天職ですか?“錬成”って技能が使えるようですけど……もしかしたら、この世界だと結構希少な天職だったり…して?」

 

 一類の望みを賭けるように質問するハジメ。…だがそれに対し、メルド団長は微妙な表情のまま口を開く。

 

メルド

 「その……“錬成”とは、鉱物の形を変化させる技能で、“錬成師”は簡単に言えばそれを持っている鍛冶職人だ。…一応、国でお抱えの職人は全員所持しているが…それでも十人に一人の割合で持っているな…」

 

ハジメ

 「……つ、つまり?」

 

晴彦

 「…この世界では、極一般的な天職(ありふれた職業)ということになるな…」

 

ハジメ

 「…ハ、ハハハ…」

 

 あまりにも残酷なメルド団長の解答、そして晴彦の容赦無く淡々と告げる補足の二段口撃(ダブルパンチ)を受け、ハジメは虚ろな目で乾ききった笑い声をあげる。自他共に認めるオタクである彼がこの状況で色々と期待を持たない訳がない。きっと自分もチート能力で『俺TUEEEEE!』が出来ると夢見ていたのだろう。

 …だが現実はこの通り。…片やハイリスク・ハイリターンの暁、もう片や不明点だらけだがその分期待度も高い透織とは違い、自身は完っ全に極々平凡な能力値。…こうなってしまうのも無理もないだろう。

 

 

透織

 「……あ、暁君どうしよう?この場合、何か声を掛けてあげるべきかな?」

 

 「…いや、むしろ逆だ。…しばらく放っておいてやってくれ」

 

 一方で暁と透織達は、何とも言えない表情でその場に立ち尽くすことしか出来なかった。普段はハジメに対して辛辣なことしか言わない光輝ですら何も言えずにいる程だ。

 

 

檜山

 「ひゃはははは!!南雲ぉ、ガチャ爆死お()ぅ~!」

 

中野・斉藤

 「ぎゃははははははははは!!」

 

近藤

 「お、おい…ブフッ!お前ら、いい加減に、ブフフフッ?!」

 

 

 (アイツら…!)

透織

 (…本当に最低だね)

 

 …が、先程のメルド団長の解説で調子を取り戻した小悪党組(近藤は一応宥めようとしているが…)は、そんな状況でも空気を読まずに笑いながら煽り散らしてきた。触発されてか、周りの生徒達(主にハジメを敵視している男子)も嘲笑し始める。

 

 

香織

 「………」

 

 「…香織、気持ちはよく判るけど、落ち着いてちょうだい?」

 

 その様子に香織が、雫の静止を振り切って憤然と動き出そうとしたその時だった。

 

 

愛子

 「コラァ~~!!何を笑っているんですか!?これから頑張っていく仲間を笑うなんて先生は絶対に許しませんよ!」

 

信良

 「………」(´▽`;)ゞ

 

 そこへ愛子先生が、『ウガーッ!』と怒りの声をあげながら割り込んできた。幸いと言うべきか、その姿に毒気を抜かれたのか、小悪党組を含めた生徒達が嘲笑を止める。

 ちなみに、その背後には彼女を迎えに行った信良が苦笑いを浮かべながら控えていた。

 

 

 「あれ、畑山?いつの間に…」

 

愛子

 「…五十嵐君!何度も言いますが、ちゃんと『先生』を付けなさい!!」

 

透織

 「…おはようございます愛ちゃん先生。…こんな所に何しに来たんですか?」

 

愛子

 「ステータスプレートを貰うためです。今日皆さんに配るからついでに私の分も……って、『愛ちゃん』も止めてください!」

 

晴彦

 「…“ノブ“、ずいぶん時間が懸かった様だが、何をしていたんだ?」

 

信良

 「………」(; ̄Д ̄ )人

 

愛子

 「あっ、七彩路君!華山君を責めないでください!…私が勝手に部屋を出て迷っていた所を彼が見つけてくれたんです」

 

晴彦

 「…そうだったんですか……ちなみに、何処で合流したんですか?」

 

愛子

 「……お城の裏庭に居た所を見つけて貰いました」

 

メルド

 「……完全に此処(訓練場)から真逆の位置だな」

 

晴彦

 「…ノブ、ご苦労だった。…あと畑山先生。城内を完璧に把握するまでは、()()()()()()大人しく迎えの人間を待っていてください」

 

愛子

 「は、はい、すみません…」

 

信良

 「………」( ̄▽ ̄;)

 

 忙しく表情を変える愛子先生に、周りがホッコリしていると、彼女は気を取り直すように『コホンッ!』と咳払いをする。

 

 

愛子

 「南雲君、気にすることありませんよ!先生だって“非戦系”?とかいう天職ですし、ステータスも()()()()平均です。南雲君だけじゃありませんよ!」

 

ハジメ

 「せ、先生…!」

 

 愛子先生の励ましの言葉に、ハジメの目に生気が戻る。そして彼女は『ほらっ』と自分のステプレ(桜色)をハジメに見せた。

 

 

ハジメ

 「………」

 

愛子

 「あ、あれ?南雲君、どうしました?」

 

 …が、その途端にハジメは表情を強張らせたまま硬直する。その様子を不審に思ったその場の面々は、愛子先生のステプレを確認した。

 

 

==================

畑山(はたやま) 愛子(あいこ) 25歳 女 

レベル:1

天職:作農師

筋力:5

体力:10

耐性:10

俊敏:5

魔力:100

魔耐:10

技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解

==================

 

 

 ……………

 

 

透織

 「…あの、先生?確かにステータス値はほぼ平均ですね。…魔力は通常の10倍、光ちゃん並みにありますけど……」

 

 「…技能も戦闘には向かないものばかりね。…数が多い上に、どれも農業においては非常に有用だけど……」

 

愛子

 「え、えぇっ!?」

 

龍太郎

 「あの~、メルドさん?愛ちゃん先生の天職って…

メルド

 「さ、“作農師”だと!?オイッ!誰か陛下と教皇様に大至急連絡しろ!!()()の“作農師”が出たって!…と、すまない龍太郎、何だって?」

龍太郎

 ……いや、何でもないッス」

 

晴彦

 「…戦争において物資、特に食料の安定供給は重要な課題の一つとされている。解消することができれば大きなアドバンテージを得られるだろうな」

 

光輝

 「…そう考えると、先生って俺達の中でもかなり重要な存在になるんじゃないか?」

 

愛子

 「……あ、あの~、つまり…?」

 

 「……あんたも十分、ぶっ壊れ(どチート)性能ってことだよ、畑山」

 

信良

 「………」(ー_ー;)《コクリ》

 

愛子

 「……え、えぇええっ!?」

 

 暁達の指摘に、オーバーリアクション気味に驚愕する愛子先生。…一応、彼女の名誉の為に弁明させてもらうと、信良と遅れてやって来た彼女は、メルド団長の部下である騎士からステプレを受け取りつつ説明を受けていた。だが小悪党組(檜山達)がハジメを馬鹿にした笑い声を聞いた途端……

 

愛子

 (先生としての止めなければ!!)

 

 …と、説明の途中で抜け出して向かった結果、絶妙に中途半端な知識を得た状態となってしまっていたのだ。

 

 

ハジメ

 「……カハァッ!?」

 

 …だがハジメのメンタル的にとっては、これがトドメを指す形になってしまった。

 

 「アカン、クリティカルヒットし(きゅうしょにあたっ)ちまった…」

 

透織

 「……こうかはばつぐんだねぇ……」

 

香織

 「ハ、ハジメ君!?しっかりしてぇ~!!」

 

愛子

 「ふぇええええ!?南雲君ごめんなさい、私そんなつもりじゃなかったんですぅ~~!」

 

 …結果、ハジメはその場で崩れ去ってorzの態勢となり、香織と愛子先生に必死で呼び掛けられる羽目になった。

 

 

 

 

 

 




以上になります。
今回は、前作の『神殺し』から変更した設定を幾つか解説します。

・晴彦の天職、ステータスについて
前作では“魔剣士”。剣術での接近戦と魔法での遠距離攻撃が出来るハイブリッドでしたが、若干光輝と類似してたり、『全体の指揮を取る晴彦が接近戦するか?』と思ったので、弓矢とお札を使った中・遠距離攻撃+αとなりました。
今見るとこっちの方が晴彦のイメージに合っているので良かったです。

心軆狂化(バーサーク)の内容について
こちらも光輝が持つ“限界突破”とより差別化するために変更させて貰いました。
イメージで例えるなら、NA〇UTOの木葉の碧き猛獣(ダイ〇マイト・ガイ)が使う”八門遁甲の陣”(魔力(チャ〇ラ)が有れば極論言って誰でも使える技)の一歩手前と思ってください。

それではまた。

ハジメのヒロインについて(ハーレムは確定)

  • 原作通り(某吸血姫様がメイン)
  • 香織がメイン(吸血姫様が挑戦者)
  • 両方(香織と吸血姫)いってまえ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。