それではどうぞ!
No.サイド
ステータスプレートの件から二週間後。
カンッ、キィン、カァン、ガォン!
…現在訓練場にて、二人の人物が剣劇の音色を奏でていた。
雫
「フッ、ハッ、ヤァアアッ!」
一人は八重樫 雫。
刀とシャムシールの中間のような剣を手に、実家の“八重樫流剣術”にトータスの魔術を織り交ぜた独自の剣技を披露する。
その洗練された動きにはある種の美しさも併せ持ち、本人の美貌も相まって、見学していた生徒と騎士団員の何人かは彼女の姿に見とれていた。
光輝
「ハァアアアアッ!!」
もう一人は天之河 光輝。
こちらはハイリヒ王国が所有するアーティファクトの一つ、“聖剣”と呼ばれるバスターソードを手にメルド団長直伝の剣技を駆使して雫の流れるような剣技を捌いていた。
両者共に模擬戦が始まってから十数分、未だに力と力、技と技の押収が繰り広げられていた。
…だが、何事にも必ず終わりが訪れるものだ。
光輝
「デリャァアアアアアア!!」
ガキィイインッ!!
雫
「なぁっ!?」
最後は光輝が雫の剣を弾き飛ばすことで決着が着いた。
メルド
「そこまでっ!」
ワァアアアアアアアアア!!
雫
「フゥ……流石だわ光輝。私もまだまだね」
光輝
「何を言っているんだ、雫。君も十分強かったよ」
メルド団長の試合終了の言葉と共に、訓練場に歓声が響き渡る。そんな中、雫と光輝はお互いの健闘を称え合っていた。
雫
(…負けちゃったなぁ……透織、観てたかしら?)
…が、そんな状況でも雫の関心は透織に向いており、すぐ近くの光輝にすら覚られないよう視線のみで透織を探し出す。
透織
「…これで問題無いかな?」
晴彦
「そうだな。前方は天之河達を中心とした前衛で堅め、その後は攻撃系の魔法職を……」
…一方、
雫
(…って、観てないし!…いや、格好悪い所を見られなかったと思えば良いんだけど……なんだかなぁ…)
恋する乙女特有の複雑な心境に雫が悶々としていると、それを見た光輝が爽やかな笑顔で話し掛ける。
光輝
「大丈夫だ雫。純粋な剣技なら君の方が上だし、俺達はまだまだ強くなれる。だから一緒に頑張ろう!」
雫
「……ありがとう光輝。お陰で自信が着いたわ……」
まったくもって的外れであるが、一応は自分を気遣ってくれていた為、律儀に応答する雫であった。
メルド
「よし、丁度切りも良いな!…これより、休憩時間に入る!全員、次の訓練までしっかりと休むように!以上、解散!」
No.サイド Out
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
透織サイド
メルド
「…これより、休憩時間に入る!全員、次の訓練までしっかりと休むように!以上、解散!」
メルドさんの号令を皮切りに、生徒達はそれぞれその場で談笑したり、訓練場から出ていく等、各自思い思いの行動を取りだした。
晴彦
「…よし、こんなものだろう」
「うん、あとはメルドさんに確認を取るだけだね」
そんな中、僕と七彩路君は配置図の前で一息ついていた。
するとそこへメルドさんが歩み寄って来た。
メルド
「おっ?二人共、調子はどうだ?」
「あっ、メルドさん!お疲れ様です」
晴彦
「丁度良い所に。基本陣形のメンバー配置、これで問題無いか確認をお願いします」
そう言って七彩路君が渡した配置図を確認したメルドさんは、『ほぉ…?』と、関心したような表情を浮かべる。
メルド
「…ふむ、初めてにしては悪くないな。これはお前達だけで考案したのか?」
「殆どは七彩路君の案です。…僕はせいぜい横から口出ししていただけですよ」
晴彦
「…いや、その
「そ、そんな事ないよ!
七彩路君からの思わぬ称賛に困惑した僕が漏らした失言に、メルドさんの表情が思い切り曇る。
「あっ、あの違うんです!今のはその…何というか、自分が情けなくてつい出ちゃったというか…
メルド
「……いいや、透織。お前の能力を活かしきれられないのは、俺達の力不足が原因だ。…本当にすまない」
「いや、その……メルドさん達のせいではないですから謝らないでくださいよ!」
二週間前、クラス全員分のステータスの内容を確認したメルドさんと七彩路君は、早速上層部を交えて各員の今後の育成方針についての会議を行った。
…そして案の定と言うべきか、僕の対処方法について頭を悩ませる事になった。
当時メルドさんも言っていたが僕が所有する“魔力操作”と“魔力変換”とは、
とりあえず、魔法の教官役となった宮廷に使える魔法職の人達のもと、ほぼ手探りながら鍛練を開始した。具体的には、
…なのに、二週間たっても未だに成功せず、それどころか此処で新たな問題が判明した。
トータスの人間には大抵、何かしらの魔法に“適正”を所持している。“適正”とは簡単に言えば、個々の体質により、特定の系統(火属性や回復系等)の魔法が容易に発動できる素質のようなものだ。
……だが僕、そしてハジメ君と暁君にはその“適正”が無かった……いや、僕はもっと酷かった。
訓練初日、一向に成功しなかったので、試しに詠唱を使って発動(当時用いていたのは、『火球』と呼ばれる火属性初級の攻撃魔法、しかも“適正”が無くても発動できるようガチガチに補強した2メートル級の魔方陣を使用)させようとしたのだが……ハジメ君達はなんとか発動できたが、僕は何度試してみても成功しなかったのだ。…これには教官役の人達も思わず、『…冗談でしょ?』と言いたげな顔つきになっていた。原因は今のところ明確になっておらず、あくまで推測の域だが、“魔力変換”が何かしらの影響を与えていると仮定している。
…因みに現在僕のステータスは…
=================
白崎 透織 17歳 男
レベル:3
天職:虚使
筋力:0
体力:0
耐性:0
俊敏:0
魔力:3000
魔耐:0
技能:■虚■・虚■■・魔力操作・魔力変換[+■■力]・言語理解
=================
…この通り、レベルの上昇と共に“魔力”だけだが尋常じゃないほど上がっていた。…まぁ、魔法が使えない現状だと、何の意味も無いんだけどね。
あとは“■虚■”と“虚■■”の二つだが、これらは今のところは放置している。…効果が解らない以上、
…と、此処まで解説して何が言いたいかというと……現在僕はクラスの中でもっとも役立たずということだ。
「と、とにかく今は、自分に出来る事を精一杯やっていきますよ」
メルド
「…うむ、そうだな。こちらでも引き続き、解決法が無いか色々と模索してみよう。だから希望を持っていてくれ」
「…ありがとうございます。メルドさん」
…この二週間、彼と騎士団の人達は僕達に分け隔て無く親身に接してくれており、本当に感謝しかない。…幸いと言うべきか、あれから変わらず身体の調子だけはすこぶる良好だ。今は雑用でも良いので、自分に出来る事に全力で取り組もう。
雫
「…と、透織。お疲れ様」
そんな事を考えていると、シズちゃんが声をかけて来た。
「あっ、シズちゃんお疲れ様!…って、光ちゃんは?一緒じゃないの?」
雫
「…光輝は今、龍太郎に付き合って模擬戦しているわ。…何か龍太郎、さっきの試合観て滾っちゃったみたいで…」
「あぁー…」
…何と言うか、龍ちゃんらしいとしか言い様が無いなぁ。そして、こういうのに対しては律儀な光ちゃんの事だ。素直に受け入れる事が容易に想像出来る…。
「そう言えばシズちゃん、さっきのは惜しかったよね。…最後は光ちゃんに力で押し負けちゃったね」
雫
「ええ、そうね。正直勝てる自信はあったん……って、観てたの?」
「っ?…そりゃ二人が試合してるなら見てるよ?」
雫
「そ、そう……何か、格好悪い所を見られちゃったわね…」
…
…うん、ここはフォローしておこう。
「そんな事ないよ。…あくまで僕の主観だけど、
雫
「っ!?…そ、そうかしら?」(ちゃ…ちゃんと観てくれていた?)
そもそも光ちゃんがシズちゃんに勝てたのは、本人の実力もあるけど、単純なステータス値の差と、“聖剣”の性能(聞いた話によると、所有者のステータス全体を上げ、本体から発する光の範囲に入る敵を弱体化するという、名称とは似つかわしくないエグい能力)が要因だと思う。
「そうだよ。それに、戦っている時のシズちゃん、とっても格好良くて綺麗だったよ。
雫
「っ?!!」
先程の試合を観戦した時も思ったけど、相変わらず彼女の剣技は見事としか言い様が無かった。元々幼少の頃から才能が突出していた上、日々欠かさず鍛錬を積んできた結果、同年代どころか大人顔負けの実力を身に付けていた。加えて彼女は、この二週間で覚えた魔法を自身の技術に変容するという器用さも合わせ持っていた。
…なればこそ彼女自身の美貌と相まって、その場にいた殆どが魅了されてしまっても仕方ないだろう。
雫
「っ!…~~~っ!!」
「…あの、シズちゃん?さっきから顔が真っ赤だけど、大丈夫?体調悪くない?」
雫
「っ!?…な、何でもないから気にしないで!」
「そう?…本当に辛かったら、遠慮せずにカオちゃん辺りに相談してね?」
雫
「わ、判ってるわよ!!」(本ッッッ当にこういう所に関しては光輝と大して変わらないんだからぁあああ!!)
晴彦
「…ゴホン!」
透織・雫
「っ!?」
突如聴こえてきた咳払いに、驚きながら振り向くとそこには……
晴彦
「……はぁ~」
…心底呆れきった表情でため息を吐く七彩路君…
メルド
「あ、あはははは」
…若干引き吊りながらも朗らかに笑うメルドさん…
香織
「ほわぁあああ~~!」
暁
「ほっほぉ~…」
…そしていつの間にか、目をキラキラさせるカオちゃんと、意地悪そう且つ面白そうに笑う暁君がいた。
ザワザヤザワザワザヤザワザワザヤザワ…
……いや、周りにいる他の人達からも、様々な思惑を孕んだ視線を向けられているようだ……。
雫
「っ?!!~~~っ!!!」
「………」
それに気付いたシズちゃんが、先程よりも顔を赤くして悶絶しだす。…それに釣られてなのか、僕の顔も赤くなるのを感じた。
メルド
「あぁ~その…御二人さん?お邪魔のようなら、俺達は席を外すが…?」
雫
「お気持ちだけで結構です!!」
晴彦
「まったく……公然の場でそういうのは控えて欲し…
雫
「七彩路君ごめんなさい謝るからそれ以上何も言わないでくださいお願いします!!」
暁
「…なぁ、白崎?八重樫って、何時も透織に対してああなのか?」
香織
「いやぁ~、
暁
「なるほど……で、そうなるもっぱらの原因が、さっきみたいな透織の
香織
「うん、大正解……あ、でも光輝君みたいに
暁
「いや、それは八重樫にとっちゃかえって
雫
「
流れ作業の如く、それぞれに的確な
…ま、いいか。
「カオちゃん、お疲れ様」
香織
「ルーくん、お疲れさま~」
「今日も治癒院で研修?大変だねぇ~」
香織
「うん、でも流石にもう馴れたよ!」
カオちゃんは現在、訓練とは別に七彩路君とメルドさんの計らいで王都にある王立治癒院(地球で言うところの国立病院)に赴き、そこに勤めている
…まぁ、本人の言う通り『馴れた』のもあるんだろうけど、何よりの要因は……
香織
「それに、ハジメ君も”同じ状況“で頑張っているんだもん!私が音を上げる訳にはいかないよ!」
「そっかぁ~……ちなみに、今日は彼とどんな話をしたの?」
香織
「そうそう!聞いて聞いて、今日わね…」
…そう、ハジメ君も現在カオちゃんと似たような感じで、国でお抱えの“錬成師”の下で研鑽する様、指示を受けていた。。
そしてその際二人は、ほぼ一緒に護衛を連れてそれぞれの目的の場所に移動していた。
…おかげで現在、カオちゃんのやる気が満ち溢れている状態だ。
雫
「…あの、五十嵐君?…実際のところ、南雲君は大丈夫なの?香織が迷惑かけてない?」
暁
「…最初の頃は終始押され気味だったけど、最近はもう
雫
「そう……迷惑かけてないなら今はそれでいいわ」
香織
「っ?二人共さっきから小声で何を話しているの?」
暁
「あぁ~、…『相変わらずお前ら、仲が良いなぁ~』って思ってなぁ?」
透織・香織
「…えっ?姉弟なんだから普通でしょ?」
暁
「そうか?…端から観ると俺には若干、夫婦っぽく見えるんだが?」
透織・香織
「あはははは、いやいやそれは無いって~w」
暁
「……と、申しておりますが八重樫さん?」
雫
「…生憎だけど五十嵐君。この二人はだいたいいっつもこんな感じよ。…もう馴れたわ……」
暁
「あぁ~、さいですか…」
透織・香織
「っ???」
微妙な表情をして小声で会話する二人に、僕とカオちゃんは同時に首を傾げる。
因みに、さっき言った護衛は、大抵が騎士団の団員の他に、暁君と華山君が担当する事もある。…今日は暁君が担当のようだ。
「暁君、お疲れ様。…
暁
「最初は違和感があったが、今はもう慣れたな」
そう言いつつ彼は、
現在、彼の首にはメルドさんが以前言っていた、“技能を封じる
元々“天職”持ちの犯罪者を拘束するための物なので鍵が着いており、自力で外す事は不可能。鍵は現在、メルドさんが所持している。
龍太郎
「お疲れッスメルドさん!」
光輝
「香織、雫、透織もお疲れ様。……で、何故五十嵐も居るんだ?」
透織・雫
「
そこへ模擬戦を終えた光ちゃんと龍ちゃんがやって来た。…で、案の定暁君の姿を見て光ちゃんが不機嫌な顔つきになる。対して暁君は、『やれやれ』といった表情でため息をついた。
メルド
「…待て光輝。暁は用があって俺が呼んだんだ。すまない暁。それじゃぁ早速向かうか?」
暁
「…あぁ~メルドさん、もうちょい待ってくれないか?…今日は特別に
メルド
「…イイモノ?」
ガラガラガラガラ…!!
信良
「………」(  ̄3 ̄)~♪
暁君の言葉にメルドさんが疑問に思っていると、華山君を先頭にしたメイドの集団が、ティーポットとカップを積載したカートを押して現れた。
透織
「…あれ?この香りって……」
雫
「…コーヒーの香り…よね?」
…そしてポットから香り放つのは、
メルド
「この匂い……ひょっとして、『カッファ』か?にしては…」
光輝・龍太郎・透織・雫
「…『カッファ』?」
香織
「
そんな会話をしている間に、華山君とメイドさん達はカップに
…そして訓練場に居た全員にカップが行き渡り、ほぼ同時に中身を啜った。
「…あっ、美味しい!」
雫
「ええ、ホントね!」
晴彦
「…ほぉ、これは…」
一口飲んだ途端、苦味と酸味と仄かな甘味が絶妙なバランスで口内に広がり、そして上品かつ芳醇な香りが鼻腔を突抜た。周りを観ると、光ちゃんと龍ちゃんを含めた大半の生徒達が、その味に感動している様だった。
メルド
「………」
「あれ、メルドさん?」
…一方何故かメルドさんや騎士団の人達は、訝しげな表情でカップを見つめていた。
暁
「…安心してくれメルドさん。このコーヒー……『カッファ』は、普段アンタらが飲んでいるのとはまったくの別物だ。俺が保証する」
メルド
「そ、そうか?…では頂こう」
そう言ってメルドさんは恐る恐るといった様子でコーヒーを口にする。
メルド
「な、なんだこりゃ!?これ本当にカッファか?う、旨いぞ!」
「メ、メルドさん?」
コーヒーの味にオーバーリアクション気味に感動するメルドさんに、僕達は思わず呆気にとられる。
そんな彼の様子を見た他の団員も次々とコーヒーを飲み始める。
「うおぉ?!ホントだ、うまい!」
「し、信じられん……カッファがこんなに美味くなるなんて…!」
「お茶菓子とも良く合うわぁ!…おかわり貰えるかしら?」
そして飲んだ全員が、ほぼ似たようなリアクションを取る。中にはおかわりする人もいる程だ。
光輝
「…あの、確かに美味しいですけど、いくら何でも反応が大げさじゃないですか?」
晴彦
「…いや、天之河。彼らがこんな反応するのも無理も無いんだ」
光輝
「っ?…どういう事だ七彩路?」
光ちゃんの疑問に対し、七彩路君が説明を開始する。
主にハイリヒ王国から西側に広がる『グリューエン大砂漠』のオアシスに隣接する『アンカジ公国』のみ生産されている。(元々は砂漠に点在するオアシスに自生していた物を、現地の人達が長年を懸けて品種改良したそうだ)
地球のコーヒーと大きな違いがあるとすれば、多種多様な“効能”だろう。“リラックス効果”、“集中力アップ”、“運動能力の向上”等、
その中でも特に興味深いのは、“飲む温度によって体温を調整、及び保持する”効果だろう。分かりやすく言えば、温めて飲むと体温を上げ、逆に冷やして飲めば体温を下げる。そして、一定時間そのままの状態を維持することができるそうだ。この効能故に、昼は灼熱、夜は極寒の砂漠地帯に住むアンカジ公国の住民にとって非常に重宝されている。
…と、此処まで聞けば良い事ずくめだが、このカッファには一つ
それはズバリ、“味”である。
晴彦
「…実を言えば、俺も一度飲んだ事があるんだが……あれは本当に酷かった……」
光輝
「そ、そうなのか……参考として聞くが、どんな味だったんだ?」
晴彦
「…例えるならそうだな……“焼いた土で作った泥水を数倍に濃縮した味”…と、言えば良いか?とにかく苦くて焦げ臭くて死ぬ程不味い。…正直、効能の件が無ければ、口に含んだ瞬間吐き出すレベルだ」
そんな性質故にトータスにおいて
メルド
「…俺も事務作業で切羽詰まった時は、度々
…そう言えば確かに、それ程不味い(飲んだ事無いけど)ものが何で此処まで美味しくなるんだ?しかもこの香りと味(自分で言うのも何だが、僕は味覚に関しては結構自信がある方だ)、間違い無くプロが淹れたモノだろう。
…いや、よくよく考えてみれば、それが出来る人間が一人だけいたよ。
香織
「ねぇねぇ光輝君、龍太郎君。このコーヒー美味しい?」
龍太郎
「オウ!俺、缶やインスタントじゃない、ちゃんとしたコーヒーなんて初めて飲んだけど、めちゃくちゃ
光輝
「ああ!俺の家では母さんが豆から挽いて淹れたものを飲んでたけど、正直言ってこれはそれよりも遥かに美味い!…ひょっとして、これは香織が淹れたのか?だとしたら凄いじゃないか!」
香織
「そっかぁ~、それは良かったよ。…でも残念光輝君。それを淹れたのは私じゃなくて五十嵐君だよ」
光輝・龍太郎
「……えっ?」
…
透織・雫
「あっ、やっぱり…」
…カオちゃんの
そんな中当の
暁
「《ズズズッ》……まだ
…と、自身が淹れたコーヒーの味に対し、ブツブツと自己分析を口にしていた。
光輝
「…な、何の冗談だ香織?こんな美味しいコーヒーを五十嵐が淹れられる訳…
???
「…いいえ、勇者様。私達が証言します。今あなた方がお飲みになられているポットのカッファは、間違い無く
雫
「…ニア?」
我に還った光ちゃんが否定しようとすると、メイド達の一人、ニアさん(シズちゃん曰く、年が近かった事もあり、この二週間で仲良くなったメイドさん)が真っ先に反論した。他のメイド達も同意するように頷く。
「…それで暁君?結局何したの?」
暁
「別に大したことはしてねぇぞ?器具を用意してちゃんとした淹れ方を教えただけだ」
此処で少し暁君について補足すると、彼は大のコーヒー
そんな彼が、異世界のコーヒーと聞きて飲まないなんて選択は取らないだろう。
…で、丁度一週間前に飲んだ感想は本人曰く、『吐き出してそのままカップを床に叩きつけたくなる程酷い味だった』そうだ。
暁
「…まぁ、後から
…が、かといって彼自身がこのままで良いとは思う訳が無かった。喫茶店の息子として…何より、”自分が美味い
まず、豆を煎る焙煎機からサイフォンまで、必要な器具を大至急かつ可能な範囲でハジメ君に頼んで作成、それを駆使して自身も
ちなみにその際のカッファは、メイドさん達の分を分けて貰い、代わりに試飲も彼女達にお願いしてもらったそうだ。
「恥ずかしながら正直に申し上げますと、我々も最初は半信半疑…いえ、内心乗り気ではありませんでした。我々使用人にとっても
「ですがそれも、最初に試飲させてもらって一気に払拭させられました!何せその時点で味が大幅に改善されていたのですから!」
「しかも彼はその技術を我々にも惜し気もなく、分かりやすく丁寧にご教授してくださったのです。カッファだけではありません。他にも
「実際、王宮の料理人達も彼と交流してたようで、彼から聞いたレシピや技術を早速活用しています」
龍太郎
「あぁ~、そういやここ最近、俺らに出てくるメシが、妙に
メイドさん達が次々と口にする暁君への称賛の言葉に、僕らは思わず呆然としながらも関心する様に黙って話を聞いていた。
光輝
「……ま、まぁ、これだけ証言が有るなら事実なんだろうけど、たかがコーヒーや食事を美味くしただけだろ?別に大したことじゃ…
透織・香織
「…いや、そんな事ないよ光ちゃん」光輝君」
光輝
…と、透織?香織?」
まさか僕とカオちゃんまで口出ししてくるとは思っていなかったのか、光ちゃんはあからさまに狼狽える。
香織
「ウチのお母さんが言ってたけど、美味しい料理は食べるだけでも心を
「そうそう。…逆にどれだけ身体に良くても、不味いモノを我慢して食べ続けるのって、かなり気が滅入るからねぇ…」
光輝
「…何か、えらく実感籠った言い方だな?」
「…光ちゃん?今まで僕が、どれだけ入退院繰り返して味の薄い病院食を食べてきたと思っているの?」
………
若干自虐気味な僕の発言に光ちゃんだけでなく、その場に居て話を聞いた全員が何とも言えない表情で押し黙る。
メルド
「…ま、まぁ、確かに二人の言う通りだ。ましてやこのカッファは、戦場でも軍の高官から一般の兵士まで陣地に居る際は飲んでいるものだ。それがこれ程美味くなっているなら間違い無く全体の士気向上になるだろう……でかしたぞ暁!俺もすっかりこの味が気に入ったぞ!…今後も暇な時で良いからまた淹れてくれ!」
暁
「ハハハッ、そこまで言ってくれるたぁ素直に嬉しいぜ。構わねぇッスよ?俺も一日一回以上は淹れないと腕が
和気あいあいと談笑するメルドさんと暁君。この二人、元々性質的に馬が合っていたようで、この二週間ですっかり仲良くなっていた。
光輝
「………」
(…あ、まずいなこれ)
…そしてそんな二人の様子を、光ちゃんが忌々しそうな表情で見ていた。…あれ、放っておいたら間違い無く面倒事になるやつだ…。
雫
「…あの、ところでメルドさん?『五十嵐君に用事がある』って言ってましたけど、時間は大丈夫ですか?」
…が、此処でシズちゃんも同じ危険性を感じたのか、極自然な感じにメルドさん達を促した。
メルド
「おっと、そうだった!すっかりゆっくりし過ぎた……では暁、そろそろ行くか?」
暁
「ええ、そうッスね。…それではお客さま、どうぞごゆっくり…」
若干気取った様にそう言いつつ、暁君はメルドさんと共にその場を後にした。
「…さて、そろそろ僕もお暇させてもらうよ」
龍太郎
「っ?何処に行くんだ透織?」
「ちょっと図書館に。…これからハジメ君と一緒に色々と情報収集つもりだよ」
光輝
「っ?!」
「…あ、光ちゃん?一応言っておくけど、
光輝
「っ!!…いや、透織。そうじゃなくてだな…」
…あらかじめ断りをいれたが、光ちゃんは何とか引き止めようと言葉を紡ごうとした。
晴彦
「…白崎弟?今、『南雲と一緒』と言ったな?」
光輝
「…っ!」
そこへ七彩路君が割るようにして話に入って来た。…その際光ちゃんが何か期待する様に彼を見る。
「そうだけど何?」
晴彦
「なら丁度良い。ヤツに用事があるから、訓練再開の少し前に俺の元に連れて来てくれ」
光輝
「ちょっ、七彩路?!」
…どうやら、
「わかったよ。じゃあ行って…
香織
「あっ!ルーくん、ちょっと待って!ハジメ君の所へ行くならコレを届けてくれないかな?」
そうだ言ってカオちゃんは、いつの間にか用意したバスケットを手渡してきた。中には魔法瓶(の様なもの)とサンドイッチが入っていた。
「カオちゃん、これは?」
香織
「五十嵐君のコーヒーと、
光輝
「っ?!」
…カオちゃんの言葉に、光ちゃんは仰天して目を見開き、周りの生徒(ほぼ男子全員)が殺気立つ。
「…それなら、カオちゃんが直接ハジメ君に手渡した方が喜ぶんじゃないかな?…あっ、何ならこれから一緒にハジメ君の所に行かない?」
光輝
「透織ぅ?!!」
香織
「…そうしたいのはやまやまだけど、私これからちょっと用事があるんだ。だからお願い!」
「…うん、わかった。そういう事なら任されたよ。…サンドイッチはカオちゃんが作ったモノだってことは、それとなくハジメ君に伝えておくね?」
香織
「っ!ありがとうルーくん!」
余程嬉しかったのか、カオちゃんは誰もが見とれる程の花咲く様な笑顔を浮かべ、それを見た男子生徒が怨嗟の声をあげる。…ごめんハジメ君。キミとしてはあまり波風を立たせて欲しくないんだろうけど、今のうちに
…だから僕は、カオちゃんの恋路を応援させてもらうよ。
「それじゃあ今度こそ行くね」
光輝
「待て透織!まだ話は終わって…《ガシィッ!!》…ぐえぇ?!」
雫
「光輝、いい加減にしなさい!!…透織、もういいから行って!」
まだ引き止めようする光ちゃんを、シズちゃんが背後からチョークスリーパーを決めて強制的に黙らせた。
「シズちゃんありがとう。…それと光ちゃん。僕を心配してくれるのは嬉しいけど、出来れば二人の事も少しは信用してあげてよ」
そう言い残して僕はその場を後にした。
…あれから二週間色々と調べてみたけど、未だに
…まぁ、さっきも言ったが、それでも今は自分に出来る事を必死に取り組んでいくしかない。…幸いにも現在、身体の調子だけは
…それにしても…
(…こんな風に思うのは不謹慎だけどこの状況、何か充実しているなぁ…)
…今まで身体の事で不自由だった分、
…そして何より、そのおかげで光ちゃん達(とハジメ君と暁君)の為に動ける事が出来る事が、非常に嬉しいのだ。
(…何時、本格的な戦争が始まるか判らないこの状況でそう思うのは、流石にまずいよねぇ…)
…そう思いつつ僕は、ハジメ君がいる図書館へ向かって行った。
透織サイドout
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
No.サイド
透織が立ち去りしばらくして、雫は漸く光輝を解放した。
雫
「アンタねぇ。いつまで五十嵐君と南雲君の事を敵視してんのよ!?」
香織
「そうだよ。二人だって仲間なんだよ?ルーくんが言ったとおり、信用してあげなよ?」
光輝
「げほっ!ゴホゴホッ!!」
二人の主張に光輝は何か抗議しようとするも、よほど強く絞められてたのか、未だに咳き込んでいた。
龍太郎
「…なぁ、二人共?さっきから気になってたんだが……お前ら、五十嵐とやけに親し気だよな?…ひょっとして、普段からよく会っているのか?」
光輝
「ッ?!」
龍太郎の質問に、香織と雫はお互いの顔を見合わせて、しばらく思考する。
香織
「…雫ちゃん?」
雫
「ええ香織、もういいわ。…彼の実家が、
龍太郎
「ああ、透織から聞いている……あ、もしかして…」
香織
「うん、私と雫ちゃんも彼の店、『
ちなみにそうなった経緯としては、最初に香織が透織から話を聞いて(主に南雲君目当てで)通い始めて、雫はそれに付き合ってそのまま……という流れである。
二人の答えに龍太郎は、『ほぉ~』と納得するようなリアクションを取る。
光輝
「か、香織、雫!何故その事を黙って…
雫
「言ったらアンタが騒ぎだすからよ。…言っておくけど、お店に…飛鳥さんに迷惑掛けるような事したら、本気で怒るからね?」
光輝
…う、ぐぅ」
声を数段低くして忠告する雫に、思わず光輝は押し黙る。
龍太郎
「…香織、『飛鳥さん』って誰だ?」
香織
「五十嵐君のお母さんで、『
龍太郎
「へぇ~。…あれ、
香織
「…あぁ、そっか。龍太郎君達は知らないんだっけ?…五十嵐君の家、お父さんが亡くなって母子家庭なの。…で、お店を飛鳥さんが引き継いだんだよ」
龍太郎
「……そうだったのか。…ひょっとして、五十嵐の奴も、店を手伝ってたりしてるのか?」
香織
「それどころか、よく代行で店番したりしているよ。…ね、雫ちゃん?」
雫
「ええ。飛鳥さんの話だと、始めは急用の際に短時間だけだったらしいけど、最近は休日とか暇な時は(カフェタイムだけ)ほぼ彼に任せているそうよ。実際、私達もその時何度か店に来たけど、お客さんからの反応は上々よ?」
香織
「そうそう。さっきニアさん達も言ってたけど五十嵐君、コーヒーだけじゃなくお料理も凄く上手なんだよ。私も何度かレシピを交換したりして、幾つかウチのお母さんにも見せてみたけど、『高校生が考えたとは思えない』って感心してたよ」
龍太郎
「いや、凄すぎだろそれ!?…本当にアイツ
ちなみに香織達の母、薫子は、料理研究家兼料理教室の講師をしている、正真正銘のプロである。龍太郎が驚くのも無理はない。
光輝
「……いや、待て待て!?五十嵐の身の上話とかは、今はどうでもよくてだな…
ニア
「…あの、雫様、香織様!…少々お尋ねして宜しいでしょうか?」
…普通ならとても横槍を入れられる状況じゃないにも関わらず、それでも食い下がろうとする光輝を遮るように、突如としてニアが口を開く。
雫
「何かしら?」
香織
「何かな?」
ニア
「あの、その……お二方にとって暁様は、どの様なご関係なのでしょうか?」
香織
「えっ、普通に友達だよ?ねっ、雫ちゃん?」
雫
「…ええ、そうね。私達にとって彼は、
ニア
「そ…そうですか。…ではもう一つ…」
二人の返答を聞いてニアは、安堵しつつ、周りに聞こえない程の小声で二人に問い掛ける。
ニア
「…その、暁様には、
…その質問に対し香織と雫は、お互いに顔を見合わせながらしばらく思考した後、雫が先に口を開いた。
雫
「…いいえ、少なくとも私はそんな話は聞いたこと無いわ……香織は?」
香織
「私も聞かないかな?…と言うかこの前、五十嵐君にその手の話題を振ったら、『彼女いない歴=年齢』て、言ってたよ?」
キュピーーン!!( ☆ω☆)
ニア
「聞きましたか皆さん!?」
「ええ、確かに!これは大チャンスですよ!」
「先に言っておきますけど、抜け駆けは許しませんからね!?」
二人の返答にニアを含むメイド達は皆、まるで獲物を見つけた獣のように目を光らせながら一気に沸きだつ。
「うわぁ~、五十嵐君、メイドさん達にめっちゃ人気じゃん…」
「…でも、確かにあんな強面&ガタイでそんなスキルがあるって、なんかギャップでグッとキちゃうよね~!」
「…というか今の話だと五十嵐君、
「うん、そうなると彼って実は、かなり優良物件じゃない?」
その様子を見たクラスの女子達も、次々と色めき始める。…中にはメイド達と同じように、目を光らせる者もいた。
相川
「…バ、バカな!?あの五十嵐にモテ期到来だと!?あり得ねぇ!」
仁村
「いや、待て昇!その考えは早計だ!…確か、俺が耳にした情報だと、“コーヒーを淹れられる男はモテる”って聞いたことあるぞ?きっとそのおかげだ!」
前田
「……ということは、俺達もコーヒーの淹れ方をマスターすればモテモテになるってことか!?」
仁村
「ナイスアイデアだ淳二!……でも、そんなの誰に習うんだ?」
相川
「……そりゃ、五十嵐にじゃねぇか?」
………
前田
「…秋人、お前代表で
仁村
「ちょ、ふざけンな淳二!?言い出したお前が行ってこい!」
前田
「嫌だよ!俺はまだ死にたくない!」
仁村
「俺だって嫌だよ!」
相川
「……よし、じゃあ俺が行く」
前田
「ちょ、昇!?」
仁村
「おまっ…マジかよ!?」
相川
「ああ…ただし、習得してもお前らには教えてやらん。俺が独占させてもらう!」
仁村
「なっ?!」
前田
「ズルいぞお前!!」
相川
「
仁村
「うぐぐ……畜生わかったよ!だったら俺も一緒に行ってやる!」
前田
「お、俺も!!」
相川
「あ、どうぞどうぞ~」
前田・仁村
「ってオイッ!!」
…そして更にその様子を見た男子達も、様々(主に暁への嫉妬)な反応を見せていた。
光輝
「………」( ゚Å゚;)
晴彦
「…天之河、気持ちは分からなくもないがもう止めておけ。…これ以上は何を言っても、ただ己の品位を下げるだけだぞ?」
光輝
「ッ!?…ぐぅっ!!」
先程の状況に、思わず唖然としていた光輝は、晴彦の指摘に対し、悔しそうに押し黙る。
光輝
(…いや、
…が、心の内では、いつものご都合主義な考えの元、まったく見当違いな決意を固めていた。
???
「クソッ!!もう我慢ならねぇ!!」
以上になります。
相変わらず時間が掛かって申し訳ございません。
今回、透織の能力とコーヒーの件について、前作との変更点を述べさせてもらいます。
まず透織ですが、魔法を使えなくして更に弱体化させました。現状、ハジメより戦闘力ありません。
続いてコーヒーについて
前作(神殺し)
過去になんやかんやあって飲む人間が居なくなった結果、完全に途絶えた。
本作(神滅)
アンカジ公国でのみ生産され、現地住民と一部の人間だけが飲んでいる。
ちなみに、『カッファ』という名称と、砂漠地帯の国で飲まれるという設定は、
では次回もよろしくお願いいたします。
ハジメのヒロインについて(ハーレムは確定)
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原作通り(某吸血姫様がメイン)
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香織がメイン(吸血姫様が挑戦者)
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両方(香織と吸血姫)いってまえ!