幼い時から訓練漬けで、子供の頃から戦場に出て、そして死んでいく。
それが当たり前だと思っていた。
『なあ、■■。もしも平和で戦争も殺し合いもない国に生まれたらどうする? 忍者の技術は伝統芸能って事で教えたりとかしてさ。宙返りするだけで皆がすごいすごいって手を叩くの。子供の時は毎日楽しく遊んだり本を読んで、大人になったら適当に働いてさ。たまに美味しいものを食べたりして』
ーー想像できない。
『想像しろよ。そしてそれを望むなら、俺と契約をしろ。この里を、世界を捨てて、俺について来い。そうだな、名前は烏夜衆。いい名前だろ? 俺達は烏夜衆として再出発するんだ』
ーー里抜けは殺されるぞ。
『生まれ変わった後の話だから問題ねーよ。想像だけなら自由だろ? それで、20歳の時にパーティーをするんだ。凄くでかい祭りだ。大祭だ。楽しみにしてろよ。東京で、20歳の時だ。忘れるなよ。夢の代償は』
ーー生まれ変わったら……そうだな。でも平和な世界での振る舞いなんてわからないから、その時は、いろいろ教えてくれ。
そうして、死んで。生まれ変わって。
俺は確かに平和な国に生まれていた。
5歳になって、毎夜前世の夢を見るようになって。
俺は両親に縋りついた。日々怯えた。この幸せすぎる毎日が、泡のように消えてしまうのではないかと。
10歳になって、忍力が渦巻いた。前世よりも多いくらいだった。
過去が追いかけてきたんだ。前世からの因縁が、俺を捕まえにきたんだ。ひどく恐れた。
そして、頭の中に文字が写った。
『烏夜衆掲示板
1 管理人
よし、上手く行った。烏夜衆の民さん、全員生きてるようで何より。
それではお前らの義務を発表します。20歳の時に東京で行う大祭に1時間は参加すること。でないと死にます。
今から5年後に物資を届ける。10年したら自由にやっていいが、それまで派手すぎる事はするな。大祭に備えて弟子とかを作っておくといいぞ。弟子を作れるようなアイテムを5年後に送る』
「???」
俺の頭に過去がよぎった。烏夜衆。大祭。平和な世界。
何人かが管理人に話しかけたがそれきり管理人は黙ったまま。
それから、俺達は話し合い、俺が頭領に就任し烏夜衆を結成し、忍者教室を開いた。
素質があってこれはという信用できる者に薬剤を使ったら、どういうわけか忍法が使えるようになった。
異世界で、平和な国で忍者を広める喜び。あの男への畏れ。
この素晴らしい奇跡の代償がどうしても思い出せない。
そして、その日。
異世界からの侵略者ともいうべき化け物が暴れている時、ついにこの時が来たと覚悟した。
あんな殺し合いの日々は二度と送りたくない。送らせたくない。
この平和な国を守りたい。
だから、我らが侵略者を殺す。
他にもおかしな奴らが来ていて、腑に落ちた。
きっと奴は、たくさんの世界を巡って魂を集めてきたのだろう。
誰が共に肩を並べて戦おうと関係ない。
我らは我らで敵を倒す。
久々の血は酷く馴染んだ。
忍法で巨大蛙を使役して怪獣と激突する。
日本の子らを、戦場へ送らぬために。我らは、闘う。
大祭ではなかったのか。そうだと最初から知っていたとしても戦ったろうが、徒労感は抑えられなかった。
なんとか撃退し風呂に入って食事をして仮眠をとっていると、案の定政府のものが現れた。
「烏夜衆頭領の真也さんですね。お話を伺わせてください」
日本国首相を名乗るその男は汗を拭き拭き告げた。
「伝統芸能を大事にする真也さんのお心、素晴らしい物と思います。日本の忍術、是非とも後世に残すべきです。自衛隊には体を動かすのが得意な者達が沢山いましてですね、また日本としても昨今の情勢を考えまして、御庭番の復帰を考えております。給金は、君」
「はい。これぐらいでいかがでしょうか」
「国に仕えるのは構わんが、こんな得体の知れない者を懐に入れるなど、いいのか?」
「逆ですよ。こんな時だから取り込まないと。私はね。戦争なんて真平ごめんです。でもそれには抑止力も必要です。戦争を防ぐためならなんだってやります。よろしく頼みます。この通り」
深々と頭を下げる首相。それは国を守るため。
「……私も戦争は嫌いだ」
「では決まりですね! いやー良かった。君、次はどこだね」
「異能者互助会です」
「そうか、それでは、詳しいことは担当者と話してください」
異世界侵略の撃退に大祭。
考えることは多いが、平和を守る為に、覚悟を決めるべきだろう。
どちらの話の方が良さそうですか?
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